暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

第64回正倉院展

2012年11月08日 | 美術館・博物館
奈良国立博物館で行われている第64回正倉院展へ行きました。
会期は10月27日~11月12日の17日間です。
京都へ引っ越して以来、主人がとても楽しみにしていたので
朔日稽古の翌日に1泊2日で出掛けました。
「えっ!奈良で一泊するの」と京都の友人に驚かれましたけれど・・・。

奈良在住の茶友のアドバイスに従い、比較的空いているという夕方に
(金、土、日は19時まで)入場することにし、
先ずはチケットだけ購入しておこうと博物館へ行きました。
すると思いがけず、待ち時間30分の表示が目に入り、すぐに後尾へ並びました。

「毎年正倉院展へ来てるけれど、こんなに空いているのは初めてです」
と奈良在住の女性二人連れ。
(次の日(土)のほぼ同じ10時過ぎで90分待ちの表示でした)

               
                  (奈良国立博物館近くの紅葉)

中もまあまあの状態でしたが、展示のハイライト「瑠璃杯(るりのつき)」では
瑠璃杯を近くで見る列に約10分並びました。
たとえ並んでも近くで見ることをお勧めします。
宝物は辿りつくのに時間がかかるほどワクワクしますから・・・。

上からのライトで観る角度によって色の濃淡が変化し、
瑠璃硝子の輝きが生み出す、繊細な美しさに魅せられました。
丸い輪が浮き出た盃のデザインも斬新です。
受け金具と脚は後から(明治時代)付けられたとのことですが、
八世紀にこのような杯を創り出す、精巧な技術があったことにびっくりです。

               
                    (春日大社)

他にも心惹かれる展示品がたくさんありました。
使い方がわからない工芸品などもあり、いろいろ推理するのも面白いです。

〇 犀角杯(犀の角のさかづき)・・・めのうのような茶褐色のさかずき部分も
  きれいですが、展示台下部の鏡に映る蓮弁の突起の繊細な美しさに惹かれました。

〇 双六筒(さいころの振り筒)・・・聖武天皇遺愛の双六道具の中で一番欲しいと
  思ったのが、双六筒でした。紫檀の胴の色や、金で描かれた文様は
  遠い異国の香りがして、何度もまわって拝見しました(茶箱に使いたいな・・)。

〇 磁瓶(じへい)・・・形、姿、二彩の色、全てが印象に残りました。
  口縁と高台部分に大きな欠けがあるのですが、二彩(黄土色の生地と緑釉)の
  素朴にしてモダンな味わいが大好きです。

〇 密陀彩絵箱(みつださいえのはこ)・・・献物箱で大仏開眼会の折に献納された
  お香が収められていました。
  黒漆の上に描かれた彩色文様は、膠で固着した顔料の上から
  密陀僧(一酸化鉛)を混ぜた油を塗っていくそうです。
  以前、金沢の旅で追っかけをした城端塗もたしか密陀僧を使っていたことを
  思いだし、そのルーツがここにあると思いました。

               
                    (春日大社の灯篭)

正倉院展では、熱心に食い入るように見ている若い人が目立ちました。
きっと工芸やデザインを志しているのでしょうね。
展示品の細部をスクリーンで拡大して見せてくれるので、とてもわかりやすく、
そのスクリーンを見ながら空中で画をなぞっている人もいたりして、
若者に大いなる刺激を与えている正倉院展ってスゴイな!とちょっぴり感動。    

正倉院展と常設展をゆっくり見た後、シェフフェスティバルで遅い昼食をとってから、
興福寺、春日大社をまわり、東大寺を抜けて旅館へ辿りつきました。
明日は、塔をめぐる旅になりそうです。
 

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