暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

楽美術館茶会-1  杜若づくし

2014年05月19日 | 献茶式&茶会  京都編
(杜若の群落  京都市・大田神社にて)

5月11日に楽美術館茶会へ出かけました。
東京からOさんが来るはずでしたが、急用のため来れません。
一人で・・と思っていたら、偶然Sさんと同じ時間でご一緒しました。

茶室・翫土軒へ席入りすると、
本床のお軸と風炉先屏風に杜若が咲き誇っています。

  からごろも
  きつつなれにし
  つましあれば
  はるばるきつつ
  たびをしぞおもふ

杜若と有名な在原業平の和歌が書かれた画賛は13代惺入筆、
あざやかな杜若を書いた顔料が余ったので風炉先まで描いてしまったとか。
さらに飴釉の舟花入に杜若がすっきりと生けられていました。
この花入に惹かれましたが、一入作と伺い、嬉しい出合いです
存在感溢れる舟花入は重すぎて、いまだ吊り下げたことがないそうです。

「今日はいっそ杜若づくしと思い、このような設えにしました・・・」
席主・当代吉左衛門氏がいつものように解り易くお話してくださいます。
前にも書きましたが、当代の真摯な人柄と楽焼をめぐるお話がステキな茶会です・・)

            

点前座は黒長板が敷かれ、鮮やかな緑釉の紅鉢風炉は11代慶入作、
尾垂の古釜は翫土軒什物、浄長作、
「豊公 濡烏形ヲ以テ好之」という惺斉書付があるそうです。
華やかな杜若に対抗するには詫びすぎている・・・ように思いましたが、
案外バランス好く納まっているのかもしれませんね。
水指は香炉釉算木、12代弘入作の大きめの水指です。
最近、算木の水指や花入が気になっていたので、嬉しい出合いでした。

            

菓子が運ばれました。
織部釉四方手付鉢(14代覚入作)に菓子はあやめか杜若でしょうか?
菓子銘は「沢辺之」(ステキ!)、聚洸製です。
蔵(納戸?)の片隅に使われずあった織部菓子鉢を手に取ってみると、
好く出来ているように思い、今回の茶会に登場したそうです。
・・・きっと他にも眠っているお宝がいっぱいあるのでしょうね。

お点前さんが茶を茶碗に入れ、静かに待っているのに気が付きました。
席主との会話に夢中な正客がやっと菓子を口へ運ぶのを見定めて、
湯を注ぎ、心をこめて薄茶を点ててくださいました。
「お先に・・・お点前、頂戴いたします・・・美味しゅうございます」
(他の茶会ではなかなか見られぬ、細やかな心遣いに感激です・・・)

当代から6つの茶碗の解説やエピソードを聴きながら、
全員(20名ほど)がそれらの茶碗で薄茶をのみ終ると、
浄められて中央に並べられ、手に取って鑑賞させて頂きました。
(茶碗についてはつづきます・・・)

        
        楽美術館茶会-2 茶碗との出合い へつづく



葵祭2014年と祭り釜

2014年05月17日 | 京暮らし 年中行事
                 葵祭の斎王代 (2014年5月15日)

5月15日は葵祭でした。
正式には賀茂祭といい、賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ:上賀茂神社)と
賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ:下鴨神社)の例祭です。

茶友Sさまからメールを頂戴しました。
「懇意にしている川口美術さんから葵祭のお誘いがあり、
 祭のあとに添え釜で一服もあります。ご一緒しませんか?」
今までの葵祭と一味違って、なんか面白そう!・・・
「好い思い出になると思うので、是非ご一緒させてください」



当日、葵祭の行列は10時半に御所を出発、
下鴨神社参道にある川口美術の前を11時30分頃に通過の予定です。
参道近くまで行ったのですが、道路規制で思うように通れません。
やっと事情を話して通してもらい辿りつくと、
店の前に見物用のやぐらが作られていました。

川口美術は朝鮮家具を中心に韓国骨董を扱うお店です。
前を通るたびに、密かにあこがれていた店内へ初めて入りました。
小盤(一人用足付膳)やパンダジ(収納箱)、陶器や民具などが置かれ、
土器や李朝の壷にさりげなく季節の花(リョウブ、都忘れ)が生けられています。
なんて素敵なお店なんだろう・・・骨董屋の女主人を思い出していると、
川口美術のご主人が店の中を案内してくださいました。

招待されたお客さまは総勢8名、やぐらの席へ移り、葵祭の行列を見物しました。
王侯貴族のボックス席みたいで、可愛いお稚児さんと手を振ったりしました。
最初の騎馬武者に見覚えがあります。
5月5日、上賀茂神社の「競べ馬」で、先頭をきって駆け抜けた二人でした。

             

             

平安時代そのままの衣裳や牛馬が多いのも葵祭の特色でしょうか。
藤や山吹の花で飾られた牛車がギイギイと通っていきました。
行列中一番人気の斎王代、今年の斎王代は和菓子の老舗「老松」のお嬢さんです。

             

             

無事、行列が通りすぎ、店の二階席で昼食を囲みました。
菱岩のお弁当が嬉しく、会話が弾みます、
主菓子は出町ふたばの柏餅、生姜入り味噌餡に感動です(御馳走様!)。
その後、庭の奥にある風流な片庇(かたひさし)の薄茶席へ。

             
                      5月の鴨川

突上げ窓の向うに高野川の流れと緑の土手が見える、気持のよい野点席です。
「薫風自南来」の短冊、双葉葵のかわいらしい花が添えられ、
風炉は白磁の大鉢、炭を入れ、雲龍釜が掛けられています。

半田のような大鉢(風炉)と、点前座の古材テーブルが垂涎ものでした。
Sさまお気に入りの建水は大きな甕(キムチ用??)、豪快かつ愉快!
10個ほど並べられた茶碗から好きなものを選び、
あおい着物がお似合いのSさまのお点前で、美味しく頂戴しました。

             
                    双葉葵(大田神社でパチリ)

最後の席で、雨がぽっつんと降っていましたが、
Sさま、大阪のK氏、Yさまと過ごした祭り釜、
風流の極みの贅沢なひと時でした・・・。       
                            その日は  のち 




淡路島・初風炉の茶事-3

2014年05月15日 | 思い出の茶事  京都編
(つづき)
濃茶の後、障子が開け放たれました。
すると、庭の緑が眼に映り、爽やかな風が広間を吹き抜けていきます。
これぞ初風炉の醍醐味でしょうか。

後炭になり、待望の風炉中拝見です。
二文字押切の端整な灰形はいろいろなことを語りかけてくれました。
灰は少なめに入れられ、五徳の鉄柱がすっきりと襟足のよう・・・。
火床が広く取られ、小さめの風炉なので理に叶っています。
苦手な灰形に挑戦してみよう・・・よい刺激を受けました。

薄茶になり、先ほどの瀬戸水指が運び出されました。
「素」を感じる設え、墨染の衣のご亭主、背景の緑の庭、
なにか映画のワンシーンか、一幅の絵を見ているようでした。

             
                    (京都市大田神社にて)

和やかにいろいろなお話が飛び交いました。
茶の修行、卒業茶会、黄梅院の茶会など、興味津々で伺いました。
薄茶が点ち、干菓子3種を頂きながら、茶碗を替えて二服味わいました。

主茶碗は高麗堅手、歪みがあり、手取りも好く、好みの茶碗でした。
替の、フランス製カフェボールで二服目を頂戴しました。
西洋アンティークに凝っていた時期があったとか・・・遊び心が嬉しいです。
三碗目は尾戸焼、業平菱の模様が珍しい、小振りの茶碗でした。
四椀目は萩、三輪寿雪(休雪)作、手取りも雰囲気もさすがですが、
特に茶碗の内側が・・・。

