万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

消費者庁は市場の支配者?警察官?

2008年05月14日 17時30分42秒 | 日本政治
【明解要解】抵抗へ首相の指導力カギ「消費者庁」構想(産経新聞) - goo ニュース

 消費者保護政策の目的とは、言わずもがな、消費者の安全を守ることにあります。この目的のために、現在でも、数多くの企業向けの法令が制定され、これらの法令に基づいて、各省庁は、違反企業に対して行政指導や行政処分などを行っています。いわば、消費者保護を行う政府機関は、市場の警察官とみなすことができます。

 ところで、この目的と役割から考えますと、消費者保護に、”政治的な指導力”が必要なのかどうかは、怪しいところです。中国の毒入り餃子事件では、首相の指導力は、日本国の消費者保護ではなく、逆方向に発揮されました。また、政治家が、市場の警察権を一手に握るとなりますと、市場で活動する企業にとっては、時の政権による政治介入を受けることになりかねません。もしかしますと、消費者保護のための権限が政治的な利権と化し、企業に対して不公平な扱いをするかもしれないのです。例えば、政権与党への献金の多い企業は、お目こぼしを受けられるとか・・・。

 近年、表面的な目的の陰に隠れたて、別の狙いがある法律が制定される例が多く(個人情報保護法・・・)、この消費者庁の設置も、消費者の安全を守るためだけに提案されているとも思えません。裏口から経済への統制が強まるかもしれませんし、あるいは、政治が市場を支配する格好の手段となるかもしれません。消費者保護を強化するためには、民事訴訟への道を広く開くという方法もあり、行政権の強化には、十分な注意が必要であると思うのです。

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