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大橋みつるの平和ト-ク・・世直しご一緒に!

世界の変化を見ながら世直し提言
朝鮮・韓国・中国・ロシアとの友好促進
日本語版新聞紹介

(キム・ジョンウン)国務委員長と中国の習近平国家主席の4日の会談は、近年よそよそしかった両国の関係を最高指導者レベルで解消し、関係改善と協力強化の軌道に改めて乗せる重大な転換点となった。

2025-09-05 | 世界の変化はすすむ

金正恩委員長と習近平主席、

「トランプ変数」で6年あまりの冷え込み解消し協力へ

登録:2025-09-05 08:30 修正:2025-09-05 09:01
 
 
北朝鮮の金正恩国務委員長と中国の習近平国家主席が3日の中国戦勝節80周年祝賀式典に先立ち、両手を取り合って言葉を交わしている/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と中国の習近平国家主席の4日の会談は、近年よそよそしかった両国の関係を最高指導者レベルで解消し、関係改善と協力強化の軌道に改めて乗せる重大な転換点となった。

 朝中関係は、習近平主席の2012年の政権掌握後初の平壌(ピョンヤン)訪問となった2019年6月の首脳会談を機に弾みがつくかにみえたが、その後の予想外の突発的な変数のせいで冷え込んでいた。コロナ禍に対応した金委員長の「国境封鎖」(2020年1月末)による両国の往来や交易の長期断絶、2022年2月のロシア-ウクライナ戦争勃発以降の、金委員長による露骨な親ロ偏重外交、金委員長の強硬な核抑止力強化路線と習主席による国連安全保障理事会(安保理)の北朝鮮制裁義務の履行などが絡み合い、朝中関係の改善を阻んできた。

 何よりも、金委員長と習主席の世界秩序に対する認識と情勢観、戦略的志向が一致していなかった。2019年6月以降、金委員長と習主席はいかなる意図であれ互いを遠ざけ、金委員長はその間にロシアのプーチン大統領に接近して自らの活路を模索した。金委員長は2018~2019年に4回も訪中し習主席に頼ったが、2019年6月の習主席の平壌訪問を最後に、6年以上にわたって朝中首脳会談は途絶えた。

 しかし習主席は、北東アジアにおいて中国と米国の直接衝突を防いでくれる「地政学的緩衝国家」(北朝鮮)の最高指導者である金委員長を放置してばかりはいられなかった。金委員長としても、ウクライナ戦争の終戦後に備えるとともに、米国のトランプ大統領と交渉するには、その前に中国という後ろ盾をしっかりと固めておく必要があった。2人は、同床異夢の中でも「抗日」という共通の歴史を思い起こしうる中国戦勝節80周年慶祝行事を、おあつらえ向きの関係改善の舞台とした。

 今回の会談実現の隠れた主役は、北朝鮮の「民生経済不安」と「貿易赤字」解消のための朝中経済協力の拡大の必要性だ。韓国政府の関係者は「コメ価が高騰するなど、北朝鮮の市場物価は過去最大級」だとし、「供給が需要にまったく追いついていない深刻な状況」だと語った。金委員長としては、労働党創建80周年祝賀行事を今年10月10日に控えて民生経済を安定させる必要に迫られているが、現実的にみて中国の大規模な経済支援以外には解決策がない。

 金委員長と習主席は、2019年6月の平壌首脳会談で合意したものの、北朝鮮による「コロナ対応国境閉鎖」などを理由に実行が中断されていた「交流および往来の強化」を復元したと推定される。2019年6月の会談後、中国は北朝鮮に60万~70万トンの食糧、20万~30万トンの肥料を支援したが、北朝鮮による国境閉鎖のせいでそれらは大連港に長い間とめ置かれ、2021年になってようやく北朝鮮に引き渡された。北朝鮮は今回、中国に派遣される北朝鮮労働者のクォーター(上限)拡大▽中国人の北朝鮮団体観光の再開▽国連の北朝鮮制裁の履行の緩和などを中国側に提起しただろう、というのが政府内外の観測だ。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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米国のドナルド・トランプ米国大統領は、(下級審に続き)最高裁まで自身が課した相互関税を違法と判断した場合、欧州連合(EU)や日本、韓国などと締結した貿易協定が廃棄される可能性があると述べた。

2025-09-05 | 世界の変化はすすむ

トランプ大統領「相互関税で違法判決なら、

韓・日・EUとの貿易協定廃棄の可能性も」

登録:2025-09-05 06:44 修正:2025-09-05 08:03
 
「すでに締結されたが、おそらく元に戻さなければならないだろう」
 
 
米国のドナルド・トランプ大統領が2025年9月3日(現地時間)、ワシントンD.C.のホワイトハウスの執務室で開かれたポーランドのカロル・ナブロツキ大統領との会談中に発言している= ワシントン/ロイター・聯合ニュース

 米国のドナルド・トランプ米国大統領は、(下級審に続き)最高裁まで自身が課した相互関税を違法と判断した場合、欧州連合(EU)や日本、韓国などと締結した貿易協定が廃棄される可能性があると述べた。

 トランプ大統領は3日(現地時間)、ホワイトハウスの執務室で記者団に対し、「我々が訴訟で負ければ、米国は深刻な苦痛を味わうことになるだろう」とし、「これらの貿易協定はいずれも締結されたが、おそらく再び元に戻さなければならないだろう」と述べた。

 トランプ大統領は、自身が課した関税は主要貿易国との交渉で米国にテコを提供し、その結果、米国が相手国の製品の関税を引き上げたにもかかわらず、報復されることなく交渉を進めることができたと主張した。また、このような措置が世界最大の経済国である米国に「再び信じられないほど豊かになるチャンス」を提供したと強調した。トランプ政権は最高裁に上告を準備しており、手続きをできるだけ速やかに進められるよう「迅速審理要請書」を同時に提出する方針だ。

 ワシントンD.C.の連邦巡回区控訴裁判所は先月29日(現地時間)、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に課した関税を違法と判断した。5月に一審裁判所である国際貿易裁判所が出した判断を支持したのだ。ただし、行政府が最高裁に上告できるよう、判決の効力を10月14日まで猶予した。

 判決後、スコット・ベッセント米財務長官は、最高裁が控訴審と同じく相互関税を違法と判断したとしても「関税を維持するための他の手段が多数存在する」としながらも、「(相互関税のように)強力ではなく、効率的でもない」と述べた。

ワシントン/キム・ウォンチョル特派員wonchul@hani.co.kr

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中国とロシアが主導する反米・非米陣営の多極化の試みが本格的に定着するかどうか、東アジアで繰り広げられる「激変の一週間」に注目が集まっている。

2025-09-01 | 世界の変化はすすむ
 

東アジアを揺るがす1週間…中国に「反トランプ陣営」集結

登録:2025-09-01 06:29 修正:2025-09-01 07:24

 

SCO首脳会議に続き、戦勝節記念軍事パレード 
中ロ印と朝中ロ首脳会談、相次いで開催 
反米・非米陣営による多極化の試みの分岐点となるか
 
 
上海協力機構(SCO)首脳会議に出席するロシアのウラジーミル・プーチン大統領が31日、中国の天津に到着し、専用機から降りている/新華社・聯合ニュース

 31日、中国の天津で開幕した上海協力機構(SCO)首脳会議を皮切りに、9月3日の中国戦勝節80周年記念軍事パレード、5日のロシア東方経済フォーラムまで、「アメリカ・ファースト」を掲げたトランプ米政権主導の国際秩序に対抗する大型の外交イベントが相次いで開かれる。中国とロシアが主導する反米・非米陣営の多極化の試みが本格的に定着するかどうか、東アジアで繰り広げられる「激変の一週間」に注目が集まっている。

 この日天津で開幕したSCO首脳会議には、中国の習近平国家主席をはじめ、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、インドのナレンドラ・モディ首相、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領など、約20カ国の国家首脳と代表らが出席した。

 続いて、3日に北京の天安門広場で開かれる「中国抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利(戦勝節)」80周年記念軍事パレードには、プーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が習主席と並んで見守ることになるなど、26カ国の指導者が出席する。朝中ロ首脳が初めて共にする歴史的イベントだ。特に、今回の軍事パレードは金委員長にとって初の多国間外交の舞台でもある。

 両行事で北朝鮮とインドが中国、ロシアとそれぞれどのような関係の変化を目指すのかが最大の関心事だ。ドナルド・トランプ米大統領就任以後、ウクライナ終戦をめぐる西側内の対立と交渉の膠着、トランプ関税戦争による米国とインドの関係悪化、ウクライナ戦争を機とした朝ロの密着などは、これらの国々の関係を再調整しているだけでなく、朝中ロ連帯も再構築している。

 朝中ロは今回の行事と会合を通じて、韓米日「同盟」に対抗する連帯で関係を強化できるかどうかを試す。2023年8月19日のキャンプデービッド3カ国首脳会議を機に韓米日が「3国同盟」のレベルに進化したことを受け、北朝鮮はウクライナ戦争を機にロシアと軍事同盟を復元した。今回は中国との関係強化を通じて朝中ロ連帯の枠組みを模索する見通しだ。

 公式日程はまだ公開されていないが、最も注目されるのは北朝鮮、中国、ロシアの首脳間会合だ。中国メディアは、軍事パレードの前後に金委員長と習主席が別途会談する案を調整中だと報じた。ロシア大統領府のユーリ・ウシャコフ外交担当補佐官も「プーチン大統領と金委員長の2国間会談の可能性を現在検討している」と明らかにした。

 インドの変針も目を引く。モディ首相は同日、習主席との会談で、信頼と尊敬に基づいた2国間関係の進展を誓った。モディ首相は7年ぶりの中国訪問を、米国側に傾いていた対外政策を中ロ側へと重心移動し、伝統的な等距離外交に復元するきっかけにしている。インドはロシアの石油購入を理由にトランプ政権が25%の2次関税など計50%の関税を27日に発効したことを受け、中ロとの関係強化で対応している。

 プーチン大統領は異例の4日間の中国訪問で10カ国余りと2国間会談を行い、ウクライナ戦争以降最も活発な外交活動を展開する。5日からはウラジオストクで開かれる東方経済フォーラム(3~6日)に出席し、80カ国余りの代表らと会談を続ける。プーチン大統領は8月15日のトランプ大統領とのアラスカ米ロ首脳会談で、西側陣営でも対話の相手として復帰した勢いに乗り、グローバルサウス陣営で影響力の拡大を目指している。30日、中国の新華社通信との会見で、プーチン大統領はSCO首脳会議で「共有するユーラシア空間全域で連帯を強固にする」とし、「このすべてはより公正な多極化秩序作りに役立つだろう」と述べた。

 中国は今回の行事で、ロシアとの友好関係の拡大、インドとの関係改善、北朝鮮との友好再確認などを行い、グローバルサウス陣営内での指導力と米国に対抗する影響力の確保を図っている。SCO首脳会議や戦勝節行事は歴代最大規模で行われる。習主席はSCO首脳会議に先立ち、声明で「SCOは強固な枠組みとして成熟し、強い活力に満ち溢れている」とし、「これは新たな形の国際関係の例を作った」と評価した。中国が同機構を非西欧新興経済国連合体であるBRICSとともに、米国主導の国際秩序に代わる多極化秩序の枠組みにすることを目指すという意味だ。

 今回のSCO首脳会議では「天津宣言」を採択し、安全保障の挑戦および脅威に対処する「世界センター」の創設に合意する。このセンターはウズベキスタンの首都タシュケントに設置される。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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面積約189.08万平方キロメートル(日本の約5倍)。約13,500の島々からなる世界最大の島嶼国家。

2025-08-10 | 世界の変化はすすむ
インドネシア共和国地図

1 インドネシアの特徴

(1)国土

 面積約189.08万平方キロメートル(日本の約5倍)。約13,500の島々からなる世界最大の島嶼国家。東西約5,110キロメートル(米国の東西両海岸間の距離に匹敵)、南北約1,888キロメートル(赤道を挟む)に及ぶ。

(2)人口、種族

 約2.55億人(2015年)。中国、インド、米国に次いで世界第4位の人口。大半がマレー系(ジャワ、スンダ等約300種族に大別される)。総人口の約6割が、全国土面積の約7%に過ぎないジャワ島に集中している。

(3)宗教

 イスラム教約87.2%、キリスト教約9.8%、ヒンズー教1.6%ほか(宗教省(2016年))。世界最大のイスラム人口を有するが、イスラム教は国教ではない。公的に認められた6つの宗教(イスラム教、キリスト教(カトリック・プロテスタント)、ヒンズー教、仏教、儒教)いずれかへの信仰が必要。

(4)国家政体

 共和制の下、34州から構成。国家元首は大統領(大統領は、国家元首であると共に行政府の長でもある)。現大統領は、ジョコ・ウィドド大統領(2019年再選。第2期政権は2019年~2024年)。

 議会は、国会(DPR)(立法機能、国家予算作成機能、政府に対する監視機能)、及び地方代表議会(DPD)(地方自治等に関する法案の提言、審議への参加)がある。また、国会議員(575人)と地方代表議会議員(136人)で構成される国民協議会(憲法の制定及び改正、大統領・副大統領の任期中の解任)がある。

 

ASEAN(東南アジア諸国連合)とは

 東南アジア10か国から成るASEAN(東南アジア諸国連合)は、1967年の「バンコク宣言」によって設立されました。原加盟国はタイ、インドネシア、シンガポール、フィリピン、マレーシアの5か国で、1984年にブルネイが加盟後、加盟国が順次増加し、現在は10か国で構成されています。2015年に共同体となったASEANは、過去10年間に高い経済成長を見せており、今後、世界の「開かれた成長センター」となる潜在力が、世界各国から注目されています。2017年に設立50周年を迎えました。

参加国一覧

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 「ゲリマンダー」。教科書でしか見たことのないこの用語が、米国政局の台風の目となっています。

2025-08-09 | 世界の変化はすすむ
 

ゲリマンダーが醸し出す米国の未来【特派員コラム】

登録:2025-08-09 02:00 修正:2025-08-09 02:02
 
キム・ウォンチョル|ワシントン特派員
 
 
今月4日、市民がテキサス州オースティンにある州知事官邸前で、連邦議会選挙区の再調整案に抗議している=オースティン/AP・聯合ニュース

 今月3日夜(現地時間)、民主党に所属するテキサス州下院の議員が、1人また1人と空港に集まってきました。秘密裏にチャーター機に乗り込んだ彼らは、2時間30分後、イリノイ州シカゴの記者会見場に姿を現します。「この身は議事堂にありませんが、職務を放棄したわけではありません。私たちは住民のために闘っているのです」(ジェームズ・テラリコ、オースティン地域選出の州下院議員)

 「ゲリマンダー」。教科書でしか見たことのないこの用語が、米国政局の台風の目となっています。来年の中間選挙で共和党が連邦下院の多数を維持しなければ自らの大統領職が安定しないと判断したトランプ大統領が、ゲリマンダー、つまり共和党に有利になるよう選挙区を人為的に操作せよとテキサス州知事らに指示したからです。

 テキサス州の連邦下院の議席数は38議席にのぼります。米国の州で2番目の多さです。そのうち民主党は「実に」12議席を占めています。トランプ大統領の目標は「選挙区の再調整による少なくとも5議席の追加確保」です。連邦下院で共和党は民主党よりわずか7議席多いに過ぎないため、5議席は米国の権力構造を左右しうる大きな数です。

 先に動いたのはテキサス州議会でした。秘密裏に行われた選挙区再調整の結果が先月末に公開されました。精巧で繊細に作り出された5つの共和党優勢地域が含まれていました。民主党の支持が強いオースティン、ヒューストン、ダラスなどの大都市圏を分散させ、共和党優勢地域と合わせてありました。新たに作られた5つの選挙区とともに、既存の共和党の現役議員の選挙区もやはり、すべて昨年の大統領選挙でトランプ候補の得票率が60%を超えるように調整された、「芸術」の境地に達した地図でした。意図は明白でした。

 テキサス州のグレッグ・アボット知事は直ちに州議会の特別会期を招集し、この案を上程しました。これこそ、州議会の150の議席のうち62議席を占めているため、修正定足数100議席を無力化する力を持つ民主党議員が集団脱走劇を繰り広げた背景です。テキサスは、州の上下院が選挙区案を可決し、州知事が署名すれば選挙区が確定します。

 民主党はテキサスを止めることができるでしょうか。簡単ではありません。州下院は無断欠席した議員に「同行命令状」を発行しました(これから逃れるためテキサスを離れたのです)。欠席の代価として罰金500ドルが毎日科されます(パートタイムのテキサス州議会議員の月給は600ドルほどです)。今月末までの特別会期が終了しても、州知事は改めて特別会期を招集できます。時間は共和党の味方です。

 焦りから、民主党の強い州であるニューヨーク州とカリフォルニア州が立ち上がりました。特にカリフォルニアは、テキサス州のように簡単に選挙区を調整することはできませんが、住民投票によって「ゲリマンダー」を来年の中間選挙前に行えます。テキサスで奪われた5議席をカリフォルニアでそっくり取り戻すことができるのです。5議席を譲り渡して5議席を取り戻せば、問題は解決するのでしょうか。

 もしかしたら、本当の問題はその後かもしれません。両党の露骨なゲリマンダーは競合地域を地図から消し去ります。ゲリマンダーが量産する「地盤」に頼る政治家が増えます。中道有権者の声を代弁する議員の数は減ります。中間選挙の結果よりも重要な、協同統治がほぼ不可能な、民主主義の根幹が揺らぐ入り口に、米国政治は立っているのかもしれません。

 
//ハンギョレ新聞社

キム・ウォンチョル|ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1212183.html韓国語原文入力:2025-08-07 19:02
訳D.K
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チョ・ヒョン外交部長官は、韓国は中国と良好な関係を維持すべきだとしながらも、中国の浮上にともなう国際秩序の変動については、米国・日本と協力することを望んでいると述べた。

2025-08-06 | 世界の変化はすすむ
 

韓国外相

「東北アジアで中国が多少問題になっている…米日と協力する」

登録:2025-08-05 08:30 修正:2025-08-05 10:30

 

ワシントン・ポスト紙のインタビュー 
中国が反発の可能性
 
 
チョ・ヒョン外相と米国のマルコ・ルビオ国務長官が先月31日(現地時間)、ワシントンの国務省で会談開始前に写真を撮っている=外交部提供//ハンギョレ新聞社

 チョ・ヒョン外交部長官は、韓国は中国と良好な関係を維持すべきだとしながらも、中国の浮上にともなう国際秩序の変動については、米国・日本と協力することを望んでいると述べた。

 チョ長官は3日(現地時間)に公開されたワシントン・ポストのインタビューで、2022年のロシアのウクライナ侵攻で国際安全保障の環境が完全に変わり、北朝鮮のロシア派兵などによって朝ロが接近し、地政学的な挑戦が強まっていることに加え、「東北アジアでは、中国が隣国と多少問題になっている(becoming somewhat problematic with its neighbors)」と言及した。

 また「われわれは中国が南シナ海と西海(ソヘ)で行ってきたことをみた。経済的にも中国は非常によく、あまりにも急速に発展したことで、競争相手となった」と補足した。中国が西海への構造物設置などで韓国との対立を引き起こしていることを、南シナ海の領有権問題とあわせて言及したのだ。

 さらに「われわれは、中国の浮上と挑戦を強く警戒することになった」と言及。続けて「われわれは、中国に『良好な関係を維持したい。中国が二国間だけでなく領域内の懸案でも国際法を遵守するのを見たい』というメッセージを送ろうとしている」と強調した。

 その上で「そうした点でわれわれは日本とも協力する」として、最近の日本訪問の際には日本の外相と首相に会い、「われわれが領域内で直面している新たな挑戦について話した」とも述べた。チョ長官はその一方で、「私は同時に中国と関係を結ぶ必要性に注目した」として、「単に中国を封じ込めようとする試みは、われわれが望むほどには効果がないため」だと強調した。

 「米国にもそのようなメッセージを伝えたか」という質問には、「これらすべてのことが、同盟国である米国との良好な協力のもとで行われるということを強調した」と答えた。チョ長官は先月31日から今月1日まで、ワシントンでマルコ・ルビオ国務長官、ホワイトハウス国家経済委員会のケビン・ハセット委員長、ホワイトハウス科学技術政策局のマイケル・クラツィオス局長や米上院の外交・国防委員長らと幅広く会談した。

 米国内で中国牽制の要求が強まっている状況で、米国の懸念を韓国新政権は理解しており、米国・日本と協力するという意向を、今回のインタビューを通じて繰り返し強調したものと解釈できる。中国との「良好な関係」の維持も強調したが、中国の反発を呼ぶ可能性もあるとみられる。

 トランプ政権が推進している在韓米軍の役割変更問題について、チョ長官は在韓米軍の規模と役割は維持されると強調した。チョ長官は「われわれは米国と対話しているが、在韓米軍に対する懸念はない。在韓米軍が現在のように残り、その役割も今と同じだと考えている」と述べた。在韓米軍縮小が韓米関係に及ぼす影響については「仮定の質問だが、そのようなことは起きないと考えている。今回、何人かの上院議員に会ったが、彼ら全員がそのようなことは起きないと私にはっきりと述べた」と答えた。

 今月行われる予定の韓米首脳会談で、在韓米軍の役割を「中国牽制」を中心に変更すべきだとする要求が議題に浮上する可能性がある。チョ長官はルビオ長官との会談でも、在韓米軍の役割と規模の変更が伴う可能性のある「同盟の現代化」問題も議論した。チョ長官は帰国の際に記者団に、在韓米軍の役割変更について「(外相会談では)そこまで深くは踏み込まなかった」としながらも、「韓米連合の体制や在韓米軍の重要性、今後われわれにとっての挑戦要素になる国際情勢などを議論したが、それ以上は実務ラインでさらに協議していくことにした」と説明した。

 「ドナルド・トランプ大統領が関税交渉で韓国を恐喝したと感じているのか」というワシントン・ポストの質問については、「(米国が)貿易不均衡を正すために、韓国だけを指定したのではない」として、「われわれは(対米)貿易黒字を減らすことができるが、同時に、様々な製造業の分野で先頭を維持できる。韓国が東北アジアで直面する地政学的な挑戦のためにそうすることが、韓国だけでなく米国にとってもきわめて重要だと考えている」と強調した。

 一方、チョ長官のこのような言及に、在韓中国大使館は「現在中国は、周辺国すべてと良好な関係を維持しており、絶対多数の周辺国も中国との友好な協力を強化することを外交の優先方向としている」として、「中国は、韓国側と両国首脳間の重要な共通認識を着実に履行し、中韓戦略的協力パートナー関係をさらに高いレベルに引き上げるために努力していく」と表明した。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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業界関係者は、「中国の太陽光発電産業は、製品供給からサプライチェーンの海外進出へと、その役割は世界の工場からグローバルな技術ハブへと変化しつつある」との見方を示している。

2025-07-17 | 世界の変化はすすむ
 

中国の太陽光発電産業の飛躍 

世界の工場から世界の技術ハブへ

人民網日本語版 2025年07月17日09:54
 

江西省上饒市に位置する晶科エネルギー股份有限公司(ジンコソーラー)のスマート大工場は、太陽光発電産業の「スーパーエンジン」とみなされている。この工場を訪れたところ、全長1キロメートルに及ぶ生産作業場では「人」が主役ではなかった。AGV(無人搬送車)が行き交い、ロボットアームが伸縮し、コンベアベルトが前へ進んでおり、生産の「主役」を担っていた。中国新聞網が伝えた。

同工場は、シリコンウェハーからモジュールまで、太陽光発電産業の全産業チェーンをカバーしており、平均して毎日390万枚の太陽電池セルがラインオフし、毎秒平均45枚のセルが製造される計算になる。

7月12日、インテリジェント設備による「ゼロカーボン」生産が行われている江西省上饒市に位置するジンコソーラースマート大工場。(撮影・李韵涵)

7月12日、インテリジェント設備による「ゼロカーボン」生産が行われている江西省上饒市に位置するジンコソーラースマート大工場。(撮影・李韵涵)

このような効率的な生産は、技術イノベーションの成果だ。ジンコソーラーの投資者関係上級ディレクターの魏添氏は取材に対し、「持続的な技術イノベーションが中国の太陽光発電企業のメインテーマになる」と語った。

1990年代、中国の太陽光発電企業は顕著な製造コストの優位性を背景に、急速に国際市場へ進出し、中国は世界の「太陽光発電製品の工場」になった。しかし当時、コア設備や原材料は欧米諸国に依存していた。その後、企業による絶え間ない技術開発を経て、過去10年近くで中国の太陽光発電産業は「並走者」から「世界の技術リーダー」へと変わり、企業のグローバル展開も「2.0時代」に突入している。

KPMG中国の顧客・事業開発担当パートナーである江立勤氏は取材に対し、「国内の強力な研究開発とサプライチェーンシステムを背景に、中国の太陽光発電企業は当初の『製品輸出』から、『生産・サービス・サプライチェーンの輸出』へと拡大している。欧州、中東、東南アジアなどの地域は今後中国の太陽光発電企業が注力する主要市場になると見込まれている」と述べた。

魏氏は、2030年までに世界の太陽光発電設備容量がTW(テラワット、1テラワットは1000ギガワット<GW>)時代に突入し、今後数年にわたり世界の太陽光発電設備容量は2桁台の安定成長を維持すると予測している。ジンコソーラーは現在、グローバル展開の高度化を進めており、特に海外のターゲット市場において現地企業とのパートナーシップを模索し、中国の技術・マネジメントの優位性と現地の資本・市場の優位性を融合させた共同発展を目指している。

同氏によれば、同社はすでにマレーシア、ベトナム、米国、サウジアラビアなどで製造拠点への投資を実施し、ドイツ、ブラジル、日本などにおいてはローカライズされた販売・サービスネットワークを構築している。

他の中国の太陽光発電大手も、続々とグローバルな生産拠点の構築に乗り出している。今年6月には、隆基緑能科技股份有限公司(ロンジソーラー)がインドネシア国営石油会社の新エネルギー・再生可能エネルギー子会社と戦略的提携を発表し、年産1.6GWの先進的太陽光モジュール製造拠点の建設を開始した。今年5月には紅太陽新エネルギーがナイジェリアの企業と、カノ州における年産600MWの太陽光モジュール生産ラインの構築契約を締結し、同国初の現地生産ラインとなる見込みだ。昨年12月には晶澳太陽エネルギー科技股份有限公司が、オマーンにおいて年産6GWの高効率太陽電池および3GWの高出力モジュール工場を総額40億元(1元は約20.7円)近く投資して建設する計画を発表。昨年7月にはTCL中環新エネルギー科技股份有限公司がサウジアラビアで太陽光発電用結晶ウェハーの合弁企業を設立する計画を明らかにし、総投資額は約20億8000万ドル(1ドルは約148.4円)に達する。

業界関係者は、「中国の太陽光発電産業は、製品供給からサプライチェーンの海外進出へと、その役割は世界の工場からグローバルな技術ハブへと変化しつつある」との見方を示している。

江氏は、「今後中国の太陽光発電企業は一部の生産能力を欧州へと移転する可能性があり、同時に一部の企業は太陽光発電設備、シリコンウェハーの全ラインプロジェクトおよび関連サービスを欧州に輸出し、現地の政策に合わせて欧州での生産能力構築を支援する。中東地域は、豊富な日照資源と経済構造転換を推進する政策的背景を持ち、中国の太陽光発電企業にとって戦略的な重点地域となっている。また、東南アジア諸国(ASEAN)では、近年再生可能エネルギーの発展計画や支援政策が積極的に打ち出されており、今後も中国の太陽光発電企業の注目を集めるとともに、現地における太陽光発電産業チェーン全体の発展を促進する見込みだ」と述べた。(編集YF)

 

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京都市と現地の企画者たちの空間活用戦略は、多くの歴史的激変の跡を残すソウルや慶州(キョンジュ)のような韓国の歴史都市にもインスピレーションを与えている。

2025-07-01 | 世界の変化はすすむ
 

都市全体が巨大な美術館に…

これからはミュンスターではなく京都を見よ

登録:2025-07-01 09:55 修正:2025-07-01 11:04
 
 
京都新聞社地下の印刷工場跡に設けられたフランス出身の写真家JRの近作「クロニクル京都2024」の展示の様子。中央の通路を歩くと両側に京都市民をクローズアップした写真造形物が登場し、それぞれが自分の人生について語るナレーションが響く=ノ・ヒョンソク記者//ハンギョレ新聞社

