拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

シューベルトの「弁護士」は本当に弁護士だった

2017-02-15 07:59:55 | 音楽

シューベルトの曲目リストを眺めていたら「弁護士」(三重唱。D37)の文字が。原題は一般的に弁護士を表す「(Rechts)anwalt)」ではなくオーストリア方言の「Advokaten」。てなこともあって、きっとこれは法廷に立つ弁護士のことではなく神の代理人に違いない、曲中に「ゼンプロニウス」という人が出てくるがこれは聖人に違いない、と思って歌詞を見たら、あれま、びっくりぽん(名作朝ドラの文化継承)。ほんまもんの弁護士でございました(普段、宗教曲の歌詞ばかり見てるゆえの思い込み)。三つのパートに役が割り当てられてあって(オペラのよう。実際、リンクした映像ではオペラチックに演っている)、二人の弁護士の会話で始まる。顧客のゼンプロニウスは訴訟費用を払わない、取り立ててやろう、僕らからは逃げられない、とりあえずワインでも飲もう、法律万歳!とか言っているところにゼンプロニウス登場。「田舎からずっと歩いてきた」と(私のように)貧乏を強調し、これまでここ(法律事務所?)に持ってきた砂糖、コーヒー、バター、ワイン(トカイ酒!)等々でもってまけてくれ、と頼むが弁護士達は「訴訟費用は別」と言って一銭(?)もまけない。さて、ここでゼンプロニウスが「Kling,kling,kling」と言うと、一転、音楽が優しくなって一同「素敵な調和」と歌って終わる。ほうら、ここでだよ、聖なる鈴の音が鳴って気持ちが優しくなって和解したのに違いない(再び頭の中が宗教曲モードになる)……と思ったら、リンクした映像を見てわかった。「Kling,kling,kling」は金袋の音。「ちりんちりんちりん」ではなく「じゃらじゃらじゃら」であった。つまり観念したゼンプロニウスが訴訟費用を全部支払ったのだ。最後まで予断に振り回された私であった。この曲、本当にオペラのよう。シューベルトはオペラも書いてるし。「じゃらじゃらじゃら」を見てもらいたくてこの映像をリンクしたが、Youtubeでは他にとびきりの演奏も聴ける。フィッシャー・ディースカウとペーター・シュライアーが弁護士役を歌っている演奏。