万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

死刑に宿る命を尊ぶ精神

2008年05月18日 13時56分11秒 | ヨーロッパ
死刑めぐる鳩山法相の国会答弁、EUが異例の抗議文(朝日新聞) - goo ニュース
 
 昨年12月に国連総会で、EUが共同提案者となった「死刑執行停止を求める決議」が採択されたこともあって、我が国でも、死刑廃止論が再び注目を集めるようになりました。とかくに、死刑制度は、”野蛮”とする議論が見られるのですが、必ずしも、死刑制度は、生命の軽視を意味しないと思うのです。

 何故ならば、死刑制度の背景には、”人としての最大の罪とは、他者の命を自分勝手な理由で奪うことである”、という考えがあるからです。命とは、失われてしまった限りは戻ってきませんし、取り換えがきくものでもありません。命あるからこそ、人は人として生き、自らの人生を歩むことができるのです。ですから、他者の存在を否定し、尊い命を奪った者は、罪相応の最大の罰が与えられるべきであり、無期懲役などでは軽すぎる、という論理もまた成り立つのです。つまり、命の軽視ではなく、命の尊重ゆえの死刑、ということになります。

 もちろん、政治や宗教的な理由による死刑、ならびに、冤罪による死刑はあってはならないことですが、利己的な理由に基づく殺人に対しては、死刑の宣告は、あってしかるべし、と思うのです。ヨーロッパ文明を育んだキリスト教では、懺悔をし、悔悛すれば、如何なる罪も許されることになるのでしょう。しかしながら、”死を以って罪を償う”という考え方にも、命を尊ぶ精神が宿っていることを理解していただきたいと思うのです。

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コメント (4)
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