 もはや千年の都という過去の名誉だけにとどまらない。日本の古都・京都は明らかに現代美術の都市へと進化していた。

 その実情を4月12日、京都御所の南の通りにある京都新聞社地下の印刷工場跡で実感した。この空間に破格的に設置されたフランス出身のアーティストJR氏の近作「クロニクル京都2024」の造形物が、観客の賛嘆の中で明滅していた。印刷工場の真ん中の通路を歩いていくと、両側に京都の老若男女の市民をクローズアップした写真が照明を受けながら相次いで登場し、それぞれが自分の人生について語る肉声(ナレーション)が鳴り響いた。油のインクのにおいを漂わせながら、絶えず紙面が刷られていた新聞社の印刷工場が現代美術の設置空間へと変貌を遂げたのだ。JRが京都新聞社の中に並べた会心の近作は2013年に初めて始まって以来、3~4年前から韓国の写真美術愛好家たちに春の巡礼行事として定着した京都国際写真祭「KYOTOGRAPHIE 2025」の主な展示の一つで、同時代の京都の人たちの生き生きとした姿を視聴覚で体験し、交感することを目指したプロジェクトだった。

 
 
京都都心の三条通りの高瀬川のそばにある安藤忠雄の名作建築物「TIME'S」の特設展示場に、著名な英国の写真家、マーティン・パーの作品が並んでいる。この写真の視線の流れが桜の花びらが舞い散る高瀬川の風景と自然につながる=ノ・ヒョンソク記者//ハンギョレ新聞社

 日本を代表する歴史都市である古都・京都が、このところ世界の現代美術界で「アジアのミュンスター」として浮上している。最近、古来の文化遺産と都市の街路などを現代美術と結合させた独創的な都市芸術プロジェクトを披露し、国際的な注目を集めているためだ。特に「KYOTOGRAPHIE」は近代の邸宅や地元の新聞社の印刷工場、安藤忠雄が作った複合商業ビルなど、京都都心の街に散在する多様な近現代空間を展示場として積極的に活用し、都市全体が観客の観覧の動線になる新しい展示フォーマットを示している。ドイツの北西部のノルトライン・ベストファーレン州の大学都市ミュンスターが10年ごとに披露する世界最高の彫刻・公共美術の祭典「ミュンスター彫刻プロジェクト」に追いついたとまで言われるほどだ。

 13回目を迎えた今年、「KYOTOGRAPHIE 2025」は10カ国、13人の作家、14の場所でメイン展示が開かれたが、室町時代の有名な禅のお寺である建仁寺の両足院、都心の有力な家の伝統屋敷、三条通りの20世紀初頭の近代的な金融ビル、巨匠安藤忠雄が設計した都心にある複合商業ビルまで、特設展示場として活用し、著名なアーティストたちの作品を見ながら、歴史文化遺産や近隣観光地まで足を延ばせるよう展示範囲を拡大したことが目を引く。特に、三条通りの高瀬川の隣にある安藤忠雄の名作建築物「TIME'S」2階の特設展示場には英国の写真家マーティン・パーの作品が並んでいるが、写真の視線の流れが桜の舞い散る高瀬川の風景と自然に続く姿が、異色の景物のように感じられた。その下には、動物と土地の生態を扱った日本の中堅アーティストたちの写真が暗転した背景の中に掲げられ、名作建築物TIME'Sは生態の深淵と京都の裏面を撮った写真の秘境となった。

 
 
京都の代表的な文化遺産である二条城に設置されたドイツ出身の巨匠、アンゼルム・キーファーの翼の形をした造形物。翼をつけて飛翔したいが、天の理想と地の現実の間でパレットを握って苦悩しなければならない芸術家の実存的状況を形にした=ノ・ヒョンソク記者//ハンギョレ新聞社

 さらに4~6月には、江戸時代の徳川幕府が建てたユネスコ遺産「二条城」で、世界的な巨匠、アンゼルム・キーファーが世界史と日本の芸術史をテーマにしたインスタレーション・絵画展を開き、世界美術界の視線を集めた。光と陰が微妙に分割された日本の伝統建築の構造と金箔を施した障壁画のような特有の装飾的な枠組みを、キーファーは京都市の協力を得て忠実に具現化した。鉛の塊、顔料、オブジェなどが絡み合った特有のコンバイン絵画を、二条城の薄暗い「台所」の空間で自然光とともに絶妙に演出することで、人間の文明の野蛮さに対する省察と救援を光と陰が混在する自身の作品に落とし込んだ。都心の東側にある平安神社地区のミュージアムエリアでは、モネ、草間弥生といった巨匠たちの国際企画展も、このような大型企画と相まってさらに話題を集め、観客を引きつけていた。

 
 
二条城に設けられたアンぜルム・キーファーの作品=ノ・ヒョンソク記者//ハンギョレ新聞社

 これまで都市全体を芸術の場にした前例として、10年ごとにインスタレーション・プロジェクトが開かれるドイツのミュンスターが挙げられてきたが、今では毎年違う形で都市を現代美術の巨大な展示所にする京都が新しいモデルとして浮上している。ミュンスターが都市空間を彩る公共造形物や環境彫刻、パフォーマンスなどを追求し続けてきたとすれば、京都は文化遺産の歴史と痕跡を現代作家の想像力と結びつける大胆な構図で差別性を導き出した。1000年余りにわたりほぼそのまま保たれてきた都市の歴史的な地層が現代美術と出会い、驚くべき相乗効果を醸しだしている。このような京都市と現地の企画者たちの空間活用戦略は、多くの歴史的激変の跡を残すソウルや慶州(キョンジュ)のような韓国の歴史都市にもインスピレーションを与えている。

京都/ノ・ヒョンソク記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/culture/culture_general/1205543.html韓国語原文入力:2025-06-30 20:41
訳H.J
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イスラエル経済はここ数日間、イランのミサイル攻撃の前に麻痺した。必須事業の労働者だけが働き、飲食店などほとんどの業種で稼働できずにいる。国際空港も数日間閉鎖され、現在は部分的に運営している。

2025-06-22 | 世界の変化はすすむ
 

イスラエル、2週間が戦争の限界か…

防空網の費用負担が困難な状況

登録:2025-06-21 10:39 修正:2025-06-22 07:20
 
「2~3日が戦争を終わらせる機会」 
防空網の消耗のため、戦略要衝地を優先して防御 
戦費、1日に数億ドル、1カ月で少なくとも120億ドル
 
 
18日(現地時間)イスラエルの防空システムである「アイアン・ドーム(Iron Dome)」がイランから発射されたミサイルをテルアビブ上空で迎撃している。イスラエルとイランは13日、イスラエルが「ライジング・ライオン(Rising Lion)」作戦を開始してイランを攻撃して以降、相互に空襲を繰り返している=テルアビブ/AP・聯合ニュース

 イランを攻撃しているイスラエルが、1日で少なくとも2億ドル(約300億円)を戦費として消費しているのにくわえ、防空網が急速に消耗している。2週間以上戦争が長期化すれば、戦争遂行能力に深刻な限界が来るものとみられる。

 イスラエルはイランとの戦争で、防空網の稼動だけで数千万ドルから2億ドルまで費やしているだけでなく、戦闘機の出撃、イランからのミサイルによる被害、産業の稼動中断などによって、負担が指数関数的に増大しており、2週間あるいは1カ月間さらに戦争が続く場合、イスラエル経済は耐えられなくなると、ウォール・ストリート・ジャーナルが19日報じた。イスラエルのライヒマン大学のアロン経済政策研究所の評価によると、イスラエルはイランとの戦争が1カ月続く場合、約120億ドル(約1兆8000億円)を支出する必要がある。

 イスラエルの戦争遂行で最も重い費用は防空網の運営だ。1日に少なくとも数千万ドルから2億ドルが必要とされる。イスラエルの多重防空網の一つである「ダビデ・スリング(ダビデの投石器)」は、ミサイル、ドローン、航空機の迎撃用だが、動作するたびに迎撃ミサイルが少なくとも2発発射され、約70万ドル(約1億円)の費用がかかる。長距離弾道ミサイル迎撃用のアロー3は、1回に400万ドル(約5億8000万円)が必要とされる。イランは今回の紛争で、イスラエルにこれまで400発のミサイルを発射し、相当数がイスラエルの防空網を突破した。

 最新鋭戦闘機であるF-35は、1時間の飛行に燃料費用だけで1万ドル(約145万円)が必要とされる。イランとの距離は少なくとも1000キロメートルあるため、イスラエルの戦闘機は空中給油機の稼動を必要とする。統合直撃弾(JDAM)や2000ポンド汎用爆弾「MK84」などの戦闘機の装着爆弾は別途費用がかかる。

 
 
イランの弾道ミサイルを受けて廃虚になったイスラエル南部のソロカ病院の20日の様子=EPA・聯合ニュース

 しかも、イスラエルは、今回のイランとの紛争で、本土で建国以来最大となる戦争被害を受けている。数千軒の建物と家屋が破壊・破損した。少なくとも4億ドル(約580億円)の被害だ。何より、イスラエルは今回の戦争で経済が麻痺状態にある。イスラエル経済はここ数日間、イランのミサイル攻撃の前に麻痺した。必須事業の労働者だけが働き、飲食店などほとんどの業種で稼働できずにいる。国際空港も数日間閉鎖され、現在は部分的に運営している。

 アロン経済政策研究所のツビ・エクスタイン所長は「毎日、ガザ戦争やヒスボラとの戦争よりもはるかに高い費用を負担している」と評した。イスラエル銀行のカルニッツ・フラグ前総裁は「戦争費用を決める主な要因はその期間」だとしたうえで、「1週間程度ならば大丈夫だが、2週間や1カ月となると完全に話が違ってくる」と懸念を示した。

 今回の戦争で、イスラエル防衛の核心資産である防空網の消耗も深刻化すると、分析されている。イスラエルは戦争初期、世界最高水準の防空網でイランのミサイルを迎撃し、攻勢を続けたが、迎撃ミサイルの消耗速度が生産速度を追い抜き始め、急速な減少が懸念されていると、ニューヨーク・タイムズが19日報じた。このため、イスラエルは、戦略的要衝地と人口密集地域に優先的に防空網などの防衛資源を配備する方式に切り替えている。

 イスラエルは、「アロー」システムを含む少なくとも7つの防空システムを運用しており、米国からは艦艇基盤迎撃システムやレーザー兵器まで支援されている。しかし、戦線が多方面に拡張され、防御網の負担が重くなっており、ディモナ原子炉やテルアビブの軍事本部のような戦略施設を保護する迎撃を最優先に定めているという。

 ラン・コチャフ予備役空軍准将は「迎撃ミサイルは米粒ではなくて、数量は有限だ」と述べ、防空網の持続可能性に懸念を示した。実際にイスラエルは、1日に数百発のミサイルを迎撃し、一部は重複して迎撃しており、正確な消耗量さえ把握が困難な状況だ。

 イスラエルの情報機関であるモサドの元高官のゾハル・パルティ氏は「今こそ、イスラエルにとって、イランの核施設の目標を攻撃するのに成功し、勝利を宣言して戦争を終わらせる2~3日の機会」だと述べた。イスラエルが早期に終戦しない場合、戦略的な困難に直面しかねないということだ。

 米国のドナルド・トランプ大統領は19日、イスラエルが要請しているイラン攻撃への参加の決定を、2週間以内に行うことを明らかにし、イスラエルとしては、それまでに防空網の消耗と戦費負担が増大する戦略的ジレンマが迫ってきているためだ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1203939.html韓国語原文入力:2025-06-21 08:30
訳M.S
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 実行委員会は、司法があるべき姿を取り戻し、かけがえのない人権が守られるまで「手をつないでたたかいを続け」るとする集会決議を発表しました。

2025-06-17 | 世界の変化はすすむ

2025年6月17日(火)

原発事故は国の責任

「不当判決ただせ」最高裁包囲

写真

(写真)最高裁をヒューマンチェーンで包囲する人々=16日、東京都千代田区

 東京電力福島第1原発事故をめぐる国の賠償責任を否定した3年前の最高裁判決を正し、公正な司法を取り戻そうと事故被害者や市民らが16日、最高裁を包囲するヒューマンチェーン(人間の鎖)に取り組みました。実行委員会によれば昨年を上回る約1150人が参加しました。

 実行委員会は、原発事故被害者団体など22団体が加盟、多くの団体と個人が賛同しています。

 同実行委員会共同代表の水戸喜世子さん(89)は、「現状を変える力を持っているのは主権者である私たちだ。隣の人と真剣に話し合い、最高裁の大掃除の出発点としよう」と呼びかけました。

 各地の国賠訴訟の原告や元原告、原発の差し止め訴訟の原告、公害問題や事故被害者の支援者などがリレートーク。「司法は勇気と正義を取り戻せ」「原子力は倫理に反する」「私たちは諦めない」「原発最大限活用という無謀な計画をやめさせ、福島の復興を進めるためにも不当判決を覆すことが必要」と次々に発言しました。

 実行委員会は、司法があるべき姿を取り戻し、かけがえのない人権が守られるまで「手をつないでたたかいを続け」るとする集会決議を発表しました。

 日本共産党からは岩渕友参院議員が参加し、「国の責任を認めさせ、原発ゼロを実現させるために、皆さんと力を合わせていく」とあいさつ。また、立憲民主、社会民主、れいわ新選組の国会議員も参加しました。

 2022年6月17日、最高裁は福島原発事故の国の責任を否定した判決(多数意見)を示し、それまで複数の高裁が国の責任を認める判断を示していましたが、その後の下級審の判決はすべて国の責任を否定しています。また、今年3月には、最高裁は業務上過失致死傷で強制起訴された東電元経営陣2人を無罪とする決定をしています。

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尹錫悦前大統領も、軍隊を動員して国会を無力化し、野党の政治家を排除しようとし、米国のトランプ大統領も、デモ隊を攻撃してカリフォルニア州の行政を無力化し、野党の政治家を脅すために軍を動員している。

2025-06-15 | 世界の変化はすすむ

トランプ大統領と尹錫悦前大統領…

LAで繰り広げられた「デカルコマニー」

【寄稿】

登録:2025-06-13 09:35 修正:2025-06-15 09:35
 
ソ・ボクキョン|「ザ・可能研究所」代表
 
 
尹錫悦前大統領が4月11日、ソウル市龍山区漢南洞の官邸から出て支持者たちと挨拶を交わしている(写真左)。米国のドナルド・トランプ大統領が2020年10月、アイオワ州で開かれた遊説で演説している//ハンギョレ新聞社

 米国のドナルド・トランプ政権が移民取り締まりを名目にロサンゼルスに軍を投入したことで、ロサンゼルス市・カリフォルニア州・トランプ政権に反対する市民たちとトランプ政権の衝突が激化している。その渦中の6月8日、ドナルド・トランプ大統領の息子が自身のソーシャルメディアに、「ルーフトップ・コリアンを再び偉大に」(Make Rooftop Koreans Great Again!)と投稿した。トランプ大統領は、連邦政府の軍投入に強く反発しているカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事に対して「逮捕もしうる」と脅迫し、状況をさらに悪化させている。米国メディアは、トランプ大統領の今回の行動が「今後繰り広げるさらに大きい事態の予行演習」かもしれないという懸念を報じている。米国で現在繰り広げられている事態がどこに向かうのかは分からないが、これまで発生した事件だけでも、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権で韓国が体験した一連の事件を思い出させるのには十分だ。

 ドナルド・トランプ・ジュニア氏は、単なる現職の米国大統領の息子ではない。トランプ大統領が公式のルートから出すわけにはいかないがそのときごとに必要だと考えるメッセージを広めて世論を作る、1500万人以上のフォロワーを擁するインフルエンサーだ。「ルーフトップ・コリアン」は、1992年のロス暴動の際、韓人の商店街を守るために武装して建物の屋上に上がった韓国系アメリカ人を指す言葉だ。1992年のロス暴動は、米国の政府と社会の根深い人種差別に対する抵抗として発生したが、アフリカ系アメリカ人と韓国系アメリカ人の衝突という不幸な事態を生んだ。6月9日、ロサンゼルスの韓人会は「韓国人の過去のトラウマを、いかなる目的であっても絶対に利用してはならない」と求めた。トランプ・ジュニア氏のメッセージは、米国社会のマイノリティ同士の戦いを扇動し、自分たちの政治的利益を追求する意図を赤裸々に示しているという点で、きわめておぞましく残忍なものだ。

 この場面は、尹錫悦政権で経験した類似の出来事を想起させる。労働組合を「理念で武装した既得権カルテル」と規定し、「疎外されている未組織の非正規労働者を保護する」と述べ(2024年3月20日の「商工の日」の記念式典)、組織労働者と未組織労働者を分断したことがあった。2022年に全国障害者差別撤廃連帯が、移動権保障のために地下鉄デモを行ったとき、尹錫悦政権与党のイ・ジュンソク代表は「最大多数の不幸と不便を引き起こすことで、自分の主張を貫徹させるという非文明的な不法デモ」(2022年3月28日の「国民の力」最高委員会での発言)と非難した。非文明的な障害者によるデモ隊と、デモ隊によって「不幸と不便を被る最大多数の一般市民」を分断して対立をあおったのだ。どこであっても悪しき政治家は、弱者間の対立を扇動して自身の利益を追求する。

 トランプ大統領がニューサム知事を挑発する場面は、尹錫悦前大統領とその政権与党の政治家たちが、政治的ライバルと野党を「反国家勢力」「反大韓民国勢力」「主体思想派」と攻撃することによって政治的苦境から抜け出そうとしたり、最終的には暴力を動員して除去しようとしたりした試みを思い起こさせる。トランプ大統領は、移民をすべての悪の根源として位置づけ、米国の民主党と有力なライバルを「偉大な米国に反する移民側に立つ勢力」とレッテル張りをした後、政敵排除の正当性を得ようとしている。米国の法律上、連邦政府が州防衛軍を動員するためには州知事の同意を得る必要があるが、トランプ大統領はあえてカリフォルニア州知事の同意権を無視した。知事の暴力的対応を挑発し、それを名目にして知事を除去しようとしているものとみられる。ニューサム知事は民主党の次の大統領選の有力候補だ。どこであっても悪しき政治家は、政治的ライバルを相手に正々当々と競わず、違法な手段を動員して除去しようと試みる。

 尹錫悦前大統領も、軍隊を動員して国会を無力化し、野党の政治家を排除しようとし、米国のトランプ大統領も、デモ隊を攻撃してカリフォルニア州の行政を無力化し、野党の政治家を脅すために軍を動員している。悪しき政治家は、国民を保護して守ることだけに使える国家の公権力を、私益のために使うことをためらわない。

 悪しき政治はいつでもどこでも登場する可能性があり、政治共同体が共同で防ぐことができなければ、その共同体は現在あるいは未来のいかなるときにも破壊される可能性があるという生々しい実例を、私たちは再び目撃している。韓国系アメリカ人や在外韓国人とともに、すべての米国人が国家の暴力から安全であることを願う。

ソ・ボクキョン|「ザ・可能研究所」代表 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1202349.html韓国語原文入力:2025-06-12 08:58
訳M.S
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今では、宇宙に数多くある天体のどこにも生命体がないのであれば、むしろ驚くべきことだと言っても過言ではないほどになった。

2025-02-22 | 世界の変化はすすむ

科学者は宇宙人の存在をどの程度信じているのか

登録:2025-02-20 07:00 修正:2025-02-22 09:42
 
クァク・ノピルの未来の窓 
10人中9人が地球外生命体の存在を「肯定」 
宇宙生物学でも他の分野でも差はない
 
 
科学者は10人中9人の割合で地球外生命体が存在すると考えていることが調査で判明した=ピクサベイ//ハンギョレ新聞社

 地球以外の他の天体における生命体の存在の有無を探求する研究分野を、宇宙生物学と呼ぶ。米国の古生物学者、ジョージ・ゲイロード・シンプソン(1902~1984)は1964年、宇宙生物学について「現時点ではそのテーマの対象が存在することを証明できていない」と酷評した。それから60年が過ぎた現在でも、科学者たちは依然として地球外生命体の存在の有無については正確に分からずにいる。

 しかし、その後、宇宙観測と探査技術の発展により、宇宙船が相次いで直接探査できる天体が増え、太陽系外惑星が次から次へ発見され、地球外生命体の発見に対する期待感は徐々に高まっている。今では、宇宙に数多くある天体のどこにも生命体がないのであれば、むしろ驚くべきことだと言っても過言ではないほどになった。

 地球外生命体の存在の有無は、人間の存在の根源に対する哲学的な質問にもつながる。地球外生命体の存在が確認されたならば、これは地動説や進化論などに続き、人類に新たな認識の地平を切り開く革命的な事件になるはずだ。

■知的生命体の存在には10人中6人が肯定

 宇宙生物学者を含む科学者たちは、はたして宇宙人の存在について、どのような考えを持っているのだろうか。

 英国ダラム大学の哲学者が、宇宙生物学者521人と、生物学や物理学など他分野を研究する科学者534人を対象に、2024年2~6月、地球外生命体の存在の可能性に関する電子メールによるアンケート調査を通じて確認した研究結果を、国際学術誌「ネイチャー天文学」に発表した。

 研究チームが聞いた質問は3つだ。1つ目は、地球外に基本的な形態以上の生命体が存在する可能性、2つ目はバクテリアよりはるかに大きく複雑な生命体が存在する可能性、3つ目は人間と同等または優れた認知能力を備えた地球外生命体が存在する可能性だ。2つ目と3つ目の質問は宇宙生物学者だけに質問された。

 質問の結果、宇宙生物学者の間では、地球外生命体が存在するという確固たる合意または共感があることが明らかになった。宇宙生物学者の86.6%(451人)は、宇宙のどこかに最小限の基本的な形態の生命体が存在する可能性が高いことに同意した。同意しなかった人は2%(10人)に過ぎず、残りの12%(60人)は中立的な意見を表明した。宇宙生物学者ではない科学者たちも、宇宙生物学者と同様に88.4%が地球外生命体の存在に同意した。

 宇宙生物学者だけに与えられた質問、すなわち、複雑な形態の地球外生命体や知的な宇宙人の存在については、それぞれ67.4%、58.2%が同意した。より発展した形態の生命体の存在の可能性については肯定的な回答が多かったが、その割合は有意に低下した。この質問に対する回答率も37~38%で低かった。

 
 
エンケラドゥスの南極の地下の海から氷面層を突き抜けて突き上がる水柱。2009年に探査機カッシーニが撮影した写真=NASA提供//ハンギョレ新聞社

■科学的な証拠は10点満点で7点

 科学における合意は、証拠に基づく場合にのみ意味がある。地球外生命体の存在に対する科学者の合意は、証拠に基づいているのだろうか、あるいは、単なる推測に過ぎないのだろうか。

 研究チームは「地球外生命体が存在するという間接的または理論的な証拠は多くある」とし、地球外生命体の存在の可能性を、科学的証拠ではなく推測に基づいたものだと判断している科学者は、中立の意見を表明した12%に過ぎないとみなせると明らかにした。

 例えば、太陽系だけについても、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドゥスの地下の海を含め、生命体が生存可能な環境を持っている天体はいくつもある。火星の表面には、遠い昔に水が流れて形成された川と湖、三角州の跡がそのまま残っている。

 研究チームはしたがって、視野をさらに広く宇宙に拡大すれば、膨大な数の居住可能な天体があると考えることが合理的だと明らかにした。地球も初めから生命体が存在したわけではなく、生命体が生存可能な環境であれば、生命体の歴史が始まる確率は0ではないということだ。

 科学者は現時点で、現在の科学が有する地球外生命体の間接的または理論的証拠がどれほど強力なものと評価しているのだろうか。研究チームが、英国宇宙生物学センターの専門家4人に評価を依頼した結果、4人が付けた証拠の点数は10点満点で7点だった。

 研究チームは今後、5年ごとに同じアンケート調査を継続し、科学界の意見がどのように変化するかを追跡する計画だ。

*論文情報
Surveys of the scientific community on the existence of extraterrestrial life.
Nat Astron (2025).
doi.org/10.1038/s41550-024-02451-0

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1182033.html韓国語原文入力:2025-02-12 14:37
訳M.S
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習主席がウ議長との接見で「韓中は人文交流を増進し、国民間の友好的な感情を強化しなければならない」と言い、「友好的な感情」を強調したことも目につく。

2025-02-12 | 世界の変化はすすむ
 

習近平主席、

韓国国会議長に手厚いもてなし…中国の「周辺国との関係改善」始まる

登録:2025-02-11 09:29 修正:2025-02-11 11:39
 
習主席「韓中関係を安定的に維持したい」 
トランプ米大統領の圧力への対応
 
 
ウ・ウォンシク国会議長が7日、中国のハルビンで習近平国家主席と会談している=国会議長室提供//ハンギョレ新聞社

 ハルビン冬季アジア大会の開会式に招待され中国を訪問したウ・ウォンシク国会議長が、中国から「目を引く」もてなしを受けた。

 ウ・ウォンシク議長は開会式が行われた7日午後、黒竜江省ハルビン市の太陽島ホテルで習近平国家主席と会談した。習近平主席が韓国の国会議長と接見したのは、2014年12月に当時のチョン・ウィファ国会議長と会って以来。2019年5月に中国を訪問したムン・ヒサン議長、2022年2月の北京冬季五輪の開会式に出席したパク・ピョンソク議長は、習近平主席との面談はなかった。ウ議長は5日、カウンターパートである全国人民代表大会(全人代)常務委員長(国会議長に相当、公式序列3位)と会談したのに続き、習主席とも単独で会談した。習主席とウ議長は約40分にわたり対話した。予定では15分だったが、2倍以上の時間が取られた。

 習主席の発言内容も非常に友好的だった。ウ議長が10月末に慶州(キョンジュ)で開かれるAPEC首脳会議への出席を求めると、習主席は「APEC首脳会議に中国の国家主席が出席するのは慣例」だとし、「関連省庁とともに出席を真剣に考慮している」と述べたと国会議長室が伝えた。

 ウ議長はまた、「中国で韓国コンテンツがなかなか見られない。文化開放を通じて若者たちが互いにコミュニケーションし、友好感情を持つことが必要だ」と述べ、習主席は「文化交流は両国の交流の魅力的な部分であり、その過程で問題が起きることは避けなければならない」と語ったという。ウ議長の発言は、中国で韓国コンテンツを制限するいわゆる「限韓令」の解除を遠まわしに要請したもの。

 中国当局が統制する官営メディアの報道でも、ウ議長に対する中国の手厚い待遇が目立った。8日付の人民日報の2面には、右側のいちばん上に習近平主席とウ議長の会談に関する記事と写真が掲載された。2023年9月に杭州アジア大会の開会式に出席したハン・ドクス首相と習主席の会談の記事と写真が2面下段に掲載されたことに比べても、より良い待遇を受けたものと解釈できる。ウ議長はこの日午後、習主席主宰で多くの国家首脳が参加した冬季アジア大会の宴会にも出席。官営「CCTV」の夕方のメインニュースは、習主席とウ議長が最前列に立って宴会場に入場する場面と二人の会談場面を報道した。

 
 
人民日報の8日付2面の上段に習近平主席とウ・ウォンシク国会議長の会談の記事が掲載された//ハンギョレ新聞社

 中国のウ・ウォンシク議長に対する「もてなし」は、第2次トランプ政権の中国叩きの渦中で、重要な国である韓国との関係を管理しようという中国の戦略的な意志が反映されたものとみることができる。

 国会議長室によると、習主席はこの日、ウ議長に「韓中関係が安定して維持されるよう希望する」として「中国は開放と包容政策を堅固に維持し、デカップリング(脱同調化)に反対する」と語ったという。トランプ米大統領の関税・貿易戦争の余波を念頭に置いた発言だ。習主席は「現在、国際・地域情勢における不確実性が増したが、中国と韓国は当然共に努力し、中韓の戦略的協力パートナー関係の発展を強固にすべきだ」とも強調した。

 米国のシンクタンク「スティムソンセンター」のユン・ソン中国担当局長は、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」への6日の寄稿「中国のトランプ戦略(China's Trump Strategy)」で、中国指導部はトランプ政権の経済圧力に対応するために、国内経済の回復力強化に集中すると同時に、周辺国との関係改善を積極的に目指す「フェンスの修復(Mending Fences)」に取り組んでいると分析した。「周辺地域の安定を通じて余計な外交的紛争を減らすと同時に、米国が同盟国と協力して中国に圧力をかける戦略を弱めることができるため」ということだ。中国は韓国のほか、日本やインドなどとも最近、ビザなし政策、水産物輸入再開、国境紛争管理などで関係改善に積極的に乗り出している。

 5日にウ議長に会った趙楽際・全人代常務委員長は「敏感な問題を円満に処理し、中韓関係の政治的基礎を維持・保護しよう」と語った。「敏感な問題」とは、中国がTHAAD(高高度防衛ミサイル)を指してきた用語だ。

 トランプ大統領が先月27日「同盟とパートナーに提供する米国のミサイル防衛力を増やし加速させる」という条項の含まれる「米国版アイアンドーム」の大統領令に署名し、韓国にTHAADを追加配備する可能性が提起されたことを念頭に置いたものとみられる。趙委員長はまた、この日の会談で「干渉を排除しよう」、「デカップリングを共に阻止しよう」とも述べた。ウ議長は懇談会で、このような発言に関して「趙委員長がそのような話をしたが、何も答えなかった」と述べた。

 12.3内乱事態以降、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が「中国のスパイ」などに言及し中国を非常戒厳宣布の理由に挙げたことを契機に中国関連の陰謀論が急速に拡散する中で、韓国もこのような中国の外交シグナルをうまく利用しながら中国との外交・経済関係を賢明に管理する必要があるとみられる。

 習主席がウ議長との接見で「韓中は人文交流を増進し、国民間の友好的な感情を強化しなければならない」と言い、「友好的な感情」を強調したことも目につく。ウ議長は習主席に限韓令の緩和なども要請した。国家安保戦略研究院のヤン・ガビョン首席研究委員は、「習近平主席とウ議長が会談で韓中間の友好的な『感情』の問題を本格的に取り上げたのは、両国の国民間の『感情』の離反に対する問題意識を持っていることを遠回しに表現したもの」とし、今後韓中間で、人的交流または人文交流などで目に見える交流協力の成果を出すための具体的な動きがあるものとの見通しを示した。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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弾劾案が可決されるためには憲法裁判官9人中6人が賛成しなければならないが、現在3人が空席の6人体制では1人でも反対すれば弾劾案が棄却されるため、「弾劾審判で覆すことを狙ってみる価値がある」と判断した

2024-12-12 | 世界の変化はすすむ
 

棄却狙い弾劾審判選んだ尹大統領…

韓国与党で「表決参加」と「賛成」広がる

登録:2024-12-12 06:45 修正:2024-12-12 08:30
 
 
国民の力のハン・ドンフン代表が11日午後、ソウル汝矣島の国会に入り、取材陣の質問を受けている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「内乱の被疑者」尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が自ら辞任する代わりに、国会の弾劾案可決後、弾劾審判の手続きを踏む方向で方針を決めたことで、今週末に2回目の弾劾案表決を控えた与党「国民の力」の気流も激しく揺れ動いている。

 与党の主要関係者は11日、「尹大統領側は憲法裁判所の弾劾審判の手続きに備えている。チョン・ジンソク大統領秘書室長とホン・チョルホ政務首席などから、『国会が弾劾案を可決すれば、それに合わせて行けばいい。憲法裁判所で弾劾案が必ず認容されるとは限らない』という話を聞いた」とハンギョレに伝えた。国民の力「政局安定TF」が提示した「2月退陣案」と「3月退陣案」いずれも拒否するという意味だ。

 大統領室のこのような気流には、憲法裁判所の審判結果が出るまで権限停止状態で大統領の職を維持しながら、憲法裁の審判を通じて棄却決定を勝ち取るという思惑がある。

 

棄却狙い弾劾審判選んだ尹大統領…韓国与党で「表決参加」と「賛成」広がる

登録:2024-12-12 06:45 修正:2024-12-12 08:30
 
国民の力のハン・ドンフン代表が11日午後、ソウル汝矣島の国会に入り、取材陣の質問を受けている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「内乱の被疑者」尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が自ら辞任する代わりに、国会の弾劾案可決後、弾劾審判の手続きを踏む方向で方針を決めたことで、今週末に2回目の弾劾案表決を控えた与党「国民の力」の気流も激しく揺れ動いている。

 与党の主要関係者は11日、「尹大統領側は憲法裁判所の弾劾審判の手続きに備えている。チョン・ジンソク大統領秘書室長とホン・チョルホ政務首席などから、『国会が弾劾案を可決すれば、それに合わせて行けばいい。憲法裁判所で弾劾案が必ず認容されるとは限らない』という話を聞いた」とハンギョレに伝えた。国民の力「政局安定TF」が提示した「2月退陣案」と「3月退陣案」いずれも拒否するという意味だ。

 大統領室のこのような気流には、憲法裁判所の審判結果が出るまで権限停止状態で大統領の職を維持しながら、憲法裁の審判を通じて棄却決定を勝ち取るという思惑がある。弾劾案が可決されるためには憲法裁判官9人中6人が賛成しなければならないが、現在3人が空席の6人体制では1人でも反対すれば弾劾案が棄却されるため、「弾劾審判で覆すことを狙ってみる価値がある」と判断したという話だ。しかし、現在空席の裁判官の補充手続きが急速に進んでおり、その可能性は高くない。一部では、憲法裁の弾劾棄却決定を期待するよりも、身柄拘束の時期を最大限遅らせることに重きが置かれているという見方もある。実際、朴槿恵(パク・クネ)元大統領は2017年3月10日に憲法裁の罷免決定が出て21日が過ぎてから検察に拘束された。

 尹大統領側の「退陣拒否」の意思が明確になったことで、与党の雰囲気も変わった。この日、国民の力では弾劾に公開的に賛成する議員が増え、「党論(党の方針)として弾劾案を可決させなければならない」という声まであがった。ソウル地域初当選のキム・ジェソプ議員は同日、国会疎通館で記者会見を開き、「尹大統領弾劾案に賛成するつもりだ。これが大韓民国憲法秩序を建て直す道だ」と述べた。これで国民の力で大統領の弾劾に賛成を表明したのはアン・チョルス、キム・イェジ、キム・サンウク、チョ・ギョンテ議員に続きキム議員まで5人に増えた。

 賛否はまだ決めていないが、弾劾案の表決には参加するという議員も相次いでいる。ペ・ヒョンジン、チン・ジョンオ、ユ・ヨンウォン、キム・テホ、パク・チョンフン、チョン・ソングク議員などはこの日、ハンギョレに表決に参加する意向を示した。ほとんどが親ハン(ドンフン)派か、派閥色の弱い議員たちだ。彼らが全員本会議で弾劾案に賛成票を投じる保証はないが、表決に参加する議員が増えれば弾劾案可決の可能性はそれだけ高くなる。弾劾案が可決されるためには、国民の力で少なくとも8人の賛成票が出なければならないが、キム・サンウク議員は同日、「文化放送」(MBC)のラジオ番組で、「流動的ではあるが、(弾劾に賛成する議員は)10人前後」だと述べた。

 カギとなるのは「元祖親尹(錫悦)派」のクォン・ソンドン議員と(親尹派と対立する)非尹派のキム・テホ議員のうち、誰が12日に新しい院内代表に選ばれるかだ。クォン議員は同日、「党論は弾劾反対だ」とし、「党論を維持しながら、(尹大統領が)いつ頃早期退陣するのが良いかの議論に集中しなければならない」と述べた。一方、キム議員は「(弾劾表決が)人為的に党のための政治に見えてはならない」とし、「(議員が)自由意志を持って投票できる方向で党論が決まるだろう」と述べた。

 ただし、国民の力の内部では、尹大統領弾劾案が可決された場合、ハン代表が代表職を維持するのは難しいという見方もある。親ハン派のチャン・ドンヒョク最高委員は6日、議員総会で「今回の弾劾は必ず阻止しなければならない」とし、「(議員たちの)説得に成功できず弾劾案が可決された場合は、直ちに最高委員を辞任する」と述べた。国民の力の党憲・党規は選出職最高委員5人のうち4人が辞任すれば、非常対策委員会に切り替えるよう定めている。親尹派が「ハン・ドンフン追放」に踏み切り、親尹派のキム・ミンジョン、キム・ジェウォン、イン・ヨハン最高委員がチャン委員に続き辞任すると、ハン代表は職を失うことになる。この場合、新しい院内代表が権限代行を務め、非常対策委体制への転換を準備することになる。党内ではクォン・ソンドン議員が院内代表になった場合、党が「親尹中心」に再編されるとみられている。

 このような気流を意識したかのように、クォン議員はこの日、フェイスブックへの投稿で「私の出馬について、あたかも親尹派が一致団結し、ハン・ドンフン体制を崩壊させるとか、第2のイ・ジュンソク代表事態を作るという陰謀論が持ち上がっている」として「本当に侮蔑的で悪意的なもの」だと批判した。

ソ・ヨンジ、ソン・ジミン、ソン・ヒョンス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

という話だ。しかし、現在空席の裁判官の補充手続きが急速に進んでおり、その可能性は高くない。一部では、憲法裁の弾劾棄却決定を期待するよりも、身柄拘束の時期を最大限遅らせることに重きが置かれているという見方もある。実際、朴槿恵(パク・クネ)元大統領は2017年3月10日に憲法裁の罷免決定が出て21日が過ぎてから検察に拘束された。

 尹大統領側の「退陣拒否」の意思が明確になったことで、与党の雰囲気も変わった。この日、国民の力では弾劾に公開的に賛成する議員が増え、「党論(党の方針)として弾劾案を可決させなければならない」という声まであがった。ソウル地域初当選のキム・ジェソプ議員は同日、国会疎通館で記者会見を開き、「尹大統領弾劾案に賛成するつもりだ。これが大韓民国憲法秩序を建て直す道だ」と述べた。これで国民の力で大統領の弾劾に賛成を表明したのはアン・チョルス、キム・イェジ、キム・サンウク、チョ・ギョンテ議員に続きキム議員まで5人に増えた。

 賛否はまだ決めていないが、弾劾案の表決には参加するという議員も相次いでいる。ペ・ヒョンジン、チン・ジョンオ、ユ・ヨンウォン、キム・テホ、パク・チョンフン、チョン・ソングク議員などはこの日、ハンギョレに表決に参加する意向を示した。ほとんどが親ハン(ドンフン)派か、派閥色の弱い議員たちだ。彼らが全員本会議で弾劾案に賛成票を投じる保証はないが、表決に参加する議員が増えれば弾劾案可決の可能性はそれだけ高くなる。弾劾案が可決されるためには、国民の力で少なくとも8人の賛成票が出なければならないが、キム・サンウク議員は同日、「文化放送」(MBC)のラジオ番組で、「流動的ではあるが、(弾劾に賛成する議員は)10人前後」だと述べた。

 カギとなるのは「元祖親尹(錫悦)派」のクォン・ソンドン議員と(親尹派と対立する)非尹派のキム・テホ議員のうち、誰が12日に新しい院内代表に選ばれるかだ。クォン議員は同日、「党論は弾劾反対だ」とし、「党論を維持しながら、(尹大統領が)いつ頃早期退陣するのが良いかの議論に集中しなければならない」と述べた。一方、キム議員は「(弾劾表決が)人為的に党のための政治に見えてはならない」とし、「(議員が)自由意志を持って投票できる方向で党論が決まるだろう」と述べた。

 ただし、国民の力の内部では、尹大統領弾劾案が可決された場合、ハン代表が代表職を維持するのは難しいという見方もある。親ハン派のチャン・ドンヒョク最高委員は6日、議員総会で「今回の弾劾は必ず阻止しなければならない」とし、「(議員たちの)説得に成功できず弾劾案が可決された場合は、直ちに最高委員を辞任する」と述べた。国民の力の党憲・党規は選出職最高委員5人のうち4人が辞任すれば、非常対策委員会に切り替えるよう定めている。親尹派が「ハン・ドンフン追放」に踏み切り、親尹派のキム・ミンジョン、キム・ジェウォン、イン・ヨハン最高委員がチャン委員に続き辞任すると、ハン代表は職を失うことになる。この場合、新しい院内代表が権限代行を務め、非常対策委体制への転換を準備することになる。党内ではクォン・ソンドン議員が院内代表になった場合、党が「親尹中心」に再編されるとみられている。

 このような気流を意識したかのように、クォン議員はこの日、フェイスブックへの投稿で「私の出馬について、あたかも親尹派が一致団結し、ハン・ドンフン体制を崩壊させるとか、第2のイ・ジュンソク代表事態を作るという陰謀論が持ち上がっている」として「本当に侮蔑的で悪意的なもの」だと批判した。

ソ・ヨンジ、ソン・ジミン、ソン・ヒョンス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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ジャウラニ氏はこの12年間、いわゆる「実利主義者」に転向してトルコなどの支援を受け、13年にわたるシリア内戦と53年にわたるアサド政権を終わらせる台風の目として再登場した。

2024-12-09 | 世界の変化はすすむ
 

アサド政権を追放したシリア反体制派指導者のジャウラニ氏とは?

登録:2024-12-09 04:16 修正:2024-12-09 08:24
 
 
バシャール・アサド政権打倒を宣言したシリア反体制派「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)の指導者アブ・モハメド・アル・ジャウラニ氏が、3月12日シリア北部のバブ・アル=ハワで行った記者会見の途中、携帯電話で自身を撮っている/AFP・聯合ニュース

 シリア内戦が加熱した2011年末、イラクからシリアに武装隊員の一団が潜入していた。イラクのアルカイダ支部である「イラク・イスラム国」(ISI)のメンバーたちだった。そのなかには、アブ・モハメド・アル・ジャウラニ氏もいた。彼らは当時ISIの指導者であり、後にイスラム国(IS)の指導者となるアブ・バクル・アル・バグダディ氏の主導によって派遣された。ジャウラニ氏はシリアで2012年にアルカイダ支部である「ヌスラ戦線」を結成する中核となり、指導者になった。

 12年後の今月8日、シリアのアサド政権の崩壊を宣言した反体制派の指導者が、まさにこのジャウラニ氏だ。ジャウラニ氏はこの12年間、いわゆる「実利主義者」に転向してトルコなどの支援を受け、13年にわたるシリア内戦と53年にわたるアサド政権を終わらせる台風の目として再登場した。

 ジャウラニ氏が指導者を務める反体制派集団「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)は、今でも米国などの国際社会ではテロ団体に指定されている勢力だ。このようなテロ団体の指導者がシリア内戦の勝者として浮上したのは、ジャウラニ氏の卓越した変身能力と適応性、これに加えて、周辺の中東諸国や米国などの西側の政策の乱脈さが混在した結果だ。

 ダマスカス郊外の裕福な家庭で1982年に生まれたジャウラニ氏は、青少年期の2000年、パレスチナで起きた第2次民衆蜂起(インティファーダ)と2001年の9・11テロで、イスラム過激派のジハード主義(聖戦主義)に傾倒した。2003年に米国侵攻したイラク戦争が勃発すると、イラクに行って当時のアブ・ムサブ・アル・ザルカウィ氏の「イラクのアルカイダ」(AQI)に加担し、収監された。米軍のイラク撤退後に釈放され、祖国のシリアで反政府デモが爆発した2011年3月に故郷に帰った。

 ジャウラニ氏の主導のもとで結成されたヌスラ戦線は、最初はアルカイダの支部であることを隠し、大衆的な路線で支持勢力を確保した。ジャウラニ氏は当時、「住民とうまくやってから、われわれが何者なのかについて明かす」とメンバーに指示した。当時、シリアの代表的な反体制派であった親西側の自由シリア軍(FSA)は一貫した指揮体系のない連合体に過ぎず、西側の支援だけを求める不正腐敗が深刻だった。大半が外国にいた自由シリア軍の指導者たちは、「ホテルの塹壕にいる指導者」と揶揄された。

 ヌスラ戦線は違った。指導者もメンバーも内戦の現場で戦闘力と献身性で他の反政府勢力を圧倒し、頭角を現した。親西側かつ世俗主義の反政府勢力との連帯を構築し、厳格な戒律を強制せず、住民のための社会サービスの提供に重点を置いた。スンニ派以外の住民たちにもすそ野を広げた。

 すると米国は、ヌスラ戦線をアルカイダの別称だとしてテロ組織に指定した。シリア全土で住民たちは、「シリアで唯一のテロ勢力はアサド」というスローガンを掲げて行進し、数十の反体制派組織は「われわれは全員ヌスラ戦線だ」として擁護した。2013年を経て、ヌスラ戦線は北西部のイドリブやアレッポなどの地域で完全に拠点を固めた。

 シリアでヌスラ戦線が勢力を拡大すると、母体組織であるISIの指導者のバグダディ氏は2013年4月13日、ヌスラ戦線は自身の組織から派生したものであり、2つの組織を「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)として統合すると発表した。ジャウラニ氏は即座にこれを否定し、参加を拒否した。しかし、大勢はISILに渡り、2014年6月にはシリアとイラクのそれぞれ3分の1を掌握したISに進化した。

 ヌスラ戦線のメンバーの大半がIS側に渡ると、ジャウラニ氏はこの頃から現実主義者または実利主義者に変身し始めた。ジャウラニ氏はアサド政権打倒を主目的に掲げたが、アサド政権の支持基盤であるアラウィー派に対する復讐を禁止し、西側との妥協をさらに追求した。過激化したISは、2015年を過ぎると西側の軍事作戦によって敗退し始め、内戦はロシアの支援を受けたアサド政権の勝利で固まったが、ジャウラニ氏はトルコとの国境地帯であるシリア北西部のイドリブに残存することができた。トルコの支援と西側の黙認があったためだった。ジャウラニ氏は2016年にアルカイダと完全に決別し、HTSを結成した。

 ジャウラニ氏とHTSは、このイドリブで事実上の地方政府の役割を担った。競合する反体制派勢力を徹底的に掃討したが、治安と福祉を提供し、少数宗派の住民も保護した。2020年、シリア内戦は事実上アサド政権の勝利で終わったが、イドリブで生き残ったHTSは、事実上トルコや西側などがアサド政権をけん制できる唯一の道具として残った。名目だけの自由シリア軍に対するイスラエルや西側の秘密裏の支援は、実際にはHTSに流れざるをえなかった。

 昨年10月7日に勃発したガザ戦争は、ジャウラニ氏をふたたび呼び戻した。イスラエルがアサド政権と同盟を組んでいるレバノンのヒスボラやイランなどを猛攻撃し、ロシアもウクライナ戦争で足かせをかけられた。アサド政権は、特にヒスボラが提供した地上兵力が消えたため無力だった。11月27日にイスラエルとヒスボラが休戦するやいなや、ジャウラニ氏のHTSは電撃的な攻勢を始め、わずか11日でダマスカスまで進攻した。背後にはトルコの支援と西側の黙認があった。今回の進攻の過程で自由シリア軍の名義でイスラエルにアサド政権への爆撃を要請したことは、このことをよく示している。

 ジャウラニ氏は6日、CNNのインタビューで「われわれが目標を語るとすれば、革命の目的には今でもこの政権の打倒が残っている。この目的を達成するためには、あらゆる手段を用いることがわれわれの権利だ」と述べた。シリア内戦が終息するかどうかは依然として霧の中だが、ジャウラニ氏とHTSの勢力拡大はその霧をさらに濃くしている。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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