暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

令和6年卯月の稽古だより・・・大円草に汗して

2024年04月21日 | 暁庵の裏千家茶道教室

       (帷子川沿いの八重桜の並木・・・4月8日撮影)

        (帷子川の花筏・・・4月8日撮影)

 

あんなに待ち焦がれていた桜、4月7日(日)の「ひねもすのたり正午の茶事」の日まで何とか踏ん張って花を咲かせてくれた桜ですが、たった一日で緑の葉桜になりました。

一方で、4月8日は帷子川沿いの八重桜の並木が満開でした。

 

     (アケビ、苧環、壷珊瑚を生けました)

卯月(4月)も半ばを過ぎ炉での稽古も最後になりつつあります。

卯月の奥伝の稽古は大円草(だいえんのそう)です。

大円草ですが、私にとってとてもユニークで不思議な点前と思っていました。いろいろな疑問がS先生のご指導や解釈のお話で、ベールが剥がれるように分かり易くなってきました。納得し理解できるようになると生徒さんに教えるのも気合が入ります・・・

  (御軸は「白珪尚可磨」、太玄老師筆です)

裏千家流では3月は釣釜、4月は透木釜をかけます。

五徳を使う12月に行之行台子、1月から3月前半にかけて真の行台子と大円真を稽古するようにし、3月後半から4月になると釣釜や透木釜になるので、相伝(奥伝)は大円草を稽古しています。

大円草は円能斎が考案した相伝科目の一つで、大円盆に唐物茶入と唐物茶入、茶巾・茶筅・茶杓を仕組んだ天目茶碗をのせ、2種の濃茶を天目茶碗でお客さまに差し上げるお点前です。格は行之行台子と同等です。

大円盆は円能斎好み(真塗、径1尺2寸5分)と淡々斎好み(大円真用が真塗、大円草用が搔合塗となっている。径1尺)があります。当方は淡々斎好みの真塗を使用しています。

(炉中の炭の美しさに魅せられます・・・雲竜釜は2代畠春斎造

許状を持っている生徒さんが次々と取り組んでいますが、最長かつ複雑な点前なので教わる方はもちろん、教える方も大変です。

最近は体力不足でして、大円草の初心者を続けて2名指導すると、もうクタクタになってしまいます。

それでも初心者が1回ごとに力をつけていくのがわかり、大円草の見学をしてもらったりしながら、3月と4月に2回指導しました。2回目になると、「炉のうちに習得できるかしら?」と内心思っていたのが、本人の努力もあり「まぁ!ここまで出来るようになるとは・・・(スゴイ!)」に変わりました。本人たちも少し自信が出てきたらしく

「先生、やっと大円草がわかってきてお稽古が面白くなってきました」

「風炉でも稽古しますから引き続き頑張りましょうね・・・」

   (アケビと孔雀椿(だと思う・・)を生けました)

点前の順番、位置、所作(茶道点前の三要素)も複雑で大変ですが、茶道具の問答もとても大切です。茶道具の格を考えることで、点前の所作(道具の扱い)に気持ちが通うようになって欲しいからです。

こうして生徒さんに元気をもらったり、教わったりしながら(曖昧な箇所が確認できる)、一緒に大円草に汗しています。 

 

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五事式の茶事に招かれて(令和6年卯月)

2024年04月17日 | 社中の茶事(2018年~)

     (春雨にけむる「私のサクラ」・・・台所の窓からパチリ)

 

令和6年卯月7日、社中M氏の五事式の茶事へお招き頂きました。

あれから日が経ちましたが、随所にM氏のおもてなしの心意気を感じるお茶事だった・・・と、散りゆく桜を台所の窓から眺めながら思い出しています。

横浜市中区の茶席Kで行われ、ご亭主はM氏、半東はKTさまです。

お正客YKさま、次客OKさま、三客暁庵、四客AYさま、詰KRさまで、主客で心を合わせた一座建立でした。皆さま、ステキなお着物がお似合いで、席中で何度も見惚れました。

感激冷めやらぬうちに後礼のお手紙を差し上げました。こちらに忘備録として記します。

 

 M氏さまへ

    春風に 花を散らすと見る夢は

       覚めても胸の騒ぐなりけり     西行

 

今日は春風ならぬ春の嵐に満開の桜が散り急ぐ様子を

「これもまた好しかな・・・」と眺めています

先日は五事式の茶事にお招き頂きまして ありがとうございました

電車のアクシデントに遭遇し、席入りがお遅くなりまして申し訳ございませんでした

待合に掛けられた「喫茶去」、大好きな禅語を嬉しく拝見しましたが、Mさまにさし上げた

ことをすっかり忘れていたのに気が付きました・・・

 

本席の床に掛けられていた「七事式」の偈、須賀玄道師御筆の最後に書かれていた「関」、

M氏さまの茶の道の一つの到達点であり、また、新たな出発点のようにも思えました

我家の「七事式偈」には「喝」とあり、いつも叱られたようで背筋が伸びます

同じ「七事式偈」でも最後の一字で解釈や心持ちが違って来るのが何とも興味深いことです

廻り炭は正に主客共に修練の場でありましたが、皆さま、とても和気あいあいで、炭を上げ、

炭を置き、その置き方を味わい、何よりも埋火が無事に熾るかどうか、皆で心を一つにして

炉中を見つめました そして今回は大成功!でした  おめでとうございます!

火吹き竹で吹かなくっても大丈夫だったくらい火が残っていました

埋火で火が熾ったのは何年ぶりでしょうか、本当に嬉しかったです

ご用意いただいた練香の「千年菊方」、初めて聞く香銘でしたが、徳川家康が長寿を願い

「千年菊方」の調合を残したというお香は優しい薫りでございました

その貴重な練香をご恵贈いただきまして 有難く感謝しております

「春霞」(?)と名付けられた淡い桜色の金団(打出庵大黒屋製)も黄身餡が珍しく甘さ控えめの上品なお味で、濃茶がとても楽しみでした

 

(後座の点前座は全て亭主のお持ち出しでした・・・もう感激!)

後座になって廻り花がとても楽しかったです

花台に溢れるほど春を彩る花々が集まり、一人一人が選んで生けると、選ばれた花がいちだんと好い表情になっていました・・・それも一瞬のかがやき

折角生けられた花がすぐに上げられてしまうことに「色即是空 空即是色・・」の七事式偈を思い出し、執着を無くすことや、たった今を大事にし、精一杯生きることの大切さを教えてくださっているのかしら?・・・と

最後にM氏さまが生けられた花、それまで隠れていて水を注いでから花が現われた瞬間、皆さまも私も「あっ・・!」と嘆声がもれました

コデマリ、白い椿(「限り」という千重咲きの椿?)、もう一種が堤焼花入に見事に生けられていて、もう素晴らしかった!です

 

香になり、お正客・YKさまが焚いてくださったお香(伽羅)を嬉しく聞きました

香銘「雲い」と、香銘に因む凡河内躬恒の和歌をご披露くださり、しばし典雅な香りを皆さまと愉しみ、幸せなひと時でございました

   山高み雲いに見ゆる桜花

      心のゆきて

        折らぬ日ぞなき       躬恒

 

濃茶になり、額の汗をぬぐいながら心を込めて練ってくださった濃茶の

なんと!まろやかで美味しかったこと、濃さも程よく喉をうるおしてくれました

三人分を私一人で頂いてしまいたいほどでございました 

出雲焼の茶碗がとても渋く良い味わいで素敵です

        「薄茶は花月で・・・」

花月の薄茶も和気あいあいと賑やかに進み、二人一碗で点て合ったのも良かったと思います

お持ち出しの三碗がどれもMさまお好みやこだわりを表わす茶碗たちで、薄茶を頂きながら垂涎の声がしきりでした

一二三之式ではお客さまから立派な評価を頂けて、ご亭主Mさまと半東KTさまの一会に臨む真摯なお気持ちとご苦労が報われた気がして嬉しく思いました

その昔、五回連続してお仲間と五事式を修練した熱き日々を、M氏さまの一生懸命の御姿を拝見して、再び懐かしく思い出しております

これからもお茶事に五事式に楽しみながら修練を重ねてくださると嬉しゅうございます

末筆になりましたが 半東KTさまへくれぐれも宜しくお伝えください

お疲れがいかばかりかと存じますが 寒暖差の厳しい折ご自愛ください

長文になり途中で巻紙のお手紙を諦めました どうぞご容赦ください    

本当に・・・ありがとうございました             かしこ

 

   令和六年卯月吉日             暁庵より

 

 


ナマケモノの自主稽古

2024年04月08日 | お茶と私

    (我が家のしだれ桜が一分咲きです・・・さくら雨の合間に撮影)

 

3月末から立礼の稽古をあわてて始めました。

今年初めて立礼の茶事を4月半ばに予定しているので、自主稽古を泥縄で頑張っています。

いざ稽古を始めると、前回から半年経っているので覚えているつもりでも曖昧なことだらけでした。しかも、思い込んでいた間違いがあったりして「どうしょう!」

 

       (植え付け前のパンジーの鉢)

これから茶事が終わるまで毎日、たとえ一点前でもよいから稽古をすることにしました。

頭で考え理解することは重要ですが、それを身体でスムースに表現できるようになるには稽古を重ねるしかありません。

それに茶事で使う茶道具で稽古してみると、道具によって個性があり、ちょっとした気遣いが必要なこともわかります。

 

  (なかなか咲かなかったけれど今年は二輪咲きました)

久しぶりに「茶道点前の三要素」を思い出しました。

「茶道点前の三要素」とはだいぶ前にブログにも書きましたが、三要素とは、順番、位置(道具を置く位置、正面など)、所作です。

先ず点前の順番と位置の確認。

点茶盤に唐銅道安風炉を置くので少しだけ中央ラインがずれてしまいます。

炭手前をしてみると、炭斗が大きいので水指を奥へ置かないと、羽根を置くスペースが取りにくいことを思い出しました。また、釜を下ろす位置、どこまで引くか、鐶の置き場所、何より香合が取りやすいような釜の位置・・・などなど、実際にやってみて頭と身体で確認しながら進めています。

でもね!・・・この時間がとっても楽しいのです。

    (元気がなかった乙女椿に花が一輪咲きました)

今日は朝からさくら雨・・・桜の時期に降る雨を「さくら雨」と呼ぶそうです。稽古がお休みの日だったので午前中から稽古に没頭していました。

障子を開け放って庭に咲く花たちや木々の新芽に見守られながら、初炭、濃茶、後炭と集中して稽古します。無意識のうちにも「茶道点前の三要素」の基本を確認していたようです。

S先生の声が聞こえてきます。

「点前を崩すことはいつでもできますが、基本に忠実な点前が一番美しいと思います」と。

 

   (頂いたクリスマスローズが清楚な花を咲かせています)

敬愛する茶事の師匠の声が聞こえてきます。

「心を込めるのは当たり前ですが、心を込めていることを客にわかってもらえる点前を工夫することも大事です」と。

裏千家流の点前は無駄なことを全て削ぎ落したシンプルな点前なので、基本をしっかりと踏まえて、かつ緊張感のある美しい点前で御茶一服差し上げたいと思います。

とにかくやるきゃない・・・のです。普段の稽古をサボっていたことを反省しながら自主稽古に励んでいます。

そして、これがあるから茶事をするのかもしれない・・・と思いながら。 

 

 


スウェーデン・茶名披露の茶事だより・・・その2

2024年04月05日 | スウエーデンの茶友から

つづき)

スウェーデン在住のOさんから写真添付のメールが続々と届きました。

写真からOさんのこの茶事にかける意気込みや、お客様さまの茶名拝受をお祝いする温かな気持ちが伝わってきます。

それにお客さま(男性も女性も)の着物姿がチャーミングで、スウェーデンの皆さまのお茶に対する並々ならぬお心を感じました。

私も今できることを楽しみながら茶の道を歩き続けたい・・・という勇気をたくさん頂きました。

Oさん、ありがとうございます!

どうぞ素晴らしい茶友の皆さまによろしくお伝えください。

 

 Oさんからのメール(第2弾です)

最初の日は二人の欠席で、半東さんもお客に入っていただきました。

2回目は写真を撮るのを忘れてしまいました。2人の日本女性(Yさん含む)と2人の男性(スウェーデン人とイタリア人)ですが、半東さんが病気で欠席されたので大忙しでした・・・。

3回目は5人のお客様全員がいらっしゃいました。正客の息子さんは今もお稽古してるそうです。

最後の日(4回目)は3人のスウェーデン人の方、1人の日本人女性でお客さまは4人、それから半東です。

     (茶入、茶杓、仕覆の拝見中です)

お道具は先生に8年前にいただいた濃茶の楽茶碗を使いました。桜の季節にぴったり🌸。

茶名拝受のお祝いに頂いたつぼつぼ蒔絵の棗も使わせていただきました。

もう一個の茶碗は藤井恵美さんの白楽茶碗です。

濃茶は日本では今でもほとんど各服ですよね。私はお客様のご希望を聞きながらやりました。 薄茶も同じように。

薄茶の茶碗は京焼で仁清金霞片輪車、もう一つの茶碗は趣味で陶芸をしている娘keiko作です。

 

主菓子は自作の桜もちで、葉っぱは去年マンションの中庭で取ったものを冷凍していました。 写真を見ていただけるとお判りと思いますが お料理はチラシ寿司にしました。

    (Oさん自製の桜もち)

初めての事、そしてハプニングもたくさんありましたが、先生のアドバイスはじめ、皆様の温かいサポ-トのおかげで茶事が出来たことに感謝しています。 

先生が茶名の申請をしてくださったお陰で宗芳の茶名を拝受でき、ホーカンも天国できっと喜んでくれてるだろうと思います。(暁庵も優しかったホーカンさんのことを思い出しています・・・

ホーカンの芳を取るなんて・・・私には思い浮かびもしないアイデアを先生が出してくださり、本当に嬉しいです。ありがとうございます。

前に書いたように先生に送っていただいた軸が間に合わなくて残念でした。この軸を使っての茶事を計画します。

茶友が「いい理由が出来たから次回を期待しているよ」と言っています。

 (次の茶事の予告かしら? 応援しています!)

これからもご指導宜しくお願いいたします。  Oより

 

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    スウェーデンの茶友から

    茶名の許状式

 


スウェーデン・茶名披露の茶事だより・・・その1

2024年04月04日 | スウエーデンの茶友から

     (Oさまから茶名披露の茶事の写真が送られてきました・・・)

つづき)

 Oさまへ

こんばんは。暁庵です。

昨日(3月3日)は日曜日なので郵便局本局へ行き、航空便で掛け軸を郵送しました。

前はもっと簡単だったような気がするのですが、ラベルをタブレットで打ち込んで作るのに1時間かかりました。

何とか、送れるところまで漕ぎつけましたが、到着まで16日もかかるそうです。かかっても10日くらいかしら?と考えていたので、もう!びっくりです。

頂いたメールでは、「茶事の予定は3月16日、17日、23日、24日の4日間を計画しています」・・・もしかしたら、23日と24日には間に合うかもしれませんが、どうぞそのつもりでいてください。

掛け軸は足立泰道(あだち たいどう)師の御筆で

「春水満四澤」 (しゅんすい したくにみつ)

雪解けの春の水のように、仏の教え(お茶の教え)が広く社会の隅々まで満ちていく(広がって行く)・・・という意味です。

お茶をされている方、初めて体験する方、日本に興味のある方、スウェーデンでいろいろな方へ茶道を紹介したり、教えたり、おもてなしをしていらっしゃるOさんにぴったり!と思い、選びました。新しいものではありませんが、私の大好きな掛け軸なので使ってくださると嬉しいです。

いずれにしても到着したらメールでご一報ください。

茶名披露の茶事のご成功をお祈りしています。   暁庵より

 

     (散歩道のしだれ桜・・・現在はまだ一分咲きです。昨年撮影)

 

 暁庵先生へ

御身体の調子はいかがでしょうか。 

待ちに待った、先生からの掛け軸が3月25日に届きました。

本当にありがとうございます。

23日と24日の茶事に間に合いますようにと願っていましたが、残念なことに終わったあくる日に届きました。

掛け軸は10年前に手に入れた「庵中閑打座」を使いました。対句の「白雲起峰頂」を考えて、 長いこと不便な環境でお茶を楽しんでいたら茶名を頂くまでに至った・・・と自分勝手に解釈して使いました。

4日間色々ハプニングがありましたが、皆さんの温かい援助のおかげで何とか無事に終えることが出来てほっとしました。 

実は、A先生が茶事の前日に風邪をひき熱が出て欠席、それに次客のお客様も病気と初日からハプニング。前の日に連絡があったので急に誰かにお願いも出来ず、末客様に正客をお願いし、半東さんに三客へ入っていただきました。

2日めも半東さんが病気で、半東無しで一人でやりました。点心だったのでよかったです。

    (ちらし寿司の豪華な点心・・Oさんの手作りです)

   (待合かしら? 皆様の笑顔と着物がステキ!)

4日間のうち一日だけ写真を撮るのを忘れて、とても残念です。4人の方達が皆着物で来てくださったのに。この日は半東さんが病気だったので私は忙しくて・・・。

今回病気で欠席された方達を日を改めて招待しようと思います。その時は暁庵先生にいただいた掛け軸を使わせていただきます。 

これからストックホルムへ出かけるので、帰ってから茶事の写真を送らせていただきますね。

娘の子供達を学校へ迎えに行き、夕食を作って食べさせて帰ってきま~す。  Oより

 

      スウェーデン・茶名披露の茶事だより・・・その2へつづく

      スウェーデンの茶友から

      茶名の許状式