暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

2019年「炉開き&口切の会」・・・(1)

2019年11月15日 | 暁庵の裏千家茶道教室




2019年11月10日は暁庵の茶道教室の「炉開き&口切の会」でした。

この日に決めたのは大安の日曜日ということもありますが、亥の年の、亥の月の、初亥の日(辛亥かのとい)だったからでした。

江戸時代から亥は陰陽五行で水性にあたり、火災を逃れるという信仰がありました。
茶の湯の世界でもその日を炉開きの日として、茶席菓子として「亥の子餅」を食べ、火災の厄除けや子孫繁栄を願います。


    主菓子の「亥の子餅」  石井製(旭区都岡)

今年の会は茶事形式とし、初座の亭主はKさん(昼食まで)、後座の亭主はKTさんに後入りの合図の銅鑼からお願いし、全員稽古ということで口切、初炭、台天目、濃茶、員茶之式で薄茶を皆さまで担当していただきました。
初座の席順は、正客N氏、次客KTさん、三客SYさん、四客M氏、詰Uさんです。



10時40分に待合集合、11時席入りです。
皆さま、素敵な着物姿でいらしてくださり、「炉開き&口切の会」らしいお目出度い雰囲気が漂います。
男性二人も茶人の正装である、N氏は十得、M氏は袴姿で、きりりと座を引き締めてくれました。
(暁庵は金茶地扇地紋の紋付に緑の森の帯・・・忘備録です)

詰Uさんが打つ板木の音で、初座の亭主Kさんが梅昆布の入った汲出しをお出し、腰掛待合へ案内しました。
待合の掛物は「紅葉(画)舞秋風」、前大徳・一甫和尚の御筆です。かつて口切を御指導頂いた恩師N先生から贈られた御軸を掛けました。

Kさんが迎え付けへ出ます。
水桶から蹲に注がれる水音を清々しく聞きながら、炉に濡釜を掛けました。



床には恐れ多くも大好きな利休居士四規七則のお軸を掛けました。
紫野・太玄老師の御筆です。

和敬清寂に始まり、
一.炭は湯の沸くように
一.花は野にあるように
一.降らずとも雨の用意
一.刻限は早目に
一.相客に心せよ
一.夏は涼しく冬暖かに
一.茶は服のよきように


四規七則は当たり前のことのようで、どれ一つとってもきちんと為すのは難しく、身が引き締まる思いでいつも拝見します。茶事はもちろんのこと、普段の稽古や暮らしでも四規七則を心に留めたいもの・・・です。

亭主Kさんがお客さま一人一人と挨拶を交わし、正客N氏からお声が掛かりました。
「ご都合により御壷の拝見をお願いいたします」
「承知いたしました」
・・・いよいよ口切が始まりました。


茶壷の拝見が終わり、口を切る頃に再び席中へ入り、口切を見守りました。

茶壷は六古窯の一つ、丹波焼で、作者は市野信水です。
小ぶりの茶壷ですが、形がきりっと小気味いい切れ味があります。
土見せの茶色、壷全体にかかった緑がかった土色の釉薬が生み出す深味、さらに濃い焦げ茶色の釉薬が掛けられ、その流れが大胆かつ繊細で、壷全体に鶉班(うづらふ)のような微妙な景色を生み出していて、深遠な壷の世界へ誘います・・・。
口覆いは笹蔓緞子です。

Kさんは緊張した面持ちで、されど落ち着いて小刀で口辺をゆっくりと切っていきます。
客一同、そして暁庵も一緒に口切しているような心持で、Kさんの所作を息をのんで見詰めます。

・・・やがて蓋が開けられ、「どちらのお茶にいたしましょうか?」
「どうぞご亭主様にお任せいたします」と正客N氏。
「承知しました」
茶の入った半袋3つのうち1つが取り出され、茶銘を読み上げ、挽家(ひきや)に入れました。
「松花の昔でございます」


      御茶入日記

葉茶上戸に開けられた詰茶をトントントットッ・・・と一方へ寄せて挽家へ、次いでトトトントン・・・という音と共に残りの詰茶がさらさらと茶壷へ流し入れられました。

口切の中で葉茶上戸の扱いと軽やかな音もステキな一瞬のご馳走です。
再び口が封印され、茶壷を水屋へ引いて口切は終わりました。



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