暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

駒場・和楽庵の「初春の茶事」に招かれて

2022年02月18日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

 

   お軸は「大有宗甫之文」(書き捨ての文)
 (宗甫(小堀遠州)が書き残した文で、小堀遠州流十五代・小堀宗通氏の御筆です)

 

1月23日(日)に前田宗令さまの駒場・和楽庵の「初春の茶事」にお招きいただきました。
前田さまは小堀遠州流、東京駒場の「和楽庵」の庵主として、内外の方のおもてなしをされ、茶道教室を主宰されています。
コロナウイルス禍もあり2019年11月以来ですが、久しぶりの前田さまのお招きが嬉しく、今回は社中の方と参上しました。

手厚く熱いおもてなしに感動して後礼の手紙を書き始めましたが、つい長文になり、巻紙も毛筆もあきらめて印刷して投函しました(汗!!)。・・・すると、前田さまからも印刷した長文のお手紙が届きました。

「初春の茶事」の思い出に2通をこちらへ掲載させて頂きます。よろしかったらご一読ください。

 

 (玄関の客迎えの水仙の花・・・大きな陶器の鉢は李禹煥(リ・ウファン)造)

 

 暁庵の後礼の手紙

駒場・和楽庵 前田宗令さまへ

極寒の候 相変わらずのコロナ禍ですが、皆さま、ご清祥にお過ごしのこととお慶び申し上げます。

先日は「初春の茶事」へお招きいただきまして ありがとうございます。

正客Mさまはじめ社中のTさま、YRさま、NTさま、そしてご亭主の同門宗文さまとご一緒に、初春にふさわしい茶の湯の世界を味わうことができ、とても喜んでおります。

2年ぶりの駒場和楽庵ですが、この度もステキな前田ワールドを存分に堪能することが出来ました。

 

 

苔の露が光り、石仏がおわす露地をそぞろ歩き、蹲で心身を清め、茶室へ入ると、床に「書捨の文」(小堀遠州の残した文を小堀遠州流十五代・小堀宗通氏が書き写したもの)が掛けられていました。

後ほどその日の茶事のご趣向の文と伺い、ご亭主の「初春の茶事」への心意気を知り、感激するとともに身が引き締まりました。

裏千家の侘茶に象徴される求道的茶の湯とは異なり、小堀遠州の目指す茶は人をもてなす茶であり、さりげない日常の事柄や身近な人を大切にし、春夏秋冬の自然の風情を茶の湯を通して楽しむことのように受け止めました。

そして、小堀遠州流のきれいさびの世界をご亭主の意に叶った魅力的なお道具で表現してくださり、ワクワクしながら皆で楽しませて頂きました。

 

端正に整った炉中の隅切りした灰の景色や細い3本の下火が見れたこと、釜を掛け忘れてくださったことにもう感謝です。

裏千家流とは全く異なる炭手前が心に残っています。炭の大きさ、形、置き方、黒い枝炭、湿し灰の撒き方、どの所作も形も珍しく、若武者の繊細で凛々しいお点前に見惚れ、小さな羽箒の座掃きは圧巻でした。

 

 (遠州お好みの糸目肩衝釜、炉縁は真塗、面に七宝繋ぎの蒔絵)

炭手前の後にすぐ濃茶とのこと、湯相が心配でしたが、釜を掛け変えるという妙案に「流石!」と合点しました。きっといろいろお考え下さったことでしょう。

ご亭主の凛々しいお点前で濃茶を頂きましたが、まろやかで甘みのある濃茶を美味しく頂戴しました。幸せな時間でした・・・。

ご亭主の元にやってきた小ぶりの茶碗たち。旧きもの、新しきもの、高麗・李朝のもの、和のもの・・・それぞれの個性に心惹かれ、皆で賞玩したのも楽しく、よき思い出となりましょう。

織部の大皿に盛られた主菓子「福寿草」が柔らかく上品な甘味で、濃茶(「天王山」山政小山園)が一層引き立ち、美味しゅうございました。

 なだ万の豪華なお弁当、奥様の故郷・韓国の雑煮を初めて食し、お二人の思い出の剣菱の一献を頂戴し、一家総出のおもてなしに感謝でございます。

 

  (ご亭主の丹精がしのばれる露地と苔)

銅鑼の合図で再び席入りすると、初座とは全てが変化していて、床には珍しい「福」の字のお軸、お花が正月らしく、炉縁も華やかな花筏蒔絵にお色直し、棚も水指(垂涎の染付の小壷)も違い、その変化に嬉しい悲鳴でございました。

薄茶点前になり、もう一人の若武者がお点前をしてくださって、私は薩摩焼の茶碗で薄茶を美味しく頂戴しました。(薩摩焼の茶碗はお持ち帰りしたい・・・くらい)

小堀宗通氏の風流な橋立茶箱は秘密の小箱を開けるようで楽しく、興味深く拝見しました。こちらも小ぶりの茶碗が使われて、それらが生き生きと輝きを放って、拝見している私まで嬉しくなりました。

 

(遠州の紋のある釜や花筏蒔絵の炉縁もステキですが、ちょこんと置かれた点炭の位置が摩訶不思議!です)

 

書き尽くせませんが、暁庵社中の皆さまも前田さまのお茶事を堪能されたことと思います。

同門の宗文さまが茶事の決まり事やお尋ねのタイミングなどをさりげなくお話しくださり、流派の違いを納得しながら、誠に有意義で興味深く、本当に助かりました。

裏千家流とは違う流派の茶事を楽しむ心の余裕や、広い視野を持って欲しいので、また社中の方をお連れしたいと思っております。

どうぞ懲りずに仲良くお付き合いくださると嬉しいですし、拙いことですが暁庵の茶事へもいつかお出ましくださいますように・・・。

オミクロン株が蔓延していますが、どうぞお気を付けて、また元気にお目にかかりたいです。

ありがとうございました。 かしこ

      令和四年睦月吉日             暁庵

 

         (初座の点前座の設え)

 

前田宗令さまからのお手紙 

暁庵先生へ

先日は、駒場・和楽庵の初春の茶事にお越しいただき、ありがとうございました。

皆様からていねいな返礼のお手紙をいただき、恐縮しております。

炭点前の際、釜を据えないまま入席の案内をするなどの大失態はなんともお恥ずかしいかぎりです。これぞ小堀遠州流と胸を張って言えるようになるには、まだまだ修行が足りないことを痛感させられました。

「書き捨ての文」は遠州候の茶道理念を簡潔にまとめたもので、「不立文字」の茶道の中で、非常に分かり易く、格調高い文章でつづられています。わたしのつたない話しよりも、読んでいただいた方がよろしいかと存じ、茶席にそぐわないかと思いつつコピーをお渡ししました。

 

  (後座の薄茶の点前座・・・・垂涎の棚と李朝の水指)

薄茶の各服は初めての経験でした。格が高く、時代がありながら、なおかつ小ぶりの茶碗を探すのに苦労致しました。とはいえ、その苦労はいつのまにか楽しい時間となり、この機会を与えてくださった暁庵先生に感謝の念がわいてまいりました。皆様、それらの茶碗をよくご覧いただき、誠にありがとうございました。

おかげさまで楽しい時間をいただきました。今後ともよろしくご指導くださるようお願いいたします。

コロナ禍の中、先生はじめ皆様にはどうかご自愛のほどお願い申し上げます。

     令和四年二月八日         駒場・和楽庵  前田宗令

 

 


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