拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

トランプさんもデカメロンを読めばいい

2017-02-04 10:46:19 | 日記
母の付添でいく病院は待ち時間が超退屈。なのでデカメロンを持ってく。待ってる間にでかいメロンを食べて……ではない。ボッカチョのデカメロンの文庫本だ。で、待合室の椅子にこしかけ鞄から出すと、ありゃ、カヴァーが女性の露わになった太もものイラスト。なんだかエイチな本のようだ。そういう本ではないのに。ほとんどが中世の堕落しきった為政者や聖職者への風刺。たまーにスパイスのように淫靡な話が混じるだけ(=私のブログ)。そもそもペストの流行から逃れるために疎開した男女数名が暇つぶしにかわりばんこにお話をする、という話。高貴なご婦人もいるわけだから、そんなにしょっちゅう下ネタばかり話してはいられない。パゾリーニがいけない。淫靡なエピソードばかり選んで映画にしたから。とにかく、このカバー付きだと看護師さんに変態と思われかねない。カバーをはずして読む。で、こんな話があった。どっかの王様が金持ちから金をまきあげようと思って、その金持ちに「ユダヤ教とイスラム教とキリスト教のうち真の宗教はどれだ」と尋ねる。王様の魂胆は、金持ちが下手に答えたらそれにいいがかりをつけて財産をまきあげる、というもの。金持ちは王様の内心を見破ったうえでこう答えた。「ある一族が立派な指輪を代々受け継いできた。今それを手にしているのは三人の子を持つ者。その三人の子銘々が自分に継がせてくれと嘆願するので、困った父は精巧なイミテーションを二つ作って、全員に「受け継ぐのはお前だ」と言って渡す。父の死後、それぞれが自分こそ真の継承者だと主張して指輪を取りだしてきたが、どれもがそっくりで、どれが本物か分からないまま今に至る。宗教についても同じ。各民族はそれぞれ遺産と宗教と戒律を持っているのであり、どれが真の宗教という問題は解決できるものではない」。広い心だ。自分がいいと思ってるものだけがいいというのではなく、他人の考え、信仰にも理解を示す。もちろん、金持ちがした話は王様の策略から逃れるためにしたものだが、でも、こういうことを書ける、というのは作者のボッカチョがそういう考え方を持ってたからだろう(頭にないことは書けない)。なんでもかんでも自国ファーストで特定の国からの入国を禁止するどっかの大統領にも聞かせたい。因みに、物語では、王様はその金持ちの話を聞いて感じ入り、心中を吐露し、金持ちは喜んで金を貸した。王様は後日ちゃんと借りた金を返したうえでお礼もし、二人はずっと仲良しであった、で終わる。この王様も偉い。某大統領はどうだろうか。だめそうだな。気に入らない人はすぐ「You're fired」だもんな。