ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

反中国も、こじらせるとここまで馬鹿になる

2023-03-16 00:00:00 | 社会時評

先日の記事を。

イランとサウジアラビア、7年ぶりに外交関係正常化で合意 中国が仲介
2023年3月11日

中東で長年、ライバル関係にあるイランとサウジアラビアが10日、外交関係の正常化で合意したと発表した。両国は2016年以来断交していた。両政府代表が中国で4日間にわたり協議した結果、合意に達したという。

両国は2016年1月にサウジアラビアでイスラム教シーア派の指導者が処刑されたことをきっかけに、イラン・テヘランのサウジアラビア大使館が襲撃されたことから、外交関係を断絶していた。それ以来、イスラム教スンニ派が大多数のサウジアラビアと、シーア派が多いイランは、厳しく対立していた。

両国の和解を模索する動きはこれまで失敗が続いていたが、両政府は10日の発表で、2カ月以内に大使館を再開すると表明。貿易や安全保障上の関係も再構築する方針という。

今回の発表について、アメリカは慎重に歓迎する姿勢を示した。ホワイトハウスのジョン・カービー米国家安全保障会議(NSC)の戦略広報調整官は、米政府は「地域の緊張関係を緩和させようとするあらゆる取り組み」を支持すると述べた。一方で「イランが履行義務を果たすのか、それ次第だ」と慎重な姿勢を見せた。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、中国による仲介努力に感謝し、「湾岸地域に持続する平和と安全を確保」するための努力を支援する用意があると、報道官を通じて述べた。

イランの核開発をめぐり最大限の圧力を求めてきたイスラエル政府は、コメントしていない。

サウジアラビアとイランはしばしば相手を、中東覇権を目指す脅威とみなし、レバノンやシリア、イラク、イエメンなど中東各国で対立する勢力をそれぞれ応援してきた。

イエメンでは、シーア派の反政府勢力ーシ派をイランが支持。フーシ派は2014年に首都サヌアで、サウジアラビアが後押しする政府の政府施設を一時占拠した。2015年からの内戦でフーシ派が政権掌握を宣言したのに対し、サウジアラビアなどのスンニ派連合軍はフーシ派を空爆した。

2019年にはサウジアラビアの複数の石油施設がミサイルやドローンの攻撃を受け、石油製造に大きな影響を与えた。サウジアラビアとアメリカはイランを非難したが、イランは責任を否定していた。

上の記事でもわずかに触れられていますように、この件には、中国の仲介がありました。では、中国の本家本元、人民日報の記事を。

サウジアラビアとイランが国交回復 国連事務総長が中国の努力に感謝の意
人民網日本語版 2023年03月11日15:35
中華人民共和国とサウジアラビア王国、イラン・イスラム共和国は3月10日に北京で3ヶ国の共同声明を発表した。3ヶ国は声明の中で、サウジアラビアとイラン両国の国交回復と、2ヶ月以内の双方大使館と代表機関の再開、双方の大使の派遣、そして二国間関係の強化を検討するなどを含めた協議に合意した。また国際・地域の平和と安全を強化するため、3ヶ国はあらゆる努力をしていくことを表明した。中央テレビニュースが伝えた。

サウジアラビアとイラン両国は、中国が双方の国交回復を推し進める上で、積極的な役割を果たしたことを称賛し、感謝することを表明した。また国連のグテーレス事務総長は報道官を通じて声明を発表し、「サウジアラビアとイランの外交関係が回復したことを歓迎するとともに、中国が両国間の対話を促進したことに感謝する。サウジアラビアとイランの善隣友好関係は湾岸地域の安定を促進させる助けとなる」とした。(編集TG)

「人民網日本語版」2023年3月11日

中国に対してどう批判的であろうとも、この件に関してはそれなりに中国を肯定的に評価すべきでしょう。サウジとイランというのは、基本的に犬猿の仲であり、また双方ともどもスンニ派とシーア派の雄であることを自他ともに認められている。その2国が、国交回復にたどり着いたことは、記事中 国連事務総長のいうように、

>中国による仲介努力に感謝し、「湾岸地域に持続する平和と安全を確保」するための努力を支援する用意があると、報道官を通じて述べた。

>報道官を通じて声明を発表し、「サウジアラビアとイランの外交関係が回復したことを歓迎するとともに、中国が両国間の対話を促進したことに感謝する。サウジアラビアとイランの善隣友好関係は湾岸地域の安定を促進させる助けとなる」とした。

ということです。当たり前でしょう。ところが世の中、こんな程度のことすら認めない、認めたくない連中がいるのには、心底から呆れ返りますね。日経新聞の記事より。

>【ドバイ=福冨隼太郎】イランとサウジアラビアの国営メディアは10日、両国政府が2カ月以内に外交を正常化し、双方の大使館を再開することで合意したと伝えた。中国が両国を仲介した。中東の緊張緩和につながると期待される。中国主導による中東の大国の和解実現は米国の指導力低下を印象づけ、長期的には世界秩序を揺さぶるリスクとなりかねない。

以下は会員限定部分なので引用できませんが、

>中東の緊張緩和につながると期待される。

とは書いてあるとはいえ、

>中国主導による中東の大国の和解実現は米国の指導力低下を印象づけ、長期的には世界秩序を揺さぶるリスクとなりかねない。

じゃあねえ(呆れ)。

そもそも論としてですが、この件で米国に、サウジとイランの仲介をする能力や意思があるのか。なにしろ最近の事例でいえば、米国には2020年1月に、イスラム革命防衛隊ガーセム・ソレイマーニー(ほかに複数の表記あり。この記事では、Wikipediaにのっとります)氏を暗殺した過去があるくらいですからね(バグダード国際空港攻撃事件 (2020年)参照)。それは前政権(トランプ政権)の時代であり、現バイデン政権は現状そこまで無茶はしていませんが、といって現政権も別にイランにこの件で陳謝したわけでもないしね。つまりバイデン政権もイランに話ができる状況ではないわけで、だったら中国なり米国以外のどこかの国が仲介する必要があるでしょう。米国にそれをできる能力がないのだから仕方ない。で、この記事を書いた福冨記者という人は、ことによったら「中東で中国の存在意義が高くなるくらいなら、サウジとイランの関係改善はいらん」くらいのことを考えているんですかね。面と向かって聞いたら「そんなことはない」と回答するのかもしれませんが、実際のところどう考えているんだか。そんなことにはならないかもしれませんが、万一サウジとイランの間で戦争でも起きたら世界中多方面で迷惑になります。なにはともあれこの2国の緊張緩和は悪いことではない。

だいたい中国は仲介をしたとはいえ、別にサウジもイランも、中国の軍門に下るとかそういうこともないでしょう。そもそもサウジアラビアは、米軍基地もあるくらいの親米国家ですからね。で、朝日新聞に次のような記事も流れています。

サウジ・イラン合意「中国は米国の代わりになれない」 米学者の分析

聞き手=下司佳代子2023年3月13日 6時00分

 サウジアラビアとイランが外交関係を正常化することで合意しました。敵対しあってきた中東の地域大国の「和解」は、中東の安定につながるのでしょうか。仲介した中国の思惑は。米国の影響力に陰りは――。米シンクタンク「中東研究所」の研究者、ロビー・バレット博士は「状況の根本が変わることはない」「中国は米国の代わりになれない」と強調します。なぜなのでしょうか。

 ――今回の合意は、中東にどんな影響をもたらしますか。

 あまり実質的な意味があるとは思っていません。

 結局のところ、イランと湾岸アラブ諸国が本当に良い関係になることは有り得ません。

 イランは、自分たちこそアラブを含む中東地域全体の運命の決定権者で真の仲裁者であると信じ、アラブ人を見下す傾向があります。アラブ側も、そんなイランを決して信用しません。緊張関係は緩むことはあっても、なくなることはありません。

 1、2年もすれば何らかの事件が起き、両者がのど元にやいばを突きつけ合う展開に戻るでしょう。そうなった時に「うまくいかなかった」という不満は、中国に向かうと思います。戦略的な状況の根本が変わることはありません。

(以下有料部分)

ここでのバレット氏の意見が的中するかどうかは当方判断はできませんが、いずれにせよ中国が米国の代わりになるなんてのは現実性のない意見だし、中国にそんな意図も能力ないでしょう。仮にそうなるとしてもそれには長いスパンを必要とするし、今回の件は、そんなに決定的なものでもない。だいたいサウジもイランも、とりあえず国交断絶という状況を継続するのは得策でないと判断していたから国交回復にいたったわけであり、その気がないのに中国がむりやりあっせんして国交回復にいたったとかそういうことでもないでしょう。バレット氏がどう考えているかはいざ知らずですが、中東や湾岸あたりで、米国が常に主導権を握る必要もないし、それが常に正しいわけでもない。当たり前でしょう。バレット氏はおそらく米国の利害を前提として話をしているのでしょうが、日本の新聞記者までがこんなことを書いてどうするんですかね。

で、こういうのを読んでいると、反中も、こじらせるとここまで馬鹿になるのかと絶句しますね。まあ福冨記者も、仲介国が中国でなければもっと称賛するのでしょうしね。中国だから批判する。これ、前私がご紹介したこの件のようなものではないか。

なかなか面白い記事を見つけた(うそを見抜くのにいい判断材料になりそうだ)

つまりは、某ネット論客(名前は、ご当人の名誉と個人情報保護のため、記載しません。悪しからず)が

>ウイグルでビールのイベントがあった、これは酒を飲まないイスラム教徒であるウイグル人への弾圧だ、という趣旨の非難をする記事を書いた人物がいて、それを某ネット論客は

>>嫌がらせにも程があるよなー。クズい。/ビールを抑圧の道具に使うな

と書きまして、そうしたらこれがデマ記事であることが分かった途端、

>元々酒も煙草も嗜む人が多かったらしいですが,最近はイスラーム回帰が進んでいるそうで,まあそりゃこの状況ではそうなるわな……という

などと逃げ口上をほざく始末です。私思わず

>最初のブックマークと話がぜんぜん違うじゃねえかよ(笑)!!!

と批判しましたが、これもねえ、つまりは反中国をこじらせたから、こんな馬鹿な話をほざくのでしょう。中国が関係しなかったら、むしろ「酒くらい自由に飲ませろ」くらいのことを書くのではないか(苦笑)。こんな幼稚なデマをほざく人間も、真に受ける人間も、デマと理解してもなお撤回できない人間も、ほんと救いのない大馬鹿者だと思います。心の底からそう思います。なおこのデマブックマークをした人物は、理由は定かでありませんが、このデマブックマークをした年(2015年)の暮れに、ネット言論界隈からトンズラしてしまいました。私は、このデマブックマークの件も、ご当人の心を大きく傷つけたのだろうと(勝手に)解釈しています。

こんな人物のことはともかく、素人さんがビール祭りのくだらんデマ記事を真に受けるとかなら知ったことじゃありませんが、海外駐在の新聞記者がこの始末では、呆れ返るにもほどがあるというものです。お話にもなりません。日本経済新聞という新聞も、やたら愚にもつかない反中記事が掲載されていて、どこが経済新聞じゃいと思いますが、でも現在のところは(今後はどうだかですが)、日経に限った話ではありませんが、日経の関係者にとっては、「反中」がbogus-simotukareさんのいう「心地よい」なんでしょうねえ(苦笑)。うんなもんぜんぜんジャーナリズムでもリアリズムでもないじゃんと思いますが、読者ともどもその「心地よい」ことを共有(日本経済新聞の読者は、特にそうなのでしょう)しているのでしょう。これでは日本の将来も暗いと思います。

なおこの記事は、bogus-simotukareさんの記事を参考にしました。感謝を申し上げます。

今日の中国ニュース(2023年3月13日分)(副題:サウジ、イランの和解ほか)

コメント (6)
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