大橋みつるの平和ト-ク・・世直しご一緒に!

世界の変化を見ながら世直し提言
朝鮮・韓国・中国・ロシアとの友好促進
日本語版新聞紹介

 欧州と日本が共同で取り組んでいる水星探査計画「ベピコロンボ」の探査機から、史上最も近くから撮影した水星の写真が送られてきた。

2024-09-19 | 科学最前線
 

最も近くから見た水星…初の165キロの近接撮影

登録:2024-09-20 07:49 修正:2024-09-20 10:30
 
クァク・ノピルの未来の窓 
ベピコロンボ、史上最接近で飛行 
2026年11月に水星の公転軌道に進入
 
 
ベピコロンボ探査機が9月4日に水星に最接近したときに撮影した写真。撮影時の水星との距離は177キロメートルだった=欧州宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

 欧州と日本が共同で取り組んでいる水星探査計画「ベピコロンボ」の探査機から、史上最も近くから撮影した水星の写真が送られてきた。

 欧州宇宙局(ESA)は、ベピコロンボ探査機が4日(韓国時間5日)に太陽に最も近い惑星である水星から165キロメートルの距離まで近接飛行し、128枚の写真を撮影したことを明らかにした。

 今回の飛行は計6回予定されている近接飛行の4回目。ESAの飛行力学チームが宇宙船の経路を調整したため、本来の計画より水星にさらに35キロメートル接近した。

 フライバイ(スイングバイ)と呼ばれるこの近接飛行を行う目的は、水星の軌道の進入に先立ち、水星の重力を利用して飛行スピードを下げ、宇宙船の太陽公転周期を水星に近くなるように合わせるためだ。

 今回の飛行でベピコロンボ探査機は、初めて水星の南極地域を近接撮影した。ESAは「宇宙船が水星の軌道に進入した後には、このような位置と角度で水星を観測する機会はない」と明らかにした。

 
 
水星の赤道付近のビバルディ・クレーター。ベピコロンボ探査機が水星から355キロメートル離れた地点から取った写真。左側の下が北極になる=欧州宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

■水星独特の二重リング状の衝突盆地

 探査機はこの日、水星の夜に該当する地域から水星に近づき、3台の宇宙船モニタリング用カメラ(M-CAM)で水星をそれぞれ別の角度から撮影した。

 探査機は最接近の距離を通過し、4分後に水星独特の「ピーク・リング(peak ring)盆地」を相次いで撮影した。小惑星や彗星の衝突によって形成された二重リングのかたちのこの盆地は直径が約130~330キロメートルで、平たい底に輪形の峰が突き出ていることから付けられた名前だ。

 最初に撮影されたのはビバルディ・クレーターで、直径は210キロメートルと推定される。探査機が日の出のころに近付いたため、地形が鮮明にあらわれた。リングに若干のきずが生じているが、これは溶岩がクレーターの内側に流れていったためだとみられると、ESAは明らかにした。

 
 
ベピコロンボ探査機が撮影した水星のストッダート・クレーター。水星から約555キロメートルの距離のときに撮った写真=欧州宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

 数分後には、幅155キロメートルの新たなピークリング盆地を捉えた。ESAの科学者らは、この盆地にストッダート・クレーターという名前を付けた。ストッダートは花の絵で有名なニュージーランドの画家マーガレット・オルログ・ストッダート(1865~1934)から取られた名前だ。

 二重リングの形のピークリング盆地がどのように形成されたのかについては、今もベールに包まれている。科学者らは小惑星や彗星との衝突過程で何らかの反発力が作用した結果だと推定している。

 水星にあるピークリング盆地の相当数には、火山の溶岩が流れた跡がある。ビバルディとストッダートにもそのような跡がある。

 
 
ベピコロンボ探査機が最近接飛行を終えた後、水星から遠ざかって3459キロメートル離れた地点で撮影した写真=欧州宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

 ベピコロンボ探査機の次の水星近接飛行は、2024年12月1日、2025年1月8日にそれぞれ予定されている。

 探査機はこれを通じてさらにスピードを下げ、2026年11月に水星軌道に進入した後、2027年から本格的な探査活動を行う。探査機の推進機の問題で、軌道投入の時期は当初の計画より11カ月延期された。

 ベピコロンボは、ESAの「水星表面探査機」(MPO)と日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「水星磁気圏探査機」(MMO)の2つの探査機で構成されている。水星の軌道に進入すると2つの探査機は分離し、高度480~1500キロメートルの楕円軌道を回り、それぞれ1年ほどの間、独立して水星探査を行う。

 
 
水星に向かって飛んでいるベピコロンボ探査機を描写した図=欧州宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

■水星探査機を送ることが難しい理由

 水星は地球の直径の約3分の1の大きさで、平均5800万キロメートルの距離で太陽を公転する。太陽を2回公転する間に3回自転する。

 ベピコロンボの基本任務は、水星の表面を撮影して磁場を分析することだ。水星の巨大な核を形成している鉄成分も分析する。水星は全体の64%が鉄によって構成されている。

 水星が核が大きく地殻が薄い惑星になったのは、巨大な天体が水星と衝突してマントルの大部分を飛ばしてしまったためだと、科学者らは推定している。

 水星は太陽系惑星のなかでは太陽の重力の影響を最も強く受けるため、公転速度も秒速47キロメートルで、地球の1.5倍の速さだ。また、地表温度が昼間には400度、夜にはマイナス170度となり変化が激しく、宇宙船が水星の軌道に安定的に進入し、着陸することは容易ではない。そのため、これまで宇宙探査では後回しにされていた。

 2018年10月に地球を出発したベピコロンボ探査機は、1970年代の米国のマリナー10号、2000年代の米国のメッセンジャーに続く3番目の水星探査機だ。

 米国ジョージア工科大学のユン・ボグォン研究員(物理学)は、地球との距離がはるかに遠い木星や土星に比べ水星軌道船が遅れたのには、3つのハードルがあったためだと語る。

 1つ目は、太陽に最も近い惑星である水星を探査するためには、太陽の放射熱と太陽風から探査機を保護する装備が必要だという点だ。2つ目は、それによって探査機の重量がより大きくなるため、発射体もさらに強力でなければならないという点だ。3つ目は、水星の周囲を回る軌道に進入するためには、反動エンジンで減速しなければならないが、減速しなければならない速度が非常に大きいという点だ。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

 研究チームは今後、脳活動を判読する技術がさらに制度を上げる場合、脳損傷の患者たちも脳‐コンピュータ・インターフェース(BCI)を利用して意思疎通が可能になる日が来ると期待した。

2024-08-28 | 科学最前線
 

植物人間の4人中1人は話を聞いている

登録:2024-08-27 06:56 修正:2024-08-27 10:00
 
 
[クァク・ノピルの未来の窓] 
重度の脳損傷患者の25%が外部の指示に反応 
全世界の「隠された意識」の患者は最大10万人と推定
 
 
植物人間状態にある重度の脳損傷患者の相当数が実際には意識があるという研究結果が発表された=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社

 深刻な脳損傷を受けて外部からの刺激にまったく反応しない状態が長期間続く患者を、よく「植物人間」と呼ぶ。しかし、意識障害に陥った脳損傷患者の相当数が、実際には意識があることが明らかになった。体をまったく動かすことができず、意思疎通はできないが、周辺を認識できるということだ。

 米国マサチューセッツ総合病院を運営している医療研究教育機関「マス・ジェネラル・ブリガム」(MGB)が中心となった国際研究チームは、重度の脳損傷患者241人を対象に機能的磁気共鳴映像(fMRI)撮影と脳波検査(EEG)を実施して分析した結果、4人中1人の割合で外部の指示に反応することを確認したと、国際学術誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表した。研究チームは、これらの人たちの脳活動の程度は、同じ検査を受けた健康な成人たちとまったく同じだったことを明らかにした。

 研究チームは患者らに、テニスをすることや、水泳、拳を握ること、家の中を歩くことなどの活動を想像するようさせ、脳反応を調べてみた。例えば、「拳を握って伸ばす姿を想像してください」と言った15~30秒後、「そのような想像を止めてください」と伝える手法だ。研究チームは、このような実験を5分間に平均7回繰り返した。その間に脳の血流の動きと脳波を測定した結果、患者の25%にあたる60人に、この指示を繰り返して従ったことを示す脳反応が現れた。

 表面上には何の反応がないようにみえるが、言語を理解して指示を記憶して注意力を維持できる状態を、専門用語で「認知‐運動解離」(Cognitive-motor dissociation)と呼ぶ。

 論文の筆頭著者であるイェレナ・ボディーン博士(神経学)は「このような結果は、重度の脳損傷の患者に対する倫理的、臨床的、科学的質問を投げる」と述べた。例えば、表面上には現れなかった認知能力を探知し、コミュニケーション・システムを構築することが可能かどうかが研究者の新課題になりうる。

 個人の「認知‐運動解離」現象を示す研究は、20年ほど前に初めて発表された。その後科学者たちは、外部の刺激に反応しない患者の約15~20%にこのような現象が現れることを発見した。2019年の米国のワイル・コーネル医科大学の研究では、このような「隠された意識」の現象が10人中1人の割合で現れると推定した。ただし研究チームは、今回の研究を通じて、その割合がこれよりはるかに高い可能性があることが判明したと明らかにした。今回の研究は、これに関する研究のなかでは歴代最大規模だ。