どの茶碗もそれぞれ違う魅力があり、「一服ずつ頂きたい・・・」
皆、そう思ったに違いありません。

              
                 (ちいさなサクランボが・・・疏水にて)

最後に、薄茶の茶杓を記しておきます。
「幾千代」とは大違い、座りの悪い茶杓で、置くとそっぽを向いてしまいます。
ご亭主のお話では横を向いてしまう「うたたね」という名杓があるそうですが、
こちらの銘は「たいへい」。
今まで避けていた座りの悪い茶杓が急に愛おしくなりました。

のどかな初風炉にふさわしい茶杓銘で、茶事の幕が閉まりました。

さりげなく、ステキなおもてなしをしてくださったご亭主さま、
素晴らしい相客の皆様とのご縁に感謝いたします。

書きながら、四国遍路を思い出し、胸が張り裂けそうになりました・・・。
「そうだ! 私はこういう出会いを求めて(茶の湯という)遍路の旅へ出たのだ」

                                        

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淡路島・初風炉の茶事-2

2014年05月14日 | 思い出の茶事  京都編
                  (庭の灯籠と井戸・・・貴重な1枚)
(つづき)
風炉になると、準備が大変!
灰を細かな篩でふるい、風炉に底土器を置き、灰を入れ、五徳を据えます。
釜を選び、釣り合いを見てから、心を正して初めての灰形をつくります
・・・そんなことを思いながら、初炭手前を拝見しました。

小振りの風炉は大樋焼五代・勘兵衛造、
釜は越前芦屋の霰真形釜、霰の先端が摩耗し、
文様(桔梗)の一部が抜けていて、時代を経た味わいに魅せられます。
越前芦屋釜は室町から桃山に盛んに造られたそうですが、
この釜の湯で御茶を頂くのですから、古釜好き血が騒ぐというものです

半年ぶりの風炉初炭手前が新鮮でした。
ご亭主はさらさらと点前を進め、炭を置いていきます。
香合を拝見すると、四方錫縁の漆器で江戸時代の作とか、
蓋表に迫力ある波頭と蛇籠の蒔絵がありました。
お香は白檀でしょうか・・・はつなつの爽やかな薫りです。

お菓子が運ばれました。
手付の菱形重の内にも波文様があり、うず潮で名高い鳴門海峡がすぐ近くです。
菓子銘は「落し文」、海峡を渡った徳島市の富士屋製です。
黒餡を白餡で包み、緑色の葉にくるまれて虫の卵らしきものが1つ・・・。
美味しく頂戴し、腰掛待合へ中立しました。

             
            (京都市・今熊野神社の大楠)

クスノキでしょうか、
隣りの神社に聳えたつ大木を背景に緑の庭が広がっています。
若葉から紅葉している楓があり、Sさまが「野村モミジ」と教えてくれました。
七つ打たれた銅鑼の響きに心を寄せ、後座の席入です。

床にシマアシと白の華鬘草(鯛釣り草とも)がすっきりと生けられ、
花入が魅力的でした。
形は扁古のようでもあり、ガラス、それとも陶器かしら?
あとでイギリスの女流陶芸家・ルーシーリーの作品と知りました。
暗い中に杢目が水面の輪のように現われて来る敷板も魔法のよう、
不思議なサプライズのある空間でした。

             
                  (御神木・・・今熊野神社大楠)

茶碗が運ばれ、濃茶点前が始まりました。
水指は瀬戸一重口、不識を思わせる、どっしりとゆるぎない佇まい、
初茶事の際に購入したという思い出の水指でした・・・。
茶杓が大きく、茶入の蓋に持たせかけて置かれました。
茶碗に茶杓を渡し、三杓掬いだし無しで、茶入をまわして茶が入ります。

十分に練られた濃茶を美味しく頂戴しましたが、
5名分には茶の量が少ないように思い、少々遠慮を・・・。
茶銘は奥西緑芳園「慶雲」です。

濃茶の茶碗は黒楽、
長次郎を思わせる茶碗でしたが、宗味窯とのこと。
お尋ねすると、長次郎の死後、工房を引き継ぎ、守っていた楽焼の
職人たち(田中宗味を含む)の作を総じて宗味窯というそうです。

             
                    (京都市・大田神社の杜若)

拝見をお願いし、もうびっくり!でした。    
茶入は古瀬戸肩衝、仕覆は金剛金襴です。

茶杓は、ほっそりした茶入と対照的で大きく、初めて見る形でした。
白竹でしょうか、舟の櫂を思わせる荒々しい形に削られています。
とてもインパクトがあり、超モダンにも見える茶杓でした。
これだけ大きいと、掬いだし無しもうなづけます。

茶杓銘は「幾千代」(ええっ!これが・・・)
光格天皇が削った茶杓「幾千代」を玄々斎が写しを何本か削ったそうで、
そのうちの一本、もちろん本歌です。
のちほど玄々斎自筆の筒(竹を二つに割って、中に墨書)も見せて頂きました。

4月のS先生の稽古で和巾があり、茶杓「幾千代」も話題に出ていたので、
とても嬉しい実物とのお出会いでした(ご亭主さま、アリガトウ!)。
幾千代にこの茶事を忘れることはないでしょう・・・。                 


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淡路島・初風炉の茶事-1

2014年05月13日 | 思い出の茶事  京都編
               京都・等持院にて(・・・写真がないので)

5月9日、、淡路島のT氏より初風炉の茶事へお招き頂きました。
昨年12月に続いて二度目ですが、もう一度風炉の時期に伺いたい・・・
というリクエストに応えてくださったのでした。
・・・それで責任上、その場で正客のお役を受けることになり(汗!)、
相客はOさま、Sさま、Kさま、K氏でした。

待合に達磨大師の水墨画が掛けられていました。
無駄のない衣の筆さばきの妙、こちらを向いている眼光が鋭く、
立っている達磨大師です。
「惺・・? う~ん、どなたの御作かしら?」
名前が読み取れなかったので、後の楽しみとしました。

明時代の赤絵汲出しで、甘茶を戴きました。
ご亭主は真言宗寺院の若住職です。
本堂にお詣りすると花まつりの設えがあり、お釈迦様に甘茶をお掛けしました
・・・こちらの花まつりは月遅れだそうです。

前回とは違う広間へ席入すると、八畳でも棚を使用せず、
古釜と風炉だけが空間を占め、シンプルで清々しい初風炉の設えです。

挨拶の後、達磨画についてお尋ねすると、
なんと!松花堂昭乗の画でした。
4月に八幡市松花堂庭園の「史跡 松花堂」を訪ねたばかりだったので、
とても嬉しく、侘び茶の原点のような草庵茶室を思い出しました。

              
                     松花堂昭乗(さん・・・だと思う)
本床のお軸は
「一華開五葉」
一休禅師を思い出させるような、迫力のある爽快な書は、
黄檗宗万福寺五世・高泉性とん(こうせんしょうとん)の書でした。

「一華開五葉(いっか ごようを ひらく)
 結果自然成(けっかしぜんになる)」
印度より中国に禅を伝えた「達磨大師」が、
弟子の慧可に自分の教えを伝えるために与えた伝法の偈の一節で、
「心華が開けば(仏性に目覚めると)やがて自然に仏果菩提の実を結ぶ」
ということでしょうか。
待合でお逢いした達磨大師の眼光鋭いお顔が脳裏に浮かびます。

              
                   京都市蹴上浄水場のつつじ

でも、ご亭主は穏やかに門外漢の私たちにも解り易くお話を進め、
手づくりの懐石を運び出してくださいました。

一文字は少々アルデンテでしたが、
私たちは高野山から朝届けられたという、絶妙な胡麻豆腐、真蒸の煮物碗、
しっかりしたお味の白和え、トマトの冷菜、淡路島特産のコノコなどに
舌鼓を打ちながら、見事に完食しました(御馳走様でした・・・)。
                                   

           淡路島・初風炉の茶事-2へつづく