WALKER’S 

歩く男の日日

25日目 5月18日

2009-07-26 | 09年四国の旅

 5:41
25日目が始まる。タイムのメモは最後の4枚目になる、A5の用紙を8等分して1日分のメモにしている。4枚目は5日分しか使わない。そして、この25日目が一番厳しい行程になっている。距離は43kmで一番長いわけではないけれど、何といっても最高地雲辺寺を越えなくてはならない。それに例年と違って、納経をするので今日の内に観音寺と神恵院をお参りしなくてはならないし、そのあと銭形も見る予定にしている。例年より2km以上長く、札所も2つ多く、おまけに銭形もある。どんなに頑張っても4時半までに宿に入ることはできない。
 宿を5時37分に発つ。3年前までお世話になっていた大成荘の前を通過する。


 5:43
市役所の手前に昨年までなかったコンビニができていた。いつもはこの先の県道の交差点で買うことにしていたけれど、せっかくだから早めに買うことにする。


 6:15
伊予三島から三角寺までで、ここが大きな分かれ道。地図ではここを右折する道に赤線はないし、遍路シールも自動車のみが右折のようになっている。でも昔の白黒地図には右折する道にだけ赤線が引いてあった。ここを直進する赤点線の道は旧いへんろ道だけれど、右折するより10分前後余計にかかる。ぼくは一度歩いたけれど、後半はかなり険しくなるし時間もかかるので、以後はずっとここを右折することにしている。


 6:22
45分でこんなところまで登ってきた。伊予三島をあとにする、間もなく伊予の国もあとにすることになる。


 6:49 三角寺
宿から5.8kmを68分、例年より2分遅れで到着した。静かな境内、でも車遍路の人がすでに何人か見える。いつもこれくらいの時間だけど一人っきりだったことは一度もない。


 7:44
三角寺を出て38分、遙か行く手に雲辺寺山がその威容を現した。いつものことながら、4時間後にあの頂に立っている、そういう実感は全くない。不思議という感じしかない。


 7:47 ゆらぎ休憩所
四元さんはここから雲辺寺山を見上げて腰を抜かしそうになった。1回目の時はここで休んだけれど、2回目からは椿堂まで休まなくなった。三角寺から椿堂まで6kmしかない。


 8:11 椿堂
三角寺から6kmを64分、例年より2分遅れで到着した。調子はとくに問題はなかった、ここまでは。30分休んでパンを一つ食べる、水の補給はトイレでできたかもしれないけれど、まだ500ccくらい残っていたのでしなかった。でもこの休み方すべてが間違っていたことをあとで思い知ることになる。


 8:44
国道に合流する。この国道は池田から先は吉野川沿いを徳島の中心部まで続いている。緩やかな登りになっているけれど、歩き始めてすぐいつもの調子でないことを認識する。このときには全然その理由は判らなかったけれど、帰ってから岩屋寺の時と同じであることを思い出した。午前中の早いときに休憩でパンを食べた。食べたときにしっくりこなかった。力が沸いてくるどころか、その逆の感じがした。たぶん消化の方にエネルギーが使われたのではないかと思われる。パンが米より消化が悪いのは周知の事実。


 9:15
 ここを左に入ると曼陀峠に至る。この道を行く人は少ないけれど、ぼくは2度歩いた。今年は撮影があるし、郵便局にも用事があるのでトンネルを通ることにする。


 9:21
トンネルの手前に簡易宿があった。一応「素泊まりバスいしかわ」という名がついている。素泊まり2500円(2人相部屋の場合2000円、3人相部屋の場合1500円)、シャワーは300円。この先の人気宿、民宿岡田が満室の時には重宝するかもしれない。


 9:26
トンネルを通るのもこれが最後。歩道はある。


 9:35
 3年前まで池田町だった。徳島県だけれど便宜上カテゴリーは讃岐の旅にします。


 9:52 民宿岡田
伊予三島から雲辺寺を越えるのは多くのお遍路にとって容易ではないので、この宿に泊まらないと越えられない。遍路シーズンには満室になることも多く数日前からの予約が不可欠とされる。でも、ぼくはまだ1度も泊まったことはない。


 9:54 佐野郵便局
椿堂から7.1kmを72分、例年より4分遅れで到着した。動きが鈍いのははっきり自覚していた。足の状態はよいので理由は判らなかった。ここで納経料の百円玉をおろそうとしたら、最初の1回、4枚はうまくいったけれど、2回目からは不能になってしまった。硬貨の補充が不十分だったのかもしれない。ここで気落ちしたのがこの先の歩きに影響するとは思いもしなかった。残りの16枚は観音寺に下りてからおろすことにする。郵便局の前で12分休憩、あとは山の上まで休まないから水の補給は考えなかった。


 10:11
ここから最高地910m(標高差650m)を目指すことになる。80分近く登り詰め、鶴林寺より柏坂より横峰寺より長い時間登り続けねばならない。


 10:16
仰ぎ見るほど高いところを走っていた徳島自動車道がもう目の前。5分で一気に40mは登っているはずだ。


 10:17
すぐ徳島道を見下ろすところまで出てくる。これからが本当の山道になる。



 10:55
前半部分の山道が終了したけれど、全然駄目だった。2年前に比べると、疲労が先にたって躍動感が全然なかった。タイムが出ていないことは明らかだ。理由ははっきり判らないけれど、休憩の仕方、水と食料の摂り方がうまくなかったのだろう。


 10:55
ここからは自動車道(一部短絡山道がある)が山門まで続く。標高差245mを2.1kmで登る、緩やかな坂ではあるけれど、まだ遙か彼方としか思えない。


 11:17
別格15番箸蔵寺、池田方面から登ってくる道がここで合流する。ここまで来ると、もう山門は近いけれど、この少し前の所で大変なことが起こった。胃が急に痛み始めて座り込んでしまった。この症状は前にも何回か経験している、胃酸が出過ぎている、これを抑えるには食物を胃の中に入れるしかない。ザックの中にかりんとうはあるけれど、水がない。水なしで食べるのは厳しいと思ったけれど仕方ないので、無理矢理口の中に放り込む。数分ですぐ落ち着いた、喉はからからだけど何とか前へ進むしかない。ふらふらとまた歩き始めた。昨年のリベンジをするつもりが完全に返り討ちにあってしまった。また1からやり直しだ。


 11:18
昨年登ってきた箸蔵寺からの道、昨年もこの手前で2回もへたり込んでしまった。昨年は初めての道だったし、ものすごく暑い日だったから仕方ないとは言えるけれど、それにしても2年続けての情けない山登りになってしまった。来年どちらのリベンジをするかはまだ決めかねているところ。


 11:29 雲辺寺(旧山門)
かりんとうの効き目は絶大で、以後の登りは普段に近いものになっていった。休みと水分と栄養のとりかたは本当に重要であることを改めて思い知った。郵便局から5kmを79分(正味歩行時間)、2年前に比べて4分遅れで到着した。でも5年前の記録(3年前、4年前は別の道を歩いた)よりは少し早かった。


 11:36
これは水屋ではなく水堂、ありがたい山の飲料水を頂くためのお堂。真っ先にここに来たかったけれど、お行儀よく先ず水屋で身を清める。水屋はロープウェイ客に都合のよい場所にあって、歩き遍路はわざわざそこまで行って、また戻ってくることになる。最初の頃はそんな所にあることは知らなくて、手を洗わないままお参りをしていた。
お参りの前に、とりあえず1本分頂いて渇きを癒しておく。本堂は今年もまだ工事中、仮本堂は左手の方にある。


 12:10
お参り、納経を含めて、36分の休憩、下着がびちゃびちゃになって着替えることもあったけれど、今回はその必要はないようだ。12時5分に出発する。4時間前、椿堂の手前から見えていた電波塔のその真下にやってくる。動きは鈍かったけど、とにかくここまでやってきた。感慨はひとしおである。


 12:14
別格16番萩原寺への分岐点、昨年はここから左へ下りた。6300mと書いてあるけどこれは間違い、ぼくが歩いた感じでは少なくとも7500mはある。でも萩原寺へ下りる道はロープウェイの駅の近くから始まる別の道が正しいへんろ道、でもぼくはその下り口が見つけられなかった。


 12:42
雲辺寺の下りは横峰寺と違って、前半は枯れ葉が積もったふかふかの山道が続く、膝や足首にも優しいけれど、さすがに最後までそういう道が続くわけもなく、後半はかなり段差が激しく、足場も悪い横峰寺と変わらない険しい道へと変貌していく。いくら下っても下界に着かないのではないかという錯覚すら覚える長い長い下りの山道。


 12:59
横峰寺に比べれば、自動車道までの距離は7割くらいだし、前半は楽な山道ではあったけれど、それでも容易ではない。下りなのに時速は4.8kmしか出なかった。膝は相当痛めつけられて、がくがくだ。


 13:05
家田荘子さんもお薦めの評判の民宿。伊予三島から28km、900mの山越えではあるけれど、少し頑張れば大半のお遍路がここまで来ることができそうだ。民宿岡田にこだわる必要はないともいえる。


 13:18
ここまで下りてくると必ず振り返る。振り返ると雲辺寺山の電波塔が見える。あんな高いところから1時間ちょっとで落ちてきた。自分をほめてやりたい気分になる。


 13:51
昨年を含め3回お世話になった民宿おおひら。伊予三島からだとここまで来る人は珍しくはない。でも青空屋ができたから大分客の数は減ったことだろう。ぼくは、来年箸蔵寺と萩原寺に行けばまたお世話になることになる。この宿以外の選択肢はない。


 13:54 大興寺
雲辺寺から9.4kmを107分、2年前より8分遅れで到着した。相当ひどい。あるいは2年前の動きが良すぎたか。ちなみに3年前は113分、4年前は103分、5年前は133分。真ん中あたりの記録ではあるけれど、今日は1日中動きは本調子でなかったことは否めない。納経が終わってその前のベンチで荷造りをしていたら住職が声をかけてくれた、山越えの道が大変でまいったこと、などをお話しする、気持ちがちょっとほぐれて楽になった。お参り、納経を含めて34分の休憩、14時26分に出発する。


 14:38
観音寺市のシンボルはやはり銭形、実は、ここで初めて観音寺市に入るわけではなくて、雲辺寺の下りからずっと観音寺市内を歩いていた。大興寺の前後数kmの間だけが三豊市に入っている。


 15:01 観音寺池之尻郵便局
大興寺から観音寺までのへんろ道沿いにある郵便局はここだけ。ここがなければ遠回りを余儀なくされるところ。百円玉16枚を無事おろすことができる。明日の札所は9ヶ所、お参り、納経だけで3時間近くかかりそう。


 15:22
下校中の小学生がにこにこ笑いながら「こんにちわぁ~」と大きな声で挨拶してくれた。思わずこちらも笑みがこぼれて、元気よく返す。今日は1日さえない動きだったけれど、これですべて帳消し、終わり良ければすべて良しの1日になった。


 15:44
1日の最終盤になって、ちょっと気が抜けたのか、この手前のコンビニの写真を撮り忘れてしまった。この400m手前、県道237号との交差点にあるサンクスで毎回食料を仕入れる。今回はパン3つ、かりんとうと芋けんぴ、それと野菜ジュース500cc、120円を張り込んでしまう。飲料を買うのは7回目、我ながらよく辛抱していると思う。


 15:47 まめ珈房
テレビディレクター佐藤光代さんが結願のあと再び戻って珈琲豆を買ったのがこのお店。昨年は見つけられなかったけど、今年は確認、でも定休日だった。
 「私のお遍路日記 歩いて回る四国88ヶ所」 佐藤光代著のこの本は、ぼくが読んだ遍路本の中で一番おもしろく優れたものです。amazonで買えますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。


 15:55
 財田川を渡ると今日最後の札所は目の前。


 16:01 神恵院・観音寺
大興寺から8.5kmを81分、昨年より3分遅れで到着した。ただし、昨年は朝一で歩いたので正確な比較はできない。午後から歩いた中ではベストタイムだった。女の子に元気を貰ったおかげだろうか。やはり終わり良ければ・・・になった。


 16:22
観音寺の本堂の左側に長い石段がある。この上に薬師堂がある。7年前までこちらが神恵院の本堂だった。ご詠歌の額がいまだに飾られてあった。この前を右に行くとお待ちかねの銭形展望台に至る。


 16:29
6回も観音寺に来ていて1度も銭形を見ていなかった、それでは観音寺に来たことにはならないといつも引け目を感じていた。この区間はとにかく忙しい行程にしているので、全く余裕がなかった。今回は納経をするので、何とか無理矢理押し込むことができた。写真や映像では何度となく見ているのでとくに目新しくもないけれど、肉眼で見ておかないと見たことにはならない。


 16:47
観音寺の境内から銭形展望台を往復するのに20分くらいかかった。思ったよりスムースに行くことができ時間も予想範囲内だった。予定通り宿にも5時までに入ることができた。5時というのはぼくの感覚ではものすごく遅いけれど、まあ仕方のないところ。
 藤川旅館は3回目の投宿。素泊まり3500円、2食付き5000円。トイレはウォシュレット完備、洗面も清潔。今まで隣の音が気になったこともない。何の文句もない最高の宿といっていい。もちろん3000円の宿よりはポイントは低くなるし、食事は摂ったことがないのでどうか判らないけれど。