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暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

清風荘

2012年11月15日 | 京暮らし 日常編
11月10日は京都大学ホームカミングデイ。
そのイベントの一つとして、清風荘特別公開が行われました。
高い樹木で密閉された清風荘(左京区田中開田町)の前を通るたびに、
「このお屋敷は何かしら?」
と興味津々だったので、いつか公開されるのを待ち望んでいました。

京大時計台記念館ホールでPさん、TYさんと待ち合わせ、
京大同窓生のPさんに相伴させて頂き、三人で清風荘へ向いました。

              
                    玄関前庭のクロチク
              
                    八月潮高海気豪・・・

清風荘は、明治40年(1907)に西園寺公望の弟の住友春翠が
徳大寺家より譲り受け、公望の京都での別邸とし、清風荘と名づけられ、
昭和19年(1944)、住友家より京都帝国大学(現・京都大学)に寄贈されました。

七代目小川治兵衛(植治)によって明治45年から大正2年に造られた庭園は、
昭和26年(1951)に国の名勝に指定されています。
建物は、大工棟梁・八木甚兵衛によって明治43年着工、大正2年竣工し、
平成24年(2012)に主屋、茶室など12棟が国・重要文化財に指定されました。
今回は、そのお披露目の特別公開のようです。

              

              

              
                     茶室「保真斎(ほしんさい)」 
                              
                     茶室の天井

最初に、10時30分から第一会合室で始まる茶席へ入りました。
思いがけず紅葉の美しい庭を眺めながら薄茶を頂戴し、感激しました。
担当は京大心茶会です。
みなさま着物で、お運びなど丁寧な応対をして頂き、感心しました。
今度はお点前もぜひしてね・・・。

              
                     お茶席に使われた第一会議室

               
                     第二会議室

女性用の部屋がありました。
小襖に貼られている更紗、鏡台等の家具が何となく艶やかです。
住んでいたのは、西園寺公の想い人だったかもしれませんね。

              
              

見学者が京大関係者に限られているせいか、建物と庭園をゆったりと
観ることができました。
紅葉もきれいですが、松が見事でした。
築山に手入れの行き届いたアカマツがたくさん植えられていて、
松が大好きな暁庵には嬉しいお庭です。

              

              

緋毛氈を敷いた腰掛に座って、紅葉が見ごろの庭を眺めていると、
俳句の吟行らしき方が隣りにいらっしゃいました。
「吟行ですか?」
「ええ、でもなかなかできなくって・・・七句つくらないと!」
「あらっ!七句は大変ですね。お邪魔しました・・」

みんな思い思いに楽しんでいるようでした。

                          




      

自主稽古  初しぐれの日に

2012年11月13日 | 自主稽古(京都編)&奥の細道会
    初しぐれ 猿も小蓑を ほしげなり    芭蕉

11月9日、その日は自主稽古の日でした。
午前中にさぁっと小雨が降り、庭木を濡らしてすぐに止みました。
立冬を過ぎたので、初しぐれかしら?

1時過ぎにYさんが着物でいらっしゃいました。
奥伝の稽古なので無地の着物をお召しでした。
私はといえば・・・和更紗の着物と紬の帯で、覚悟が足りませんね。

手づくりのお菓子を持ってきてくださって、驚いたり、感激したり・・。
栗餡のきんとんは菓子銘「枯野」がぴったりの一品、中のあんこも自家製とか、
もう一つは「浮島」、枯葉、クリーム、あずき、取り合わせが秋色満載です。

            

今日の課目は、真之行・台子点前です。
慣れ親しんだ風炉から炉へ、炉開きで心改める季節となりました。
11月の朔日稽古は炉で行われましたので、
今年は10月30日に炉へ切り替え、早めに準備しました。
我が家の四畳半には炉が切ってないので、置き炉を使っています。

Yさんから始めて頂きました。

朔日稽古で先生からご指導頂いたことを復習し、実践する好い機会なので、
自主稽古にお付き合いくださり、嬉しいです。
口に出し、所作で確認していかないと、淡雪の如し・・・なのです。
Yさんの姿勢よく、きれいな所作を拝見して、とても刺激になりました。
特に帛紗を折り畳んでいくところに見惚れました。
きっと、いろいろ研究されていることでしょう。

濃茶を頂戴しましたが、薫り高く、よく練れていて美味しかったです。
数々のお菓子(七種)を頂戴するところですが、今回はご自製の「枯野」です。
濃茶は祇園辻利の「壷中の昔」でした。

               

               

次は私の番でした。
難しいのは帛紗捌きでしょうか? それとも?
いつもはきれいにできないふくみ帛紗がもたもたせずに畳め、
その扱いもやっと自分のものになってきたような・・・?。
順番はもちろんですが、美しく感じられる所作と流れを目指したいですね。
その上で、真之行の心構えを身を持って表わすことができるよう
精進したいものです。

真之行・台子点前の稽古を終え、台子点前で薄茶を点て合って、
楽しいおしゃべりでリラックスしました。
またの日を期して、雨コートの茶友を見送りました。

    しぐれゆく うしろ姿や 格子じま   


     写真は、「雨の日の真如堂」、全部雨の日に撮りました
      真如堂の紅葉もだいぶ進んでいます(11月11日撮影)。   

         自主稽古 前へ       次に



奈良の塔を訪ねて

2012年11月12日 | 
                     興福寺 五重塔(国宝)
奈良滞在2日目は塔を訪ねる旅になりました。

朝一番に東大寺二月堂へお詣りしてから、
前日にも訪ねた興福寺の五重塔(国宝)と三重塔(国宝)を再び訪れました。
どうやら、この二つの塔が主人の気持ちを惹いたみたいです。
「興福寺の五重塔がこんなにふくよかだったとは!」

興福寺五重塔(国宝)は天平2年(730年)、光明皇后の発願で創建されましたが、
現存する塔は応永33年(1426年)頃の再建だそうです。
高さは50.1メートル、東寺五重塔に次ぎ、2番目に高い木造の塔で、
高さがあるだけでなく、がっしりとした造りで、ひときわ威容を誇っています。

                   
                    興福寺 三重塔(国宝)
南円堂近くにある三重塔(国宝)は、崇徳天皇の中宮・皇嘉門院により
康治2年(1143年)に創建されましたが、鎌倉時代の再建と考えられています。
北円堂とともに興福寺最古の建物だそうです。
高さ19メートルの三重塔は、きゃしで優美な雰囲気があります。

光明皇后と皇嘉門院、奈良と平安、時代は異なりますが、
どちらも女性の発願によって建立されたのも興味深いです。

                   

                   

続いて、奈良町にある元興寺(がんごうじ)の五重小塔(国宝)へ。
奈良町を歩き、ぐるっと遠回りして元興寺(萩の寺)へ着きました。
本堂(極楽堂)の前庭は明るく、萩がたわわに生い茂り、
エンタシスの太い柱に、古き奈良の大寺の面影を残しています。

平城遷都の折、日本最古の仏教寺院であった法興寺(飛鳥寺)が奈良へ移され、
寺名を元興寺に改められました(養老2年(718年))。
奈良時代には東大塔や西小塔、極楽堂(現存、国宝)、禅室(現存、国宝)などの
大伽藍が立ち並び、隆盛を極めていました。
平安遷都の後は衰退の道を辿りますが、奈良町の町衆に支えられて
伽藍と法灯は今日まで伝えられ、1998年に世界遺産に登録されました。

                  
                   五重小塔(元興寺、国宝)
さて、お目当ての五重小塔(国宝)は、当時の西小塔堂のご本尊そのもので、
今は収蔵庫に安置されています。
この五重小塔は、奈良時代最盛期の塔としては現存する唯一の塔ですが、
元興寺から少し離れて、元興寺小塔院(西小塔堂跡)や元興寺塔跡があることを
「奈良町」マップを見て知りました。
元興寺最盛期の広大な寺域を偲ぶことができます。

もう一つ、本堂と禅室の屋根に残る「天平の古瓦」が印象に残っています。
1300年の時を経て、今なお現役で頑張っている古瓦たちが味わい深く、
時の重み、変遷の歴史、変わらぬ信仰を静かに語っているような・・・。

