ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

映画、旅、その他について語らせていただきます。
タイトルの由来は、ライプツィヒが私の1番好きな街だからです。

手塚治虫が、選挙で共産党の候補と自民党の候補の応援をはしごしたという話は、事実確認ができないらしい(「なかった」とは断言できないが)

2023-03-07 00:00:00 | 社会時評

最初に断っておきますと、この記事は、手塚治虫の政治における考えについて論評するものではありませんので、その点ご留意願います。

1か月半くらい前のツイートですが、かの唐沢俊一氏のツイートを。

唐沢氏も、いま新著執筆中なようですが、進捗状況などについて担当者が激怒しているようで、こんなツイートなんかしている場合かよと思いますが、それはさておき。

私も手塚が日本共産党を支持していたということは知っていましたが、自民党ともなんらかの付き合いがあった(らしい)ということも何かで聴いたことがありました。たださすがに

>終わったあと食事を勧められると 「いや、これから自民党の応援に行かないといけないので……」とそそくさと立ち去ったという(笑)。

ていうのはねえ(苦笑)。見てきたようなフィクションではないか。ちなにみ私が聞いたことのある話は、手塚が自民党の大会で講演したという話でした。しかしその話も、いつの大会での講演なのかといった基本的な情報はあいまいでした。たぶんですが、下にある自民党の機関誌への寄稿という話が、誤解もしくは意図的にゆがめられて広められたのではないか。

現実問題として、共産党の候補者の応援の後に自民党の候補者の応援に行くというのも、これはマスコミなどでも批判・非難の対象にならないか。ネットがない時代ですが、週刊誌などにも書きたてられかねません。事実なのか? だいたい唐沢ツイートを見ても、それがいつの選挙の話で、自民党の候補の名前すらも書かれていません。そもそも共産党を支持していて、いわゆる革新(と左翼陣営が呼ばれていた時代でした)系の文化人であった手塚に、選挙の際に(これはけっこう重要なポイントです)応援演説を自民党の政治家が依頼するか。あるいは手塚もそのようなオファーを受けるか。情報の正確さには難があるということで知られる唐沢氏のことですから、事実関係も怪しい(笑)。ただ共産党の候補については、

>ちなみに応援したのはいわさきちひろの夫の松本善明。

とは書いていますが。いわさきちひろ松本善明は1974年に死別しています。松本は、手塚の旧制中学(北野中学)の先輩でした。松本が1926年生まれ、手塚が28年生まれです。もっとも生前手塚は1926年生まれと称していましたので、すると松本の応援演説の際は、そのあたりはどうしていたんですかね・・・。同級生としていたか。先輩といって立てていたのか(割り切って後輩だと認めていたのか)。そのあたりは定かでありません。

そして世の中すごい人がいるものです。このフォークロア? 都市伝説? を検証した方がいるのです。

唐沢俊一氏がツイートしてた手塚治虫が共産党の応援演説後、同日に自民党の応援をしたという話の出典がわからない

詳細については、上の記事をお読みになっていただくとして、大要だけ書けば、この記事の筆者である電脳塵芥氏は、手塚が自民党の応援をしたということは確認できないとしています。手塚自身共産党の応援演説をしたのは事実だし、共産党のイベントにもいろいろ顔を出していたのは事実ですが、彼が応援していたのは上記松本と上田耕一郎(東京都選挙区選出の元参議院議員で共産党の元副委員長。不破哲三の兄)がもっぱらなようです。そう考えれば、私が前に記事にした石坂浩二生稲晃子の応援演説をしたのと同じようなものかもしれません。石坂はたぶん自民党支持者なのでしょうが、おそらくあの演説は、自民党のためというより同じ芸能事務所に所属するという縁での生稲のためのものでしょう。

こんなことで晩節を汚さなくてもいいだろう(石坂浩二の生稲晃子への選挙応援演説)

それはともかく。電脳塵芥氏も、

>これらのことから基本的には松本善明上田耕一郎との個人的な関係性が応援の動機として強い様には見えます。

とも記しています。そして手塚が、自民党の媒体に顔を出しているのは、唯一

>まず月刊の機関誌から見ていきますが1回だけ手塚治虫の寄稿が確認できます。それが「月刊自由民主」の1984年10月号です。

のみ確認できて、ほかは、BNの不存在や見落としの可能性はあるとはいえ、これといったものが確認できないということです。そしてその寄稿も、さほど自民党政治のイデオロギーとかを支持しているようなものではない。詳細についてはほんとすごい調査なので、ぜひお読みください。

それにしてもつくづく思うのが、ほんとこういう出典のあいまいな話って迷惑だよなです。電脳塵芥氏は、この記事の最後で、

> 困りものなのはこの話はデマとは断定できないことです。自民党の機関紙は所詮は月刊や週刊ですし、個別の議員応援同行記事も現状見つからず。また松本善明以外の共産党員の応援の時だったという逃げ道も存在します。「なかったことの証明」は今回の様な曖昧性を幾重にもまとう話に、それもソースがない場合、いくら調べてもデマと断定は無理。それほどにある意味で「うまい」と言えるかもしれない。共産党応援の同日に自民党を応援したは、ちょっと嘘くさい。ソースほしい。

というわけです。当たり前ですが、まさか手塚の足取りを悉皆調査することもできないしねえ。それで唐沢氏のような手合いは、そういうあいまいな話をもっともらしくツイートする。で、そういう話を真に受ける、あるいは「怪しい」と考えつつも広めたりもする人間もいる。お話にもなりません。

で、ほんと世の中デタラメな(あるいは無責任なこと)をほざかれるとどうしようもないですよね。唐沢氏に「で、あなたのこのツイートのソースはどこですか」と聞いたところでたぶんお答えはないしね。たかが自民党の機関誌に寄稿した程度の話が、共産党の応援演説のあとでどうしたこうしたと、見てきたようなデタラメにいつのまにかすり替わる。お話にならないとはこのことです。

ともかくすごい調査ですので、ぜひご一読を。私もいろいろ調査していますが、やはりある程度時間を取って、国会図書館や都立中央図書館あたりに通いつめることも必要かなと痛感しました。電脳塵芥氏に感謝を申し上げてこの記事を終えます。はてなブックマークもたくさんついています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする