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暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

茶杓を拭く日日

2020年04月16日 | 暮らし

   「日日是好日」  前大徳 柳生紹尚和尚筆

 

茶杓4本をテーブルに並べました。

4月から夏にかけて茶事で使いたいと思っていた茶杓たちですが、当分出番はありません。

しまい込む前に少しでも色艶がよくなるように・・袱紗でせっせと拭いています。

 

1本目、銘「好日」という古竹の茶杓。

禅語「日日是好日」に由来する銘が好ましく、節から上部と下部とで景色がまるで違うので、物語りを感じます。

せっせと袱紗で拭いていると艶が出てきて(ツレは気のせい・・と言いますが)、今一番のお気に入りかも。 近い将来にこの茶杓を使うことができたら~と切に願います。 

 

 (ソメイヨシノと八重桜が帷子川のあちらとこちらで咲いていました)

 

   (ギャラリー&カフェ「寧」の看板)

 

2本目は銘「寧(ねい)」、煤竹で節の上部にある数本の樋が美しい茶杓です。

2017年6月にギャラリー&カフェ「寧」で開催された染谷英明氏の茶盌展がご縁で、いろいろ不思議な出逢いがありました(詳しくは「茶杓寧のこと」をご覧ください)。その時に「寧」という銘の茶杓が欲しくなり、染谷英明氏(趣味で茶杓を削っています)に削っていただきました。

しばらく使っていなかったので、そろそろ茶事に使ってもらいたいです。

 

   (潮騒とサンセット・・・四国遍路・室戸にて

 

3本目は銘「颯々」、銘が気に入って求めた茶杓です。

「颯々」とは、風の音や風の吹くさまという意味ですが、四国遍路中に聴いた自然のサウンドを思い出します。

遍路笠を吹き飛ばすような強風の音、汗ばむ頬を優しくなでる風の触感、騒ぐ心をなだめるような波の音、宿からの出立をためらうような雨の音、小さなお堂に降りこめられた時の雨音、険しい遍路道の鈴のね・・・・。

白竹の茶杓は素朴で自然体で何の変哲もないのですが、語りかけてくる「颯々」にいつも圧倒され、勝手に感動しています。

白竹なので拭いているうちによくなるかしら・・・(何処からか、「その茶杓はそのままで、ありのままでよいのだよ・・・」と言う声が聞こえてくような・・・)

 

 (昼咲月見草と古い道しるべ・・・四国遍路にて

 

4本目は銘「ホトトギス」(利休写)。白竹の華奢な茶杓で、蟻越しの節から上に少しゆがみがあります。

横浜の自宅近くではホトトギスの鳴き声を聞いたことがありませんが、2019年5月末、四国遍路中の明け方に2度も聞けて、もう大感激でした。

   ゆきやらで山路くらしつほととぎす

      今ひと声のきかまほしさに     源公忠(みなもとのきんただ)(拾遺106)

【通釈】行きすぎることができずに、山道で日を暮らしてしまった。時鳥のもう一声を聞きたさに。(千人万首より)

 

それで、5月の初風炉の茶事や朝茶事に使えたら・・・と求めたばかりでした。

来年になるかもしれませんが、新型コロナウイルスが終息したら・・・と出番を静かに待っています。

 

  (藤がはや満開です・・・4月11日撮影)

 

さて4本の茶杓を並べて袱紗でせっせと拭いています。

時間だけはいっぱいあるので日に何回か拭いていますが、それぞれの個性やエピソードに触れることになり、元気をもらっています。 

 


「春を惜しむ茶事」と新型コロナウイルス

2020年04月14日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

  「桜は来年も帰ってきます。人の命は帰ってきません」   

          (山中伸弥所長便りより  2020年3月26日)

 

3月25日に開花してから花吹雪となって去って行った4月10日頃まで、長期間私を楽しませてくれた桜たち・・・ 

その間台所の窓から「私のサクラ」を眺めながら、4月5日に開催予定だった「春を惜しむ茶事」のシュミレーションをしたり、新型コロナウイルスの嵐が迫りつつある中で開催すべきかどうか・・・迷う日々でした。

暁庵なりにいろいろ葛藤があったので、こちらに記しておこうと思います。

 

(3月中は専ら「平常心是道」のお軸を掛けました)

 

開催中止を決めたのは3月30日、決断するとすぐに次のようなメールを送りました。

 「春を惜しむの茶事」のお客様へ

外出自粛の3月29日(日)には雪が降り、満開の桜に雪が積もるという珍しい光景でした。 皆さま、いかがお過ごしでしょうか?

誠に残念ですが、4月5日(日)の「春を惜しむ茶事」を中止させて頂きます。

懐石方のYさまが明日に仕入れの注文をされるとのことで、ぎりぎりの判断になりましたこと、お許しください。

新型コロナウイルスの拡大が心配される中、お客様の安全安心を第一に考えての決断です。何卒ご理解のほどをお願いいたします。

新型コロナウイルスとの戦いは長期戦が予測され、しばらくは予断を許しません。

世の中が落ち着き、安心して笑顔でお茶事に迎えられる目途がつきましたら、すぐにもお声掛けしたいと思っております。

皆さま、くれぐれもお体に気を付けてお過ごしください。   暁庵

 

往生際が悪く、やっと中止を決断するまで心が揺れ動きました・・・。

前にも書きましたが、愛媛県在住の先輩Kさんの言葉が頭に強烈に残っていました。

Kさんは「どうせコロナで死ぬなら日本で、自分の家で死にたい」と思い、息子さんたちがアメリカの方が安全だから・・と引きとめたけれど、日本へ帰って来たのでした。

そのお話を伺った時、茶事を開催すべきか迷っていたのですが、

「茶事をしながら死ぬのは本望・・・人間いつか死ぬのだからそれも良しかな」と我儘な考えが頭をよぎっていました。

でも、3月29日に志村けんさんが新型コロナウイルスによる肺炎のため亡くなられたことが報道され、日本中に衝撃が走りました。

その壮絶な闘病や死に際の実情(治療薬がない、家族や友人にも看取られず、遺体はすぐに荼毘に付され、火葬場での最後の見送りもできなかったなど・・・)を報道で知り、「新型コロナウイルスで死にたくないし、お茶を愛する人たちを道連れにするわけにはいかない・・・」と強く思ったのでした。

なんとしても、新型コロナウイルスに打ち勝つように出来るだけの努力をしよう・・・と。

 

(命が一番大切なことを気づかせてくださった志村けんさんに合掌 ・・・写真は時事通信フォト)

今、暁庵の茶道教室は5月6日までお休みしています。楽しみにしていた5月5日のM氏(社中)の初風炉の茶事も残念ながら中止になりました。

 

一日も早く感染が防止され、笑顔でお茶の出来る日常が戻りますよう、やるべき対策をしっかりやって頑張りましょう。 きっときっとその日が来ることを信じて・・・

 

(季節はめぐり、イチハツを生けてみました。お軸は「隅田川」です)

 

 


卯月のある日 散歩道で

2020年04月12日 | 暮らし

    (遍路道Cの入り口です。進むのが勇気がいるような・・・)

 

4月11日 午前中に散歩へ出掛けました。

右膝が急に痛くなったので大事を取り、3日ぶりの散歩です。

左右の膝、右肩(右手が上がらない・・・)、腰痛など爆弾をいくつも抱えていて、何かの拍子に急に痛くなります。脊椎調整術マッサージ(気功)を受けに「にしおか治療院」へ行きたいのだけれど、遠く(?)へ車で外出するのをためらっています。

それでも1時間くらい散歩すると血行が良くなるのでしょうか、膝の調子は確実に良くなるから不思議です。体力と筋力維持のためにも散歩を頑張っています。

 

家の近くに四国の遍路道を彷彿させる散歩道が4つあり、遍路道A、B、C、Dと名付けました。

その日は遍路道Cを選びました。一番歩きにくい遍路道で、通る人はほとんどいないと思われます。落ち葉が深く積もり、倒木の枝や根が足に絡まり、もうじき草が伸び始めると蛇が出てくるので歩けなくなります。

入り口は分け入るのがためらうほど藪が高々とトンネルのよう・・・でも踏み入ると、藪の中から鶯の鳴声が「よくいらっしゃいました!」とばかり清く高らかでした。

途中に畑があったのですが、耕す方(一度お話したことがあります・・・)が亡くなられたのでしょうか・・・荒地になって野の花が咲き乱れています。

 

(畑だった空き地、荒れています。見晴らしが好く野の花が・・・)

 

     薺(ナズナ 別名ぺんぺん草)の大群落

 

薺(ナズナ)、関東蒲公英(タンポポ)、仏の座、姫踊子草、酸模(スカンポ)、野罌粟(ノゲシ)など、帰ってから「野の花」(角川書店)で名前を確認するのも楽しみです。

畑を過ぎると、木々に覆われた山道になります。ここで人に会ったことはありません・・・。

 