                  
                       本堂と禅室(手前)の古瓦

庫裏の奥の小子房で呈茶が行われていました。
そこで思いがけなく、主人の抹茶茶椀の質問がきっかけとなり、
ご奉仕されていた席主・N先生と親しく茶の湯のお話をさせて頂きました。

近鉄奈良駅近くにある村田珠光ゆかりの称名寺と獨盧庵(どくろあん)について
教えてくださり、獨盧庵が大変珍しい席であることを知りました。
N先生とのお話しは楽しく、奈良の旅の好い思い出になりました。

次回に、称名寺と獨盧庵を見学できたら・・・と思っています。

          (前へ)                           


第64回正倉院展

2012年11月08日 | 美術館・博物館
奈良国立博物館で行われている第64回正倉院展へ行きました。
会期は10月27日~11月12日の17日間です。
京都へ引っ越して以来、主人がとても楽しみにしていたので
朔日稽古の翌日に1泊2日で出掛けました。
「えっ!奈良で一泊するの」と京都の友人に驚かれましたけれど・・・。

奈良在住の茶友のアドバイスに従い、比較的空いているという夕方に
(金、土、日は19時まで)入場することにし、
先ずはチケットだけ購入しておこうと博物館へ行きました。
すると思いがけず、待ち時間30分の表示が目に入り、すぐに後尾へ並びました。

「毎年正倉院展へ来てるけれど、こんなに空いているのは初めてです」
と奈良在住の女性二人連れ。
(次の日(土)のほぼ同じ10時過ぎで90分待ちの表示でした)

               
                  (奈良国立博物館近くの紅葉)

中もまあまあの状態でしたが、展示のハイライト「瑠璃杯(るりのつき)」では
瑠璃杯を近くで見る列に約10分並びました。
たとえ並んでも近くで見ることをお勧めします。
宝物は辿りつくのに時間がかかるほどワクワクしますから・・・。

上からのライトで観る角度によって色の濃淡が変化し、
瑠璃硝子の輝きが生み出す、繊細な美しさに魅せられました。
丸い輪が浮き出た盃のデザインも斬新です。
受け金具と脚は後から(明治時代)付けられたとのことですが、
八世紀にこのような杯を創り出す、精巧な技術があったことにびっくりです。

               
                    (春日大社)

他にも心惹かれる展示品がたくさんありました。
使い方がわからない工芸品などもあり、いろいろ推理するのも面白いです。

〇 犀角杯(犀の角のさかづき)・・・めのうのような茶褐色のさかずき部分も
  きれいですが、展示台下部の鏡に映る蓮弁の突起の繊細な美しさに惹かれました。

〇 双六筒(さいころの振り筒)・・・聖武天皇遺愛の双六道具の中で一番欲しいと
  思ったのが、双六筒でした。紫檀の胴の色や、金で描かれた文様は
  遠い異国の香りがして、何度もまわって拝見しました(茶箱に使いたいな・・)。

〇 磁瓶(じへい)・・・形、姿、二彩の色、全てが印象に残りました。
  口縁と高台部分に大きな欠けがあるのですが、二彩(黄土色の生地と緑釉)の
  素朴にしてモダンな味わいが大好きです。

〇 密陀彩絵箱(みつださいえのはこ)・・・献物箱で大仏開眼会の折に献納された
  お香が収められていました。
  黒漆の上に描かれた彩色文様は、膠で固着した顔料の上から
  密陀僧(一酸化鉛)を混ぜた油を塗っていくそうです。
  以前、金沢の旅で追っかけをした城端塗もたしか密陀僧を使っていたことを
  思いだし、そのルーツがここにあると思いました。

               
                    (春日大社の灯篭)

正倉院展では、熱心に食い入るように見ている若い人が目立ちました。
きっと工芸やデザインを志しているのでしょうね。
展示品の細部をスクリーンで拡大して見せてくれるので、とてもわかりやすく、
そのスクリーンを見ながら空中で画をなぞっている人もいたりして、
若者に大いなる刺激を与えている正倉院展ってスゴイな!とちょっぴり感動。    

正倉院展と常設展をゆっくり見た後、シェフフェスティバルで遅い昼食をとってから、
興福寺、春日大社をまわり、東大寺を抜けて旅館へ辿りつきました。
明日は、塔をめぐる旅になりそうです。
 

                  (次へ)            



お香を聞く会  春秋香

2012年11月06日 | 茶会・香席
横浜へ1週間ほど帰っていました。
その間に茶友Iさまがお香を聞く会をしてくださいました。
喜び勇んでI邸へお邪魔し、久しぶりにお香を楽しみました。
七事式のいちねん会で共に励んだAさまとKさまとも嬉しく対面できました。

             

お香は万葉集の額田王の歌から「春秋香」と名付けられています。

   天智天皇が内大臣藤原朝臣に
   「春山の花の艶と、秋山の紅葉の色、いずれが良いか競わせよ」
   と命じた時、額田王が答えとした歌

   冬ごもり 春さり来れば 鳴かざりし 鳥も来鳴きぬ 
   咲かざりし 花も咲けれど 山を茂(し)み 入りても取らず 
   草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては 黄葉(もみぢ)をば 
   取りてぞ偲ふ 青きをば 置きてぞ嘆く 
   そこし怜(たの)し 秋山ぞ我は   

   (歌の意は) 
   (春の山は入り難くて花を取り見ることができないが、
    晩秋の山は草木も枯れ、山に入ることができるので、
    身近に紅葉を賞美できる。
    それで私(額田王)は秋山が良しと判定した)

             

香席へ入る前に、Iさまからお香の会の次第の説明があり、
前回より詳しい六国五味(りっこくごみ)のお話を伺い、
答を書く和紙の折り方や書き方を教わりました。

先ず、試の香二ちゅうを聞きます。
 試 一、万花の艶(にほひ)  一ちゅう
   二、千葉の彩(いろ)   一ちゅう

   ウ、露のいのち   (試で聞いていない香)

試の香は聞き終わると香銘「万花の艶」を言って次客へまわします。
それから、試の二香に ウ、露のいのち(聞いていない香)を打ち混ぜて、
これが本香となります。
本香は一つずつ三種焚かれるので、三回以上ゆっくり聞いて
香の特徴や印象などをメモしておくように・・・とのことでした。
本香になると、香銘ではなく「出香」と言って次客へまわします。

   
             

いよいよ香席へ入りました。
香炭団が入っている香炉が二つ並べられ、灰手前が始まりました。
灰をかき上げ、灰押さえで灰を押さえながら円錐をつくり、
羽箒で際を整え、羽箒を人差し指で打ちました。
それから細い香火箸で五面に十本づつ小筋を入れていきます。
正面に聞き筋を1本入れ、火窓があけられました。
火勢、客の人数などを考慮して、火窓の大きさを加減します。

Iさんの凛とした姿勢、確かな手の動き、茶道とは違う所作に魅せられ、
みんなで息を詰めるように見つめました。
香を聞く機会が少ないので、このように香炉の灰を調える点前から
拝見できることは本当に嬉しいことです。

             

試の香、「万花の艶」と「千葉の彩」を順番に聞きました。
メモしたのですが、前と明らかに違うのはわかるのですが、
香の特徴や印象を表現するのが今回も難しかったです。
墨をすりながらも迷い、最初の印象とは違う答えを用意した和紙に書きました。

   万花の艶   千葉の彩   ウ    (暁庵)

幸運にも全当りでした。
六国五味を参考に木所(伽羅、羅国など)を推理しましたが、
これは全く大はずれで、香の奥深さ、面白さにやみつきになりそうです。

             

               
香席が終わると、Iさまお心づくしの昼食が用意されました。
薫り高いマツタケご飯はお香の邪魔をしてはいけないので、
延長コードを庭へ引いて焚いてくださいました・・・。
マツタケご飯、土瓶蒸し・・・、そして楽しい語らい付の大ご馳走。

香席から茶席へ変わり、客三名で初炭、濃茶、薄茶を交代して、
Iさまをみんなでねぎらいました。
こちらもまさに「賓主互換」、愉しゅうございました。
またの御目文字が今から待ち遠しい思いです。

Iさま、みなさま、ありがとうございました!