goo blog サービス終了のお知らせ 

大橋みつるの平和ト-ク・・世直しご一緒に!

世界の変化を見ながら世直し提言
朝鮮・韓国・中国・ロシアとの友好促進
日本語版新聞紹介

今では、宇宙に数多くある天体のどこにも生命体がないのであれば、むしろ驚くべきことだと言っても過言ではないほどになった。

2025-02-22 | 世界の変化はすすむ

科学者は宇宙人の存在をどの程度信じているのか

登録:2025-02-20 07:00 修正:2025-02-22 09:42
 
クァク・ノピルの未来の窓 
10人中9人が地球外生命体の存在を「肯定」 
宇宙生物学でも他の分野でも差はない
 
 
科学者は10人中9人の割合で地球外生命体が存在すると考えていることが調査で判明した=ピクサベイ//ハンギョレ新聞社

 地球以外の他の天体における生命体の存在の有無を探求する研究分野を、宇宙生物学と呼ぶ。米国の古生物学者、ジョージ・ゲイロード・シンプソン(1902~1984)は1964年、宇宙生物学について「現時点ではそのテーマの対象が存在することを証明できていない」と酷評した。それから60年が過ぎた現在でも、科学者たちは依然として地球外生命体の存在の有無については正確に分からずにいる。

 しかし、その後、宇宙観測と探査技術の発展により、宇宙船が相次いで直接探査できる天体が増え、太陽系外惑星が次から次へ発見され、地球外生命体の発見に対する期待感は徐々に高まっている。今では、宇宙に数多くある天体のどこにも生命体がないのであれば、むしろ驚くべきことだと言っても過言ではないほどになった。

 地球外生命体の存在の有無は、人間の存在の根源に対する哲学的な質問にもつながる。地球外生命体の存在が確認されたならば、これは地動説や進化論などに続き、人類に新たな認識の地平を切り開く革命的な事件になるはずだ。

■知的生命体の存在には10人中6人が肯定

 宇宙生物学者を含む科学者たちは、はたして宇宙人の存在について、どのような考えを持っているのだろうか。

 英国ダラム大学の哲学者が、宇宙生物学者521人と、生物学や物理学など他分野を研究する科学者534人を対象に、2024年2~6月、地球外生命体の存在の可能性に関する電子メールによるアンケート調査を通じて確認した研究結果を、国際学術誌「ネイチャー天文学」に発表した。

 研究チームが聞いた質問は3つだ。1つ目は、地球外に基本的な形態以上の生命体が存在する可能性、2つ目はバクテリアよりはるかに大きく複雑な生命体が存在する可能性、3つ目は人間と同等または優れた認知能力を備えた地球外生命体が存在する可能性だ。2つ目と3つ目の質問は宇宙生物学者だけに質問された。

 質問の結果、宇宙生物学者の間では、地球外生命体が存在するという確固たる合意または共感があることが明らかになった。宇宙生物学者の86.6%(451人)は、宇宙のどこかに最小限の基本的な形態の生命体が存在する可能性が高いことに同意した。同意しなかった人は2%(10人)に過ぎず、残りの12%(60人)は中立的な意見を表明した。宇宙生物学者ではない科学者たちも、宇宙生物学者と同様に88.4%が地球外生命体の存在に同意した。

 宇宙生物学者だけに与えられた質問、すなわち、複雑な形態の地球外生命体や知的な宇宙人の存在については、それぞれ67.4%、58.2%が同意した。より発展した形態の生命体の存在の可能性については肯定的な回答が多かったが、その割合は有意に低下した。この質問に対する回答率も37~38%で低かった。

 
 
エンケラドゥスの南極の地下の海から氷面層を突き抜けて突き上がる水柱。2009年に探査機カッシーニが撮影した写真=NASA提供//ハンギョレ新聞社

■科学的な証拠は10点満点で7点

 科学における合意は、証拠に基づく場合にのみ意味がある。地球外生命体の存在に対する科学者の合意は、証拠に基づいているのだろうか、あるいは、単なる推測に過ぎないのだろうか。

 研究チームは「地球外生命体が存在するという間接的または理論的な証拠は多くある」とし、地球外生命体の存在の可能性を、科学的証拠ではなく推測に基づいたものだと判断している科学者は、中立の意見を表明した12%に過ぎないとみなせると明らかにした。

 例えば、太陽系だけについても、木星の衛星エウロパや土星の衛星エンケラドゥスの地下の海を含め、生命体が生存可能な環境を持っている天体はいくつもある。火星の表面には、遠い昔に水が流れて形成された川と湖、三角州の跡がそのまま残っている。

 研究チームはしたがって、視野をさらに広く宇宙に拡大すれば、膨大な数の居住可能な天体があると考えることが合理的だと明らかにした。地球も初めから生命体が存在したわけではなく、生命体が生存可能な環境であれば、生命体の歴史が始まる確率は0ではないということだ。

 科学者は現時点で、現在の科学が有する地球外生命体の間接的または理論的証拠がどれほど強力なものと評価しているのだろうか。研究チームが、英国宇宙生物学センターの専門家4人に評価を依頼した結果、4人が付けた証拠の点数は10点満点で7点だった。

 研究チームは今後、5年ごとに同じアンケート調査を継続し、科学界の意見がどのように変化するかを追跡する計画だ。

*論文情報
Surveys of the scientific community on the existence of extraterrestrial life.
Nat Astron (2025).
doi.org/10.1038/s41550-024-02451-0

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1182033.html韓国語原文入力:2025-02-12 14:37
訳M.S
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

習主席がウ議長との接見で「韓中は人文交流を増進し、国民間の友好的な感情を強化しなければならない」と言い、「友好的な感情」を強調したことも目につく。

2025-02-12 | 世界の変化はすすむ
 

習近平主席、

韓国国会議長に手厚いもてなし…中国の「周辺国との関係改善」始まる

登録:2025-02-11 09:29 修正:2025-02-11 11:39
 
習主席「韓中関係を安定的に維持したい」 
トランプ米大統領の圧力への対応
 
 
ウ・ウォンシク国会議長が7日、中国のハルビンで習近平国家主席と会談している=国会議長室提供//ハンギョレ新聞社

 ハルビン冬季アジア大会の開会式に招待され中国を訪問したウ・ウォンシク国会議長が、中国から「目を引く」もてなしを受けた。

 ウ・ウォンシク議長は開会式が行われた7日午後、黒竜江省ハルビン市の太陽島ホテルで習近平国家主席と会談した。習近平主席が韓国の国会議長と接見したのは、2014年12月に当時のチョン・ウィファ国会議長と会って以来。2019年5月に中国を訪問したムン・ヒサン議長、2022年2月の北京冬季五輪の開会式に出席したパク・ピョンソク議長は、習近平主席との面談はなかった。ウ議長は5日、カウンターパートである全国人民代表大会(全人代)常務委員長(国会議長に相当、公式序列3位)と会談したのに続き、習主席とも単独で会談した。習主席とウ議長は約40分にわたり対話した。予定では15分だったが、2倍以上の時間が取られた。

 習主席の発言内容も非常に友好的だった。ウ議長が10月末に慶州(キョンジュ)で開かれるAPEC首脳会議への出席を求めると、習主席は「APEC首脳会議に中国の国家主席が出席するのは慣例」だとし、「関連省庁とともに出席を真剣に考慮している」と述べたと国会議長室が伝えた。

 ウ議長はまた、「中国で韓国コンテンツがなかなか見られない。文化開放を通じて若者たちが互いにコミュニケーションし、友好感情を持つことが必要だ」と述べ、習主席は「文化交流は両国の交流の魅力的な部分であり、その過程で問題が起きることは避けなければならない」と語ったという。ウ議長の発言は、中国で韓国コンテンツを制限するいわゆる「限韓令」の解除を遠まわしに要請したもの。

 中国当局が統制する官営メディアの報道でも、ウ議長に対する中国の手厚い待遇が目立った。8日付の人民日報の2面には、右側のいちばん上に習近平主席とウ議長の会談に関する記事と写真が掲載された。2023年9月に杭州アジア大会の開会式に出席したハン・ドクス首相と習主席の会談の記事と写真が2面下段に掲載されたことに比べても、より良い待遇を受けたものと解釈できる。ウ議長はこの日午後、習主席主宰で多くの国家首脳が参加した冬季アジア大会の宴会にも出席。官営「CCTV」の夕方のメインニュースは、習主席とウ議長が最前列に立って宴会場に入場する場面と二人の会談場面を報道した。

 
 
人民日報の8日付2面の上段に習近平主席とウ・ウォンシク国会議長の会談の記事が掲載された//ハンギョレ新聞社

 中国のウ・ウォンシク議長に対する「もてなし」は、第2次トランプ政権の中国叩きの渦中で、重要な国である韓国との関係を管理しようという中国の戦略的な意志が反映されたものとみることができる。

 国会議長室によると、習主席はこの日、ウ議長に「韓中関係が安定して維持されるよう希望する」として「中国は開放と包容政策を堅固に維持し、デカップリング(脱同調化)に反対する」と語ったという。トランプ米大統領の関税・貿易戦争の余波を念頭に置いた発言だ。習主席は「現在、国際・地域情勢における不確実性が増したが、中国と韓国は当然共に努力し、中韓の戦略的協力パートナー関係の発展を強固にすべきだ」とも強調した。

 米国のシンクタンク「スティムソンセンター」のユン・ソン中国担当局長は、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」への6日の寄稿「中国のトランプ戦略(China's Trump Strategy)」で、中国指導部はトランプ政権の経済圧力に対応するために、国内経済の回復力強化に集中すると同時に、周辺国との関係改善を積極的に目指す「フェンスの修復(Mending Fences)」に取り組んでいると分析した。「周辺地域の安定を通じて余計な外交的紛争を減らすと同時に、米国が同盟国と協力して中国に圧力をかける戦略を弱めることができるため」ということだ。中国は韓国のほか、日本やインドなどとも最近、ビザなし政策、水産物輸入再開、国境紛争管理などで関係改善に積極的に乗り出している。

 5日にウ議長に会った趙楽際・全人代常務委員長は「敏感な問題を円満に処理し、中韓関係の政治的基礎を維持・保護しよう」と語った。「敏感な問題」とは、中国がTHAAD(高高度防衛ミサイル)を指してきた用語だ。

 トランプ大統領が先月27日「同盟とパートナーに提供する米国のミサイル防衛力を増やし加速させる」という条項の含まれる「米国版アイアンドーム」の大統領令に署名し、韓国にTHAADを追加配備する可能性が提起されたことを念頭に置いたものとみられる。趙委員長はまた、この日の会談で「干渉を排除しよう」、「デカップリングを共に阻止しよう」とも述べた。ウ議長は懇談会で、このような発言に関して「趙委員長がそのような話をしたが、何も答えなかった」と述べた。

 12.3内乱事態以降、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が「中国のスパイ」などに言及し中国を非常戒厳宣布の理由に挙げたことを契機に中国関連の陰謀論が急速に拡散する中で、韓国もこのような中国の外交シグナルをうまく利用しながら中国との外交・経済関係を賢明に管理する必要があるとみられる。

 習主席がウ議長との接見で「韓中は人文交流を増進し、国民間の友好的な感情を強化しなければならない」と言い、「友好的な感情」を強調したことも目につく。ウ議長は習主席に限韓令の緩和なども要請した。国家安保戦略研究院のヤン・ガビョン首席研究委員は、「習近平主席とウ議長が会談で韓中間の友好的な『感情』の問題を本格的に取り上げたのは、両国の国民間の『感情』の離反に対する問題意識を持っていることを遠回しに表現したもの」とし、今後韓中間で、人的交流または人文交流などで目に見える交流協力の成果を出すための具体的な動きがあるものとの見通しを示した。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

弾劾案が可決されるためには憲法裁判官9人中6人が賛成しなければならないが、現在3人が空席の6人体制では1人でも反対すれば弾劾案が棄却されるため、「弾劾審判で覆すことを狙ってみる価値がある」と判断した

2024-12-12 | 世界の変化はすすむ
 

棄却狙い弾劾審判選んだ尹大統領…

韓国与党で「表決参加」と「賛成」広がる

登録:2024-12-12 06:45 修正:2024-12-12 08:30
 
 
国民の力のハン・ドンフン代表が11日午後、ソウル汝矣島の国会に入り、取材陣の質問を受けている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「内乱の被疑者」尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が自ら辞任する代わりに、国会の弾劾案可決後、弾劾審判の手続きを踏む方向で方針を決めたことで、今週末に2回目の弾劾案表決を控えた与党「国民の力」の気流も激しく揺れ動いている。

 与党の主要関係者は11日、「尹大統領側は憲法裁判所の弾劾審判の手続きに備えている。チョン・ジンソク大統領秘書室長とホン・チョルホ政務首席などから、『国会が弾劾案を可決すれば、それに合わせて行けばいい。憲法裁判所で弾劾案が必ず認容されるとは限らない』という話を聞いた」とハンギョレに伝えた。国民の力「政局安定TF」が提示した「2月退陣案」と「3月退陣案」いずれも拒否するという意味だ。

 大統領室のこのような気流には、憲法裁判所の審判結果が出るまで権限停止状態で大統領の職を維持しながら、憲法裁の審判を通じて棄却決定を勝ち取るという思惑がある。

 

棄却狙い弾劾審判選んだ尹大統領…韓国与党で「表決参加」と「賛成」広がる

登録:2024-12-12 06:45 修正:2024-12-12 08:30
 
国民の力のハン・ドンフン代表が11日午後、ソウル汝矣島の国会に入り、取材陣の質問を受けている=シン・ソヨン記者//ハンギョレ新聞社

 「内乱の被疑者」尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が自ら辞任する代わりに、国会の弾劾案可決後、弾劾審判の手続きを踏む方向で方針を決めたことで、今週末に2回目の弾劾案表決を控えた与党「国民の力」の気流も激しく揺れ動いている。

 与党の主要関係者は11日、「尹大統領側は憲法裁判所の弾劾審判の手続きに備えている。チョン・ジンソク大統領秘書室長とホン・チョルホ政務首席などから、『国会が弾劾案を可決すれば、それに合わせて行けばいい。憲法裁判所で弾劾案が必ず認容されるとは限らない』という話を聞いた」とハンギョレに伝えた。国民の力「政局安定TF」が提示した「2月退陣案」と「3月退陣案」いずれも拒否するという意味だ。

 大統領室のこのような気流には、憲法裁判所の審判結果が出るまで権限停止状態で大統領の職を維持しながら、憲法裁の審判を通じて棄却決定を勝ち取るという思惑がある。弾劾案が可決されるためには憲法裁判官9人中6人が賛成しなければならないが、現在3人が空席の6人体制では1人でも反対すれば弾劾案が棄却されるため、「弾劾審判で覆すことを狙ってみる価値がある」と判断したという話だ。しかし、現在空席の裁判官の補充手続きが急速に進んでおり、その可能性は高くない。一部では、憲法裁の弾劾棄却決定を期待するよりも、身柄拘束の時期を最大限遅らせることに重きが置かれているという見方もある。実際、朴槿恵(パク・クネ)元大統領は2017年3月10日に憲法裁の罷免決定が出て21日が過ぎてから検察に拘束された。

 尹大統領側の「退陣拒否」の意思が明確になったことで、与党の雰囲気も変わった。この日、国民の力では弾劾に公開的に賛成する議員が増え、「党論(党の方針)として弾劾案を可決させなければならない」という声まであがった。ソウル地域初当選のキム・ジェソプ議員は同日、国会疎通館で記者会見を開き、「尹大統領弾劾案に賛成するつもりだ。これが大韓民国憲法秩序を建て直す道だ」と述べた。これで国民の力で大統領の弾劾に賛成を表明したのはアン・チョルス、キム・イェジ、キム・サンウク、チョ・ギョンテ議員に続きキム議員まで5人に増えた。