  (・・・先に歩いてもらいます)

(稲荷社が木立の奥に祀られていて、異次元空間かも・・・)

 

  

山道を進むと大きな藁拭き屋根の家が現われ、どうやら遍路道Cはこの家の裏山や畑への生活道かもしれません。

公道に出てから帷子川添いの道を進みます。

帷子川には八重桜の並木が2キロほど続いていて、今まさに満開でした。

 

  (毎年見守っているけれど、大きく育って見事な八重桜の並木です)

 

    (清来寺近くの帷子川と八重桜の並木)

 

  (帷子川は岩盤が多く、所々にこのように見ることができます)

 

全行程で1時間30分くらいの散歩中にすれ違った人は数人、お互い意識して距離を取り、散歩中でもマスクをしている人が多かったです。

午後3時にベランダでツレと薄茶一服・・・緊急事態宣言が発動された今は家が一番やすらぎますね。

 

(ベランダには先住民の植木鉢がいっぱい、一緒に一服です)

 

 (新しいパラソルを広げたベランダ席・・・あれこれ模索中)

 

茶箱・雪点前で薄茶を点てました)

(絵唐津の徳利に射干(シャガ)を生け、ベランダ席へ)

美味しいお菓子と薄茶を頂くと、なんか元気と勇気が出てきます。    

 


卯月のある日 ベランダで

2020年04月11日 | 暮らし

    一重の「山吹」の群落・・・散歩道の土手でパチリ

 

4月8日に、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言が出されました。

8日の全国の感染者数は520人、初の500人越えだそうです。東京都で144人、暁庵の住む神奈川県でも65人増で、それぞれ最多の感染者数になりました。

どこまで増加するのかしら、いつ減少に転じるのでしょうか・・・驚きと不安が交錯します。それに緊急事態宣言の対象地域だけでなく、地方の感染者数が増えているのが気がかりです。

(詳しくはこちらで確認ください  https://covid-2019.live/ )

・・・ここまで書いたところで玄関のチャイムが鳴りました。

届いたのは木製パラソル、不要不急の物ですが、今までベランダで使っていたパラソルが痛んできたのでネットで注文しました。

 

  今年は珍しく6つも花をつけた「花かんざし」

 

 あっという間に葉を伸ばした「擬宝珠 (ギボウシ)」が逞しく眩しい

 

卯月(4月)になると、草や木々の新芽が一斉に伸び出して、花は次々と咲き乱れ、庭は輝くような生命エネルギーに満ち溢れます。

今まで植木鉢の中で息を潜めていた草花も逞しく成長し、気が付けば小さな蕾を付けています。

小さな庭ですが、若葉の色に包まれ爽やかな風に吹かれながらベランダでお稽古をしたら・・・と思い立ちました。

今、お稽古をお休みしています。

もし連休明けにお稽古を再開することができたら、ベランダ茶会のような立礼席を設えて、茶箱の卯の花や雪点前をしてみようと、せっせと準備しています。自分が置かれた状況の中で、少しでも前向きに考え、行動できれば・・・と思います。

 

射干(シャガ)・・・だいぶ増えたけれどもっと増やしたいお気に入りです

 

 風鈴苧環(フウリンオダマキ)が次々と咲いています

 

 「碇草(イカリソウ)」・・・活けるのが難しい花です

 

卯月のある日 ベランダで

  外はコロナウイルスの嵐が吹いているけれど

  小さな庭は私の平和な”秘密の花園”

  冬の間 ベランダの植木鉢で眠っていた草花が

  卯月の陽光に目覚め 柔らかな若葉色に染まっていく

  新しいパラソルをベランダに広げて 茶箱の雪点前

  お気に入りの菓子「令和」を勧め 無心に茶筅を振る

  お客がツレ1人なのが ちと寂しい・・・・

  たまに聞こえる鳥のさえずりが一番のご馳走かな

  もう一服いかが?

 

        

 

 


皆さま、ご無事でしょうか?

2020年04月09日 | 暮らし

 (まだ満開の「私のサクラ」、今年は花期が長くて嬉しい・・・4月6日撮影)

 

皆さま、ご無事でしょうか?

 

昨夜は満月、しかもスーパームーンでした。

本当は・・・4月8日は安芸の宮島の献茶式に参列の予定で、そこで満月を見るはずでした。9日は山口県柳井市の茶友Oさまの茶事に3年ぶりに伺うのを楽しみにしていました。

・・・いろいろの予定がすべてキャンセルになりました()。きっときっと皆さまも同じことでしょうね。それでも、静かに穏やかに日々が過ぎていき、無事であることを感謝しています。

コロナウイルスの嵐が吹き荒れる最中ですが、ブログに無事帰ってまいりました。ぽつぽつと参りますのでお付き合いくださると嬉しいです。

 

    (風雪に耐える「私のサクラ」です・・・3月29日撮影)

 

2月24日に関西からのお客さまをお招きして「梅ごよみの茶事」を催したのですが、思えばコロナウイルスの猛威がすぐそばに迫っていました。

茶事が終わり、数日後にLos AngelesからいらしていたONさまから無事に帰国したとのメールを頂いたとき、「あぁ~無事に帰られてヨカッタ!」と安堵したことを今も鮮明に覚えています。いつ出入国がストップになるかもしれないという危機感を感じていたから・・・。

中国をはじめイタリア、スペイン・・・そしてアメリカなど全世界でコロナウイルスの感染者と死者が増加していって、2月に感じていた危機感(恐怖感)が現実となって迫ってきました。

New York市にこのブログで知り合ったメル友がいます。とても心配で「ご無事でしょうか? 恐る恐るお尋ねします・・・」というメールをしました。いつも長文のメールをくださるOHさまからのメールは短い2行、それもバクって読めませんでした。

でも、それで十分でした。New Yorkで何が起こっているのか、OHさまがどのような状況に置かれているのか、ご無事なのか・・・心配ですが、遠くから祈るしか手だてがありません。

スウェーデンのOさんからもメールが届きました。日本より規制が厳しく、高齢者は感染リスクグループに属すそうです。メールの一部を以下に掲載させて頂きます。

 Oさんのメール(3月28日付)

コロナビルスで大変な時ですが暁庵先生お元気ですか。お茶のお稽古もできない状態ではないのでしょうか。

私は感染リスクグル-プに属するので 孫にも会えないし買い物にも行けないし散歩だけできる環境状態です。買い物は娘達や孫がやってくれます。それでもイタリアなどに比べると散歩だけはできるので助かります。

日本は関東と北海道が感染者が多いと出ていますが 先生の周りはいかがですか。

あまりにも便利な世の中になって感染するのもすごい速さで世界中に広まってますね。すべてのイベントがキャンセルになっています。 

お茶の自主稽古したり 今日は桜餅を作り 又10年ぶりにギタ-を出してみました。散歩に行くと春の変化が毎日発見でき 小さな喜びを楽しんでいます。電車やバスにも乗れないしこの環境で出来る事を楽しんで一日も早く解決を望むしかありません。・・・(後略)

 

 

 暁庵のメール(3月28日付、一部抜粋)

Oさん、メールをありがとうございます。

スウェーデンの感染者数が意外と多いので、Oさんのことを心配しておりました。

いろいろ制約はあるようですが、お元気そうでなによりでございます。近況を伺って少し安堵しました。

日本は中国、韓国に次いで早めにコロナウイルスの感染が始まりましたが(特にクルーズ船を含めて)、その後小康状態にあったので3月末には終息するのではないかと期待していました。

そのゆるみがあったのでしょう・・・ここにきて患者数が増えてきて、この先どうなることかしら?  予断を許さない状況で3月28日と29日は不要不急の外出はしないようにとの勧告がでました。3日に1度スーパーへの買い物をし、2時間くらいの春たけなわの野山へ散歩へ出かける毎日です。

それでも私はご希望の方があればお茶のお稽古だけは淡々と続けています(注、3月末からお稽古はお休みしています)。アルコール消毒、各服点、茶巾も各服で変える、マスク可などの出来る対策をして臨んでいます。

今日、愛媛県に住むKさまというお茶の先輩に電話しました。

12月20日頃から3ヶ月、アメリカ・テキサス州に住む息子さんの所へ出かけていたので、帰国したかどうか? とても心配していました。

「3月22日にぎりぎりで日本へ戻ってきました。今は自宅にいます。息子たちはアメリカの方が安全だと引き留めてくれたのですが、どうせ死ぬなら、日本へ帰って自分の家で死にたい!」と思ったそうで、Kさまのお話に大いに共感しました。

出来るだけ気を付けますが、私もお茶を続けながら死ぬなら本望かもしれません・・・人間いつかは死ぬのですから・・・。

Oさん、お体にはどうぞ十分気を付けてお過ごしください。

 

 

そして、皆さまも出来る対策をしっかりして、この危機を乗り越えましょう。 暁庵も