WALKER’S 

歩く男の日日

3日目 4月26日

2009-05-27 | 09年四国の旅

 8:05
今日は正味の歩行時間が5時間ちょっとなので、朝はゆっくり。7時44分に発ったけれど、これは計算違いだった。もう30分は早く出るべきだった。でも朝食をたっぷり食べたのでこれくらい時間をおいた方が歩きやすかったことも事実。宿を出て5分、県道に合流するところでリュックを担いだ男の人が前を歩いている。白衣も菅笠も着けず、金剛杖も持っていない。でもどう見てもお遍路だ。この時間こんな所を歩くのはなべいわ荘を7時頃出てきた人以外考えられない。軽快な歩きでなかなか追いつけないほどのスピード、しばらく行ったところで先に出た同宿の女性に追いついてしまった。道の駅の少し前で二人とも追い抜いて以後会うことはなかった。道の駅で休憩をとったのかもしれない。


 8:36
山肌一面の見事なしだれ桜、もう3週間早ければね。


 8:39
最初の休憩はこの郵便局と決めていた。5.7kmを55分かかった。ずっと県道だったけれど思った以上にきつい坂もあったので、まあこんなもんでしょう。今日は日曜日なので郵便局はお休み。前の花壇に腰をおろす。雨が降っていたら休めなかった。


 9:03
神山といえばこの人、いかな民主党でもこの選挙区で議席を奪うのは不可能というしかない。


 9:47
郵便局からは大日寺まで休憩するつもりはなかったけれど、道端におあつらえ向きのの丸太が転がっていたので休憩を入れることにする、丁度中間地点でもあった。


 9:58 大桜トンネル 131m
休憩したところから300mも行かないところにトンネルが現れた。最初のトンネルだ。トンネルの写真はすべて撮ると決めていた。もっと広い道、大きなトンネルだと思っていたけど全然違った。車は全然通らないから恐れることは全くない。


 10:17
徳島市に入った。神山町には丸1日いたことになる。大日寺まであと4km、足取りも軽い。


 10:55 大日寺
大日寺の手前には点線の短絡路がある。それらしい道はいくつかあったけれどいずれも遍路標識はなかった。しかもどの道も相当な山越えになる。もし間違って入ったら目も当てられない。結局そのまま遠回りの自動車道を行くことにした。宿から17.1kmを2時間47分で来た(休憩時間は除く)ことになる。平均時速は6.14km、結構な坂道もあったから十分納得はできる。
 大日寺では4人の歩き遍路、いずれも男性が到着していた。一人は明らかに野宿、他の3人は植村旅館からやってきたと思われる。なべいわ荘からでも不可能ではないけれど、休みなしでは来られないからかなりの健脚でないとこの時間には難しい。お詣り納経を終えて早めの昼食を摂る、合計35分を費やす。はじめの計画よりかなり押している、3時に宿に入るのは難しくなってしまった。


 11:42
大日寺を11時30分に出る、鮎喰川までは平行した2本の遍路道がある。向こうの川に近い方の道を先に出た男性が歩いている。鮎喰川に架かる橋に登っていく歩道の所で、迷っている。追いついていって、こちらですよと教えてあげる。こういう普通なら迷わないような所でも迷うのが初めてのお遍路、いや初めてでなくても思いもかけないところで無駄な思いこみが入っておかしな道に入ってしまうこともある。もう幾度となく経験してきた。だからそういう人を見ても絶対ばかにしたりすることはない、丁寧に教えてあげるだけ。


 11:53 常楽寺
常楽寺まで23分、例年通りで満足の歩き。やっぱり他に歩いている人がいると自然に力が入ってしまうのかもしれない。常楽寺には山門はない、写真の門柱があるだけ。昨年撮り忘れたお大師さんの銅像も撮影しておく。


 12:17 国分寺
国分寺までは7分、またも例年通り、これくらい短い距離だとのんびりはしていられない。国分寺はどうしても山門よりこの本堂を撮りたくなる。この独特の雰囲気にはいつも立ち止まって見惚れてしまう。


 12:37
国分寺の納経所では少し並んだけどお詣りを含めて20分で済ますことができた。山門を出ようとしたら、その前で車の誘導をしている人がいて、熱いコーヒーでも飲んでいきませんか、と声をかけられた。思ったより時間がかかって、ここで立ち止まることはできないと「先を急いでますので」と断るしかなかった。そうしたら、ちょっと待ってください、と自分の車から写真の物を持ってきて渡してくれた。お菓子が3種類と、緑色の台紙は「活路」と題された小冊子になっていて、お遍路に対する心得や励ましの文章がつづられていた。
 『お四国  遍路はいかがですか 善い出合い有りましたか』
 『お遍路人  歩きの人へ 阿波の国で頑張りすぎないで先は長~い
   車の人へ 時間がゆるすなら太龍寺は旧駐車場から歩きを』
 『貴方の周りで 何かに迷った人を見かけたらお四国へお導きを
  その方にも・貴方にも活きがいが沸いてきます』  (一部を抜粋)
            平成二十一年   遍路の地 あいの会


 12:54 観音寺
お礼を言って少し行くと、鮎喰川で道を教えた男性が立ち止まってきょろきょろしている。どうかしたんですか、と訊くと、「ここから観音寺へはどう行ったらいいのかと思って」国分寺に入る前から先の道を心配している。また丁寧に教えてあげる。
 観音寺までは1.8km、またも例年通り17分で到着した。短い距離を1分でも遅れるとあまりいい気分がしない。


 13:11
観音寺では車遍路の人が数人いるだけだった、静かに落ち着いてお詣りを済ませる、納経所でも待つことはなかった。山門を出ていくときに団体の人が入ってきた。その最後の人がぼくを呼び止めて、お接待です、と言って頭陀袋から写真の絵葉書を取り出して渡してくれた。
『お遍路さん ご苦労様です。
 この葉書は私の手作りです。たまには故郷や、ご家族に手紙や、
 葉書を書いてはいかがでしょうか。携帯電話、メールも便利ですが、
 一通の葉書でも、素晴らしい想い出や記念になります。どうぞこの
 巡礼を無事に結願できますよう、祈念いたします。合掌
       歩き遍路後援会
        高松市○○町○○  霊場会公認先達 村上敏樹』
  と書かれた紙片が入っていた。
  左の写真は20番鶴林寺、右は66番雲辺寺


 13:38 井戸寺
井戸寺までは2.9km、1分遅れの26分。とはいっても6.5km以上は出ているのでまだまだよく歩けていることに違いない。水屋のそばで熟年の歩きの人が休んでいた、野宿かもというほどの大きな荷物だけど、本当のところはよく分からない。


 14:13
本日のお詣りは終了、あとは宿まで歩くだけになったので、一息つく。3時半までに入れればいいと長めの休みを取ることにする。35分で山門を出る。門前の遍路宿、松本屋さんは数年前の情報では日曜はお休みということだったけど、ちゃんとのれんが出ていた。


 14:28
井戸寺からの道は二通りある。南へ下りる道が古い道、沿道にはたくさんのお遍路さんの墓がある。この道は2回行ったことがある。東に出て県道30号に合流する道は新しい道。風情はないけれど幾分近道でこの道を行く人も多い。遍路標識も要所に見られる。ぼくは4回行った。今年は写真を撮るので古い道を行くつもりだったけれど、時間が予定よりかなり遅れたのと、沿道にコンビニがあるか自信がなかったので、県道を行くことにした。中鮎喰橋の上から正面に眉山が見える。今日の宿はあの麓、あと1時間も歩けば到着する。


 14:38
橋を渡って二つ目の信号の近くにサンクスがある。今日の宿は素泊まりなので夕食と朝食のパンを4つ買う。今回はできるだけ余分な物は買わないように心がける。昨年は食料飲料に16639円使った。今年は12000円以内に押さえるのが目標。


 14:44
買い物を終えて、コンビニの写真を撮っていると、そばの田んぼで肥料の調整をしているおじさんが、声をかける。そりゃそうでしょうね、観光地でも名所でもない何もないところでカメラを構えているのだから不思議に思うのは無理はない。「コンビニの写真です」と答えたけれど、意味はよく分からなかったと思う。「今日はどこに泊まるの」とさらに訊いてくる。徳島駅の近くに遍路宿があるのですよ、「ビジネスホテル?」「いえ、いえ、普通の旅館です、もう予約してます」「それなら良かった、今日徳島マラソンがあってね、昨日の晩、息子が駅の近くの焼鳥屋に行ったら、どの店もマラソンの関係者で超満員、入るとこがなかったと言ってたので、泊まるところがあるかちょっと心配になってね」。そうか、納得。1日ずれてたら危なかったかもしれない。せっかく話しかけて貰ったので写真を撮らせて貰った、とてもいい感じのおじさんだった。


 14:53
踏切を渡る。電車は阿波池田行き各駅停車。


 14:55
踏切を渡って左に折れるとすぐ蔵本駅、国道はもう目の前。


 15:18
国道192号に出て、東へ東へ。最初この道を歩いたとき南へ折れる目印は四国銀行だった。四国銀行の角を右へ、それだけを目指して歩いた。1年ぶりにここに来てびっくり、四国銀行が消えていた。あの建物ごと全部消えて、駐車場になっていた。その片隅にATMブースがひっそりと建っていた。


 15:21
井戸寺から南へ下りる遍路道と合流するポイント、ちゃんと道標があって旧遍路道を来た人はこれを見て安心して右折する。


 15:21
南に下りた人はこの遍路道をやってくる。道幅は狭いけれど、車の通りは少なく、信号も少ないのでとても歩きやすい道。


 15:27
この広い交差点を左に折れて600m行けば徳島駅、徳島のメインストリートです。阿波おどり会館の5階から眉山に登るロープウェイが出ている。


 15:32
ようやくワシントンプラザに到着、ここから遍路道を離れて左へ折れる。300mほど東へ行き右折すると今日の宿大鶴旅館はすぐそこにある。


 15:37
この宿は初めての投宿、今までは徳島駅のすぐそばの「さくら荘」に泊まっていた。さくら荘は素泊まり宿で料金は3300円。大鶴旅館は3000円(2食付きは5000円)、しかも遍路特別接待と書いてある。徳島の中心部に泊まるのであればこの宿をはずす訳にはいかない。
 ぼくが想像、期待していた以上の、本物の遍路宿でした。迎えてくれる人がぼくたちをお客さんでなくお遍路として迎えてくれることが先ずありがたい。部屋などは決して新しいとはいえないけれど、そんなことはどうでもよくなるくらい、女将さんとおばあちゃんの心映えが嬉しくありがたい。洗濯は出すだけで全部して貰える、乾燥機はないけれどおばあちゃんの部屋に干してくれていたのを、寝る前に引き取って自分の部屋に干す。そして客はぼく一人、静かに休むことができる。
 徳島の中心部に泊まるお遍路は少なくないと思う。植村旅館に泊まれば、28kmくらいだからほとんどの人が徳島まで来る。なべいわ荘だと6km以上長くなるから徳島まで来る人は少ない、観音寺か井戸寺の近くまでしか行けない人が多い。大日寺の近くで泊まる人もいるから、歩きの人全体の3分の1くらいかもしれない。そのほとんどの人がビジネスホテルに泊まる。もったいない、遍路に来てビジネスホテルに泊まるのはほんとに味気ない。こんなに素晴らしい遍路宿があるのだからなおのことです。