 賛否はまだ決めていないが、弾劾案の表決には参加するという議員も相次いでいる。ペ・ヒョンジン、チン・ジョンオ、ユ・ヨンウォン、キム・テホ、パク・チョンフン、チョン・ソングク議員などはこの日、ハンギョレに表決に参加する意向を示した。ほとんどが親ハン(ドンフン)派か、派閥色の弱い議員たちだ。彼らが全員本会議で弾劾案に賛成票を投じる保証はないが、表決に参加する議員が増えれば弾劾案可決の可能性はそれだけ高くなる。弾劾案が可決されるためには、国民の力で少なくとも8人の賛成票が出なければならないが、キム・サンウク議員は同日、「文化放送」(MBC)のラジオ番組で、「流動的ではあるが、(弾劾に賛成する議員は)10人前後」だと述べた。

 カギとなるのは「元祖親尹(錫悦)派」のクォン・ソンドン議員と(親尹派と対立する)非尹派のキム・テホ議員のうち、誰が12日に新しい院内代表に選ばれるかだ。クォン議員は同日、「党論は弾劾反対だ」とし、「党論を維持しながら、(尹大統領が)いつ頃早期退陣するのが良いかの議論に集中しなければならない」と述べた。一方、キム議員は「(弾劾表決が)人為的に党のための政治に見えてはならない」とし、「(議員が)自由意志を持って投票できる方向で党論が決まるだろう」と述べた。

 ただし、国民の力の内部では、尹大統領弾劾案が可決された場合、ハン代表が代表職を維持するのは難しいという見方もある。親ハン派のチャン・ドンヒョク最高委員は6日、議員総会で「今回の弾劾は必ず阻止しなければならない」とし、「(議員たちの)説得に成功できず弾劾案が可決された場合は、直ちに最高委員を辞任する」と述べた。国民の力の党憲・党規は選出職最高委員5人のうち4人が辞任すれば、非常対策委員会に切り替えるよう定めている。親尹派が「ハン・ドンフン追放」に踏み切り、親尹派のキム・ミンジョン、キム・ジェウォン、イン・ヨハン最高委員がチャン委員に続き辞任すると、ハン代表は職を失うことになる。この場合、新しい院内代表が権限代行を務め、非常対策委体制への転換を準備することになる。党内ではクォン・ソンドン議員が院内代表になった場合、党が「親尹中心」に再編されるとみられている。

 このような気流を意識したかのように、クォン議員はこの日、フェイスブックへの投稿で「私の出馬について、あたかも親尹派が一致団結し、ハン・ドンフン体制を崩壊させるとか、第2のイ・ジュンソク代表事態を作るという陰謀論が持ち上がっている」として「本当に侮蔑的で悪意的なもの」だと批判した。

ソ・ヨンジ、ソン・ジミン、ソン・ヒョンス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

という話だ。しかし、現在空席の裁判官の補充手続きが急速に進んでおり、その可能性は高くない。一部では、憲法裁の弾劾棄却決定を期待するよりも、身柄拘束の時期を最大限遅らせることに重きが置かれているという見方もある。実際、朴槿恵(パク・クネ)元大統領は2017年3月10日に憲法裁の罷免決定が出て21日が過ぎてから検察に拘束された。

 尹大統領側の「退陣拒否」の意思が明確になったことで、与党の雰囲気も変わった。この日、国民の力では弾劾に公開的に賛成する議員が増え、「党論(党の方針)として弾劾案を可決させなければならない」という声まであがった。ソウル地域初当選のキム・ジェソプ議員は同日、国会疎通館で記者会見を開き、「尹大統領弾劾案に賛成するつもりだ。これが大韓民国憲法秩序を建て直す道だ」と述べた。これで国民の力で大統領の弾劾に賛成を表明したのはアン・チョルス、キム・イェジ、キム・サンウク、チョ・ギョンテ議員に続きキム議員まで5人に増えた。

 賛否はまだ決めていないが、弾劾案の表決には参加するという議員も相次いでいる。ペ・ヒョンジン、チン・ジョンオ、ユ・ヨンウォン、キム・テホ、パク・チョンフン、チョン・ソングク議員などはこの日、ハンギョレに表決に参加する意向を示した。ほとんどが親ハン(ドンフン)派か、派閥色の弱い議員たちだ。彼らが全員本会議で弾劾案に賛成票を投じる保証はないが、表決に参加する議員が増えれば弾劾案可決の可能性はそれだけ高くなる。弾劾案が可決されるためには、国民の力で少なくとも8人の賛成票が出なければならないが、キム・サンウク議員は同日、「文化放送」(MBC)のラジオ番組で、「流動的ではあるが、(弾劾に賛成する議員は)10人前後」だと述べた。

 カギとなるのは「元祖親尹(錫悦)派」のクォン・ソンドン議員と(親尹派と対立する)非尹派のキム・テホ議員のうち、誰が12日に新しい院内代表に選ばれるかだ。クォン議員は同日、「党論は弾劾反対だ」とし、「党論を維持しながら、(尹大統領が)いつ頃早期退陣するのが良いかの議論に集中しなければならない」と述べた。一方、キム議員は「(弾劾表決が)人為的に党のための政治に見えてはならない」とし、「(議員が)自由意志を持って投票できる方向で党論が決まるだろう」と述べた。

 ただし、国民の力の内部では、尹大統領弾劾案が可決された場合、ハン代表が代表職を維持するのは難しいという見方もある。親ハン派のチャン・ドンヒョク最高委員は6日、議員総会で「今回の弾劾は必ず阻止しなければならない」とし、「(議員たちの)説得に成功できず弾劾案が可決された場合は、直ちに最高委員を辞任する」と述べた。国民の力の党憲・党規は選出職最高委員5人のうち4人が辞任すれば、非常対策委員会に切り替えるよう定めている。親尹派が「ハン・ドンフン追放」に踏み切り、親尹派のキム・ミンジョン、キム・ジェウォン、イン・ヨハン最高委員がチャン委員に続き辞任すると、ハン代表は職を失うことになる。この場合、新しい院内代表が権限代行を務め、非常対策委体制への転換を準備することになる。党内ではクォン・ソンドン議員が院内代表になった場合、党が「親尹中心」に再編されるとみられている。

 このような気流を意識したかのように、クォン議員はこの日、フェイスブックへの投稿で「私の出馬について、あたかも親尹派が一致団結し、ハン・ドンフン体制を崩壊させるとか、第2のイ・ジュンソク代表事態を作るという陰謀論が持ち上がっている」として「本当に侮蔑的で悪意的なもの」だと批判した。

ソ・ヨンジ、ソン・ジミン、ソン・ヒョンス記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジャウラニ氏はこの12年間、いわゆる「実利主義者」に転向してトルコなどの支援を受け、13年にわたるシリア内戦と53年にわたるアサド政権を終わらせる台風の目として再登場した。

2024-12-09 | 世界の変化はすすむ
 

アサド政権を追放したシリア反体制派指導者のジャウラニ氏とは?

登録:2024-12-09 04:16 修正:2024-12-09 08:24
 
 
バシャール・アサド政権打倒を宣言したシリア反体制派「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)の指導者アブ・モハメド・アル・ジャウラニ氏が、3月12日シリア北部のバブ・アル=ハワで行った記者会見の途中、携帯電話で自身を撮っている/AFP・聯合ニュース

 シリア内戦が加熱した2011年末、イラクからシリアに武装隊員の一団が潜入していた。イラクのアルカイダ支部である「イラク・イスラム国」(ISI)のメンバーたちだった。そのなかには、アブ・モハメド・アル・ジャウラニ氏もいた。彼らは当時ISIの指導者であり、後にイスラム国(IS)の指導者となるアブ・バクル・アル・バグダディ氏の主導によって派遣された。ジャウラニ氏はシリアで2012年にアルカイダ支部である「ヌスラ戦線」を結成する中核となり、指導者になった。

 12年後の今月8日、シリアのアサド政権の崩壊を宣言した反体制派の指導者が、まさにこのジャウラニ氏だ。ジャウラニ氏はこの12年間、いわゆる「実利主義者」に転向してトルコなどの支援を受け、13年にわたるシリア内戦と53年にわたるアサド政権を終わらせる台風の目として再登場した。

 ジャウラニ氏が指導者を務める反体制派集団「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)は、今でも米国などの国際社会ではテロ団体に指定されている勢力だ。このようなテロ団体の指導者がシリア内戦の勝者として浮上したのは、ジャウラニ氏の卓越した変身能力と適応性、これに加えて、周辺の中東諸国や米国などの西側の政策の乱脈さが混在した結果だ。

 ダマスカス郊外の裕福な家庭で1982年に生まれたジャウラニ氏は、青少年期の2000年、パレスチナで起きた第2次民衆蜂起(インティファーダ)と2001年の9・11テロで、イスラム過激派のジハード主義(聖戦主義)に傾倒した。2003年に米国侵攻したイラク戦争が勃発すると、イラクに行って当時のアブ・ムサブ・アル・ザルカウィ氏の「イラクのアルカイダ」(AQI)に加担し、収監された。米軍のイラク撤退後に釈放され、祖国のシリアで反政府デモが爆発した2011年3月に故郷に帰った。

 ジャウラニ氏の主導のもとで結成されたヌスラ戦線は、最初はアルカイダの支部であることを隠し、大衆的な路線で支持勢力を確保した。ジャウラニ氏は当時、「住民とうまくやってから、われわれが何者なのかについて明かす」とメンバーに指示した。当時、シリアの代表的な反体制派であった親西側の自由シリア軍(FSA)は一貫した指揮体系のない連合体に過ぎず、西側の支援だけを求める不正腐敗が深刻だった。大半が外国にいた自由シリア軍の指導者たちは、「ホテルの塹壕にいる指導者」と揶揄された。

 ヌスラ戦線は違った。指導者もメンバーも内戦の現場で戦闘力と献身性で他の反政府勢力を圧倒し、頭角を現した。親西側かつ世俗主義の反政府勢力との連帯を構築し、厳格な戒律を強制せず、住民のための社会サービスの提供に重点を置いた。スンニ派以外の住民たちにもすそ野を広げた。

 すると米国は、ヌスラ戦線をアルカイダの別称だとしてテロ組織に指定した。シリア全土で住民たちは、「シリアで唯一のテロ勢力はアサド」というスローガンを掲げて行進し、数十の反体制派組織は「われわれは全員ヌスラ戦線だ」として擁護した。2013年を経て、ヌスラ戦線は北西部のイドリブやアレッポなどの地域で完全に拠点を固めた。

 シリアでヌスラ戦線が勢力を拡大すると、母体組織であるISIの指導者のバグダディ氏は2013年4月13日、ヌスラ戦線は自身の組織から派生したものであり、2つの組織を「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)として統合すると発表した。ジャウラニ氏は即座にこれを否定し、参加を拒否した。しかし、大勢はISILに渡り、2014年6月にはシリアとイラクのそれぞれ3分の1を掌握したISに進化した。

 ヌスラ戦線のメンバーの大半がIS側に渡ると、ジャウラニ氏はこの頃から現実主義者または実利主義者に変身し始めた。ジャウラニ氏はアサド政権打倒を主目的に掲げたが、アサド政権の支持基盤であるアラウィー派に対する復讐を禁止し、西側との妥協をさらに追求した。過激化したISは、2015年を過ぎると西側の軍事作戦によって敗退し始め、内戦はロシアの支援を受けたアサド政権の勝利で固まったが、ジャウラニ氏はトルコとの国境地帯であるシリア北西部のイドリブに残存することができた。トルコの支援と西側の黙認があったためだった。ジャウラニ氏は2016年にアルカイダと完全に決別し、HTSを結成した。

 ジャウラニ氏とHTSは、このイドリブで事実上の地方政府の役割を担った。競合する反体制派勢力を徹底的に掃討したが、治安と福祉を提供し、少数宗派の住民も保護した。2020年、シリア内戦は事実上アサド政権の勝利で終わったが、イドリブで生き残ったHTSは、事実上トルコや西側などがアサド政権をけん制できる唯一の道具として残った。名目だけの自由シリア軍に対するイスラエルや西側の秘密裏の支援は、実際にはHTSに流れざるをえなかった。

 昨年10月7日に勃発したガザ戦争は、ジャウラニ氏をふたたび呼び戻した。イスラエルがアサド政権と同盟を組んでいるレバノンのヒスボラやイランなどを猛攻撃し、ロシアもウクライナ戦争で足かせをかけられた。アサド政権は、特にヒスボラが提供した地上兵力が消えたため無力だった。11月27日にイスラエルとヒスボラが休戦するやいなや、ジャウラニ氏のHTSは電撃的な攻勢を始め、わずか11日でダマスカスまで進攻した。背後にはトルコの支援と西側の黙認があった。今回の進攻の過程で自由シリア軍の名義でイスラエルにアサド政権への爆撃を要請したことは、このことをよく示している。

 ジャウラニ氏は6日、CNNのインタビューで「われわれが目標を語るとすれば、革命の目的には今でもこの政権の打倒が残っている。この目的を達成するためには、あらゆる手段を用いることがわれわれの権利だ」と述べた。シリア内戦が終息するかどうかは依然として霧の中だが、ジャウラニ氏とHTSの勢力拡大はその霧をさらに濃くしている。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハリス副大統領はなぜ土壇場でトランプ前大統領に押されているのでしょうか。在任中に激しく批判されていたトランプ前大統領はいかにして勢いに乗ったのでしょうか。イ・ボニョン・ワシントン特派員に聞く!

2024-11-05 | 世界の変化はすすむ
 

米大統領選挙、ワシントン特派員が説明します 【THE5】

登録:2024-11-05 08:41 修正:2024-11-05 09:56

 

ハリス対トランプ、見通しと分析
 
 
先月30日、米大統領選挙の激戦地であるペンシルバニア州の遊説で、カマラ・ハリス副大統領が演説している。前日の29日、ドナルド・トランプ前大統領も同じ州で支持を訴えた/AFP・聯合ニュース

 <「時間はないけれど、関心がないわけではない!」日常に追われ、ニュースを見る暇もないあなたのために用意しました。ニュースが教えてくれないニュース、見れば見るほど気になるニュースを5つの質問に盛り込みました。The 5が質問し、記者が答えます。>

 米大統領選挙(11月5日)がもうすぐ始まります。7月にジョー・バイデン大統領に代わって民主党候補になったカマラ・ハリス副大統領は共和党候補ドナルド・トランプ前大統領をずっとリードしてきました。最近、トランプ前大統領が追い付いたという世論調査の結果が相次いでいます。しかし、二人の支持率の差はあまりなく、最終的にだれが勝つのか簡単に予測できない状況です。ハリス副大統領はなぜ土壇場でトランプ前大統領に押されているのでしょうか。在任中に激しく批判されていたトランプ前大統領はいかにして勢いに乗ったのでしょうか。イ・ボニョン・ワシントン特派員に聞きました。

[The 1] 今、誰がリードしていますか。本当にトランプ前大統領ですか。

 イ・ボニョン特派員:先月26日に出たエマーソン大学とCNNの世論調査で、双方の支持率は48%対48%で同率でした。その前日に発表されたニューヨーク・タイムズとシエナ大学の世論調査の結果も同じでした。先月23~24日に発表されたウォールストリート・ジャーナルとCNBCの調査では、トランプ前大統領がそれぞれ2ポイントリードしました。選挙終盤に入ってからトランプ氏に傾いているのは事実です。選挙専門サイト「538」は先月27日、トランプ氏とハリス副大統領の勝利確率をそれぞれ54%、45%と予想しました。エコノミストの予測も55%対45%とほぼ同じでした。

 しかし、トランプ氏の勝利を断言することはできません。激戦地7州で僅差なんです。多数の世論調査の結果で二人の支持率の差は1ポイント未満です。同率と分類される所もあります。今、激戦州と呼ばれているのは2016年と2020年の大統領選挙の勝敗を左右したところですから、両者は非常に激しい選挙戦を繰り広げています。一進一退、難兄難弟です。結局ふたを開けてみないと分からないでしょう。激戦州を(二人の候補がそれぞれ)分け合う可能性、一人が総なめする可能性、すべてあると思います」

[The 2] ハリス副大統領は終盤になぜ押されているのですか。

 イ・ボニョン特派員:「上昇気流がなくなった」と言えます。7月末に候補がバイデン大統領からハリス氏に変わった時に一度浮上し、その翌月に開かれた党大会の効果でまた浮上し、9月にテレビ討論で再び浮上しました。マスコミの報道もハリス氏の浮上に役に立ちました。だけど、その次に何もなかったじゃないですか。雰囲気を維持するためには、本人がアピールすることが必要だが、そういうことがなかったようです。何か一つが(有権者の)心を強く惹きつける、そんなことがあるじゃないですか。政策においても、スローガンにおいても、ジェスチャーでも、アドリブでも、そういうのが見えませんでした。

 もちろん、すべてがハリス氏のせいとは言えません。大統領候補について行くだけの副大統領候補だったのに、突然大統領候補になったわけですから。そのような状態でバイデン大統領の遺産、バイデンの選挙戦略と政策をそのまま受け継ぐわけにもいきませんし。ならば、新しいものを掲げなければなりませんが、その点では不十分です。

 今バイデン大統領の業務遂行に対する支持率は40%前後です。米国では、そのレベルの支持率の大統領が所属する政党が政権延長に成功した例がないそうです。最近ハリス氏は、自分の政権はバイデン政権の延長ではないとよく言っています。だからといって、バイデン大統領を否定することもできません。自分がバイデン政権のナンバー2であり、またむやみに批判するとバイデン支持者たちが反発するでしょうから。そういう弱点とジレンマを抱えて選挙を行っているんです。

 
先月21日、米ノースカロライナ州のブラックマウンテンにある図書館で、有権者たちが大統領選挙の期日前投票をしている/EPA・聯合ニュース

[The 3] 伝統的な民主党支持層であるヒスパニックと黒人有権者の一部がハリス氏に背を向けているそうですね。なぜでしょうか。

 イ・ボニョン特派員: まず、経済的不満が大きいようです。黒人とヒスパニック(中南米出身者とその子孫)は全般的に困窮した集団じゃないですか。貯蓄の余力はなく、ただ稼ぎを使い果たしながら暮らしていく、「ペイチェック・ツー・ペイチェック(paycheck to paycheck)」で生きていくと言われています。ペイチェックとは給料でくれる小切手のことです。つまり、その日暮らしという意味です。そのような状況で、物価が高騰しているでしょう。そうでなくてもぎりぎりの暮らしがこれ以上どうしようもない状況になったのです。

 黒人とヒスパニックの中でも、特に若い男性を中心にトランプ氏の方に傾いています。これまで民主党を熱心に支持してきたのに、自分たちに返ってきたのは何か、ハリスは私たちのことは気にも留めない、このような感情があるそうです。また、未登録移住者の問題もあります。ヒスパニック系なら国境を越えてくる中南米出身者を歓迎すると思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。越境者(国境を越える人)たちと雇用をめぐり競争することになるかもしれないじゃないですか。自分たちは米国市民権者ないし永住権者として守らなければならない既得権があるのです。トランプ氏が未登録移住者問題の「解決」を核心公約として掲げたことで、票心が動いているようです。

[The 4] 米国人はなぜトランプ前大統領に2度目のチャンスを与えようとするのですか。在任時代、様々な物議を醸し、民主党に政権を明け渡したじゃないですか。

 イ・ボニョン特派員: この非常にミステリアスな現象はかなり長い説明を要するかもしれません。キーワードは排外主義(外国の人、文化、物、思想などを排斥する主義)、白人民族主義ではないでしょうか。「米国の主人は自分たちでなければならない」と考える人たちが、トランプ氏の露骨な排外主義に支持を送っているのです。

 トランプ氏は人生の見通しが立たず、挫折する人々には福音を伝える人として見られているようです。自分よりずっと下にいたアジア人たちが大都市で良い仕事を見つけて良い暮らしをしており、これまでのエリートたちは自分たちに関心もなく、無知な人扱いをしているようで、税金は徴収して軍産複合体(軍部と大規模防衛産業体の相互依存体制)の懐だけ肥やしているように見える。一方、トランプ氏は報い(retribution)を与えると言っているじゃないですか。ディープステート(隠れた権力集団)、内部の敵を掃討すると。

 つまり、トランプ氏が彼らのために神の鞭になってくれるということです。「私が至らないからなのか」「あの外国から来た輩のせいでこうなったようだが、恥ずかしくて言えない」「ワシントンにいるやつら、アジアのやつらと組んで私たちを裏切っている」という考えを抱いた人々が怒りのはけ口を探していたのです。劣等感を正当な怒りに仕立て上げ、なぜか口に出すことを憚った自分たちの言葉をれっきとした中央政治の言説として認め、力を持った人物が自分たちと同じような言い方をする。こういうことがトランプ氏を彼らの代理人、救世主にしてくれたようです。今、彼らは初めて政治の主人公になったと思うでしょう。トランプ氏を嫌う人たちは詐欺だと思うでしょうが。

 また、トランプの優れた能力の一つは、支持者が(心の中で密かに)望んでいる嘘が上手であることです。トランプ氏はハイチ出身の移民者たちが人の家の犬と猫を食べていると根拠もない嘘をついて批判されたことがあります。ところが、それは支持者たちが望んでいる嘘でした。立証するのは難しいが。その嘘が小さな転換点になったと、私は思っています。その前はマスコミがハリス氏だけに集中してトランプ氏を無視していましたが、あまりにも荒唐無稽な話をするから初めて取り上げ始めたのです。支持者たちは「ほら、中南米移民者たち、あの人たちはそういう人間なのよ」と相づちを打ったのです。支持者たちにカタルシスを与え、時には彼らを楽しませ、ノイズマーケティングの効果をあげられる嘘がトランプ氏の主な武器なんです。

[The 5] 韓国にとっては誰が大統領になった方がより良いですか。

 イ・ボニョン特派員: 誰が米国の大統領になろうと、気を引き締めなければなりません。トランプ氏とハリス氏を比較するのは、こういうことではないでしょうか。一方は眉間にしわを寄せながら、乱暴に腕をひねり、他方は笑顔で優しく腕をひねる。どっちがより悪く、どっちがましなんでしょうか。そんな質問に何の意味があるかと思うかもしれません。苦痛と不快感のぐらいの差は確かにあるでしょう。要は、(韓国の腕を)強くひねろうが、軽くひねろうが、(韓国の)身動きが取れないのは同じということです。

ソン・ギョンファ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
 
 

「プエルトリコはごみの島」

トランプ陣営の暴言にヒスパニック系が動いた(2)

登録:2024-11-05 09:20 修正:2024-11-05 10:34
 
 
ドナルド・トランプ前大統領が2日、ノースカロライナ州での選挙集会で踊っている/ロイター・聯合ニュース

(1の続き)

 選挙の行方を変えうる選挙直前の事件を意味する「オクトーバー・サプライズ」は、米大統領選挙において実際にはどれほどの効果があるのだろうか。米大統領選挙の歴史を振り返る必要がある。

 2010年の中間選挙で惨敗したバラク・オバマ大統領(当時)にとって、2012年の再選はそれほど容易なものではなかった。共和党の大統領候補だったミット・ロムニーは、人格と政策の面で比較的しっかりしていた。第1回の候補討論会でのロムニーの善戦で雰囲気が反転し、世論調査でロムニーは勢いづいた。

 現職のオバマが必勝を期すべき州は、29人の選挙人団を抱えるフロリダだった(今回はペンシルベニアがそのような州だ)。選挙1週間前の10月末にハリケーン「サンディ」がフロリダの一部地域を貫通し、北東部地域にも大きな被害を与えた。「チャンス」をつかんだオバマは、ハリケーンの復旧作業を選挙運動と結び付けた。最も深刻な被害を受けたニュージャージー州の共和党所属の州知事、クリス・クリスティーとともに、オバマ大統領が被災地域を支援して回り、復旧作業を指揮する姿が、連日全国の地上波で放送された。

 ハリケーンの被害に最も敏感な州はフロリダだ。フロリダの有権者がオバマのこのような姿をリアルタイムで見つめる中で選挙は行われた。ミット・ロムニーへと傾くと思われたフロリダでは、それこそ0.7ポイントの票差でオバマが勝った。フロリダ州の29人の選挙人団がオバマのものになった。

 オクトーバー・サプライズが初めて米国の政治用語として登場したのは、1980年の大統領選挙でのことだった。当時のジミー・カーター大統領と挑戦者ロナルド・レーガンとの対決だった。選挙が近づくにつれ、カーター大統領は支持率低迷を打開する方法を考えなければならなくなった。ほぼ1年間イランに抑留されていた52人の米国人の人質を解放できれば、窮地に追い込まれた大統領にとっては外交的に大きな成果になりえた。当然、レーガン陣営はこの可能性に緊張した。レーガン陣営の選挙運動を指揮していたビル・ケイシーは、カーター大統領はそのような「オクトーバー・サプライズ」を計画しうると公開の場で警告した。

 結局、人質解放は大統領選挙の直後となった。レーガン側がイランに対してロビー活動をおこなったかどうかについて下院による調査が行われたが、嫌疑なしとの結論が下された。しかし、後の時代に出たレーガンの伝記では、ビル・ケイシーとイランとの間に意思疎通があったことが示唆されている。

 1992年の挑戦者ビル・クリントンと父ブッシュ大統領との大統領選挙では、「イラン・コントラ」スキャンダルによる選挙直前でのレーガン政権の国防長官を務めたキャスパー・ワインバーガーの起訴がオクトーバー・サプライズだった。

 米国が捕虜となっていた米国人を解放するためにイランに武器を違法に輸出し、その販売収益をニカラグアの反政府組織コントラに送っていたというこの事件は、レーガン政権をほぼ崩壊にまで追い詰めた。レーガン政権の副大統領だったブッシュ大統領は、この事件について国防長官よりも多くのことを知っていたのではないか、との疑惑が選挙中に広がり、最終的にブッシュ大統領はクリントンに敗北し、再選に失敗した。

 
 
米国のカマラ・ハリス副大統領が2日、ノースカロライナ州で開かれた選挙集会で演説している/ロイター・聯合ニュース

 2000年のジョージ・ブッシュとアル・ゴアの対決では、選挙直前にある記者が24年前にジョージ・ブッシュが飲酒運転で摘発されていたことを暴露した。ブッシュのキャンペーン戦略家を務めたカール・ローブは選挙後、この暴露によってブッシュは最大で5つ州の投票で大きな損失を被ったと語った。この選挙でアル・ゴアは、全国的な大衆投票では大きく勝利したものの、選挙人団の数で決定的だったフロリダ州で再集計が行われず、勝者にはなれなかった。

 2016年のトランプとヒラリー・クリントンの対決でのオクトーバー・サプライズは、今も生々しく語られている。当時、米連邦捜査局(FBI)の長官だったジェームズ・コミーが、投票日の11日前にヒラリー・クリントンの電子メールに対する再捜査を発表し、選挙2日前に嫌疑なしとして終結を発表したのだ。

 2017年、CNNの看板アンカー、アンダーソン・クーパーとのインタビューでヒラリー・クリントンは、2016年の大統領選挙での敗北はコミー長官のeメール再捜査指示のせいだとしつつ、コミーは「歴史を永遠に変えたと考えている」と語っている。

 米国の大統領選挙は巨大な国家で実施される非常に複雑で大きな選挙だが、選挙人団制度のせいで実際には激戦州の浮動層密集地域であるわずか数カ所で勝者が決まるという、非常に「狭い」選挙となっている。今年の選挙は、ペンシルべニア州の4つから5つの選挙区で、数千票差で勝者と敗者が分かれる。もちろん事前投票、早期投票、郵便投票ですでに多くの有権者が投票を済ませているが、彼らの大半は選挙キャンペーンによっては動かない固定支持層だ。選挙終盤まで決定を留保している浮動層有権者をターゲットにしたキャンペーンは、運動員が直に町の中を駆け回るというやり方以外はない。トランプも4年前にそれを疎かにして敗北しており、8年前のヒラリーもこのやり方を無視して、勝ったかに思われた選挙で敗者となった。

 米大統領選挙の勝者はどちらか。選挙はふたを開けてみないと分からない。

キム・ドンソク|米州韓人有権者連帯(KAGC)代表 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本を含む国連加盟国の6割を超える124カ国が賛成しました。反対はイスラエルや米国など14カ国にとどまり、棄権は英独など43カ国でした。

2024-09-20 | 世界の変化はすすむ

2024年9月20日(金)

国連総会、イスラエル断罪

占領終結求める決議採択

 【ワシントン=洞口昇幸】国連総会(193カ国)は18日に開いた特別会合で、イスラエルにパレスチナ占領政策を1年以内に終わらせるよう求める決議を採択しました。日本を含む国連加盟国の6割を超える124カ国が賛成しました。反対はイスラエルや米国など14カ国にとどまり、棄権は英独など43カ国でした。

 24日から始まる国連総会一般討論演説にはイスラエルのネタニヤフ首相が参加する予定です。国連総会はそれに先立って圧倒的多数の国の賛成でイスラエルの占領政策を断罪しました。ロイター通信は「決議採択は世界の首脳がニューヨークに集まる前にイスラエルを孤立させた」と指摘しました。

 パレスチナのマンスール国連大使は「自由と正義を求める闘いでの転換点になった」と採択を歓迎しました。

 決議は国際司法裁判所(ICJ)が7月に出した勧告的意見をふまえてパレスチナが提出しました。勧告的意見は、イスラエルが1967年に占領したヨルダン川西岸、ガザ、東エルサレムに継続的に駐留していることを国際法違反だとし、占領を終わらせる義務があるとしました。

 決議はイスラエルに対し採択から12カ月以内に占領を終結させるよう要求。あらゆる入植活動の即時停止、占領開始後に接収した土地や資産の返還などを求めました。

 討論では「平和や安全を求める権利があるからといって占領の権利は認められない」(セントビンセント・グレナディーン)など、イスラエルを批判する発言が続きました。

 米メディアによると、イスラエルの代表は決議について「恥ずべき決定」などと述べ、拒否する姿勢を示しました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

法曹界にAIブームが起きている。韓国国内だけで15社以上のリーガルテック企業が法律AIサービスを運営している。機能も日を追うごとに向上している。

2024-09-18 | 世界の変化はすすむ
 

「1分で意見書の草案完成」…法曹界を揺るがす「法律AI」=韓国

登録:2024-09-13 07:40 修正:2024-09-17 07:03

 

15社を超えるリーガルテック企業でサービス運営 
雇用減少、誤った判例でっち上げる「ハルシネーション」などの問題も
 
 
                                             ゲッティイメージズバンクより//ハンギョレ新聞社

 「このような労災事故が発生した時は、どのような争点が問題になるだろうか」

 法律事務所入社1年目のキム・ジヌ弁護士(29)が、法理的争点をまとめてくれる弁護士専用人工知能(AI)の検索バーに質問を書いた。そうやって絞られた争点の具体的な判例を探す時も、AI判例検索サービスを活用する。キム弁護士は「パートナー弁護士」(法律事務所の共同経営者)の業務を補助する「アソシエイト弁護士」だ。キム弁護士は「AIサービスを活用すると、自分が『アソシエイト弁護士』とともに仕事をしているような気がする。検索結果を自分で確認する必要があるが、それでもはるかに業務が速くなった」と語った。

 法曹界にAIブームが起きている。韓国国内だけで15社以上のリーガルテック企業が法律AIサービスを運営している。機能も日を追うごとに向上している。判例検索の提供にとどまっていたAIは、今や資料分析と書面作成まで領域を拡大している。「ロートーク」(デジタル法律相談サービス)を運営するリーガルテック企業の「ローアンドカンパニー」が最近発売したAIサービス「スーパーローヤー」は、2カ月で3500人以上の会員を集めた。スーパーローヤーは法律の検索、書面草案の作成、文書要約、事件基盤対話などのサービスを提供する。主要争点の整理や判例の検索だけでなく、申請書や書面草案の作成などを1分30秒以内に処理することも可能だ。LBOXが4月にベータバージョンを発売した「LBOX AI」は、従来の文書要約機能などに加え、判例検索サービスを新たに導入した。LBOXに会員登録した弁護士は2万人以上で、この内「LBOX AI」の会員は約4500人だ。

 リーガルAIソリューション企業の「BHSN」は1月から企業契約や法務管理、訴訟記録分析を支援するクラウド基盤AIサービスを運営している。このサービスは企業を対象に契約管理ソリューション(CLM)、企業法務ソリューション(ELM)などを支援する。

 韓国政府もリーガルテック事業の振興に積極的に乗り出している。韓国知能情報社会振興院(NIA)は「超巨大AI拡散環境づくり事業」の遂行企業としてインテルコンとLBOXを選び、政府支援金を通じてサービス開発を後押しする予定だ。情報通信産業振興院(NIPA)はローアンドカンパニーなどを「AI法律補助サービス拡散事業新規課題」企業に指定した。大手の法律事務所も専門チームを構成したり、独自のデータベース基盤システムを運営したりしている。国内最大の法律事務所の「金・張法律事務所(Kim & Chang)」はデジタルフォレンジックシステムにAIを融合させており、「法務法人律村」は生成AIタスクフォース(TF)を構成し、国内の主要情報通信(IT)企業と協力して独自の法律データを開発している。独自のAIリーガルテックシステムを構築したり、チャットボットサービスの開発などを進めている法律事務所もある。

 しかし、法曹人のオンラインコミュニティでは、法律AIサービスが続々と発売されたことで、新人弁護士の働き口が減るのではないかという懸念が広がっている。入社1年目のコ・ジヘ弁護士(27)は、「現在もアソシエイト弁護士が1時間かけて判例を検索しなければならないことを、法律AIサービスは1分以内に済ませる。さらに技術が発展すれば、すべての草案をAIが作成し、新人弁護士は必要がなくなるかもしれない」とし、「弁護士雇用市場の悪化につながるだろう」と語った。

 技術的な問題もある。代表的なのが「幻覚(ハルシネーション)」問題だ。ハルシネーションはAIが実際にはない情報を生成したり、事実ではない情報を事実のように言う現象だ。企業はハルシネーション現象を最小化すると言っているが、誤った判例を紹介するなど問題が発生する可能性がある。今年3月、米国ではある弁護士がリーガルテックサービスを活用したが、存在しない判例を裁判所に提出し、1年間の弁護士資格停止処分を受けた事例もある。これについてLBOXのキム・ユスン取締役は「弁護士一人が生みだせる生産力を上げる道具であるため、市場に及ぼす肯定的な効果の方が大きいだろう」とし、「法律文書を技術を通じて一度スクリーニングして提供するため、ハルシネーションをかなり抑えている」と語った。

 AIサービスの規制をどこまですべきかも争点になっている。法律事務所「大陸亜州」は3月、チャットボットが一般人の法律的質問に答える「AI大陸亜州」サービスを始めたが、大韓弁護士協会(弁協)の調査委員会は9日、弁護士ではなくAIで弁護士業務をすることは弁護士法違反だとし、懲戒委員会に付託することにした。ただし、弁護士を対象にしたAIサービスについては、まだ慎重な立場だ。弁協関係者は「慎重なアプローチが必要であり、むやみに技術発展を阻み、懲戒をしようとしているわけではない」とし、「技術の形および目的、扱う者に関する内容などを総合的に検討している」と語った。

 法務部も2021年9月、学界と実務専門家などで構成された「リーガルテックTF」を立ち上げ、産業育成のための制度改善、弁護士制度の公共性確保策などを議論してきたが、3年が過ぎてもこれといったガイドラインなどを出せずにいる。法務部関係者は「産業界と弁護士団体など各界各層の意見を取りまとめ、議論を続けていく計画」だと話した。

チャン・ヒョヌン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

 開会式のチケットの値段は900~2700ユーロ(約15~46万円)に達します。SFAは、得た収入を労働者に適切に還元するよう要求しています。

2024-07-25 | 世界の変化はすすむ

2024年7月25日(木)

パリ五輪ダンサー“拳”非正規の低賃金に抗議

開会式にスト通告

 26日に開幕するパリ五輪の開会式に出演するダンサーら200人が23日、会場となるセーヌ川沿いで一斉に拳を突き上げ、労働条件と出演者間の報酬格差の改善を求める抗議行動をしました。アーティストらでつくる労組はこの問題で、開会式当日のスト実施を通告しています。

 労組「舞台芸術家組合(SFA)」によると、開会式に出演予定の3000人のダンサーや俳優のうち、非正規雇用の200人以上が低賃金や無償での労働を余儀なくされ、交通費や宿泊費の支給もありません。他方、劇団に所属し団体交渉が可能だった演者には出演料として1600ユーロ(約27万円)の報酬が支払われます。

 SFAは、すべての出演者に団体協約に基づく報酬を支払うよう要求し、開会式でのストを通告。「明白な不平等と差別」が改善されなければ「パラリンピック開会式のリハーサルでもストを実施せざるを得ない」と警告しました。

 開会式のチケットの値段は900~2700ユーロ(約15~46万円)に達します。SFAは、得た収入を労働者に適切に還元するよう要求しています。

 拳を突き上げるポーズは、1968年のメキシコ五輪の陸上競技で表彰台に立った米国代表の黒人選手が人種差別への抗議として行ったもの。今回の抗議では「労働条件への不満を示す」(SFA)ため採用されました。(桑野白馬)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

 トランプ氏は、民主党のバイデン現政権下で「米国は衰退の一途をたどっている」と述べて批判を展開。「壊滅的なインフレ危機を直ちに終わらせる」と述べました。

2024-07-20 | 世界の変化はすすむ

2024年7月20日(土)

2024米大統領選

トランプ氏、指名受諾演説 共和党大会

団結よびかけるも反省なし

 【ミルウォーキー(米ウィスコンシン州)=洞口昇幸】11月の米大統領選で再選を狙うトランプ前大統領(78)は当地で開かれている共和党全国大会最終日の18日、党大統領候補の指名受諾演説を行いました。トランプ氏は「米国の半分ではなく、全体のための大統領になる」などと述べ、自身の勝利に向けた“団結”を呼び掛けました。

 銃撃で右耳を負傷した13日の事件後の初演説です。命に別状がなかったことについて「私がこの場に立っているのは全能の神の恩恵によるものだ」と狂信的な支持者と同様のことを主張しました。

 「われわれの社会の不和と分断は癒やされなければならない。われわれは米国人として一つの運命と共通の運命で結ばれている」と述べました。

 しかし、不和や分断につながったこれまでの自身の人種差別的な発言や憎悪を助長する言動、前回大統領選での敗北を認めない態度が連邦議会襲撃事件を招いたことなどについてほとんど触れず、反省の態度を示すことはありませんでした。

 トランプ氏は、民主党のバイデン現政権下で「米国は衰退の一途をたどっている」と述べて批判を展開。「壊滅的なインフレ危機を直ちに終わらせる」と述べました。

 また移民について「彼らは監獄から来ている」と敵視するなど従来の主張を繰り返しました。1期目の時に着手した南部国境での壁建設を完成させるとし、「国境を閉鎖し、不法移民の危機を終わらせる」と公約しました。

 ロシアのウクライナへの侵略戦争、イスラエルのパレスチナ自治区ガザへの軍事侵攻などを巡っては、「私は1本の電話で戦争を止めることができる」と述べたものの、その根拠や具体的な措置は明らかにしませんでした。「米軍を再建する」と語り、ミサイル防衛の拡大強化も主張しました。

 トランプ氏は、飲食店で働く人などが受け取るチップへの課税廃止を含む「労働者への大規模減税」を掲げました。一方で1期目よりも大幅な大企業・富裕層減税を行うことも強調しました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

裏金事件にとどまらず、今、自民党政治は、暮らしと経済、平和と外交、ジェンダー平等をはじめ人権、あらゆる面でどん詰まりに陥っています。新しい政治への転換が求められているのが、今の情勢です。

2024-07-15 | 世界の変化はすすむ

2024年7月15日(月)

日本共産党創立102周年記念講演会

いま日本を変える歴史的チャンス―暮らし・平和・人権、そして未来社会

幹部会委員長 田村智子

 日本共産党の田村智子委員長が13日に党本部で行った党創立102周年記念講演は次の通りです。


 会場のみなさん、オンラインでご参加のみなさん、こんにちは。日本共産党創立102周年記念講演会にご参加いただき、ありがとうございます。そしてまた、4人のみなさんから大変温かい激励のメッセージをいただいたことにも心から感謝申し上げます。改めまして、田村智子です。初めての記念講演で、少々緊張していますが、心を込めてお話ししますので、どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)

都知事選挙について

写真

(写真)講演する田村智子委員長=13日、党本部

 まず、7日に行われた東京都知事選挙についてです。自民党政治への国民の怒りに応え、また都政を変えようと、蓮舫さんが勇気をもってチャレンジし大奮闘されたことに、心から敬意を表します。猛暑のなか奮闘されたみなさん、ご支援いただいたみなさんにも、心から感謝と敬意を表するものです。

 結果は残念なものでしたが、市民のみなさんと心を通わせてたたかう選挙となったことは、今後につながる大切な財産になると思います。先日、蓮舫さんが、応援した国会議員の事務所を訪ねてお礼に回られました。私も直接お話しし、健闘をたたえましたが、「共産党の応援に心から感謝している。『ひとり街宣』が広がったことは、新しい民主主義への一歩だと思っている」と元気に話されていました。その通りだと思います。

 この選挙からどういう教訓を引き出すか、都民のみなさんの声に耳を傾けて、ともに選挙をたたかった市民と政党のみなさんと、率直に議論をしていきたいと考えています。

 自民党は、都知事選挙では姿をあらわすこともできず、都議補欠選挙で8選挙区で候補者を立てましたが、2議席獲得にとどまり、議席を後退させました。このことをみても、自民党への強い怒りがはっきりと示されたことは明らかです。

 私たちが候補者を立ててたたかった都議補欠選挙では、どこも前回の得票を大きく伸ばしています。特に、板橋区では、立憲民主党の都議、社民党の区議、そして市民のみなさんが最初から最後まで一緒に街頭に立って応援し、板橋区での過去最高の得票で、下村博文元文科大臣が応援する自民党候補者に肉薄しました。

 私たちは、政治を変える力は「市民と野党の共闘」にあり、日本共産党を伸ばすことにあると確信していますが、きょうの講演のテーマにある通り、自民党政治を変える歴史的チャンスの情勢が、この選挙でも示されたと、このことをまず強調したいと思います。

裏金事件。自民党の本性があらわになった

 今年、これまでに行われた選挙では、自民党が候補者を出せない、あるいはわが身を隠さなければ選挙をたたかえないという事態となっています。裏金事件への国民の怒りは、決しておさまっていません。しかも、スキャンダルへの怒りというにとどまらず、裏金の温床である企業・団体献金を禁止すべきという世論が多数になったことは、大変重要です。

 30年前、政治腐敗への国民の怒りを小選挙区制導入にすりかえ、企業献金を温存する偽物の「政治改革」が、当時の非自民政権と自民党の談合によって強行されました。この時、これに真っ向から反対を貫いたのは日本共産党だけでした。それ以降、わが党は、企業・団体献金禁止の法案を、繰り返し提出しつづけてきました。先の国会で、これが国民多数の世論となり、初めて他の野党からも禁止法案が提出されました。いまや拒否するのは自民党だけとなったことは、わが党の歴史的奮闘の先駆性を鮮やかに示すものです。

 自民党は、世論がどれほど強まろうとも、裏金事件の真相究明にも、企業・団体献金の禁止にも、一歩も踏み出すことはできません。財界・大企業に政治資金を提供してもらい、その目先の利益のために貢献する、それが自民党の姿だからです。

 こうした自民党の本性を暴き、窮地に追い詰めているのが、日本共産党だと、胸をはって知らせていこうではありませんか(拍手)。「しんぶん赤旗」日曜版の決定的スクープ、国会での追及、地域で「しんぶん赤旗」を配達し、対話や宣伝にとりくむ党員のみなさん、後援会や読者のみなさん、まさにみんなで、国民の世論を広げ、自民党を追い詰めています。

 ここで終わったことにしたら、裏金議員をはじめ自民党を喜ばせるだけです。組織的犯罪である裏金事件の真相究明、そして、企業・団体献金の全面禁止、政党助成金制度の撤廃へ、さらに世論と運動を広げていこうではありませんか。(拍手)

講演のテーマについて

 裏金事件にとどまらず、今、自民党政治は、暮らしと経済、平和と外交、ジェンダー平等をはじめ人権、あらゆる面でどん詰まりに陥っています。新しい政治への転換が求められているのが、今の情勢です。

 2012年12月に自民党が政権に返り咲いてから、今年で12年。安倍・菅・岸田政権によって、自民党政治がいまどういう地点にあるのか、そして、日本共産党は政治と社会をどう変えようとしているのか、暮らし・平和・人権そして未来社会についてお話をいたします。

1 暮らし・経済―アベノミクスがもたらした“どん詰まり”。「暮らし応援」の「経済再生プラン」で政策の転換を

「生活が苦しい」が過去最悪の6割―アベノミクスの12年の結果

 まず一つ目に、暮らしと経済です。「何より、暮らしに希望がほしい」、みなさんの実感ではないでしょうか。今、政府が発表するさまざまな調査は、私たちの暮らしがかつてないほどに苦しくなっていることを示すものばかりです。

 今月、厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」では、「生活が苦しい」が59・6%、統計が始まった1986年以降、最悪となりました。内訳をみると、高齢者で59%、18歳未満の子どもがいる世帯では65%、どちらも前の年から10ポイント以上も増えていて、物価高騰で「もう節約も限界。なんとかしてほしい」という悲鳴が聞こえてきます。

 「生活が苦しい」という実態はどういうものか、東京都内で10年以上、街頭での食料支援や生活相談に取り組み続けている、谷川智行さん――医師で党中央の政策委員会副責任者でもあります、この谷川さんにお聞きしました。

 ――コロナ危機の前は、食料を受け取りにくるのは、住居を失った方がほとんどだった。最近は、圧倒的に、仕事がある、住まいがある、保険証がある、けれど長期にわたる賃金の低迷、年金カット、そこに物価高騰で、きょう、あすの食事に事欠くという方々が増えている。派遣で働く40代の女性は収入が安定せず、国民健康保険料は何とか払っているが、生活がとても苦しく、体調が悪くても病院には行けない。「今後のことを相談しましょう」と持ちかけるが、「今は何も考えられません。毎日生きているだけで精いっぱいです」と、毎週、食料やマスク、ばんそうこうなどを受け取って帰られる。次の支援につながればと祈るような思いで渡している――お話を聞いて胸が痛くなる事例ばかりです。

 食料支援の現場からは、物価高騰の影響があまりに大きいという声が、どこでも聞かれます。なぜ物価高騰が止まらないのか。アベノミクスの「異次元の金融緩和」が、異常円安をもたらしていることが最大の要因です。エネルギーも食料も輸入に依存しているために、異常円安が食料品、電気・ガス料金の高騰に直結しています。

 何よりも今の深刻な生活苦の根本には、実質賃金が減り続けているという大問題があります。実質賃金は、1996年をピークに年74万円も減っていますが、2012年から23年でみても33万6000円も減少しています。そして、2度にわたる消費税率の引き上げで17・3兆円、人口で割れば、国民1人あたり13万9000円も消費税負担が増えてしまった。かつてない生活苦は、まさにアベノミクス以来12年の自民党政治の結果なのです。

大企業と富裕層に巨額の利益が流れ込んだ

 一方で、大企業と富裕層はどうでしょうか。大企業の純利益はアベノミクスからの10年間で3倍(12年→22年)、内部留保は178兆円増えて511兆円。日本の大資産家、上位40人の資産は、12年間(12年→24年)で、7・7兆円から29・5兆円へと3・8倍にも膨れ上がりました。