 研究を主導したワイル・コーネル医科大学のニコラス・シフ教授によると、全世界に意識障害を患っている人は30万~40万人いると推定される。シフ教授は「これは最大10万人が『隠された意識』を持っている可能性があることを意味する」と述べた。

 
 
機能的磁気共鳴映像(fMRI)は脳の特定部位が活性化する際に発生する血流変化を探知する手法で脳の活動を映像化する技術だ=コロンビア大学提供//ハンギョレ新聞社

■生命維持装置の除去決定に投げる質問

 今回の研究では、米国、英国、フランス、ベルギーの4カ国の6カ所の医療施設で約15年間に収集されたデータを活用した。患者たちは、交通事故や脳卒中、心臓まひのような外傷によって脳損傷を受けた直後に集中治療室に入院したり、けがや病気を患い数ヶ月~何年が過ぎてから療養施設や自宅で生活していた人たちだ。脳反応を示した人たちは、そうではない人たちに比べ、年齢が若く、外傷によって脳損傷を受け、より古い時期に脳損傷を受けた傾向があった。

 研究チームは、認知的自覚が生きていることだけが分かっても、これらの人たちに対する治療方法に変化を与えることができると明言した。例えば、医療スタッフがもう少し微細な信号にもさらに注意を払うことができ、患者に話しかけることも可能で、病室に音楽をかけることもできる。反面、「認知‐行動解離」を探知できない場合には、生命維持装置を早期に除去したり、リハビリの機会を逃すなどの深刻な結果を招く可能性もある。

 シフ教授は「今回の研究によって、認知能力がありながらも行動できない解離状態が、一般的ではないわけではないことがわかった」として、「今では、このような患者たちと交流して患者たちが世界とつながるよう助けることが、私たちの倫理的義務だと思う」と述べた。

 英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのラーナン・ギロン教授(医療倫理)は、科学専門誌「ニュー・サイエンティスト」に、「意識がない状態で生きるということは、多くの人たちにとって無意味で、より嫌いなものに近づくこと」だとしたうえで、「しかし、今回の研究が示唆するように、意識がないことが表面上にみえる状態であるにすぎない可能性が高いのであれば、生命延長治療を中断することに決める前に、自分の意思を聞いてほしいと望むことが予想される」と述べた。

 ただし、研究チームは、脳反応を測定する方法が標準化されておらず、機関ごとに異なる手法で検査しているため、データに偏差がある点を限界として挙げている。したがって、研究チームは、体系的かつ実用的な評価手法が開発され、より多くの患者がより簡単に検査を受けられるようにすべきだと明らかにした。

 今回の研究には、簡単な指示に反応した患者112人も含まれている。研究チームは、これらの人たちについては、かなり多くの人たちが脳画像と脳波検査ではるかに明確な反応を示すと予想した。しかし、実際には38%で大きな違いなかった。研究チームは、これは脳反応の基準値を高く設定したためだと推定した。

 研究チームは今後、脳活動を判読する技術がさらに制度を上げる場合、脳損傷の患者たちも脳‐コンピュータ・インターフェース(BCI)を利用して意思疎通が可能になる日が来ると期待した。マサチューセッツ総合病院の研究チームが参加して同日に同じ学術誌に掲載された別の論文には、ルーゲーリック病(筋萎縮性側索硬化症=ALS)によって話せなくなった40代患者の脳信号を脳‐コンピュータ・インターフェースで読み取り、患者が意図した話を97%の正確度で文字と音声に変換することに成功したという研究結果が載せられた。

*論文情報
DOI:10.1056/NEJMoa2400645
Cognitive Motor Dissociation in Disorders of Consciousness.

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

しかし、今回の研究は、氷から生成される酸素の量だけを確認したものであり、そのうちどれほどの酸素が大気に向かい失われるのか、または、氷を突き抜けて海の中に入るのかは突きとめられなかった。

2024-03-06 | 科学最前線
 

木星の衛星「エウロパ」

1日に1千トンの酸素を生成…生命の神秘に一歩前進

登録:2024-03-06 08:20 修正:2024-03-06 10:12
 
木星探査機「ジュノー」、近接飛行の観測データーを解析 
氷が荷電粒子と衝突して酸素と水素に分解
 
 
2022年9月29日、木星探査機「ジュノー」がエウロパを近接飛行して撮影した写真。エウロパでは1日に1000トンの酸素が生成されると推定された=NASA提供//ハンギョレ新聞社

 地球の月よりわずかに小さい木星の氷の衛星「エウロパ」は、太陽系で生命体が存在する可能性がある有力な候補の一つだ。科学者らは、15~25キロメートルの厚い氷の表面層の下に塩分の多い水の海があると推定している。

 しかし、生命体が存在するためには、水だけでなく酸素が必要だ。エウロパの海には酸素があるのだろうか。

 天文学者らが米航空宇宙局(NASA)の木星探査機「ジュノー」が送ってきた観測データをもとに分析した結果、エウロパでは1日に1000トンの酸素が生成されるものと推定されると、国際学術誌「ネイチャー・アストロノミー」に発表した。

 研究を主導したプリンストン大学のジェミー・サライ教授(プラズマ物理学)は、「これは、私たちが期待していたよりも低い数値」だとしたうえで、「しかしこれは、生命体の存在の可能性を完全に排除するものではない」と述べた。科学者が過去に推定した最大値は、1秒あたり2245ポンド(1018キログラム)だった。

 地球では、バクテリアと植物、プランクトンが光合成を通じて酸素を供給する。しかし、エウロパで酸素が生成されるプロセスはまったく違う。宇宙から飛んできた荷電粒子が氷の表面層と衝突すると、氷の水を水素分子と酸素分子に分解する。サライ教授はニューヨーク・タイムズに「害となる宇宙放射線から海を保護する氷の皮が、一種の呼吸をしている」としたうえで、「氷殻はエウロパの肺のようなものだ」と述べた。

 
 
木星の荷電粒子がエウロパの表面に衝突して氷の水分子を酸素分子と水素分子に分解する様子。科学者たちは、こうして生成された酸素の一部が地下の海に入り込む可能性があると考えている=NASA提供//ハンギョレ新聞社

_________
地下の海に入り込み、生命体を作る可能性

 研究チームは、この酸素はエウロパの地下の海に移動でき、その場合、海底火山の物質と混じりあい、生命体を誕生させる化学的なプロセスが生じる可能性があると推定した。

 今回の研究は、ジュノーに搭載されたJADEという装置が、2022年9月にエウロパに354キロメートルの距離まで近接飛行して収集したデータを分析したものだ。飛行時間は数分に過ぎなかったが、エウロパの大気の近くのプラズマの構成を直接測定したのは今回が初めて。

 JADEが確認したものは、酸素ではなく水素だった。水素は最も軽い元素であるため、生成されるやいなや、大気圏の高さに浮び上がる。しかし、2つの分子はともに凍りついた水から出てきたものであるため、水素を測定すれば酸素の量を推定できる。

 研究チームはこれをもとに、エウロパの表面で1秒あたり26ポンド(12キログラム)の酸素が生成されているという事実を発見した。これは1日あたり1019トンに達する量だ。

 研究チームの一員であるコロラド大学ボルダー校のフラン・バジェナル博士は、ニューヨーク・タイムズに「生命体を作るためにはどれほど多くの酸素が必要なのかはわからない」としたうえで、「したがって、過去の希望的な推定値より低いという事実は、さほど大きな問題にはならない」と述べた。

 
 
エウロパの氷の表面層。表面で生成された水素は大気へとわき上がる=NASA提供//ハンギョレ新聞社

 しかし、今回の研究は、氷から生成される酸素の量だけを確認したものであり、そのうちどれほどの酸素が大気に向かい失われるのか、または、氷を突き抜けて海の中に入るのかは突きとめられなかった。

 2025年に任務を終えるジュノーは、今後はエウロパの近接飛行は行わない。したがって、この宿題を解く任務は、次のエウロパ探査機にまかせることになった。

 NASAは、10月に史上初となるエウロパ専用探査機「エウロパ・クリッパー」を発射する予定だ。この探査機は2030年に木星に到達する予定であり、エウロパが生命体の生存に適した条件を備えているかを確認できる9個の科学装置が搭載される。欧州宇宙局が昨年3月に発射した木星衛星探査機「JUICE」も、2031年には木星軌道に到着し、4年間にエウロパをはじめとする3個の氷の衛星を探査する。

*論文情報
doi.org/10.1038/s41550-024-02206-x
Oxygen production from dissociation of Europa’s water-ice surface.

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

新たな汚染水の発生防止や廃炉を進めるための明確な展望もなく無責任に急ぐあまり「底抜けの甕に水を注ぐ」ような状況に直面することになりかねないという悲観的な見通しを示した。

2023-08-24 | 科学最前線

「汚染水放出」24日午後1時予告…

放出期間「30年→予測不可」

登録:2023-08-24 07:30 修正:2023-08-24 08:54
 
日本メディア「2051年廃炉の目標、すでに破綻」 
毎日100トンの汚染水発生、「底抜けの甕に水を注ぐ」
 
 
香港の漁業者が23日(現地時間)、現地の日本総領事館の近くで福島原発汚染水の放出反対のデモ中に日本の岸田文雄首相の顔写真に核汚染水を注ぐパフォーマンスをしている。香港当局は中国政府の方針に歩調を合わせ、24日から特定の日本産水産物に対する禁輸措置を施行する=香港/EPA・聯合ニュース

 日本の岸田文雄首相が、事故を起こした原発の廃炉のために必要だという名目で24日に汚染水(合計134万トン)の放出を開始することを決め、東京電力は23日終日準備作業に追われた。日本のメディアは、政府と東京電力の説明のとおり「約30年」で放出が終わるのか見極めるのは難しいとして、新たな汚染水の発生防止や廃炉を進めるための明確な展望もなく無責任に急ぐあまり「底抜けの甕に水を注ぐ」ような状況に直面することになりかねないという悲観的な見通しを示した。

 共同通信は23日、「(日本)政府と東京電力が、福島第一原発の処理水の海洋放出を24日午後1時にも始める方向で調整している」と報じた。24日から1日あたり460トンずつ、17日間で7800トンの汚染水を放出する。その後、今年は4回にわたり汚染水全体の2.3%にあたる合計3万1200トンを放出する。東京電力は「(放出)初年度なので慎重に進める」と説明した。そのため、汚染水1トンに海水1200トンを混ぜて薄めた後、放出直前に汚染水を集めておく水槽に移す作業を22日夜に終わらせた。

 日本メディアは、放出の終了時期は誰も予測できないとして、強い懸念を示した。日本の経済産業省は原発の廃炉について、第1段階として原発内に保管されている核燃料の搬出を2年以内に、第2段階として廃炉作業での最大の難関であるメルトダウン(炉心溶融)を起こした核燃料と周辺の構造物が混ざってできた塊(デブリ)を取り出す作業を10年以内に始めるという計画を立てている。その後、第3段階として原子炉の撤去など本格的な作業を初め、事故後30~40年以内(2041~2051年)に廃炉作業を終えるという計画だ。この過程で発生する新たな汚染水は、海に捨て続けざるをえない。

 
 
日本の市民たちが22日、東京の首相官邸前で福島第一原電に保管中の汚染水を24日に放出することを日本政府が決定したことについて反対集会をしている。ある参加者が「原発汚染水毒を海に流すな」と書かれたプラカード持っている=東京/AFP聯合ニュース
 
 
汚染水の海洋放出を2日後に控えた22日、福島第一原電の敷地に保管中の汚染水タンク=福島/ロイター・聯合ニュース

 日本政府の原子力政策の中枢を担ってきた人物はこの日、民放の日本テレビのインタビューで「廃炉が30年~40年で終わるとは誰も思っていない」と述べた。毎日新聞も同様に「『51年ごろ』とする廃炉完了を目指す工程表は事実上、破綻している」として、政府の対応を批判した。

 現在、福島原発の1~3号機の原子炉には、約880トンに達するデブリが残っている。そこからは、近づくと1時間以内に死亡するほど強い高線量の放射線が出ている。除去のためには精密な作業を担当するロボットが必要だが、開発は遅れている。朝日新聞は「2021年中に2号機から(デブリの)試験的な取り出しを始める予定だったが、装置開発の遅れなどで2度延期。今年度後半の開始をめざしているが、取り出す量はわずか数グラム」と報じた。1号機と3号機については、処理時期や方法などの計画さえない。

 雨水や地下水の流入などで毎日発生する汚染水を完全に防ぐ対策もない。地下水を汲み出し、1~4号機の周辺に凍土壁(土を凍らせて作った壁)を設けたが、今でも毎日90~140トンの汚染水が出ている。廃炉が遅れれば、汚染水の放出は「底抜けの甕に水を注ぐ」ことになりかねない。日本テレビは「(政府予想の)『約7.5年』とされた放出期間も『30年程度』と大幅に延長されている」と指摘した。

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
 

汚染水糾弾ろうそく集会に乗り出した韓国の最大野党…

週末には光化門一帯で総決起集会

登録:2023-08-24 06:41 修正:2023-08-24 07:26
 
イ・ジェミョン代表「核汚染水の海洋放出は第2の太平洋戦争」との発言も
 
 
共に民主党のイ・ジェミョン代表が22日午後、国会ロタンダホールの階段で行われた福島原発汚染水海洋放出糾弾大会で発言している=キム・ボンギュ先任記者//ハンギョレ新聞社

 福島第一原発汚染水の海洋放出を翌日に控えた23日、韓国の最大野党「共に民主党」は国会でろうそく集会を行い、今後街頭デモと総決起集会を予告するなど、総力対応に乗り出した。

 民主党のイ・ジェミョン代表は同日午前、国会で開かれた最高委員会議で「過去の帝国主義侵略戦争で周辺国の生存権を脅かした日本が、核汚染水の海洋放出で大韓民国と太平洋沿岸国に再び取り返しのつかない災いをもたらそうとしている」とし、「核汚染水の放出は第2の太平洋戦争として記録されるだろう」と批判した。同党のパク・グァンオン院内代表は「尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は国民に向けた記者会見を通じて、国民に(汚染水の放出に関する)明確な立場と計画を報告すべきだ」と述べた。

 民主党は汚染水放出が決まった22日から26日まで放出反対を促す「100時間緊急行動」を行う。23日午後には、現役議員らと補佐陣、党役員、首都圏の市区議員、権利党員など約1000人が国会本庁前の階段に集まり、「汚染水海洋投棄阻止ろうそく集会」を開いた。24日にはソウル龍山(ヨンサン)大統領室前で、「日本の汚染水放出はロンドン条約(廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約)違反」であることを訴える記者会見を開き、25日には尹錫悦政権の汚染水放出への対応を糾弾し、ソウル光化門(クァンファムン)から龍山の大統領室まで街頭行進する方針だ。週末の26日には光化門一帯で市民団体などと連帯して汚染水放出反対総決起大会を開く予定だ。野党「正義党」も23日午前、ソウル鍾路区(チョンノグ)の駐韓日本大使館前で汚染水放出糾弾記者会見を行い、リレー1人デモを行った。

 与党「国民の力」は、野党が国民の不安を助長していると批判した。同党のユン・ジェオク院内代表はこの日国会で開かれた政府与党緊急会議で、「民主党が(汚染水)放出を口実に扇動と政治攻勢を繰り広げるのは昨日今日に始まったことではないが、再び反日と恐怖マーケティングで国民を不安にさせ政争を助長している」と述べた。同党の「我が海を守る検証TF」委員長のソン・イルジョン議員も、「第2の牛海綿状脳症(BSE)問題を期待してろうそくを掲げると主張しているが、嘘は真実に勝てない」とし、「嘘と怪談のろうそくは真実と科学の松明によって溶けてしまうだろう」と述べた。

 イ・ジェミョン代表の「第2太平洋戦争」発言については、民主党内でも「宣伝の側面でも少し行き過ぎたところがある。国民の命と直結している問題であるだけに、もう少し緻密に追求して批判してほしい」(ある重鎮議員)という批判が出た。

カン・ジェグ、ソ・ヨンジ記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

グリーンランドで氷の縮小が急速に速まり、長きにわたり安定的な状態を維持していた氷河まで溶け始めたことが確認され、グリーンランドの氷の融解が取り返しのつかない段階に入った・・

2023-04-25 | 科学最前線

取り返しのつかない段階に突入?…

安定していたグリーンランドの氷河も急速に融解

登録:2023-04-24 05:23 修正:2023-04-24 09:35
 
 
 
最近、グリーンランドの氷が融解するペースが加速していることを示す研究結果が相次いで発表され、懸念を呼んでいる。写真は2019年8月15日夕方、1隻のボートがグリーンランド東部の町クルスク付近の氷河の近くを通り過ぎていく様子/聯合ニュース

 グリーンランドで氷の縮小が急速に速まり、長きにわたり安定的な状態を維持していた氷河まで溶け始めたことが確認され、グリーンランドの氷の融解が取り返しのつかない段階に入ったという懸念を呼んでいる。科学者らは、グリーンランドから氷がすべて消えるには数世紀かかるが、実際にそのようなことが起きれば、地球の海水面が7メートル以上上昇するとみている。

 全世界の科学者60人あまりが参加した「氷床質量バランス相互比較研究チーム」(IMBIE)は20日、科学誌「地球システム科学データ(Earth System Science Data)」に、2017~2020年の間に地球上で縮小した氷の量のうち3分の2がグリーンランドの氷床から生じたとする分析結果を発表した。

 研究チームが提示した2017~2020年のグリーンランドの年平均氷損失量は2570億トンで、20年前(1997~2001年)の年平均損失量480億トンより5倍多く、直前5年間(2012~2016年)の年平均損失量2130億トンに比べ20%増加している。

 
 
グリーンランドと南極の氷質量変化の推移。一番下の青色の部分がグリーンランドの氷の質量変化を示す。2010年代初期から急激に減り始め、2019年以降はそのペースがさらに速くなったことが分かる=地球システム科学データ//ハンギョレ新聞社

 また、米国オハイオ州立大学の研究者らが中心となった研究チームは19日、科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」に、グリーンランド北部にあるステンストルプ氷河で、氷が海に排出される速度が2018~2021年で4倍増加し、氷河の厚さが約20%薄くなったことを発見したと報告した。研究チームは、ステンストルプ氷河の急速な後退は、大西洋の海水温度の上昇に反応し始めたことによるものだと推定した。この研究は、長期的に安定した氷河も突然急速に溶け始めることが起こりうることを示したものとして注目される。

 研究を主導したトーマス・チャドリー博士は報道資料で、「グリーンランドには1990年代以降、海水面の上昇に影響を及ぼした氷河が多くあるが、ステンストルプはその中の一つではない」とし、「氷河の後退速度がわずか数年で4倍に増加した事実は、巨大な氷塊が気候変動にどれほど早く反応しうるのかという新しい質問を提起する」と述べた。

 
 
グリーンランドのステンストルプ氷河の位置と変化の推移。年度別変化を示した左図から、氷河は2017年以降、急速に後退したことが分かる=ネイチャー・コミュニケーションズ//ハンギョレ新聞社

 延世大学の非可逆的気候変動研究センター長のアン・スニル教授(大気科学科)は「最近、地球温度が産業革命以前に比べわずか1~2度だけ増加しても、ティッピング(小さな変化が臨界点に達すると、突然大きな変化に変わること)が起きる可能性があるとする論文が相次いで発表されている」とし、「グリーンランドの陸氷や西南極の氷河なども、そのような可能性が高いとみられる」と述べた。

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

JAXA関係者は取材陣に「今日の打ち上げは難しそうだ。まだ打ち上げていないため、失敗ではなく発射中止だ」と述べた。

2023-02-18 | 科学最前線
 

日本、新たな主力ロケット「H3」の打ち上げに失敗…

白い煙だけが立ち上った

登録:2023-02-18 06:25 修正:2023-02-18 07:35
 
約30年ぶりに新しいロケットを開発 
JAXA「補助エンジンに異常… 
失敗ではなく打ち上げ中止」
 
 
日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日午前10時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターで「H3」の打ち上げを試みたが、ロケット発射台から白い煙が立ち上るだけで機体が離陸しなかった。補助ロケットが点火されなかったものと把握されている/AP・聯合ニュース

 約30年ぶりに開発された日本の新しい大型ロケット「H3」の打ち上げが実現しなかった。補助ロケットの着火に至らなかったものと把握されている。

 日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日午前10時37分、鹿児島県の種子島宇宙センターで「H3」の打ち上げを試みたが、ロケットの発射台から白い煙が立ち上るだけで、機体は離陸しなかった。宇宙センターは「メインエンジンは点火されたが、(ロケットの両側に付いている)補助ロケットが点火されていないようだ。状況把握に時間がかかる」とアナウンスした。

 補助ロケットは最も推進力が必要な発射初期段階に使われる装置で、発射0.4秒前に点火し、1分56秒後に高度43キロメートル地点でロケット本体から分離される予定だった。JAXA関係者は取材陣に「今日の打ち上げは難しそうだ。まだ打ち上げていないため、失敗ではなく発射中止だ」と述べた。JAXAは原因が見つかり次第、再び発射を試みる方針だ。

 「H3」は現在の主力ロケット「H2A」の後継機で、JAXAと三菱重工業が2014年から開発に着手した。NHKは「日本の大型ロケットとしては『H2』以来となるおよそ30年ぶりの新規開発で、総開発費2000億円余りの国家プロジェクトとして進められている」と報道した。

 「H3」は長さ63メートル、直径5.2メートルで、燃焼を終えると順に分離される2段式ロケットだ。日本政府の主力大型ロケットで、人工衛星の打ち上げと宇宙開発に活用される。年間5基前後の打ち上げを計画している。「H3」は以前にもエンジンの問題が発生し、当初2020年に打ち上げを予定していたが、2回延期した末、今回再び試みられた。日本経済新聞は「打ち上げが滞れば、国の宇宙戦略の見直しが求められる」と報じた。

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

DARTの小惑星衝突実験は続編が予告されている。

2022-09-29 | 科学最前線

NASAが放ったDART、小惑星に命中…

人類初の地球防衛実験成功

登録:2022-09-27 20:45 修正:2022-09-28 08:47
 
昨年11月に出発したDART宇宙船 
地球から1080万キロメートル離れた空間で小惑星に衝突 
軌道変更を通じたリスク回避を打診
 
 
DART宇宙船が小惑星ディモルフォスに衝突する直前に搭載されたカメラが撮った最後のシーン=NASAテレビ提供//ハンギョレ新聞社

 宇宙船を衝突させ小惑星の軌道を変えることを目指した人類初の地球防衛実験が成功した。

 米航空宇宙局(NASA)は27日午前8時14分、DART(二重小惑星軌道変更実験)の宇宙船を地球から1080万キロメートル離れた宇宙空間で直径160メートル(サッカー場の1.5倍)の小惑星ディモルフォスに衝突させた。今回の実験はNASAテレビのYouTubeチャンネルを通じて生中継された。

 DARTチームのシステムエンジニアであるエレナ・アダムス氏は、宇宙船が小惑星の中心から約17メートル離れた地点に衝突したと明らかにした。NASAは今後、地上及び宇宙望遠鏡観測を通じて、軌道が実際に変更されたかを確認する予定だ。NASA関係者はロイターに「宇宙船が設計どおり働いたものとみる」と話した。

 小惑星衝突実験は、未来に起きるかもしれない小惑星の衝突を事前に防止するための地球防衛プログラムの一環として企画された。

 
 
ディモルフォスに近づくDART宇宙船。標的に向かい正確に飛んでいることがわかる=NASAテレビ//ハンギョレ新聞社

音速の18倍の速度で突進

 昨年11月に地球を出発したDART宇宙船(550キログラム)はこの日、衝突の4時間前にディモルフォスと9万キロメートル離れた地点で最後の飛行経路調整を実施した後、自動航法システムを利用して目標地点に向かって飛んだ。続いて衝突の2分30秒前にはイオンエンジンを消し、慣性で小惑星ディモルフォスに向かい突進した。衝突した瞬間の速度は秒速6.1キロメートルで音速の18倍だった。

 DART宇宙船に搭載されたカメラは衝突の3秒前まで小惑星を撮影して地球に送った。

 実際、今回の衝突実験は容易には成功を確信できなかった。DART宇宙船のカメラでは衝突の1時間前までディモルフォスが捉えられないからだ。二つの小惑星の大きさの差が大きく、またああまりにも近い距離にあるため、ディモルフォスがディディモスに隠れて見えるせいだ。

 衝突後の状況は7日前に分離されたキューブサット「LICIAcube」が撮影任務を受け持った。イタリア宇宙局が製作した重量14キロのLICIAcubeは、ディモルフォスから55キロメートル離れた地点で衝突の3分後からカメラを作動させた。LICIAcubeが撮った最初の写真は衝突後24時間以内に確認できるとNASAは明らかにした。

 
 
小惑星ディモルフォスの現在の軌道(白線)と衝突実験後の予測軌道(青線)=米航空宇宙局提供//ハンギョレ新聞社

公転サイクルの10分短縮を期待

 初の地球防衛実験の対象となった小惑星ディモルフォスは、直径780メートルの小惑星ディディモスから1.2キロメートル離れて11時間55分の周期で公転する二重小惑星系の小さな惑星だ。NASAは今回の衝突実験をエジプトのギザのピラミッドにバスを突進させることに例えている。

 NASAは衝突の衝撃でディモルフォスの公転軌道がやや内側に変わり、公転周期が最大で10分短縮できると予想する。

 NASAの予測によると、DARTが小惑星に衝突すると100億ジュールの運動エネルギーが発生する。その結果、衝突噴火口が作られ、宇宙船の質量の10~100倍に相当する物質が噴出する。予測通りならば約100トンの岩石物質がこなごなに散らばり、ディモルフォスに幅10メートルの衝突口が生じる。

 この物質を押し出すのに必要な力は、ちょうど反対方向に小惑星を押し出す力として作用する。ロケットの推進原理に似ている。

 
 
小惑星衝突実験が成功したことを確認したNASAの職員が歓呼している=NASAテレビ//ハンギョレ新聞社

2年後に別の宇宙船を送り結果を確認する

 問題は、衝撃の強さを左右するディモルフォスの表面がどれほど硬いのかがわからないことだ。

 DART観測チームを率いるノーザン・アリゾナ大学のクリスティーナ・トーマス教授(惑星科学)は「サイエンス」に「私たちは小惑星が硬い岩だということを前提に、宇宙で巨大なビリヤードゲームをしている」とし「これは基本的に簡単な物理学の方程式で解決できるが、実際には当てはまらない場合が非常に多く起こっている」と話した。実際、米国と日本の探査船が訪れた小惑星リュウグとベヌは、当初の予想より表面が硬くなかった。

 ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所のアンディ・チョン首席研究員は「写真だけ見ても、それが岩石かどうかは分からない」と話した。岩石よりも強度が弱い場合、衝突の結果を予測するのははるかに困難になる。小惑星の表面が柔らかいほど、衝撃の余波が長くなり衝突口が大きくなる。

 NASAは今後、4つの地上天文台とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡を通じてDARTの軌道の変化を観測する計画だ。ディモルフォスがディディモスの前を通過したときの光が、以前と比べてどのように変化したかを比較し分析する方法を用いる。今回の実験はNASA惑星防衛調整事務所の主管のもと、ジョンズ・ホプキンス大学応用物理研究所が受けもって進行した。

 DARTの小惑星衝突実験は続編が予告されている。

 欧州宇宙局は、今回の実験がどれほど成功したかを調べるために、2024年10月にHERAという名の探査船をここに送る。HERAは2026年末にここに到着し、搭載した高解像度カメラと2台のキューブサットで、2つの天体にどんな変化があったのか、2つの惑星の物質は具体的にどんな成分なのかを調べる予定だ。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

昼夜と季節の変化に関係なく、年中酸素を作り出す技術を確保した。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究陣が中心になって開発した酸素発生器「MOXIE」を火星に持って行き、1年間実験した結果だ。

2022-09-04 | 科学最前線
 

火星の空気で呼吸する日が来た…火星で酸素生産に成功

登録:2022-09-03 06:59 修正:2022-09-03 07:43
 
米MITが開発した酸素発生器、火星の大気を活用し酸素生産 
宇宙飛行士が100分間呼吸できる量 
NASA、火星での実験に成功…ポルトガルでも類似した研究
 
 
 マサチューセッツ工科大学の研究陣が開発した酸素発生装置「MOXIE」=MIT提供//ハンギョレ新聞社

 2030年代に火星への有人着陸を目指している米航空宇宙局(NASA)が、大気密度が地球の100分の1に過ぎない火星で、昼夜と季節の変化に関係なく、年中酸素を作り出す技術を確保した。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究陣が中心になって開発した酸素発生器「MOXIE」を火星に持って行き、1年間実験した結果だ。

 研究陣はMOXIEが2021年4月から年末にかけて、昼と夜、多様な季節にかけて試みた7回の実験で、1時間あたり平均5.4グラムの酸素を作り出すことに成功したと、国際学術誌「サイエンス・アドバンシス」を通じて明らかにした。

 今回の実験でMOXIEが作り出した酸素は計49.9gで、宇宙飛行士が約100分間呼吸できる量だ。酸素の純度も非常に高い。MOXIEはロボット探査車「パーサビアランス」に乗せられ、昨年2月、火星に到着した。

 研究陣の一員であるジェフリー・ホフマン教授は「今回の研究は、他の惑星表面にある資源を人間に有用な何かに変えられた最初の実証事例」だと述べた。

 
 
         パーサビアランス内にMOXIEが搭載された位置//ハンギョレ新聞社

木の光合成方式と類似

 自動車バッテリーのサイズのMOXIEが酸素を生産する方法は、二酸化炭素で酸素を作り出すという点で、木の光合成方式と似ている。

 この過程は火星の大気にある二酸化炭素を取り込むことから始まる。二酸化炭素は火星の大気の96%を占めるほど火星ではありふれた物質だ。二酸化炭素を吸収したMOXIEは、まずろ過装置を通じて二酸化炭素以外の不純物をろ過する。さらに加圧と800度の加熱過程を経て、固体酸化物電解槽(SOXE)から二酸化炭素を酸素イオンと一酸化炭素に分離する。すると酸素イオンは互いに結合して酸素分子になり、一酸化炭素は外に排出される。

 研究陣は「火星の大気は地球より変化が激しく、空気密度の変化幅は2倍、温度変動幅は100度に達する」とし、「今回の実験で、MOXIEはどの日どの時間帯でも酸素を作り出すことができることを示した」と話した。

 ニッケル合金が含まれた強力な耐熱性素材が太陽から来る赤外線熱を反射させ、金メッキなどが激しい温度変化の中でも一定の性能を維持できるようにした。研究陣は「私たちがまだ実証していない唯一のケースは明け方に、そしてホコリ暴風が吹き荒れる中での性能のみ」だと述べた。

 MOXIEがこれまで行った実験は火星の春と夏に当たる。研究陣は今後も試験を続けながら、秋と冬を含め四季全体で酸素発生が可能であることの立証に注力する予定だ。

 また、今後の実験では酸素発生装置の摩耗問題も綿密に調べる計画だ。火星探査で実際の酸素発生器を利用するためには、酸素発生装置が数百日間作動し続けなければならないためだ。

 
 
        火星1年間の大気密度の変化幅=サイエンス・アドバンシス//ハンギョレ新聞社

火星探査コストを大幅に削減

 火星で酸素を作って使うというアイデアは、実は宇宙飛行士の呼吸用よりは火星から地球に戻る時に使う上昇船のロケット推進剤を確保する必要性から生まれた。

 酸素は上昇船の質量の78%を占める。したがって、酸素を火星から調達できるなら、あえて酸素を地球から持っていく必要がなく、火星探査費用を大幅に減らすことができる。

 研究陣は酸素発生装置を時間あたり2~3kg生産できる程度に拡張すれば、次の火星旅行まで上昇船の発射に十分な量の酸素を生産できると説明した。地球と火星の公転周期を土台にした火星旅行の適正周期は26カ月だ。

 一方、ポルトガルのリスボン大学の研究陣は、MOXIEのように加熱と加圧装置がなくてもプラズマ状態の二酸化炭素を利用して酸素を生産できる装置を考案したと、国際学術誌応用物理学ジャーナル(Journal of Applied Physics)に発表した。

 同研究陣によると、火星の環境を再現した実験室で、重さ6キロのプラズマ反応器が時間あたり14gの酸素を生産した。これは重さ17.7キログラムで、時間あたり10グラムの酸素を生産するMOXIEよりはるかに効率性が高いと、研究陣は明らかにした。

クァク・ノピル先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

低レベル放射性廃棄物処分施設の1段階施設だ。200リットルの放射性廃棄物ドラム缶10万本を収納できる規模で建てられ、2015年から運用されている。バスから降りてトンネルの奥に歩いて入ると・・

2022-09-01 | 科学最前線

海抜マイナス95メートル、

慶州の放射性廃棄物処分場の洞窟施設に行ってみた

登録:2022-08-30 20:53 修正:2022-08-31 09:45
 
海抜マイナス80~130メートルの地下の6個のサイロに 
低レベル放射性廃棄物のドラム缶2万5578本を貯蔵 
運用開始から7年で全容量の1/4が埋まり 
ドラム缶12万5千本規模の表層処分場も着工 
原発使用済み核燃料の飽和時点が迫っても 
高レベル処分場選定の議論は進展なし
 
 
慶州の中・低レベル放射性廃棄物の洞窟処分施設のトンネル内部。天井部分に1番サイロと2番サイロを示す表示が付いている=慶州/キム・ジョンス先任記者//ハンギョレ新聞社

 8月26日、韓国原子力環境公団が準備したバスに乗り、低い山の中腹にあるトンネル入り口から入りしばらく走った。間もなくトンネルの天井に「海抜マイナス95M・入口から1450M」と書かれた表示板が見えた。韓国国内で発生する中・低レベル放射性廃棄物の終着点である地下洞窟処分施設に到着した。バスが停まったところは、表示されているとおり海抜マイナス95メートル、海抜30メートルのトンネル入口から地下に125メートル下ったところだ。

 洞窟処分施設は、文武大王水中陵からほど近い慶尚北道慶州市文武大王面奉吉里一帯の206万平方メートルにある中・低レベル放射性廃棄物処分施設の1段階施設だ。200リットルの放射性廃棄物ドラム缶10万本を収納できる規模で建てられ、2015年から運用されている。バスから降りてトンネルの奥に歩いて入ると、左右に短いトンネルが掘られている。放射性廃棄物を貯蔵するサイロ(SILO)は、中央トンネルから分岐した3対のトンネルの両端に1つずつ、計6個が設置されている。

 高さ50メートル、内径23.6メートルの巨大な円筒形のコンクリートサイロ6個には、26日現在で放射性廃棄物ドラム缶2万5578本が貯蔵されている。運用開始から7年で全体貯蔵容量の約4分の1ほどをすでに使ったわけだ。放射性廃棄物は、放射能の濃度と熱発生率によって、使用済み核燃料の高レベル、原発解体の過程で多く発生する中レベル、放射能濃度が低い低レベルと極低レベルに区分される。洞窟処分施設には、そのうち原子力施設の放射線管理区域で作業者が使用した作業服や手袋などの低レベル放射性廃棄物が保管されている。現場を案内してくれた原子力環境公団のチョ・ビョンジョ疎通協力団長は「洞窟処分施設は中レベル放射性廃棄物もドラム缶3万本を貯蔵する計画だが、排出者が物量の多い低レベルから送ってくるため、まだ中レベルの貯蔵までは行われていない。今後、原発の解体がなされれば、中レベルの廃棄物が多く発生し搬入されると思う」と話した。

 
 
慶州の中・低レベル放射性廃棄物の洞窟処分施設の模型図=韓国原子力環境公団提供//ハンギョレ新聞社

 ドラム缶に密封された状態で処分場に到着した放射性廃棄物はひとまず、引き受け検査施設で検査を受ける。ここで表面放射線量率の測定、X線検査、核種分析などの検査を通過した放射性廃棄物ドラム缶は、厚さ10センチのコンクリートで作られた矩形処分容器に移される。この処分容器は、ドラム缶16本が入るよう製作されている。処分容器を載せたトラックが地下サイロの隣のトンネルの端に来て停まると、サイロの上に設置されている巨大クレーンが外に出て処分容器をつり上げ、サイロ内に一つずつ積み上げる。サイロが処分容器でいっぱいになると、砕石とコンクリートで隙間を埋めて閉鎖することになる。この閉鎖作業はまだ遠い将来の話だ。洞窟処分施設は、現在稼働中のすべての原発の廃炉過程で発生する中レベルの廃棄物まで収容してから閉鎖されるためだ。

 洞窟処分施設は、建設工事当時から多量の地下水漏れで論議が起きた。海水面より低い場所で、塩分の多い地下水がサイロ内に浸透し、放射性廃棄物が入ったドラム缶を腐食させ、その結果出てきた放射性物質が地下水に混入し、周辺環境を汚染する恐れがある。現場でブリーフィングをした原子力環境公団の関係者は「今は渇水期だから大幅に水が減ったが、平均的には1日1500トン程度発生する。安全のためにポンプを三重に設置し、事故が発生した場合にも問題なく外に水を汲み上げられるようになっている」と話した。

 
 
慶州の中・低レベル放射性廃棄物の洞窟処分施設に設置されている2番サイロ上部の様子。黄色いクレーンの下側に付いている正方形の物体が、放射性廃棄物のドラム缶が入ったコンクリート処分容器だ=慶州/キム・ジョンス先任記者//ハンギョレ新聞社
 
 
慶州の中・低レベル放射性廃棄物処分施設の訪問客センターであるコラジウム展示館に設置されている放射性廃棄物ドラム缶とコンクリート処分容器の実物大モデル=慶州キム・ジョンス先任記者//ハンギョレ新聞社

 しかし、慶州地域の環境団体と住民たちは最近、地下水排水管の不良施工疑惑も提起している。原子力環境公団が2021年5月に地下水配管の追加設置を終え、8月から本格運用に入ったが、12月から配管からの漏水が発生するなどの不良施工が明らかになったという主張だ。

 この日着工式を行った表層処分施設は、すでに運用中の洞窟処分施設に続く2段階の施設だ。低レベル放射性廃棄物ドラム缶12万5千本を貯蔵できる容量で設計された。地上に縦横縦各20メートル、高さ10メートル大の処分庫20個を設置し、処分容器を積み上げ、処分庫が満杯になれば閉鎖して持続的に管理するというのが原子力環境公団の計画だ。

 問題は、現在原発で保管中の使用済み核燃料の処理だ。中レベルと低レベル以下の放射性廃棄物処分場とは異なり、使用済み核燃料である高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、敷地選定議論の第一歩すら踏み出せていない。昨年末、文在寅(ムン・ジェイン)政権は高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設を敷地選定着手から20年以内に、永久処分施設を37年以内に確保する内容の「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」を確定した。この計画は、朴槿恵(パク・クネ)政権時の第1次基本計画が一方的に作られたという市民社会の主張により、公論調査を経て設けられた。しかし、市民社会からも歓迎されなかった。使用済み核燃料の原発敷地内での一時貯蔵を公式化し、原発地域を永久処分場にしようとしているとの疑いを消せなかったためだ。

 高レベル放射性廃棄物の管理は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が7月に確定したエネルギー政策方向にも含まれている。高レベル放射性廃棄物処分のための特別法を設け、コントロールタワーとして首相傘下に専任組織を新設し、推進することにした。26日、洞窟処分施設を訪れたイ・チャンヤン産業部長官は「高レベル放射性廃棄物処理特別法に、処分場の位置選定手続き、住民協議手続き、周辺地域支援に関する法的根拠をすべて含め、その法に基づいて透明で客観的な手続きを経ていく」とし、 「今年が高レベル廃棄物処分の元年になるようにする」と強調した。

 韓国水力原子力の使用済み核燃料貯蔵現況資料によれば、第2四半期末現在、全国の原発で保管中の使用済み核燃料は、貯蔵容量68万5460束の約75%にあたる51万6071束だ。ここから昨年拡充され多少余裕を持つようになった月城(ウォルソン)原発の乾式貯蔵施設(マクスター)貯蔵分を除けば、18万7460束の原発貯蔵容量の97%がすでにいっぱいの状態だ。

 2021年、韓国放射性廃棄物学会は、文在寅政権末期に樹立した第9次電力需給基本計画による原発稼働を反映した分析を通じて、古里(コリ)とハンビッ原発では2031年から、ハンウル原発では2032年から使用済み核燃料の貯蔵容量が飽和状態に入ると見通した。尹錫悦政権が明らかにしたように、設計寿命が切れたすべての原発で運転を続けるならば、飽和時点はさらに前倒しになる。

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クモヒトデは棘皮動物の中で最も種類が豊富で、約2100種が知られており、全世界の海洋に広く分布している。大半が海底に生息し、サンゴや海綿に付着するものもあり、海底生物の主な生態群の一つだ。

2022-07-08 | 科学最前線

またもや新種発見! 今度は深海から

人民網日本語版 2022年07月07日11:21
 

中国科学院深海科学・工学研究所の情報によると、同研究所の張海浜研究員のチーム及びその協力者が南中国海と北西太平洋の海域で、複数のクモヒトデの新種と新記録種を発見した。人民網が伝えた。

研究者が発見・命名した一部のクモヒトデの新種。画像提供は中国科学院深海科学・工学研究所

クモヒトデは棘皮動物の中で最も種類が豊富で、約2100種が知られており、全世界の海洋に広く分布している。大半が海底に生息し、サンゴや海綿に付着するものもあり、海底生物の主な生態群の一つだ。

深海は浅海と比べ、サンプル採取や観測技術の制限があるため、深海種への認識が現在も非常に限定的で、深海生物の多様性水準の評価に深刻な影響を及ぼしている。

研究チームは2016−21年に有人深海潜水船「深海勇士」号を通して、南中国海や北西太平洋などの海域で集めたクモヒトデのサンプルの形態学・分子系統学的研究を行った。4目、7科、15属の計36種のクモヒトデを識別し、うち7種は新種で、研究者はその記述・命名を行った(2新種は深海勇士号の名で命名)。さらに15種は南中国海または北西太平洋の海域で初めて発見されたものだ(新記録種)。これらの結果は南中国海と北西太平洋のクモヒトデの生物多様性への理解を深めるための重要なデータを提供した。(編集YF)

「人民網日本語版」2022年7月7日

 

最新ニュース

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

この菌株は今日まで残っている5つのペスト菌系統のうちの4つの系統の祖先でもある。

2022-07-04 | 科学最前線

欧州が焦土と化した「ペスト拡散」のミステリー、

700年たって解明

登録:2022-06-18 10:44 修正:2022-06-18 12:26
 
ヨーロッパでの流行の8年前、キルギス北部の山岳地帯 
「疫病死亡」墓地からヨーロッパで流行したペスト菌株
 
 
14世紀のペストの惨状を描いた16世紀のベルギーの画家、ピーテル・ブリューゲルの絵「死の勝利」=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社

 古遺伝学が史上最悪の伝染病の一つであるペストの発源地に関するミステリーを、発生から675年がたって解き明かした。

 死者の歯から抽出した古代ゲノム分析を通じて、14世紀にヨーロッパを焦土化させたペストが始まった地域は古代貿易路であるシルクロードの中間起着地であることを突き止めた。この地域は、現在の中央アジアのキルギス北部山岳地帯だ。

 ドイツのマックス・プランク人類史科学研究所とチュービンゲン大学、英国のスターリング大学の共同研究陣は「現在のキルギス地域で14世紀に病気で死亡した人から、ペスト菌(Yersinia pestis)を確認した」と、国際学術誌「ネイチャー」に発表した。

 マックス・プランク研究所のヨハネス・クラウゼ博士(古生物学)は「アルファ、デルタ、オミクロンが全て武漢のコロナ菌株から始まったように、ペストのすべての菌株が始まった地域を探し出した」と述べた。

 ネズミとノミを通じて感染するペストは、1346~1353年にユーラシア西部一帯を襲い、数千万人の命を奪った。当時、ヨーロッパ、中東、北アフリカの人口の60%が感染し、致命率は30~60%に達したという。

 ネズミがペスト菌の天然の貯蔵所、ネズミに生息するノミが直接的な伝播媒体だ。ペストは、病原体に感染した人の肌に黒い斑点ができることから「黒死病」とも呼ばれる。

 しかし、最初の発源地と伝播経路はこれまで究明されていなかった。当時、モンゴル帝国の軍隊に包囲されていたヨーロッパ東方のクリミア半島のカッファやコーカサス、または中央アジアの他の地域が発源地であるという仮説があるだけだった。中国にあるペスト菌の遺伝的多様性が最も大きいという点が、東方発源説を裏付けた。

_________
古遺伝学が解き明かした675年間のミステリー

 今回の研究は、スターリング大学のフィリップ・スラビン博士(中世史および環境史)が数年前、キルギスのテンシャン(天山)山脈のイシク・クル湖周辺にある14世紀のキリスト教の共同墓地で、ペストの起源についての手がかりとなりうる記録を発見したことから始まった。

 イシク・クル湖近くの二つの共同墓地には、1338年と1339年に作られた墓碑が並はずれて多かった。1248~1345年の間に建てられた467基の墓碑のうち、1338~1339年に建てられたものが118基もあった。そして、このうち10基が死亡原因として疫病に言及していた。

 1~2年で異常に多くの死者が出たということは、当時何か驚くべき事件が起きていたことを意味するとスラビン博士は語った。

 
 
ある伝染病の犠牲者の墓碑。シリア語で「1649年(西暦1338年)寅年。これは信者のサンマークの墓である。疫病で死亡した」と書かれている=マックス・プランク研究所提供//ハンギョレ新聞社

 この墓地は1880~1890年代、ロシアの学者たちが初めて発見した。スラビン博士は疑問を解く手がかりを探るため、マックス・プランク研究所のクラウゼ博士とともに、ロシアのサンクトペテルブルクに運ばれた遺体30体を追跡調査した末、遺体が埋まっていた墓の墓碑を見つけることができた。続いてドイツのチュービンゲン大学の古遺伝学の研究陣が、墓碑が特定された遺体7体から遺伝物質を抽出して分析した。その結果、ある墓地から発掘した3人の遺体の歯からペスト菌が発見された。

 研究陣はこのうち二つの遺体で、ペスト菌の全ゲノムの塩基配列を解読することに成功した。研究陣はこれを現代のペスト菌203個、14~19世紀のペスト菌47個の遺伝子と比較した。その結果、このペスト菌が8年後にヨーロッパを襲い始めたペスト菌株の直系祖先であることが分かった。クラウゼ博士のチームが2011年にロンドンのペストによる死者から採取したペスト菌も同じ系統だった。

 また、この菌株は今日まで残っている5つのペスト菌系統のうちの4つの系統の祖先でもある。クラウゼ博士は「ペストが拡散する直前に、ペスト菌の遺伝的多様性が爆発的に増えたという信号」だとし「これは疫病のビッグバンと言える」と述べた。

 
 
テンシャン山脈の麓にあるキルギスのチュイ渓谷のKara-Djigach遺跡の発掘場面。発掘作業は1885年から1892年まで行われた=マックス・プランク研究所提供//ハンギョレ新聞社

_________
マーモットが起爆剤…ヨーロッパのネズミが焚き付け

 ペストの発源地がこの地域であることを裏付ける他の情況証拠もある。テンシャン山脈を取り囲んでいるキルギス、カザフスタン、中国新疆地区のマーモットや他のげっ歯類から採取したペスト菌が、ここの菌株と非常に似ているという点だ

 クラウゼ博士は「発源地を『この村、あの谷』というふうにはっきり指摘することはできないが、『この地域』と特定することはできる」と話した。

 研究陣は、ペスト菌に感染したマーモットと濃厚接触した人間がキルギスの流行の起爆剤の役割を果たし、ペストの免疫力のないヨーロッパのネズミが焚き付け役となったと推定した。

 スラビン博士は、テンシャン地域は古代シルクロードの貿易路であることから、この地域をペスト発源地とみるのが合理的だと述べた。キルギスの墓から発見されたインド洋の真珠、地中海のサンゴ、外国のコインなどは、交易商品がここを通過したことを物語っている。したがって、長距離であれ域内であれ交易が病原菌を西側に広めるのに重要な役割を果たしたとみることができるということだ。

 
 
14世紀のペストの発源地とされたキルギスのテンシャン山脈一帯=マックス・プランク研究所提供//ハンギョレ新聞社

 しかし、1300年代初めに同地域でペストが発生した理由は明らかにされていない。ただ研究陣は、ここの菌株が全世界の野生のげっ歯類の個体群が形成しているペスト菌の溜まり場の一つであることだけは間違いないと強調した。ノルウェー・オスロ大学のニルス・ステンセス教授(進化生物学)は、今回の発見は1300年代から始まった中央アジアの温暖な気候がヨーロッパの伝染病を触発したという仮説とも合致すると語った。

 研究陣の次の課題は、ここのペストがヨーロッパまでの3500キロメートルをどうやって移動していったのか、なぜ東アジアには広がらなかったのかを究明することだ。

 モンゴル帝国の軍事的拡張によるペスト伝播仮説を支持する研究者たちには、まだ疑いが残っている状況だ。米国の中世史家のモニカ・グリーン氏は「ネイチャー」に、「ペスト菌の祖先のゲノムを確保したのは素晴らしい突破口になるが、ペスト菌が1338~1339年にキルギスでビッグバンを引き起こしたという結論については確信できない」と述べた。グリーン氏は遺伝的証拠に基づき、13世紀のモンゴル帝国の拡張がペスト菌株の拡散と多様化を促進したという考えを持っている。

 ペストは現在もオーストラリアを除くすべての大陸に生息するげっ歯類を通じて発生している。しかし、衛生水準が高くなり、感染が発生するのはまれだ。感染しても抗生物質で簡単に治療できる。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

このように遺伝子の突然変異を抑制する優れた能力は、がんを抑制するのに活用されるかもしれない。研究者は「このキノコが複製で進化する様子は、人の体内でがんが広がっていくのに似ている」と明らかにした。

2022-06-05 | 科学最前線

サッカー場の100倍、年齢2500歳…

世界最大「怪物キノコ」の驚くべき実体

登録:2022-06-03 10:10 修正:2022-06-03 11:58
 
米ミシガン州の森のワタゲナラタケの菌糸体、重さ推定400トン 
複製を重ねても突然変異が極めて稀…がん抑制に応用できる可能性
 
 
群がって生えているワタゲナラタケ。地上のキノコはこぢんまりとしているが、地下の菌糸体は巨大な個体だ=ダン・マルタ、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 世界的科学ジャーナル「ネイチャー」は1992年4月2日、「世界で最も大きく、最も古い生物が発見された」というタイトルの論文を載せた。メディアを通じて大きな話題となったその主人公は、ワタゲナラタケだ。ところが30年近く経った後、発見者が新しい分析技法で再び測定した結果、そのキノコは当時測定したものよりはるかに大きく、年齢も高いことが分かった。

 ワタゲナラタケは韓国をはじめアジア、欧州、北アメリカに広く分布する食用キノコだ。高さ5~8センチ、直径4~6センチの黄色い笠が付いた平凡なキノコだが、キノコの笠と柄は全体の一部に過ぎない。地中にはもっと大きな菌糸体が植物の根のように伸びている。米ミシガン州クリスタルヒルにあるワタゲナラタケの菌糸体は、とりわけ大きい。

 
 
ワタゲナラタケが属するアルミラリア属のキノコの菌糸体の様子。死んだ木や弱い木を探して伸びていく=エリック・スタイナー、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 カナダのトロント大学の生物学者ジェームズ・アンダーソン氏などカナダと米国の研究者たちは、科学ジャーナル「王立学会報B」の最近号に掲載された論文で、新たに測定したこのキノコの菌糸体が75ヘクタール(サッカー場の面積の100倍)にわたる森の地下にはびこっており、重さは少なくとも400トン、年齢は2500歳と推定されると明らかにした。研究者たちが1980年代末にこのキノコを初めて測定した記録は、面積37ヘクタール、重さ100トン、年齢1500歳だった。

 このキノコは「怪物キノコ」と呼ばれ有名になった。クリスタルヒルは観光名所になり、毎年8月にキノコ祭りが開かれる。この30年間、このキノコはその場で生き続け、さらに大きくなり年齢を重ねた自身の姿を見せた。

 今回の研究で、ミシガン州のワタゲナラタケは地球上で最も大きな生命体の一つとして記録されることになった。もちろん、このキノコは複製方式で自分の体を大きくしたため、オオクジラなど有性生殖をする動物とそのまま比較することには議論がある。複製による地上最大の生物は、米国ユタ州のヤマナラシの森であり、重さが6000トンに達する。

 
 
ワタゲナラタケの地上部位である笠と柄の部分=ダン・マルタ、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 酵母、カビ、キノコなどからなる菌類は、動物や植物とは異なる別途の生物群を成し、光合成をせず酵素を分泌して有機物を分解するなど、植物よりは動物に近い。

 温帯地域に主に分布するワタゲナラタケの菌糸も、地中で死んだ木を分解し、または力の弱い木の根に寄生して殺す形で勢力を広げる。研究者は「このキノコは古い森なら他のところでも巨大に育ちうる」として「極少数だけが大きく育ち、残りは早く死滅する繁殖戦略を取っているとみられる」と論文で説明した。

 
 
ブナに生えたワタゲナラタケ。菌糸体が数百~数千年にわたり遺伝子を複製して巨大な体に育つが、体細胞の突然変異はきわめて少ないことが明らかになった=ポール・ダービーシャー、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 また、今回の研究では「怪物キノコ」の遺伝子を初めて分析し、巨大な体で長い期間生きながらも体細胞の突然変異がきわめて少ないという事実を明らかにした。研究者はその理由として、このキノコの菌糸体の先端が損傷した遺伝子塩基配列を復旧し、生息地である森を透過し突然変異を誘発する紫外線の強度が弱いためだと説明した。

 このように遺伝子の突然変異を抑制する優れた能力は、がんを抑制するのに活用されるかもしれない。研究者は「このキノコが複製で進化する様子は、人の体内でがんが広がっていくのに似ている」と明らかにした。しかし、がんが極端な遺伝子の不安定性によって、複製の過程でDNAの損傷が積み重なることで進むとしたら、このキノコでは同じ過程が数百、数千年にわたり、遺伝子が非常に安定した状態で起きる。研究者は「このキノコの遺伝子の安定性とそれを可能にする過程が分かれば、がんを抑制するのに有用に使われるだろう」と論文で述べた。

■記事が引用した論文の原文情報:

Anderson JB, Bruhn JN,

Kasimer D, Wang H, Rodrigue N, Smith ML. 2018 Clonal evolution and genome stability in a 2500-year-old fungal individual. Proc. R. Soc. B 285: 20182233. http://dx.doi.org/10.1098/rspb.2018.2233

チョ・ホンソプ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

このダニがどのように水とエネルギーを節約して生存することができたかは、後続の研究課題になった。シェパード教授は「私の研究の関心事は蛾の精子の生理学」だ

2022-02-27 | 科学最前線

アフリカダニ…8年間何も食べず繁殖、27年も生きた

登録:2022-02-25 09:45 修正:2022-02-26 06:35
 
[アニマルピープル] 
8年断食しても繁殖に成功 
乾燥と少ない餌に適応、「極端な『持つ戦略』」
 
 
アフリカの乾燥地帯に生息する甲羅の柔らかいダニ。学名はArgas brumpti=ジョナサン・コーエン提供//ハンギョレ新聞社

 45年にわたる長期の観察研究は偶然始まった。米ニューヨーク州の小都市に位置するビンガムトン大学の生物学者ジュリアン・シェパード教授は、1976年に自分の専攻分野ではないアフリカダニの生きた標本をプレゼントされた。

 このダニが次の世紀まで生き延びるとは、彼は夢にも想像できなかった。そのうえ、雌のダニは8年間何も食べずに生き残り、最後の雄が死んでから4年後に繁殖に成功した。

 シェパード教授は「衛生昆虫学ジャーナル」最近号に掲載された論文で「このアフリカダニがダニの中で最長寿記録を立てた」とし「寄生節足動物がどれほど極端に『待つ戦略』を展開するのかをよく示している」と明らかにした。

 このダニはアフリカ東部と南部のサバンナや砂漠など乾燥地帯に生息する種で、甲羅が柔らかく、雌は2センチまで育つ大型種だ。大小の哺乳類やトカゲにくっついて血を吸うが、動物が眠る浅い洞窟や砂場、体を掻くシロアリの巣などで宿主動物を待つ。

 
 
大型の哺乳類が背中を掻くのにぴったりのナミビアのシロアリの塔。ダニが宿主を待つ場所の一つだ=オルガ・エルンスト、ウィキメディア・コモンズ提供//ハンギョレ新聞社

 シェパード教授は実験室で、ケニアの洞窟で採集した雌6匹、雄4匹、幼虫3匹からなるダニ集団をガラス瓶に入れ、一定の温度(21度)と湿度(81%)を維持して育てた。実験室で恒温・恒湿を維持するのは難しくなかったが、問題は餌だった。

 最初は実験動物のウサギやネズミなどを宿主として提供し、その後はネズミの血液を抜いて与えたりもした。生きた動物をダニの餌として与えるのが難しいうえ、動物実験をしなくなり、シェパード教授は1984年に餌やりを中断した。

 断食を余儀なくされた雌3匹は、1992年まで全く餌を食べずに生き残った。第1世代のダニたちは2003年まで生きた。27年も生きたわけだ。

 
 
最長寿のダニと明らかになったArgas brumptiを紹介したハリー・フックストラルの本「アフリカのダニ」(1956)の図版//ハンギョレ新聞社

 シェパード教授は「生物が環境に適応する姿はいつも魅惑的だ」とし「このダニも長期間水を得るのが事実上不可能な環境と、宿主と出会うまで長期間何も食べずに待たなければならない生活方式によく適応した」と、同大学の報道資料で述べた。

 驚くべきことは、ダニが長い断食に耐えただけでなく、その後餌を食べると、繁殖を始めたという事実だ。8年間の断食が終わった直後、シェパード教授は自分の血を提供したが、生き残った雌のうち1匹が3年にわたって繁殖に成功し、2世をつくった。

 最後の雄が断食中に死んだのは4年以上前の1988年だが、雌はどうやって繁殖できたのだろうか。シェパード教授は、「雌と雄の幼虫がすべて生まれたことを考えると、単性生殖ではなく、雄の精子を長期間保管しておき、餌を食べ始めた後に受精した可能性が高い」と明らかにした。

 
 
アルガス属のダニの産卵の様子=米疾病管理及び統制センター提供//ハンギョレ新聞社

 2世のダニたちは27歳を迎えた現在も生きており、系統分類を研究する南アフリカの共研究者の手に渡った。このダニがどのように水とエネルギーを節約して生存することができたかは、後続の研究課題になった。シェパード教授は「私の研究の関心事は蛾の精子の生理学」だとし「南アフリカの研究者がダニを活用できて嬉しい」と述べた。

 このダニは人間に病気をうつさず、これまで生態があまり知られていなかった。しかし、このダニにかまれると非常に痛く、傷が数カ月から数年間残るという。

引用論文:Journal of Medical Entomology, DOI: 10.1093/jme/tjab205

チョ・ホンソプ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真鍋氏は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇が地球の表面温度の上昇にどのように影響を与えるのかを示しました。

2021-10-06 | 科学最前線

ノーベル物理学賞 真鍋淑郎氏ら3氏

地球温暖化予測などに貢献

 スウェーデン王立科学アカデミーは5日、2021年のノーベル物理学賞を、気候の物理モデルの開発を主導し地球温暖化の予測に貢献した米プリンストン大学の真鍋淑郎(しゅくろう)上席研究員と独マックスプランク気象研究所のクラウス・ハッセルマン教授、複雑系の理論を発展させた伊サピエンツァ大学のジョルジョ・パリージ教授の3氏に授与すると発表しました。

 3氏は、複雑なシステムの無秩序な事象を理論化する革命的な貢献が評価されました。

 真鍋氏は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇が地球の表面温度の上昇にどのように影響を与えるのかを示しました。1960年代、世界に先駆けて、対流によって空気が垂直輸送される現象や水蒸気の潜熱の効果を取り込んだ物理モデルを開発しました。

 ハッセルマン氏は、気象と気候を結びつけるモデルを作成。人間活動による二酸化炭素の排出が大気中の温度を上昇させることを証明することに貢献しました。

 パリージ氏は、無秩序で複雑な現象に隠されたパターンを発見して、さまざまな分野の理論に貢献しました。

 真鍋氏は1931年生まれ。東京大学で学位取得後、米海洋大気局(NOAA)で気候研究に従事。地球の複雑な気候システムを知るための気候モデルの基礎を築きました。

 日本人のノーベル賞受賞は計29人に(米英国籍を含む)。物理学賞は梶田隆章氏(15年)以来で、今回で計12人になりました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

寿命の限界はそこまでということになる。医療技術が進歩し、関連のバイオテクノロジーが発展するにつれて、人間の寿命はどんどん限界である150歳に近づいていくことになるだろう」との見方を示している。

2021-06-26 | 科学最前線

人間の寿命の限界は150歳 

米国・シンガポールの最新共同研究

人民網日本語版 2021年06月24日16:44
 

世界最高齢としてギネス世界記録に認定されている日本人女性・田中力子さんは今年1月2日に118歳の誕生日を迎えた。1950年には47歳だった世界の平均寿命は現在、73歳にまで伸びている。そのため、「人間の寿命の限界は一体何歳なのだろう?」と考える人も少なくないだろう。北京日報が報じた。

米ロズウェルパーク癌研究所とシンガポールのバイオテクノロジー会社の研究チームが米国、英国、ロシアに住む54万4398人の被験者を対象に実施した最新の共同研究によると、人間の寿命は120歳以上まで達することが可能で、その限界は150歳であることが分かった。

研究チームは、被験者の血液サンプル、医療データを分析し、人間の老化のペースを知る新しい新指標・動的生体状態指標を発見した。

研究によると、人間の寿命は2つの要素と関係がある。1つは生物学上の年齢、もう一つは回復力だ。ティモシー・ピルコフ博士によると、「120歳から150歳に達すると、人間の回復力は完全に消失するため、寿命の限界はそこまでということになる。医療技術が進歩し、関連のバイオテクノロジーが発展するにつれて、人間の寿命はどんどん限界である150歳に近づいていくことになるだろう」との見方を示している。(編集KN)

「人民網日本語版」2021年6月24日

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする