万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

どこか怪しい日中ガス田共同開発

2008年05月08日 13時51分50秒 | 国際政治
日中首脳会談 「進展」見えぬ中身 官房長官「完全な合意まだ」(産経新聞) - goo ニュース

 昨日の共同記者会見において、日中首脳が、高らかに東シナ海の共同開発問題について、「大きな進展があり、解決のめどが立った」と宣言しても、なぜにか、不安感を与えるのは、それが、何かを隠しているニュアンスとして受け取られたからでありましょう。何かが、言いようもなく怪しいのです。

 はたして、この違和感は、どこから来るのでしょうか。それには、いくつかの理由がありそうです。
 第一に、実際に、どの程度の天然ガスが、どの海域に埋蔵されているのか、国民が知らないことです(70年代に、尖閣諸島周辺に油田あることが国連の調査結果として公表されましたが、この件についても詳細な報告がありません)。東シナ海において、わが国が試掘を行おうとすると、中国側が艦船派遣の脅しをかけるのですから、ガス田に関する正確な情報やデータがあるのかさえ、怪しいところです。

 第二に、草案によりますと、双方の海域で一つづつ共同開発を行い、出資比率に比例して利益を分けるそうでが、この出資比率も知らされていません。しかも、この出資比率は、両国間で任意に動かせそうですので、政治的力学が働けば、日本国が、正当な権利として利益を得ることができるかも、怪しいところです。

 第三に、現在、稼働している中国側のガス採掘が、今後、どうなるかわからないことも、怪しさの一つです。たとえ共同ガス田を設けたとしても、中国側の他のガス田がそのままであれば、問題解決とは言えないはずです。

 怪しさの上に怪しさが重なり、どうやら、この問題は、暗雲立ちこめ、視界不良と言うしかなさそうです。結局のところ、中国は、既存の自国ガス田+共同ガス田を保有し、日本側は、共同ガス田でしか採掘できない、という不平等で不公平な状況に陥る可能性さえあります。問題点をひとつひとつクリアーにしてゆきませんと、解決どころか、国家的な大損失となるのではないか、と思うのです。

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コメント (21)
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