 例えば、トヨタ自動車は、今年3月期決算で5兆円の利益です。史上最高益を更新し続けています。このうち2兆円が配当などで株主に回る。一方で、賃金総額は46億円増えただけ。賃金に回ったのは、利益に対して0・09%、1000分の1、ほとんど見えないほどということになってしまいます。

 それでは会長である豊田章男氏の役員報酬はどうでしょうか。前年比6割増の16億2200万円。つまりは60%の賃上げということになります。豊田会長は大株主でもあるので、これ以外に配当を17億6000万円、あわせて33億8000万円を1年間で受け取っています。

 下請け企業にはどうでしょうか。トヨタは、24年度に、取引企業への支払いを3000億円増やすと言いますが、これに対して、日本商工会議所の小林健会頭が次のように述べています。

 「本当はその実もうけの中に、経費として下請けに値増し分を払ってやる分が1兆円ぐらいあってしかるべき」「大企業活動のコストとして必要なコストとしてあらかじめ入れておかないとおかしい」――後から払うんじゃない、最初から1兆円ぐらい中小企業に渡る分だったじゃないか、こういうお話ですね。日本商工会議所は、経済3団体の一つですが、小林会頭の指摘は全くその通り、私も同感だとお伝えしたいと思います。(拍手)

 今月5日、トヨタの子会社が下請法違反で行政指導を受けました。下請け会社6万社に対して不当な費用負担を強い、賃上げの阻害までしていたということです。となれば、そもそもが、中小企業から搾り取った利益ということではありませんか。

 安倍・菅・岸田政権の12年、大企業の内部留保、富裕層の所得や資産へと巨額のお金が流れこみ、ためこまれ続けています。その一方で多くの国民が、生活苦に追い詰められ、中小企業も苦しんでいます。こんな不公正でゆがんだ状態を、自民党政治は変えようともしません。変える策もありません。まさに“どん詰まり”状態に陥っているのです。

「トリクルダウン」(大企業の利益優先)から「ボトムアップ」(暮らし優先)への大転換が、経済再生・暮らしに希望の道

 日本共産党は、このどん詰まりを打開しようと、昨年9月「経済再生プラン」を打ち出しました。(1)政治の責任で賃上げと待遇改善をすすめる――人間を大切にする働き方改革、(2)消費税減税、社会保障充実、教育費負担軽減――暮らしを支え格差をただす税・財政改革、(3)気候危機打開、エネルギーと食料自給率向上――持続可能な経済社会への改革。この三つの改革を柱とした政策提言です。党中央のホームページにも全文が載っていますので、ぜひお読みください。

 ここでは、どういう立場での政策なのかをお話しします。アベノミクスは、「まずは大企業をもうけさせること。そうすれば、賃上げにつながる」という、典型的な「トリクルダウン」(利益がしたたり落ちる)という政策です。2013年アベノミクスが始まったときの国会論戦を振り返ると、日本共産党は「政治の責任で賃上げが必要」だと繰り返し求めましたが、当時の安倍首相は「何が足りなかったかと言えば、思い切った金融緩和」あるいは「成長戦略で、企業収益を向上させ、雇用拡大や賃金上昇という好循環をもたらす」という答弁に終始しています。まさに「トリクルダウン」です。

 しかしどんなに待っても、したたり落ちてこなかった。もう失敗を認めて、「ボトムアップ」――暮らし最優先の経済政策に転換しよう、というのが「経済再生プラン」です。

 アベノミクス以降増えた大企業の内部留保に課税して、中小企業への直接支援として賃上げにそのお金を回す新たな仕組みをつくる、最低賃金1500円、ケア労働者の賃上げを政治の責任でなど、大幅賃上げの現実的な政策を提案しています。

 税金の集め方、使い方も同じ考え方です。アベノミクスは、大企業に減税しながら消費税を増税しました。大企業の税金の負担が軽くなれば経済が活性化して、いずれ暮らしに回る。そのために国民の家計に負担を増やしても仕方がない、ここでも「トリクルダウン」です。これを転換して、利益を大きく増やし巨額の資産をつくった大企業と富裕層に、応分の負担をしてもらい、消費税を減税する。教育費の負担を軽くし、社会保障を充実する。「暮らしの応援」という「ボトムアップ」こそ、国民の切実な願いに応え、格差と貧困をなくしていく。同時に、経済を活性化させるという改革提言になっています。

 また、再生可能エネルギーを大幅に増やし、エネルギー100%自給の戦略をもつ。そして、食料も「いくらでも輸入できる」という時代は終わった、3割台に落ち込んだ食料自給率を、早く50%に回復させる戦略をもち、農業・畜産・酪農の危機を打開することも柱にすえました。

 明日に希望がみえてくる経済政策ではないでしょうか。私たちは今、各地でシンポジウムや懇談にとりくんでいますが、大阪では、関西の経済団体に「経済再生プラン」を届けて懇談したところ、共産党が真剣に日本の経済のことを考えていることに共感が表明されたということです。

 日本の経済の現状をどうにかしたいというのは、経営者も同じではないでしょうか。大企業にとっても、投資にも賃金にも回らず内部留保が膨張し続けるというのは、健全な企業経営ではないでしょう。お金は生きた経済に回らなければ、新たな富を生み出すこともありません。しかし、一つひとつの企業では身動きがとれない。だからこそ、ゆがみをただし、経済を再生させる政治の転換が求められているのではないでしょうか。

職場のたたかい、各分野の運動を広げてこそ実現できる

 それでも、政治の転換には、妨害・抵抗があるのが世の常です。国民的な運動、たたかいのなかにこそ、「経済再生プラン」実現の希望があります。私たちは、今とりくまれている運動・たたかいに連帯して、それを、政治を変える力につなげていく決意です。

職場のたたかい――闘う労働組合とともに

 賃上げ・労働条件の待遇改善は、なんといっても職場のたたかいがあってこそ実現します。今、日本でも世界でも、闘う労働組合、ここに注目と期待が寄せられていることをご存じでしょうか。

 アメリカの自動車産業の労働組合、全米自動車労組(UAW)は、昨年、米国ビッグ3の自動車メーカーの主要工場で、大規模なストライキをたたかいました。7週間に及ぶストライキをたたかったといわれています。「経営トップの役員報酬は4年間で40%増えている。ならば労働者の賃金も4割アップを」と要求をかかげ、4年半で20~30%の大幅賃上げを勝ち取ったのです。このたたかいは世界の注目を集め、多くの労働者に勇気を与えています。

 実はこのストライキの先頭に立ったショーン・フェイン委員長が、全労連にビデオメッセージを送っていて、私も全労連のユーチューブチャンネルで見てみましたが、実に感動的なメッセージです。5分30秒を超えるメッセージですが、その一部を紹介します。

 「米国の地から、みなさんの春闘を注視し、公正な経済を目指す闘いに連帯します」「大企業の強欲はとどまるところを知らず、世界中のどこででも1ドルでも多く労働者から搾取しようとします」「人間性を求める私たちの闘いは国境を超えてつながっています。資本に国境はありません。労働者にも国境はないはずです。職場と家庭でより良い人生を実現するために立ち上がっている全労連と労働者のみなさんに、UAWが連帯していることを誇りに思います。みなさんの闘いは私たちの闘いです。みなさんが歩む道は私たちの歩む道です。企業経営者に目にもの見せてやりましょう」

 実に熱いメッセージですね。こうしたメッセージが届いたのは、全労連を先頭とした春闘が、ストライキも構えて大幅賃上げを勝ち取ろうとしている、そのことが、国境を超えて伝わっているからだと思います。

 日本医労連はストライキを正面にすえて春闘をたたかいました。「ストライキによって労使対等になれることを、実感できた」「看護師や医療人だけでなく、患者さんや地域とともに変えていきたい」「看護師の賃上げだけを要求するのではなく、すべての労働者の底上げが必要」――看護師をはじめ病院の職員のみなさんがストライキに団結するというのは、相当な勇気も決断も求められるものだと思います。たたかいの中で、自分の生活のためだけでなく、労働者全体のため、患者さんや地域のため、連帯し団結することが大切だと語られていることに、敬意を表し連帯したいと思います。

 非正規で働くみなさんが、職場の違いを超えて労働組合に結集して、非正規春闘がたたかわれたことも大きな激励になっています。また、公務職場の労働組合に、非正規の職員が結集して、理不尽な雇い止めをやめろと声をあげています。このもとで、ハローワークなど国家公務の職場で起きている、非正規は3年で機械的に雇い止めという国の方針がついに見直されました。この見直しは自治体にも波及するでしょう。私も国会で、その仕事が継続しながら、その人が必要とされているのに機械的に雇い止めをするのかと、何度も取り上げてきました。公務職場の労働組合のみなさんとたたかいとった一歩を、とてもうれしく思います。民間も公務も、人生を細切れにするような雇い方を規制し、明日に希望が持てる安定した働き方を保障する、それでこそ安心してスキルアップもできるのではないでしょうか。(拍手)

 職場のたたかいに連帯して、人間を大切にする働き方への改革を実現していこうではありませんか。(拍手)

若者たちの新たな運動――学費値上げ反対、 学費半額・無償化へ

写真

(写真)田村智子委員長の講演を聞く人たち=13日、党本部

 暮らしをめぐる各分野の運動にも大いに連帯したいと思います。その一つが、大学学費値上げに反対し、値下げと無償化を求める青年・学生の運動です。

 5月中旬、東京大学で現在の授業料53万5800円の2割、11万円近い値上げが検討されていることが大きく報じられ、学生のみなさんは、すぐに反対の声をあげました。学生自治会のアンケートをはじめ、多くの学生が、学生投票、学内集会、国会での集会などに立ちあがり、値上げの検討を断念するよう迫っています。当初、6月にも値上げが発表されるのではないかとみられていましたが、学生たちの運動でこれを許していません。昨日の報道では「11月までに決定される予定」とのことですが、値上げ撤回へ、学生たちの運動へエールをおくろうではありませんか。(拍手)

 学生のみなさんがどういう思いでこの運動に立ち上がっているのか、教養学部学生自治会発行の「学費問題を考える」というパンフレットには、行動を起こした学生たちの思いがたくさんつづられています。「東大だけの問題でも国立大学だけの問題でもない。歯止めを今かけなければ、他の大学も追随するだろう」、「同じ大学で、同じ教室で、同じことを学んでいるのに、何百万円の借金を背負って卒業する学生と、一円も借金を背負わずに卒業する学生がいる。私はこの事実をどう受け止めていいかわかりません」――学生たちの真剣な議論が伝わってきます。

 それに対して自民党や政府の中の議論はどうでしょうか。今、自民党の中でも文科省の審議会でも、大学の国際競争力を確保するためには、教育・研究費を増やさなければならない、だから、学費値上げが必要という議論が出てきています。しかし、自民党政治は、国立大学の運営費交付金を1割以上削減し、物価高騰で大学から悲鳴があがってもまともに予算を増やすことさえしていません。こんな政治を続けながら、学生に頼ろうというのは、あまりにも情けない議論ではありませんか(拍手)。こんな議論をしているから国際競争力、教育や研究、世界から立ち遅れているのではないでしょうか。(拍手)

 日本の高等教育への公費負担はOECD(経済協力開発機構)諸国でワースト2。学生が学費のために深夜バイト、子育て世代が生活を切り詰める、若い世代が奨学金という借金を総額10兆円も背負っている。こういう国に未来があるのか。学生たちに連帯して、教育予算の大幅増で、ただちに授業料半額、無償化へと政治を転換する大きな運動を起こしていこうではありませんか。(拍手)

 社会保障が暮らしの安心になるように、また農業、気候危機など、あらゆる分野で要求が強まり、運動が広がっています。要求の一致点で連帯し、ともに運動を広げたいと思います。同時に多様な要求を、自民党政治を終わらせて新しい政治へ転換する国民的な運動へとつなげていくために、力を尽くそうではありませんか。

 たたかいと一体に政治を変えることが求められています。来たるべき総選挙では、財界・大企業の利益最優先の政治をもとから変える、日本共産党をどうか躍進させてください。どうぞよろしくお願いいたします。(大きな拍手)

2 平和―強権政治で「平和国家」のあり方を根底から壊す暴走。憲法9条にもとづく平和外交を進める日本へと転換しよう

集団的自衛権の行使容認から10年。立憲主義も「平和国家」のあり方も破壊する暴走に日本共産党が立ち向かっている

 二つ目に、平和についてです。いま、南西諸島をはじめとしたミサイル配備、全国の自衛隊基地の「強靱(きょうじん)化」、米軍と自衛隊のかつてない規模での軍事演習など、「戦争の準備」としか言いようがない事態が進んでいます。

 この始まりは、安倍政権による、2014年の集団的自衛権行使容認の閣議決定です。日本は攻撃を受けていないのに、海外でのアメリカの戦争に参加し、米軍を支援するため自衛隊が武力を行使できる――憲法9条に反することは誰の目にも明らかです。ところが安倍政権は、閣議決定で憲法9条の解釈を百八十度変えてしまった。そして2015年、この閣議決定にもとづき、集団的自衛権行使のための法整備、安保法制が強行されました。

 2022年12月、岸田政権は「安保3文書」で、集団的自衛権を行使できる自衛隊へと、自衛隊の装備と組織をつくりかえる方針を示し、そのために2027年度までに軍事費を2倍化することを、これも閣議だけで決定しました。

 敵基地攻撃能力の保有――日本から相手の国の領土を攻撃・破壊するために長射程ミサイルを大量に配備する。これまでは、相手の国まで攻撃することは「専守防衛に反し、憲法違反」としていたものをかなぐり捨てました。最新の戦闘機を他国と共同開発し、第三国にも輸出できる――国際紛争を助長しない、だから武器輸出はしないという、憲法にもとづく「平和国家のあり方」とされてきたことも投げ捨てて、武器産業で経済成長ということまで言われています(「死の商人だ」の声)。「死の商人」、その通りです。

 さらに、陸・海・空の3自衛隊それぞれの司令部の上に、統合作戦司令部をつくる――4月の日米首脳会談での合意にもとづいて、自衛隊を米軍の指揮・統制下に深く組み込み、日米一体で敵基地攻撃能力を運用する体制をつくろうということです。米軍の統合防空ミサイル防衛(IAMD)は先制攻撃を柱としています。IAMDについての公式文書では、「同盟国の主権の一部を切り離させる」とまで書いてあります。日本の主権まで米国に差し出そうというのでしょうか。

 2014年の閣議決定で、憲法解釈を勝手に変えたことが、どこまでも憲法をふみにじるタガがはずれた暴走政治を引き起こし、戦後の日本のあり方が土台から崩されるところまできています。

 この暴走に断固として立ち向かっているのが、私たち日本共産党です。野党であるならば、立憲主義の回復という立場にたって、自民党政治の暴走に決然と立ち向かうべきではないのか、この場からも訴えたいと思います。(大きな拍手)

憲法解釈を変える政権は、政治的モラルさえ失った

 憲法解釈を平然と変える政権は、どこまでも堕落し、最低限のモラルさえも失っています。森友・加計・桜を見る会に見られた政治の私物化、検察人事への介入、日本学術会議の会員任命拒否、防衛省・自衛隊の組織ぐるみの違反・不正も明るみに出ました。そして沖縄への強権政治です。

 自民党の政権復帰の直後、2013年1月、沖縄は、普天間基地撤去・県内移設断念を求め、県内すべての市町村長とすべての議会の議長が署名した「建白書」を安倍政権に提出しました。その後も、県知事選挙・国政選挙、県民投票で何度も、辺野古に米軍基地はつくらせないと民意を示しました。しかし、安倍・菅・岸田政権は、米軍辺野古新基地建設をひたすら強行しています。民主主義も地方自治も踏みにじってはばからない政治は、ついに、米兵による性的暴行事件を隠蔽(いんぺい)するところまで、モラル崩壊を起こしている――このことを厳しく指摘しなければなりません。(「その通り」の声、拍手)

 昨年12月、16歳未満の少女に対する誘拐・性的暴行という重大な米兵の犯罪が起きたにもかかわらず、日本政府は沖縄県に通報せず、6カ月後に地元メディアの報道によって明らかとなりました。沖縄県議会の質疑で、2023年以降、米兵による性的暴行事件は5件発生したのに、すべて通報されていなかったことも判明しました。

 私も先週、外務省・防衛省を呼んで、「なぜ沖縄県に通報しなかったのか」と直接、問いただしましたが、こともあろうに「被害者のプライバシーに配慮した」という説明が繰り返されました。プライバシー保護は当然です。しかし政府がやったことは、被害者ではなく加害者である米兵と米軍を守ったに等しいではありませんか。(「そうだ」の声)

 そもそも米兵犯罪の通報制度がなぜつくられたのか。1995年、当時小学生の少女に対して米兵の性的暴行事件が起き、沖縄に怒りが燃え上がったからです。県民のすさまじい怒りのもとで、米兵の犯罪を迅速に関係自治体に通報するためにつくられた制度、それを日本政府が壊し、性的暴行事件を隠蔽した。断じて許されません(拍手)。なぜ沖縄県に通報しなかったのか、全容が解明されなければなりません。

 16歳未満の少女への誘拐・性的暴行事件が発生したのは、昨年12月24日、その4日後に、政府は、辺野古新基地建設をめぐり、玉城デニー知事から権限をとりあげ、埋め立てを強行する「代執行」を決定。今年4月、日米首脳会談で、日米同盟強化を確認し、沖縄へのミサイル配備や基地強化を押し付けることを公然と掲げ、5月17日、アメリカのエマニュエル駐日大使が、軍用機で与那国島と石垣島へ行き、自衛隊基地などを訪問。軍用機の使用中止の沖縄県の要請は無視されました。5月26日、またもや米兵による性的暴行事件が発生、その11日後に、沖縄県議選告示。辺野古新基地建設を進めるためには、自民党など県政野党が議席を伸ばすことが求められていました。

 一連の政治日程をみれば、在日米軍への沖縄の怒りを広げるわけにはいかない、だから米兵による重大な犯罪をいずれも隠蔽したのではないのか――こうした重大な疑惑を指摘せざるをえません。(拍手)

 憲法解釈を変えて恥じない自民党政治は、日米同盟強化のためには何をやってもよいというモラル崩壊を起こし、ついに国民の命と安全、女性の尊厳よりも、日米同盟を優先するところまで落ちぶれた。

 米軍基地があるために、沖縄でどれだけの命が犠牲になり、どれだけの女性や子どもの人権が蹂躙(じゅうりん)されてきたのか。これは沖縄だけの問題ではありません。「オール沖縄」の不屈のたたかいに連帯しようではありませんか(大きな拍手)。強権政治に断固たちむかい、辺野古新基地建設の中止、普天間基地閉鎖・撤去、基地のない平和で豊かな沖縄を返せと全国で声をあげていこうではありませんか。(大きな拍手)

「オール沖縄」の不屈のたたかいも、市民と野党の共闘も、強権政治への怒りのなかで生まれた

 日米同盟強化にひた走る自民党政治は、その理不尽さゆえに、強権政治への怒りを広げ、そのもとで「オール沖縄」の不屈のたたかい、そして、市民と野党の共闘が生まれました。

 2015年9月19日、安保法制が強行されたその日に、私たち日本共産党は中央委員会総会を緊急に開き、集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回、安保法制の廃止、この一致点で、国民連合政府をつくろう、そのために市民と野党は共闘しようと呼びかけました。この呼びかけは、連日連夜、国会に駆けつけた方々、全国で安保法制反対の声をあげた方々の「野党は共闘」という声にこたえたものでした。

 市民の皆さんとともに築いた「市民と野党の共闘」は、自民党を震え上がらせるほどの力となりました。だからこそ、すさまじい妨害や攻撃が絶えず起きています。それでも、市民のなかに「立憲主義を守れ」「野党は共闘」の声は決して絶えることはありません。私たちも決してあきらめません。

 あらためて心から呼びかけます。2014年の集団的自衛権行使容認を一大契機に、自民党政治によって、憲法がこれほど蹂躙されているいま、「立憲主義を守れ」の原点に立って、市民と野党の共闘を再構築しようではありませんか。(大きな拍手)

「東アジア平和提言」に、共感が広がり、平和運動の発展の力に

 いま日本が直面しているのは、どうしたら戦争の心配のない東アジアをつくることができるか、ということです。軍事同盟強化一辺倒では、軍事対軍事の悪循環のエスカレーションに陥っていきます。私たちは、日本の外交として、憲法9条を生かし、ASEAN=東南アジア諸国連合と協力した平和外交を行うよう求めています。

 4月17日、国会内で、志位和夫議長が「東アジアの平和構築への提言――ASEANと協力して」を講演し、21カ国から大使や外交官、日本の外務省、他党の国会議員も参加して大きく成功しました。(冊子を掲げ)これもこのようにパンフレットにまとめられています。ぜひお読みください。参加した外交官の方々からは、一政党が平和をテーマに、国際社会にも開かれた講演を行うのか、驚いた――こういう声とともに、「国際政治の中でどう平和を構築するか、包括的な話を聞くことができた」「理想を掲げつつ現実的なアプローチをとっていることに共感した」など、熱い共感が寄せられています。大変うれしいことです。

 この「東アジア平和提言」をもって、緒方靖夫副委員長がヨーロッパや中国を訪問しています。今もヨーロッパにおられます。

 5月、フランス共産党主催のパリ平和国際会議では、緒方さんがこの提言を紹介したことに対し、外交問題の研究者の方々から、「ASEANという地域共同体に着目して、その平和の役割、すでに存在している東アジアサミットの活用という着想には考えが及ばなかった。ASEANを視野に入れて世界を見ることは必要だと感じた」。あるいは、「世界の分断とブロック化に反対する明確なメッセージが提言にある。ウクライナ戦争をどう終わらせるかという重大な課題にとっても役立つ普遍性をもつテーゼだ」など、スピーチを終えた緒方さんに次々と感想が寄せられたといいます。

 中国への訪問は、上海の復旦大学日本研究センターの招きに応えたもので、「日中関係および東アジアの平和と発展」と題して基調報告を緒方さんが行いました。日中両国関係では、わが党が昨年3月に発表した「日中両国関係の前向きの打開のために」の提言を紹介しました。その内容は「東アジア平和提言」に盛り込まれています。日本と中国は、2008年の日中首脳会談で、「互いに脅威とならない」と合意しています。尖閣諸島の問題では2014年の日中合意で、「尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていること」について日中が「異なる見解を有している」と認識し、「対話と協議」を通じて問題を解決することを確認している。さらに日中両国が参加する多国間の枠組みとしては、双方が東アジアサミットに参加し、「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)を支持している。こうした合意や一致点を互いに尊重して、日中両国関係の前向きの打開をはかる外交努力が必要だ――こういう立場で緒方さんは話しました。そのさいに、尖閣問題、台湾問題では、「東アジア平和提言」で表明したわが党の立場を率直に話しました。先方からは、尖閣諸島、台湾問題について中国の立場が表明されました。この点では双方が異なる意見を述べた、ということです。同時に、「互いに脅威とならない」など、日中両国政府に存在する共通の土台に着目して両国関係を前向きに打開するという「東アジア平和提言」「日中提言」の提起に対しては、全体として肯定的な受け止めが語られ、こうした率直な議論を続けていくことになりました。

 中国に対して言うべきことは言いつつ、両国間に存在する共通の土台を大切にして、両国関係の前向きの打開、日中両国と両国民の友好のために、道理にたって冷静な平和外交の努力をつくしている政党、それが日本共産党だということを強調したいと思います。

 私たちの「提言」は机上、机の上でつくったものではありません。日本共産党は、1990年代から、ASEANが「紛争の平和的解決」を明記する東南アジア友好協力条約(TAC)を基盤にして、平和の地域をつくろうとしていることに注目してきました。そして、ASEAN諸国への繰り返しの訪問やアジア政党国際会議(ICAPP)への参加などの野党外交にとりくんできました。とりわけ、昨年12月の東南アジア3カ国訪問で、最新のとりくみを学んできたことは、「東アジア平和提言」を作成するうえで大きな力となりました。

 私も昨年の東南アジア訪問に参加しました。インドネシアの首都、ジャカルタにあるASEAN本部は大きな二つのビルで、ここにASEAN10カ国から外交官が派遣され、ワンチームで仕事をしているのだと考えるだけで、そのスケールの大きさに感動しました。

 ラオス出身のエカパプ事務局次長が、日本からようこそと迎えてくれましたが、最初は、日本からの経済協力・海洋協力の重要性を強調する話でした。その大切さはわかるのですが、これはどういう面談になるのだろうかという思いになりました。共産党に投資の大切さということをお話しされて、どうなるのかなという思いだったんですね。ただ考えてみれば、日本政府は、ASEANとの関係では経済ばかりに目を向けているので――これ自体はASEANが重視している柱の一つなんですが――、日本から来た政党も同じだと、こういうふうに思われていたんだと思うんです。しかし、当時の志位委員長が、ASEANの平和構築の努力に注目しているんですよと、こういう話をすると、エカパプ氏の話がパッと発展したんです。そこからが本当にフレンドリーな踏み込んだ対話になったと実感しました。ASEANが、「平和」と「経済」の両面で関係強化に努めているという姿がよく理解できるやりとりでもありました。

 エカパプ次長は、ASEANの国ぐには互いに家族だ、家族のなかでトラブルが起こることもある。だからといって排除や外からの力で解決することはしない。家族が結束して、粘り強い対話を重ねて、時間がかかっても一歩ずつ問題を解決するんだと、こう話されました。これが包摂だということを実感しました。国家体制も経済力も、宗教や文化も異なる10カ国が、多様性を尊重し、対等・平等の立場で対話を重ね、みんなが合意できる一致点を見いだしていく。それは時間がかかる。しかし徹底した対話を積み重ねていけば武力衝突には絶対にならない。対立や分断も生まれない。あの国は気に入らない、問題があると言って排除や敵対するのではなく、地域のすべての国ぐにを包摂し、平和的共存のためにどこまでも努力する。これがASEANが実践している外交です。これこそ憲法9条が求めている外交であり、そういう日本外交をぜひとも実現したいと、心から思います。(大きな拍手)

 今、私たちの「提言」を契機に、今月24日には全国革新懇などがシンポジウムを、8月の原水爆禁止世界大会ではフォーラムが企画され、草の根から東アジアの平和構築をはかっていこうという新しい運動が始まろうとしています。立場の違いをこえて、市民の運動を広げ、平和外交に踏み出せと日本政府に求めていきたいと思います。

 「東アジア平和提言」は、軍事同盟の是非についての立場の違いを超えて、緊急にとりくむべき内容になっています。軍事同盟のもとでも実現可能な提案ということです。同時に、「日米同盟絶対」という流れが支配的なもとで、こうした「提言」を打ち出せるのは、日本共産党がアメリカいいなりから脱却するという日本の政治改革を目指しているからだということを強調したいと思います。

 戦争への道にキッパリ反対を貫くとともに、世界の道理にたって平和の対案を示し、その実現のために行動する党――日本共産党を総選挙で伸ばすことこそ、日本とアジアの平和をつくる最大の力となることを心から訴えたいと思います。(大きな拍手)

 

3 ジェンダー平等―人権後進国から先進国へ

人権をめぐる巨大な前進。 世界の流れに逆行し孤立する自民党政治

 ジェンダー平等、人権をめぐって、日本でも世界でも大きな前進が始まっています。

 同性婚を認めない法制度は憲法違反という札幌高裁の判決、旧優生保護法は憲法違反であり国家賠償を命じた最高裁判決、「生理の貧困」のとりくみ、痴漢ゼロの運動、子どもの権利への注目、また、外国人の人権を軽んじる出入国管理制度に対して、若い世代が声を上げ続け、個人の尊厳を掲げた大きな連帯も生まれています。

 しかし、こうした前向きの変化に対して、安倍政権以降の自民党政治は、妨害・サボタージュを続け、世界の流れにも逆行した孤立した姿を示しています。

ジェンダー平等・個人の尊厳を求める大きなムーブメント

 なかでも自民党の孤立が鮮明になっているのが、選択的夫婦別姓制度への妨害です。先月10日、日本経団連が「夫、妻、おのおのが希望すれば、生まれ持った姓を、戸籍上の姓として名乗り続けることのできる制度」、つまりは選択的夫婦別姓の早期実現を政府に求めました。長年の女性たちの運動、国民の運動で、経済界も大きく変わったのです。

 私も、先の国会最終盤の党首討論、持ち時間4分で、このことを岸田首相に示して、選択的夫婦別姓に踏み出そうと迫りました(拍手)。岸田首相は、経済上の問題が起きているということは認めた。ところが、「家族の一体感に関わる問題」だから議論が必要といって、結局、棚上げにする姿勢に終始しました。

 すでに日本には、事実婚の家族、夫婦で異なる名字の家族は、何百万も存在しています。何か問題があるとでもいうのでしょうか。家族のあり方は、それぞれの家族の営みのなかでつくるものであって、政府に指図されるいわれはありません(大きな拍手)。別姓か同姓かどちらかを選ばせてほしいという要求に対して、「家族の一体感」といって、圧倒的に女性が名前を変えている現状を続けようとする、それは、夫の家に妻が入るのだから女性が名字を変えるのが当たり前という、明治時代の「家制度」に根ざした古い価値観を壊したくない、ただそれだけのことではないでしょうか。

 今週の「しんぶん赤旗」日曜版の1面、見出しは「経団連に聞いてみた」です。選択的夫婦別姓の提言について、赤旗記者が経団連を訪問して取材する――いまや時代は大きく変わっています。変わってないのは自民党。立場の違いを超えた連帯と運動で、特定の価値観を押し付けるな、多様な家族を法的に認めろと求めていこうではありませんか。(大きな拍手)

 男女賃金格差の是正では、女性たちの運動、国民の運動、わが党の国会質問で、企業に男女別の賃金を公表させた、これはとても重要な一歩前進です。公表によって、一般職・総合職という、コース別採用をしている大企業ほど、格差が大きいということがわかってきました。

 先日、男性が大半の総合職だけ利用できる社宅制度は、一般職の女性社員への間接差別だと断罪する判決が確定しました。間接差別を男女雇用機会均等法違反とする、初めての判決です。AGC(旧旭硝子)の子会社を訴えた女性は、総合職の男性社員と変わらない仕事をしていました。総合職に転換してほしいと希望すると「転勤できるのか」と突き付けられ断念していたといいます。しかしあきらめなかった。「これは間接差別」だと、勇気をもってたたかった女性に敬意を表するとともに、この判決を格差是正の力にしていく決意です。(拍手)

 これまでも、「女性は30歳で定年」という早期定年制、これはテレビ局などで女性の容姿は30歳までだと言って、「30歳定年」ということがやられたんです。パートだからという賃金差別、女性の正社員への昇給昇格差別などに対して、多くの女性たちが職場で声をあげ、裁判にも訴えてたたかい、女性への直接の差別を禁止する社会へと変えてきました。しかし、財界と大企業、そして自民党政治は、手を替え品を替え、女性を使い勝手のよい「安上がりな労働力」として、今も利用し続けています。その一番の問題は、形のうえでは平等だが結果として格差がつく間接差別が、日本には今も深刻な形で存在していることを認めようとしないし、理解しようともしないことにあります。こうした考え方のもと、「女性は家事・育児を担うから」「女性は家計を補助的に支えればよいから」、そして男性には「長時間労働・単身赴任をしなければ出世できない」という働き方が押し付けられてきました。「間接差別」への無理解、「性別役割分担」の古い考えを、もう一掃して、差別・格差を当然とする働き方を変える時ではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 多くの国ぐにが、ジェンダー平等でこそ、個人の尊厳が大切にされるとともに、社会も企業も経済も元気になる、という方向に進み、実際にこれらの国ぐにの経済は、日本よりも大きく成長しています。日本も、ジェンダー平等社会へと本気で変わる時です。自分も大切にしながら働ける、家族も大切にできる働き方、生活を楽しめる賃金と労働時間、将来を見通せる安定した雇用――安心して働けてこそ、能力を伸ばし発揮することができる、そして経済も成長する。日本もこの方向へと転換していこうではありませんか。(大きな拍手)

 日本共産党は、4年前の綱領一部改定で、日本改革の柱に、「ジェンダー平等社会をつくる」「性的指向と性自認を理由とする差別をなくす」ことを掲げました。そのことで、性暴力や性搾取をなくそう、避妊や中絶は女性の権利、LGBTQへの差別解消を、女性の議員を増やそうなど、多くの運動に学び連帯することができました。国会や地方議会でも、ジェンダー平等・個人の尊厳を、日本の政治の中心課題にすえようという努力が強まりました。綱領に太く位置づけたことが、党のなかでもジェンダー平等を進めようという自己改革にもつながっています。こうした努力をさらに進める決意を表明するものです。

憲法制定77年、憲法守れ、生かせのたたかいが社会を変える

 人権後進国から先進国へ、それは憲法を守り生かす政治と一体のものです。

 NHKの連続テレビ小説「虎に翼」で憲法の条文が読み上げられて、それだけで涙が出てきたという方が日本中におられるのではないでしょうか。基本的人権を高らかにうたう日本国憲法の誕生から77年。この憲法が自民党政治によってないがしろにされてきたことで、日本は世界の流れから取り残され、恥ずべき人権後進国になってしまいました。

 「すべて国民は、個人として尊重される」「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」――私たちには憲法があります。この憲法を実現する政治へと転換し、人権先進国へと、ともに進もうではありませんか。(大きな拍手)

 経済、平和、人権で、政治を変える展望をお話ししました。希望ある政治はみえてきたでしょうか。

 ゆきづまった政治を希望の政治へと変える力は、なんといっても市民の運動・たたかいです。あらゆる分野で、要求の一致点での運動を広げて、自民党政治を終わらせる国民的なたたかいへと大きな流れをつくろうではありませんか。(拍手)

 そしてもう一つの力。それは、政治を変える展望、政策を持ち、市民との連帯を何よりも大切にして、どんな困難にも屈せず社会変革をめざす日本共産党が大きくなることです。これが、政治を変える確かな力です。

 来たるべき総選挙にむけて、自民党政治を終わらせる大きな運動をまき起こしましょう。そして総選挙で、日本共産党の躍進を必ず勝ち取らせてください。どうぞよろしくお願いいたします。(大きな拍手)

4 未来社会―資本主義の危機。社会主義・共産主義の展望を語ろう

資本主義の危機。気候危機が日本社会に重大な影響を与えている

 今、世界でも日本でも、資本主義がもたらす害悪が深刻となっています。その一つとして誰もが痛感しているのが、気候危機ではないでしょうか。猛暑、豪雨、海水温の上昇などが、今、暮らしにも経済にも大きなダメージを与えています。

 しわしわのサクランボ、すかすかの大根、白濁したおコメなど、猛暑による農作物の被害が大問題になっています。日本近海での海水温の上昇が、海流を変え、とれるはずの魚が全くとれなくなり、漁業と水産加工に甚大な影響を与えています。災害も多発し、命と暮らしが脅かされています。

 国連(国連・国際防災戦略事務局)の報告によれば、世界で、豪雨など気候変動に関連する災害の被害額は、2017年までの20年間で2・2兆ドル(約350兆円)にのぼり、その前の20年間の2・5倍にもなったということです。

 私たちは、「気候危機打開のための2030戦略」を打ち出して、日本政府に、ただちに二酸化炭素排出ゼロにむけた実効性のある対策をとるよう求めています。同時に、資本主義のシステムのままでよいのか、「もうかりさえすれば、あとは野となれ、山となれ」の「利潤第一主義」から抜け出すことが必要だという声を、今こそ上げていきたいと思います。資本主義をのりこえた未来社会――社会主義・共産主義を求めるのが、日本共産党だからです。

「人間の自由」こそ社会主義・共産主義の目的であり特質

 しかし、社会主義・共産主義には「自由がない」、そんな社会になるのはいやだという声も多く聞かれます。

 今年1月の第29回党大会で、私たちは、「人間の自由」こそ社会主義・共産主義の目的であり特質だということを「三つの角度」から打ち出しました。この大会決定の実践として、4月27日、志位和夫議長が、民青同盟主催の「学生オンラインゼミ」で、「共産主義と自由」をテーマに講演を行いました。さらに、この講演の理論的背景について、6月25日の講義で語られました。志位議長の講演と講義では、マルクスの生涯をかけた大著『資本論』とその準備のための『資本論草稿集』などを研究して、そもそもマルクス、エンゲルスがめざした社会主義・共産主義社会はどういうものだったのか、科学的社会主義の原点に立って明らかにされました。「人間の自由」の全面的な開花、「人間の自由で全面的な発展」、これこそが、マルクス、エンゲルスが未来社会の最大の特質としたものだった、こういう解明です。

 講演を聞いた学生や青年からは「社会主義のイメージが百八十度変わった」。それはそうですよね。“自由がない”と思っていたら、“自由だ”っていう講演ですから。「社会主義・共産主義についてもっと学んでみたい」などの感想が相次いでいます。この講演は『Q&A 共産主義と自由――『資本論』を導きに』という書籍になったばかりです。ぜひ広げていただきたいと思います。

 マルクスは、『資本論草稿集』と『資本論』を執筆するなかで、資本主義的な搾取の秘密を解明していきます。経済のところでお話しした通り、働く人はひどい搾取のもとにあり、その利益は大株主など資本家にため込まれています。まさに「カネ」や「モノ」の強欲な搾取です。しかし搾取されているのは、「カネ」や「モノ」だけなのでしょうか。今の日本の長時間労働をみれば、自分のための「自由な時間」が搾取されている、奪われている、これが多くの人々の実感でしょう。おカネやモノは、取り戻せるかもしれません。しかし、搾取された時間は取り戻すことができません。「資本家は自由な時間、すなわち文明を、横領する」。これがマルクスの告発でした。

 マルクスが、ここに注目していたことは、『資本論』と『草稿集』などに、随所にあらわれています。「自由に処分できる時間」――「自由な時間」こそが、人間と社会にとっての「真の富」だ、万人に十分な「自由な時間」が保障され、「自由で全面的な発展」が実現する社会――ここにマルクスの求めた社会主義・共産主義の最大の真髄があるのです。この点を明らかにしたところに、わが党が綱領と大会決定を土台にとりくんできた「共産主義と自由」論の重要な意義があります。

 7月10日、志位議長は書籍出版についての会見のなかで次のことを強調しています。

 「旧ソ連などでは、マルクスのこの肝心の思想が、未来社会論からまったく消し去られ、封印され、踏みにじられてきました。それは、マルクスの未来社会論を、物質的生産の分野の、しかも生産物の分配のあり方の問題にしてしまい、『人類の未来史からそのもっとも輝かしい部分を切り捨てる、きわめて大きな誤り』(不破哲三さん)でした。私は、この理論的な誤りは、旧ソ連において社会主義とは無縁の抑圧体制がつくられ崩壊にいたったことと、無縁ではないと思います」

 日本共産党の綱領路線は、かつての国際的な「定説」とされたこうした社会主義論を大胆に克服し、マルクスの未来社会論の一番の輝き――「人間の自由」が開花し、人間の「自由で全面的な発展」を可能にする社会――ここに光をあて、マルクスの未来社会論の本来の輝きを現代によみがえらせるものにほかなりません。それは資本主義の深刻な矛盾の深まりのもとで、希望ある人類的未来を照らすことになるものだと確信いたします。

 「自由に処分できる時間」――「自由な時間」を取り戻し、広げよう――マルクスのこの呼びかけは、現代の日本に生きるすべての人たち、とりわけ若い世代のみなさんの心に深く響くのではないでしょうか。

 日本の労働者の労働時間はヨーロッパ諸国に比べて、年間400~600時間も長い。正社員には、残業や休日出勤をやってでも仕事をこなす責任を押し付ける。非正規で働けば、低賃金が押し付けられる――これでは、「自由な時間」を奪われるか、人間らしい生活を支えるお金を奪われるか、どちらかを選べというのと同じではないでしょうか。

 搾取をなくせばどうなるか――賃金は大きく増え、かつ労働時間はぐっと減る。自分のための「自由な時間」、友人や家族と過ごす時間を今よりもずっと多くもつことができます。これは、妊娠・出産・子育てに時間を必要とする女性にとってはもちろん、子どもの養育に共同の責任を負う男性にとっても、劇的な変化をもたらすでしょう。

 「自由な時間」を十分にもてたら、みなさんは、何に使うでしょうか。本を読む、旅行をする、スポーツや音楽を楽しむ、絵を描く、今の仕事とは全く異なることに挑戦することもできるでしょう。自分の内面からやりたいと思えることにたっぷり時間を使うことで、知識や経験が豊富になる、専門分野が深められる、個性や多様な能力が花開く、一人ひとりの人間が豊かに発達する、エンパワーメントする。そういう人間たちがつくる社会はますます豊かに発展するでしょう。それは社会に素晴らしい発展の力をあたえ、人間の発展と社会の発展の好循環がつくりだされるでしょう。

 「自分を大切にして生きたい」「自由な時間をもちたい」――自分勝手でもなければ、封じ込めて我慢しなければならない思いでもありません。人類が成長・発達するうえで、当然の願いであり、この願いに応える社会へと歩むことは、とてもやりがいのある、わくわくするような大事業ではないでしょうか。(拍手)

 社会主義・共産主義――未来社会は、私たちの大きな展望です。同時に、それは「夢に見るはるか先の話」というものではありません。今の自民党政治による暮らし破壊の政治とたたかい、労働でも、社会保障でも、教育でも、ジェンダーでも、資本主義の枠内で人権を守り、暮らしをよくするルールをつくっていくことが、未来社会に地続きでつながっているのです。そういう大きな展望、ロマンのなかに、今のたたかいを位置づけて、ともにたたかおうではありませんか。(拍手)

 ゆとりをもって生活できる収入とともに、もっと「自由な時間」をと堂々と求めていきましょう。現役世代だけでなく、老後の「自由な時間」を保障する年金も求めましょう。ルールなき強欲な資本主義から、人間を大切にする経済社会へと変革し、その先にある未来社会への道を開こうではありませんか。心から呼びかけます。(大きな拍手)

5 時代を変える歴史的チャンス―日本共産党への入党を呼びかける

 今、日本共産党の政策、国民が主人公を貫いて政治を変えようという立場とともに、未来社会と結びついた日本共産党という名前も、魅力となる時代が始まっています。政策も未来社会への展望も、知らせれば知らせるほど、日本共産党への共感や支持を広げることができる歴史的なチャンスを迎えていると、私たちは確信しています。

 自民党政治のゆきづまりは、もうこれ以上、今の政治を続けさせるわけにはいかないというところまできています。日本共産党が強く大きくなって、多くの市民の皆さんと力を合わせ、古い政治の殻を破る、新しい政治、新しい時代へと変えていく歴史的チャンスの時ではないでしょうか。日本共産党に入党していただきたい。最後に心から呼びかけます。(拍手)

 古い政治が限界にきているだけに、自民党や自民党を支えることで利権を手にする人たち、「アメリカいいなり」で日本を軍事大国にしたいという人たちは、国民の暮らしがどんなに犠牲になっても、今の政治にしがみつき、政治をもとから変えようという私たちに激しい攻撃、妨害をしてくるでしょう。私たちにとってのチャンスは、彼らにとっての大ピンチだからです。

 日本共産党の創立から102年、先人たちも、私たちも、こうした攻撃や妨害にさらされながら、新しい時代への羅針盤をもち、どんな困難にも屈しないたたかいで、社会を変えようと歩んできました。党を強く大きくすることで、困難を打ち破ってきました。私たちも今、何よりも党の力をつけて、古い政治の殻を破りたいのです。

 日本共産党員としての人生は、楽だとは言いません。悔しい思いもします。けれど、困難を乗り越えようとするから、仲間とともに成長する喜びがあり、社会の進歩と自分の人生を重ね合わせて生きる喜びがあります。

 戦前、侵略戦争反対を不屈に掲げた日本共産党の先人たちは、激しい弾圧にあいました。逮捕・投獄され、命をおとした先人が何人もいます。「アカ」「非国民」と差別され、「共産党は怖い極悪人」だと偏見にさらされても、信念を貫いた先人たちがいたことが、どれだけ日本の歴史にとって大きな意味を持つか。今日の日本国憲法の平和と民主主義の理念は、戦前から日本の中で切望されていたのだと、先人たちのたたかいとともに語ることができるのです。

 私は20歳で日本共産党に入党しました。アメリカと当時のソ連が核兵器の軍拡競争をしている時代に、日本共産党が「核兵器は廃絶できる」と呼びかけていたからです。核兵器の使用、実験、開発、貯蔵、これらすべてを禁止する国際条約をつくり、核保有国を包囲しようという呼びかけに衝撃を受けました。「無理だ」「理想だ」と言われながら、核兵器廃絶を求める国際署名にとりくむことは、私に未来への希望を持って生きることを教えてくれました。それから時がたち、核兵器禁止条約が誕生した時、時代を拓(ひら)く一人になれたことに心から震えるほどに感動しました。

 今、新しい時代への扉を開く歴史的チャンスの時です。古い政治の殻を、ともに力を合わせて打ち破りましょう。希望の政治を、未来への展望を、ともに学び語り、日本の社会を前へと進めましょう。日本共産党への入党を重ねて心から呼びかけます。

 「ともに歩もう、時代を拓こう」――ありがとうございました。(大きな拍手)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

決選投票の投開票が7日に行われ、左派4党の共闘組織「新人民戦線」が182議席で議会最大勢力となりました。

2024-07-09 | 世界の変化はすすむ

2024年7月9日(火)

仏左派連合 最大勢力 国民議会選挙

極右内閣誕生を阻止

写真

(写真)選挙勝利を市民と分かち合う新人民戦線の議員たち=7日、パリ(吉本博美撮影)

 【パリ=吉本博美】フランスの国民議会選挙(下院、定数577)の決選投票の投開票が7日に行われ、左派4党の共闘組織「新人民戦線」が182議席で議会最大勢力となりました。マクロン大統領の与党連合は第2位に沈み、アタル首相が辞意を表明しました。第1回投票(6月30日)で1位だった極右政党「国民連合」(RN)は第3位にとどまりました。投票率は約66%と1997年以降最高。マクロン与党に厳しい審判を下すとともに、極右内閣誕生の危機を阻止した歴史的選挙となりました。

 内務省の暫定結果によると、新人民戦線が182議席、与党連合が168議席、RNが143議席となりました。事前の世論調査では決選投票でもRNが最大勢力となる予想が出ていましたが、新人民戦線と与党連合が候補者一本化に踏み出し極右阻止の受け皿となりました。

 左派連合の中の第1党「服従しないフランス」のメランション代表は会見で、マクロン氏に対し、「国民の意思を尊重し、新人民戦線から首相を指名すべきだ」と指摘。今後与党として公共福祉の回復や賃金・年金の引き上げをはじめとする公約を実践していくと意気込みを語りました。直後の集会では選挙運動に奮闘した市民らに謝意を表明しました。

 国民連合のバルデラ党首は、「フランスは極左の手に落ちた」と新人民戦線と与党連合の選挙協力を批判しました。

 今回の選挙で下院は左派、中道、極右の3陣営がいずれも過半数に届きませんでした。連立政権の樹立に向けた交渉は難航が予想されます。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

 保守党は、結党以来最少の議席数になる見込みです。トラス前首相、モーダント下院院内総務、シャップス国防相などが相次ぎ落選。「壊滅的」(英メディア)な結果となりました。

2024-07-06 | 世界の変化はすすむ

英総選挙

保守党が歴史的惨敗

閣僚落選相次ぐ 14年ぶり政権交代

 英国の総選挙(下院、650議席)は4日投開票され、与党・保守党が歴史的惨敗を喫した一方、労働党が400議席を大きく上回り14年ぶりに政権に返り咲くことが確実になりました。労働党のスターマー党首が5日に首相に就任します。

 英BBCの開票速報によると、未確定の5議席を残して、労働党411(前回比210増)、保守党119(249減)、自由民主党71(63増)、スコットランド民族党(SNP)9(38減)などとなっています。

 スターマー氏は「われわれはやり遂げた。変革はいま始まる」と勝利宣言。一方、スナク首相は敗北を認め「敗北の責任は私が取る」と述べました。

 保守党は、結党以来最少の議席数になる見込みです。トラス前首相、モーダント下院院内総務、シャップス国防相などが相次ぎ落選。「壊滅的」(英メディア)な結果となりました。

 労働党は前回2019年の総選挙で失ったイングランド中・北部の伝統的地盤を取り戻し、スコットランドでも第1党になりました。

 保守党政権の14年間は、緊縮策と公共サービスの解体を通じて貧富の格差が拡大。国民がコロナ禍や生活費高騰に苦しむなか、たがが外れたスキャンダルや経済問題での無策が露呈し有権者の怒りを呼びました。

 次期政権が取り組むべき課題は貧困、格差拡大の是正など山積しています。英労働組合の中央組織、労働組合会議(TUC)のノバク書記長は、安定雇用や賃金引き上げ、公共サービスの拡充で「英国を再建する機会が今日から始まる」とX(旧ツイッター)に投稿しました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

太陽系で最も派手な土星の環が、2025年春からしばらくの間消える。本当に消えるのではなく、私たちの視野に入らなくなる。土星の環の直線の傾きが地球の目の高さと正確に一致するためだ。

2024-05-27 | 世界の変化はすすむ
 

土星の環、2025年春に消える

登録:2024-05-27 07:14 修正:2024-05-27 08:05

 

クァク・ノピルの未来の窓 
環の直線の傾きが地球の目の高さと同じに
 
 
ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラで撮影した土星と環。ディオネ、エンケラドゥス、テティスの3つの衛星が鮮明に写っている=NASA提供//ハンギョレ新聞社

 太陽系第6惑星であり2番目に大きい惑星である土星の環を初めて発見したのは、1610年のガリレオ・ガリレイだった。しかしガリレオは、当時はこれが環であることには気づかず、「土星の両側に耳のようなおかしな物体がついている」と考えた。これが環であることを確認したのは、約半世紀後の1655年のオランダの天文学者クリスティアーン・ホイヘンスだった。それから20年後には、イタリアの天文学者ジョバンニ・カッシーニが土星の環は1本ではなく複数本あることを発見した。その後、環は土星の象徴になった。

 太陽系で最も派手な土星の環が、2025年春からしばらくの間消える。本当に消えるのではなく、私たちの視野に入らなくなる。土星の環の直線の傾きが地球の目の高さと正確に一致するためだ。

 土星の赤道面を囲んでいる環は厚さが非常に薄い。最も薄いところは10メートルほどしかない。したがって、環と同じ目の高さでみると、環が紙のように薄くなり、目立たなくなる。

 大きく7本に分かれている土星の環は、現在の地球からみると9度傾いている。しかし、2025年になると、直線の傾きがほぼ0度になる。環を目の高さでみることになるわけだ。この時に環を地球からみると一直線の形になるため、識別するのは難しい。地球と土星は、およそ15年ごとに、このような位置関係に近づくことになる。

 
 
2023~2025年の間に地球からみた土星の環が次第に薄くなっていく様子を表現した図=NASA提供//ハンギョレ新聞社

■地球との位置・角度が変わるため…15年ごとに発生

 一直線の形の環が周期的に発生するのは、公転軌道上の地球と土星の位置が変わるためだ。地球の公転周期は1年だが土星は29.4年だ。

 1995年と2009年にもこうした現象があった。今度は2025年3月23日にこのようなことが発生する。環はその後ふたたび大きくなり、2025年11月に再度消える。その後は環が徐々に明確になっていき、2030年代初期には今よりもさらに広く鮮明にみえる。したがって、少なくとも今後数年間は、これまで以上に良好な環を観測する機会を得ることは難しい。

 また、土星の環は、ある時は下から上に、ある時は上から下に動く。太陽を1周回るごとに首を縦に振るわけだ。地球は23.5度、土星は26.7度傾いた状態で軌道を回ることによって生じる現象だ。

 2025年の一直線の形の環は、下から上に動く途中に形成される。土星が太陽の後方にある時は南面が、前方にある時は北面がみえる。しかしこの時期は観測が非常に難しい。土星が太陽から10度しか離れていないためだ。

 環が消えた土星を鮮やかにみるためには、2038年まで待たなければならない。この時期は2039年まで3回にわたり環平面の通過現象が起きる。

 
 
1995年にハッブル宇宙望遠鏡でみた土星。土星の環が水平を形成している=NASA提供//ハンギョレ新聞社

■2032年には最も厚い環を観測可能

 一直線の形の環は土星観測の楽しみを下げる代わりに、土星の衛星を見つけるにはよい環境を提供する。環から出る反射光が弱まるためだ。タイタン、エンケラドゥス、ミマスを含む13個の衛星がこの一直線の形の環の期間中に発見された。

 この現象は、同じくガリレオが初めて発見した。しかし、ガリレオはその理由を知らなかった。ガリレオは、1612年に土星の両側に耳のようについていた物体が消えたことを目撃し、それについて「驚くべきことであり、まったく予想できないこのような事件について、何と言えばいいのか分からない」と記した。

 反対に、環の美しい姿を満喫できる機会も、周期的に訪れる。2032年になれば環が面を上げ、下から平たい環が明確にみえることになる。

 
 
                          土星の主な環と衛星の分布図=ウィキメディア・コモンズ//ハンギョレ新聞社

■土星に降り注ぐ環の雨…数億年後には本当に消える

 しかし、このような周期的な錯視現象も、永遠には見物できない見込みだ。土星の環が実際に徐々に消えているからだ。

 氷やホコリ、岩石で構成された環は、土星の表面から7万キロメートル離れた地点から始まり、最大で28万キロメートルの地点まで分布している。環を構成する粒子は、きわめて小さいものから電車ほどの大きさのものまで様々だ。2019年の研究結果によると、土星の環を構成する粒子は、重力に引き寄せられ、土星の表面に向かって落ちている。これを「環の雨」と呼ぶ。

 天文学者らが土星探査機「カッシーニ」の収集データを分析した結果、45億年の歴史の土星に比べ、環の歴史はこれよりはるかに若い4億年前に始まり、今後3億~4億年後には消える可能性があると予測している。派手な土星の環は、すでに寿命の半分が過ぎているわけだ。

 科学者らは現在の土星の環は1秒あたり最大3トンの氷の微粒子を失っていると計算した。およそ30分ごとにオリンピックサイズのプールを満たせる量だ。

 土星ほどは大きくはないが、木星、天王星、海王星にも環がある。科学者らは土星の事例に照らしてみると、他の惑星の環もかつては土星と同じくらい派手だった可能性があると推定している。

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席が16日、中国北京で開かれた首脳会談で、米国のアジア政策に対するけん制を鮮明にした。また、朝中ロ3カ国の接近も目立つ。

2024-05-18 | 世界の変化はすすむ
 

中国とロシア、

「米国の朝鮮半島政策」けん制鮮明に…北朝鮮との連帯強化

登録:2024-05-17 06:00 修正:2024-05-17 06:39
 
中ロ首脳が戦略パートナー共同声明を発表 
昨年の両国共同声明より 
米国に対する非難強め 
インド太平洋版安保同盟を批判
 
 
16日、中国の習近平国家主席が北京を国賓訪問したロシアのウラジーミル・プーチン大統領と握手している/AFP・聯合ニュース

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席が16日、中国北京で開かれた首脳会談で、米国のアジア政策に対するけん制を鮮明にした。また、朝中ロ3カ国の接近も目立つ。

 中ロ首脳は同日発表した「中国とロシアが両国の国交樹立75周年に際して新時代の全面的戦略協力パートナー関係を深めることに関する共同声明」で、「両国は、北朝鮮との対決を深め朝鮮半島の武力紛争と緊張の高まりをもたらしうる米国と、その同盟国による軍事的威嚇行動に反対する」と明記した。昨年3月、習主席のロシア国賓訪問後に発表した共同声明では、「朝鮮半島情勢について懸念を表明し、関連当事国が冷静に自制すると共に、状況緩和のために努力することを求める」、「(対北朝鮮)制裁と圧迫は望ましくなく、実現不可能であり、対話も可能だと信じている」と記したことに比べると、かなりの差がある。

 ロシアは最近、米国を含む西側との対立が激化し、北朝鮮と密着しているが、このような流れが反映されたものとみられる。国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアは3月28日、北朝鮮に対する国連安保理制裁決議の履行を監視する国連専門家パネルの任期延長案に反対し、延長案を否決させた。当時、中国は棄権した。結局、国連専門家パネルは先月30日、歴史の中へと消えた。

■プーチン大統領、訪朝の見通し…「訪中直後に訪朝する可能性も」

 また、プーチン大統領は今年24年ぶりに北朝鮮を訪問するものとみられる。昨年9月、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は、ロシア極東のアムール州ボストーチヌイ宇宙基地での首脳会談後に開かれた晩餐で、プーチン大統領の訪朝を要請し、プーチン大統領はこれを受諾した。このためプーチン大統領が16~17日の中国訪問の後に訪朝する可能性も排除できない。米紙ワシントン・ポストなどが最近報じた。

 中ロはアジア太平洋地域における米国の安保同盟強化の動きもけん制した。今回の共同声明には「インド太平洋地域で北大西洋条約機構(NATO)の破壊的政策と歩調を合わせる米国の『インド太平洋戦略』が、地域の平和と安定に及ぼす否定的な影響に注目する」という文言も含まれた。

 昨年3月のモスクワ共同声明で「米国は冷戦的な考え方を堅持し『インド太平洋戦略』を追求しており、これは地域の平和と安定に否定的な影響を及ぼすという点を指摘する」と述べたことに比べると、米国に対する非難が強くなっている。

 プーチン大統領は首脳会談後に開かれた記者会見で「我々はアジア太平洋地域で、閉鎖的な軍事・政治同盟に属さない、信頼できる適切な安保構造を建設する方向に進む必要があると考える」と述べた。そのうえで、「我々はそのような(閉鎖的な軍事・政治的)同盟を作ることが非常に有害で非生産的だと考える」と強調した。これは米国と英国、オーストラリアが結成した「AUKUS(オーカス)」などに向けられた発言とみられる。

北京/チェ・ヒョンジュン特派員、チョ・ギウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「私に決定の権限があるなら、在韓米軍を(朝鮮半島に)駐留させない」とも語った。コルビー元副次官補は、トランプ前大統領が再選を果たした場合、国家安保補佐官候補として有力視されている国防専門家だ。

2024-05-10 | 世界の変化はすすむ
 

トランプ前大統領の「米軍撤退論」の隠れた前提…

「韓国の核武装を排除しない」

登録:2024-05-09 06:01 修正:2024-05-09 08:06

 

「在韓米軍と東アジア同盟の性格が変わる」 
「米国は北朝鮮の核攻撃から韓国を守らないだろう」
 
 
ドナルド・トランプ前大統領が4月2日、ウィスコンシン州のグリーンベイで選挙遊説をしている=グリーンベイ/ロイター・聯合ニュース

 米国大統領選挙を控え、共和党の大統領候補ドナルド・トランプ前大統領と側近たちは、相次いで「在韓米軍撤退」に触れている。在韓米軍の防衛費引き上げを狙った「取引戦略」かもしれないが、韓国の安全保障に決定的影響を及ぼす米国の大戦略変化の流れに備える必要があるとみられる。

 エルブリッジ・コルビー元米国防副次官補(戦略・戦力担当)は6日(現地時間)、聯合ニュースのインタビューで、「米国の主な懸案ではない北朝鮮(問題)を解決するために、これ以上朝鮮半島で米軍を人質として取られるわけにはいかない」とし、「韓国は北朝鮮に対して自国を防衛する上で主となる、圧倒的な責任を負わなければならない」と述べた。「私に決定の権限があるなら、在韓米軍を(朝鮮半島に)駐留させない」とも語った。コルビー元副次官補は、トランプ前大統領が再選を果たした場合、国家安保補佐官候補として有力視されている国防専門家だ。

 これに先立ち、トランプ前大統領も先月30日(現地時間)に報道されたタイム誌のインタビューで、「なぜ私たちが豊かな国である韓国を守らなければならないのか」という発言で、在韓米軍の存在に否定的な立場を示した。「韓国から米軍を撤退させるのか」という質問に「私は韓国が私たちをまともに待遇してほしいと思っている」としたうえで、「私は、彼らがそこにいる米軍4万人(実際には2万8500人)に対して事実上何も支払わなかったため、交渉を行った」と答えた。

 トランプ前大統領と主な側近たちが在韓米軍の撤退や削減を示唆するのは、まずは「負担の分担(バードン・シェアリング)」のレベルで韓国により多くの防衛費分担金を求めるためとみられている。トランプ前大統領が在任当時、韓国の防衛費分担金を大幅に引き上げるよう圧力を加え、北大西洋条約機構(NATO)にもより多くの軍事費支出を求めたのと同様の交渉戦略ともいえる。韓米が来年末で終わる第11次防衛費分担特別協定の後続の協定に向けた交渉をすでに進めているのも、トランプ前大統領が再び政権を握る可能性を念頭に置いたものとみられる。

 
 
ドナルド・トランプ前大統領が政権に復帰した場合、有力な国家安保補佐官候補とされているエルブリッジ・コルビー元米国防副次官補が6日(現地時間)、ワシントンDCにある自身のシンクタンク事務所で、聯合ニュースのインタビューに応じている/聯合ニュース

 だが、米国国内の政治の変化と米中競争激化という大きな流れの中で、米国の戦略が根本的に変化していることも見逃してはならないという指摘もある。

■中国との競争に米国の力を集中…韓国は自ら対応すべき

 コルビー元副次官補は、今回の聯合ニュースのインタビューをはじめ、一貫して「米国は最大の脅威である中国に力を集中させなければならず、北朝鮮に対する脅威は韓国が自ら対応しなければならない」と主張してきた。成均館大学政治外交学科のチャ・テソ教授は、「冷戦時代のように非武装地帯(DMZ)近くに在韓米軍の大規模兵力を駐留させ、『トリップワイヤー(有事に米国の自動介入を保証するもの)』の役割を果たす構造は消え、北朝鮮に対する防衛は韓国がほぼ専担する形にする一方、韓国が防衛費をさらに多く支払うよう迫っている」とし、「米国の大戦略が中国に焦点を合わせるにつれ、東アジア同盟の性格が全体的に変わってきており、在韓米軍の性格も変化することを明確に認識して備えなければならない」と語った。

 特にコルビー元副次官補は、「できるだけ早い時期に(韓国軍に)戦時作戦権を移管しなければならない」と述べた。韓国の保守陣営が反対してきた戦作権の移管を、米国の保守陣営が強く要求しているということだ。また、米国は自国の都市を犠牲にしてまで韓国を北朝鮮の核攻撃から保護しないとし、「韓国の核武装を排除しない」とも語った。チャ・テソ教授は「米国の国力が下がり始めた1970年代、ニクソン政権が在韓米軍を減らしたことを受け、韓国で核武装の試みがあったのと似た局面」だと指摘する。北朝鮮の核問題が深刻になった状況で、トランプ前大統領の再選が現実化した場合、韓国内で独自の核武装論が本格化する可能性を予告したものでもある。米国の大統領選挙の結果は予断できず、トランプ陣営の朝鮮半島政策が実現するとは断定できないが、米国内でこうした声が次第に広がっている変化は決して見逃せない。韓国が見て見ぬふりをするにはあまりにも大きく危険な変化が進んでいる。

パク・ミンヒ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする