6:29
朝食は6時から、男性二人と一緒、一人は夕食同様、一眼レフのデジカメで食事を撮影してから食べ始める、ホームページに載せるのかもしれない。九州の姉妹遍路さんはもっとゆっくりのようだ。素泊まりの若者は6時に出ていく、延光寺に着くまでに追いつけるだろう。宿の前に架かっている吊り橋を渡って県道に出る。この吊り橋も増井さんが作られたもの。
6:46
本当ならタイトルは「宿毛市」とすべきところだけど、ここが今回の八十八ヶ所巡り全行程のちょうど中間地点になる。今回は88番から三本松の與田寺、大坂峠を経て2番極楽寺の近くの高速バス停まで歩くので全行程は1140kmくらいになる。折り返しを過ぎると足の調子は飛躍的に良くなってくる、今年も例外ではないようだ。中村までの歩きはもう過去のものになっている。
6:50 梅ノ木トンネル
この手前の橋もかなり高いところに架かっているのでちょっと怖い、この時間車は通らないので車道を歩いて下を見ないようにする。
6:52 中筋川ダム
トンネルを抜けるとまた橋、橋の上からできるだけ近くは見ないようになんとか撮影する。この黒川大橋を渡れば本日の難所は終了。
6:56 黒川トンネル
右手には川沿いの旧い道が見えている。確かにトンネルと橋で相当近道で便利にはなったけれど。
7:15
山から下りてくると県道から離れて、いい感じの旧道を行く。県道をそのまま行く方がいくらか近道になるけれど、ぼくはいつも吸い込まれるように旧道に入ってしまう。一度は自動車道の方も歩いておかねば、という気もするけれど、この道の魅力には勝てない。
7:29 平田郵便局
何年か前まで、表に、お茶のお接待します、という看板が出ていた。朝早いからないだけで、営業時間になると今でもお接待して貰えるのかもしれない。
7:33
すぐ右に平田駅がある。中村で泊まって、電車でここまで来て、ここから歩き始めるという区切り打ちの人が結構いる。
7:35
鶴の家旅館の前を過ぎるとすぐ国道56号に当たる。これから3日間は56号についたり離れたりしながら進んでいく。
7:39
国道に出てしばらく行くとコンビニがある。4年前までは午後からこの前を通ったので利用していたけれど、清水川荘に泊まるようになってからは入ることはなくなった。
7:58 延光寺
例年より1分遅れで土佐最後の札所に到着。誤差の範囲なので満足のいくところ。昨日、一昨日は朝一番の動きがやや重かったけれど、今日は朝から全開という感じ、ようやく普段の歩きが復活したといえる。お参り、納経を含め40分の休憩、もう少し短くしたかったけれど野暮用ができてしまった。
8:43
延光寺から国道に入る道は、地図では赤の実線と点線の2種類が記されているけれど、初めての人の半分以上がその両方の道に入れないと思われる。真っ直ぐ行ってしまう。ぼくもこの実線の方の道を行けたのは3回目からだった。遍路標識も、シールも一切ないからどうしようもなく行き過ぎてしまう。ちなみに点線の方の道は旧い道で雰囲気はあるけれど、通る人がほとんどいないのでかなり荒れ果てていて歩きにくいところもある。あまり近道にもなっていないのでお薦めはできない。
9:03
右の旧い道を行くとしばらく静かに歩けるけれど、ぼくは1回歩いたきり、国道を行くことにしている。ほんのわずかだけれど近道だし、合流するところで、国道を横切るのに時間がかかりそう。
9:10
家田さんが遍路日記で推薦していた宿、ぼくも来年泊まる計画をしていたけれど、一心庵が浮上したのでどうなるか判らない。
9:21
短絡路から国道に入ると、すぐまた国道を離れて宿毛の町へ一直線。昔はこちらが国道だったかもしれない。しばらく行ったところで野宿の若者二人とすれ違う、初めてで、野宿で、逆打ち。ぼくなんかとは全く別世界のお話のような気がする。
9:32
ちょっと見えにくいけれど、松田川の上を大量の鯉のぼりが泳いでいる。ちょっと、気分が変わる好ましいひととき。
9:33
橋を渡って宿毛の町に入ったところに新しい遍路小屋ができていた。宿毛の町には今まで休むところがなかった。延光寺から6kmだからちょうどいい場所だ。でもぼくにとってはちょっと短いので休まない。
9:41
今まで2回泊まった宿。タイムチェックポイント、2分遅れだけれど、撮影のロスタイムを入れていないので納得の数字、調子は落ちていないようだ。
9:44
この前から斜め右に入っていく細い道が遍路道。
9:44
入り口にはこんなにたくさん遍路シールが貼ってあるのに最初の時は入れなかった。まともな地図も持っていなかったけど。
9:55
県境の松尾峠に向かう、その手前に3つの山道がある、山に入って里に下りてを3回繰り返した後、本当の山越えの道に入る。3回の内後の2回は大した登りはないけれど、何度も里に出てくるので拍子抜けの感じがしないでもないし、本当の山越えに入るまでに疲れてしまう。
9:58
湾というより松田川の河口かもしれないけれど、とにかく海らしきものが見えた。1つ目の山道は登り初めがすごくきつい、スピードがぴたりと止まる。この山道を避ける平らな道があるので、来年からはそちらを歩こうかと思い直すくらいきつい。そして、このすぐ後にトラップが待っていた。7回目にして初めてここで道をはずす、普段は絶対はずさないのにはずす、トラップとしか言いようがなかった。
10:11
一番長い1つ目の山道を下りてきたところ、民家の門先から子供が飛び出してきて「しゃしんとってぇ~」とぼくにせがむ。突然のことで面食らったけれど、断る理由もないので、1枚パチリ。そしたら、「みせてぇ」というので液晶モニターを見せて確認、それで得心したようで「ばいばい、またとってねぇ」と言って手を振って別れる。また来年も来られるのだろうか、としばし考えてしまった。
10:12
次の山道は先の半分くらいの長さで、登りも大したことはない。
10:19
二つ目の里に下りてくると、牛が出迎えてくれる。三つ目の山道も二つ目と同じくらいの長さ、登りというほどのものはない。
10:26
これからが本当の山道なのだ。
10:30
行く手に立ちはだかる壁、とても30分足らずで峠まで行ける感じはしないけどね。
10:33
松尾峠に登る前に、地蔵堂で一休み。でもこの地蔵堂への標識は判読不能になってしまっている。でも、登りが始まろうとしているところで一休みする人は少ないでしょうね。宿毛の遍路小屋から、松尾峠まで6kmちょっとだから一気に登って峠で休むのが普通かもしれない。
11:19
松尾峠ではいつもは休まない、でも今年はどうしても展望台へ行かねばならないので、地蔵堂ではゆっくりしていられない。延光寺でも休みすぎたので、14分の休みで峠へ向かう。本格的な山登りは4日前の七子峠以来だから、身体が半分以上慣れていない。しかも、この峠は七子峠の1.5倍の長さ、時間がかかる。一汗どころの話ではなかったけれど、何とか6回目のキャリアを生かして昨年と同じ27分で到着。到着する少し前に一人を追い抜き、県境の標識のところには別の男性が到着したところ、目の前の東屋ではすでに二人が休んでいる。ちょっとにぎやかな峠の風景だった。峠から左の道へ入ると展望台のはず、四元さんの映像では確かそうだった。峠だけれどさらに登りになっている、前を行く女性の姿が見える。この道で間違いなさそうだ。でも道標に展望台の文字は見られない、純友城址はこちらの標識しかない。
11:19
展望台は純友城址に建っていた。松尾峠から5分くらいかかった。まあ峠までやっと登り着いて、さらにここまで来ようという人はあまりいないでしょう。ぼくは、その存在すら知らなかった。四元さんの前半のゴールがここだったので、やっと知ったくらい。
11:20
展望台からの眺め、今度は紛れもなく宿毛湾が見えている。途中で追い抜いた女性と一緒に眺める。彼女は今日は一本松温泉まで、あと6kmくらいだから、かなり休憩をとっても3時までに楽々着ける。でも、明日は宿毛市、愛南町、宇和島市の境にある番外霊場、篠山観音寺(跡)を往復するという。標高880m、一本松温泉から往復すると30kmくらいになる。彼女は前回1巡するのに50日以上かかったと言うから、そんな距離、高さを行けるわけはないと、気がついたのは、彼女と別れた後地図を見直してからだった。その間宿は全くないから、やめておきなさいと助言できなかったのは、心残り。
