「先生、楽茶碗は軽く、天目茶碗は重いと言いますが、本当でしょうか?」
とAさんからお尋ねがありました。
「楽美術館茶会や如庵茶会などで古い楽茶碗を手に取ったりお茶を頂いたりしたことがありますが、
削り込んでいるので見た目よりずっーと軽かったのを覚えています。
でも、天目茶碗はいつも展示ケースの向こうで、手に取ったことがないのです。
重いって私も聞いていますが・・・」
お稽古でそんな会話をしたすぐ後に、古美術「伯楽」を訪ねました。
秋の茶会(10月11日)で使う茶器の仕覆を依頼するためです。
東横線の東白楽で電車を降り、滝の川遊歩道を歩いて行くと、懐かしい「伯楽」が見えてきました。
骨董屋の女主人こと小林芙佐子先生が変わらぬ笑顔で迎えてくれました。
「なんて素敵な書斎なんだろう・・・!」
と憧れていた店の内部も仕覆教室に通っていた数年前と同じ佇まいです。
テーブルには青楓だけが入れられた古壺が置かれ、爽やかな風が渡ってくるようでした。
最初に一廻りして展示している骨董品や美術品を見せてもらいました。
どれも小林先生のお目にかなったものらしく、欲しいものばかりです。
セキレイの陶器香合、仁清の茶碗、古漆の薄器(灯芯入れの転用?)、仏像など。
ガラスケースの中に天目茶碗を見つけ、
「あの2つを手に取って見せてもらっていいですか?」
それらは私が持っている稽古用の天目茶碗(油滴と梅花)に比べるととても小さいのですが、
ずっしりと重く、一つは青黒味を帯びた禾目のような天目でした。
「小さいのに重いですね。天目茶碗が重いって本当なんですね」と私。
「明時代のものです。小ぶりですがなかなか好いでしょう」と頷きながら小林先生。
飾っているだけでなく、時々展示品でお茶を点てて飲んでみるそうです。
そうすると、茶碗の個性や好さがいちだんとわかるとか・・・。
(なるほど、私も押入れから茶碗を引っ張り出してお茶を飲んでみなくっちゃ・・・)
肝心の仕覆ですが、裂地を決めるのに時間がかかりましたが、楽しい時間でした。
裂地だけ見ると気に入っても茶器に合わないものが多く、3つほどやっと選び出しました。
その中に茶器の由緒にぴったりの裂地があったので、先生も私も納得です。
どんな仕覆(着物)に仕上がるのかしら・・・想像してはワクワクしていました。
昨日、小林先生から電話を頂きました。
「お仕覆が出来ましたので、都合の良い時にお寄りください」
また、あの素敵な、異次元のようなお店を訪ねるのが楽しみです。