万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日中関係―自由なき相互理解は論理破綻

2008年05月07日 13時49分20秒 | アジア
共同文書、戦略的互恵関係の推進うたう 日中首脳会談(朝日新聞) - goo ニュース

 本日正午過ぎに開かれた日中首脳による共同記者会見において、福田首相は、日中間の政治家ならびに国民相互の信頼醸成と相互理解の必要性を力説していたようです。しかしながら、そもそも、中国が、思想の独占を意味する共産主義体制にあるというのに、どうして”相互性”が成り立つというのでしょうか。

 日本国の側から見ますと、中国が信奉する共産主義思想は、数ある思想の中の一つに過ぎません。現に、全国どこの書店でも、マルクス主義の書物が販売されており、日本国民は、この思想に自由に接することができます。思想や言論の自由は、日本国内では、当たり前のことなのですが、その逆はあり得ません。中国においては、国民が、自由に、自由主義や民主主義に関する書物を手にし、読むことはできないのです。もし、こうした書物を所持していれば、公安当局から反体制分子と認定され、国家に対する”犯罪者”として刑に処せられることになりましょう。

 相互理解という場合、双方が、等しくお互いの思想や体制を知る自由や権利が保障されていなければ意味がありません。この条件の相互性なくして、相互理解などあり得ないのです。福田首相は、青少年の交流の拡大を掲げていますが、はたして、中国政府は、日本国の青少年が、中国国内にあってかの国の青少年に、自由と民主主義を語る自由を許すのでしょうか。日本国に滞在している中国人留学生が、長野の聖火リレーに際して動員されたことを考えますと、この相互理解論は、論理破綻しているように思うのです。

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コメント (2)
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