2日前、3日前に家田荘子さんに会った話をしたら、「去年でしょう?」と怪訝な顔、というのも、彼女の知り合いが昨年自転車で巡っているときに、家田さんに会って、そのことを電話で連絡してきたのだった。昨年は2巡目で今年は3巡目なのだと説明する。その知り合いもものすごいオーラを感じたそうだ。ぼくはバリアだと思っているけれど。遍路宿情報を渡して、納め札を交換、何と、宮城県の人だった。名取市という初めて聞く市、調べてみると仙台市のすぐ南、海岸沿いの市だった。
11:44
展望台ではそのほかにぼくの最大おすすめの宿、遍路宿もやいの話などじっくり20分くらい話し込んでしまった。松尾峠に戻ってきたのは11時43分、夫婦遍路さんが到着したところだった。松尾峠の下りは、最高に気持ちのいい下りだ。下りの山道では最も負担のかからない快適な散歩道になっている。
11:58
快適な下りはわずか15分で終わり、あっという間に自動車道に下りてくる。
12:13
数年前にできた新しいトイレ、この前で休憩する。このすぐ先に遍路小屋があるけれど、水も補給できるので、晴れているときはこちらで休む。
12:25
松尾峠に着いたときに居たベテラン遍路さんに休憩所のすぐ手前で追いついたので一緒に休む。彼は4年くらい前にも四国に来ていて、ぼくの渡した遍路宿情報を眺めながら、この宿は良かった、この宿は満室で泊まれなかった、などと思い出している。通しですか?と訊いたら、数日後に病院で検査を受けなければいけないので、一旦戻るけど、それが終わったらすぐ続きから歩き始めるそうだ。医者に止められても、絶対戻ってくる、と意気軒昂だ。今日は札掛宿に泊まるというから、あと4kmくらい。1時間休んでも3時までに着いてしまう。
12:35
奥に見えているのが遍路小屋、その前に新しい松尾大師ができていた。
12:38
松尾峠から一本松の交差点まで本当に快調な歩き、例年より2分も早い。過去3年はここを左折して国道を歩いたけれど、今年は撮影があるので4年ぶりに直進する。普通のお遍路はほとんど直進する。国道は近道だけれどそれだけの取り柄で風情など全くない。
12:58
この前に遍路標識があってその通りに歩いてきたのだけれど、全く見覚えのない道に入ってしまった。いくら4年ぶりとはいえ、5年前と6年前にも歩いているから、完全に忘れてしまったということはないと思う。首を傾げながらも前へ進むしかない。
13:01
こういう標識はもちろん4年前にはなかった。旧街道と書いていることからして新しくできたのではなく、復元されたということなのだろう。つまりこの道は県道299号が整備されてそちらがへんろ道になってしまって、一旦忘れられてしまったということらしい。もちろん、そういう道は各地に存在するけれど、復活するというのは珍しい。宇和島市の松尾トンネルの山越えの道もそうだ、旧国道と旧トンネルができた時にそちらがへんろ道になってしまったのに、2年くらい前に旧へんろ道が復元されて旧国道の方は赤線も遍路標識も完全に消えてしまった。復活するのなら、最初から見捨てなきゃいいのにと思ってしまう。
13:02
確かにこういう道は歩いていない、地図ではずっと県道に赤線が引いてあるし。ウサギの耳のような県道はかなり遠回りになるからこちらの方が近いかもしれない。
13:12
県道に合流するけど、横切って少し戻ったところに旧い道の入り口がある。その入り口のところで、男の人がへたり込んでいる。地図を広げて思案顔、ぼくにこの道でいいのか、と尋ねる。ぼくも4年前の道と違うのでおかしいなと思いながら歩いているんです、と答える。お互い、確信の持てないまま標識に従うしかないと結論を出す。
13:19
やはりというか当然というか、はっきり見覚えのある道に出てきた。でも、どこら辺を歩いてきたのか、全く判らないままだった。近いのか遠いのかも判らない、観自在寺に着くまで判らない。
13:20
標識に書いてあったとおり、新しいトイレができていた。4年前にはなかった。観自在寺まで休むつもりはなかったけれど、新しい道にあたふたしている間に相当汗をかいたようだ、気温もかなり上がっている、たまらず、水分補給をしてしばし休憩する。
13:28
(旧)の字がすごく小さい、単にスペースがないからそうならざるを得なかったのだろうけれど、自分たちはまだ城辺町の住民なのだ、と主張しているように感じる。愛南町の中の(旧)一本松町と(旧)城辺町の境にこの標識を残しておくことの意味は、そこにしかないような気がする。
13:43
標識に従って右に折れると、川の土手を行くことになる。土手の道は近道だけど、へんろ道ではないと言う人もいる。四国のみちではあるけれど、へんろ道ではない。ぼくはそれを信用して、1回目に歩いたきり、2回目からはこの道を行かないようになった。
13:44
県境を挟んで宿毛にも岡本旅館があるので勘違いする人もいるようだ。こちらの本職は魚屋さんなので美味しいお魚を頂いて6000円で泊まることができます。素泊まりも3700円とリーズナブル。
14:05
この橋に渡るところでしこくの道が合流してくる。岡本旅館を過ぎたところで見えた土手を行く人がだいぶ遅れて後に見える。でも土手の道の方が150mくらい短い。
14:09
こちらの(旧)はかなり大ききけれど、あえてこの標識を作るというのは、やはり町名に対する誇りのようなものがあるからに相違ない。建物は県立南宇和高等学校。
14:17 観自在寺
伊予の国の最初の札所に到着、一本松から国道を行くと78分、直進した今回は91分、でも思ったより早く着いた。国道より1.5kmくらい長いし、直進した4年前の記録と比べても7分も早かった。やはりあの復元された癒しの里道は県道を行くより結構な近道になっているようだ。
14:50
観自在寺では、お参り、納経に22分、休憩なしで宿に向かう。今日の宿はあと2km足らず。2時39分に出たけれど、今日は素泊まりなので食料を仕入れねばならない。3時には着けないだろう。パン3つと袋菓子、そして、カフェオレ500cc、110円を購入。飲料を買うのは4回目、それくらい午後からの日差しはきつかったということになる。思わず、自然に手が伸びてしまったから。
15:03
民宿磯屋は昨年に続いて2度目の投宿、昨年は2食付きだったけど今回は素泊まり、食事が悪かったということではなく、全体の支出額を考えてバランスのために素泊まりにした。玄関で「こんにちは~、ごめんください」と声をかけたら、すぐ横の部屋から「○○さん?」と女将さんが出てきてくれる。どうやら今日の予約はぼくだけらしい、2階へ通されて好きな部屋に入ってちょうだいと言われる、やはりぼくだけだった。昨年初めに通された部屋を選択、昨年はそのあと夫婦連れが来て、やむなく向かいの小さな部屋に移ることになった。その部屋は荷物部屋みたいだったけれど、今年のぞいてみたら、整理されて、衣類ケースや布団は積んであったけれど、居住スペースは少し広くなって部屋らしくなっていた。
16:08
畳が焼けるので閉めていたというカーテンを開け、窓も開けると、海(入江)からの涼しい風が絶え間なく吹き抜ける、すっご~く気持ちいい。ほかにお客さんも来ないし、本当に贅沢な感じがする。そしてすぐお風呂の用意もしてくれる。素泊まり3500円という情報もあったけれど、実際は4000円だった、それでも充分納得のいく安さ。初めは観自在寺の宿坊(3500円)に泊まろうと思っていたけれど、500円高くてもこちらにして良かったと心底思える。
17:50
部屋に入ってしばらくしたときに、女将さんが「前にも来られたことありませんか」と思い出してくれる。昨年の今頃、ダラスから来たご夫妻と一緒でした、と言うと、納得されたようだ。「ダラスのご夫妻は逆打ちだったので、たくさんお接待を頂いたんですよ」と懐かしげに語る。行く先々の宿で一緒になった人にこの宿を勧めたので、それを聞いてこの宿に来たという人が何人も続いたそうだ。
客はぼく一人で素泊まりなので、女将さんは食事の用意をしなくていいのでゆっくりしている。「息子がカレーを作ってくれているけれど、食べますか」と、お接待の申し出、もちろんありがたく頂きます、と答える。息子さんは近所に住んでいて、昨年はその娘さん二人(女将さんの孫)が食事の後かたづけに来ていた。