WALKER’S 

歩く男の日日

【シンフォニック・ダンス】  作曲:福田洋介

2007-12-06 | 演奏会
1.ルネサンス・ダンス 2.タンゴ 3.ホウダウン 4.盆をどり唄 5.ベリー・ダンス
 福田洋介は1975年東京生まれの、まだ若い世代の作曲家。10代前半からコンピュータによる音楽制作に親しみ、独学で作曲を学びながら、演劇やイベントの音楽を中心に活動してきた。吹奏楽の分野で最初に注目された彼の作品は、2004年度全日本吹奏楽コンクールの課題曲となった吹奏楽のための「風の舞」で、同曲は課題曲公募における最優秀賞(朝日作曲賞)を受賞した。以降、マスコミ関係の音楽制作に加え、吹奏楽界においても旺盛な作曲活動を展開している。
 「シンフォニック・ダンス」は航空自衛隊中部航空音楽隊の求めに応えて書かれ、同音楽隊によって2006年3月に初演された後、翌07年3月に開催された〈21世紀の吹奏楽「響宴」〉において木村吉宏指揮、フィルハーモニック・ウインズ大阪の演奏で再演された。全体は「世界の踊り」をテーマにした5つの楽章からなり、“踊り”に伴うアクティブな音勢とスピリチュアルな側面を表現しているが、「あくまでエンターテインメント性にこだわった」と作曲者自身は楽譜に記している。
 第1曲「ルネサンス・ダンス」は古いヨーロッパの響きへのオマージュで、クーラント、パヴァーヌ、ガイヤルド、ブランルなどの古典舞曲のステップが採り入れられている。第2曲の「タンゴ」は、情熱的で土臭いアルゼンチンタンゴの雰囲気を模した楽章。19世紀末にブエノスアイレス近郊に興ったタンゴは、20世紀になってヨーロッパにも広まり、より都会的に洗練されたコンチネンタル・タンゴに発展した。第3曲の「ホウダウン」は、アメリカ西部開拓時代に生まれたスクウェア・ダンスのひとつ。きわめて活発な踊りで、本来はカントリー・ウエスタン調の音楽で踊られるが、ここでは古いジャズ・スタイルで“ロデオの風景”が描かれている。祭りの喧噪とはかけ離れた第4曲「盆をどり唄」は、日本の“盆送り”の幻影である。念仏教の一種である「おわら節」の哀愁が心に沁み入る楽章。第5曲の「ベリー・ダンス」は、もともと中東及びその他のアラブ文化圏で発達したダンス・スタイルの総称だが、ここでは肌を露出してエネルギッシュに踊る、トルコ式ベリー・ダンスのイメージが強い。

 以上、パンフレットの解説そのままです。これだけの説明があると初めて聞く曲でもとまどいなく、十分理解しながら楽しむことができます。内容的にも難しくないし、吹奏楽の旨みのある楽法も味わえる。ただ21分というのは、組曲でも相当な長さではある。コンクールで演奏するには長すぎる(2曲だけ演奏する手もあるが)し、演奏会でもちょっと躊躇したい長さ。でも、本当は何度も何度も演奏されて、この曲の真の価値を時代に問うべきだと思う。本当に価値のある曲でも簡単に消滅させてしまうのがこの吹奏楽という非道な世界。