万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

戦々恐々のロシアのEU加盟

2008年05月20日 17時12分55秒 | ヨーロッパ
大前研一が予測! 「ロシアは必ずEUに加盟する」(ダイヤモンド・オンライン) - goo ニュース
 
 EUが、経済戦略の一環として、ロシアを加盟国として迎え入れることは、そう不合理な政策ではありません。確かに、欧州市場へのエネルギー供給や資源入手ルートを確かにするためには、資源大国ロシアの取り込みは理にかなっているからです。しかしながら、EUの政策決定の仕組みや価値共同体としての性格を考慮しますと、EUとロシアの双方にとって戦々恐々の加盟交渉になりそうなのです。

 例えば、EUの理事会と欧州議会では、各加盟国に対して、主に人口を基準にして票数や議席を割り当てています。ここに、もし、ロシアが加盟するとしますと、現在のロシアの人口が約1億4千万人ですので、EU最大の票数と議席を獲得することになります。このことは、現在のEUの加盟国にとっては脅威ですし、反面、ロシアにとっても、票数や議席が最大であっても必ずしも自国の主張が通るわけでもありませんので、加盟に二の足を踏む原因になります。

 さらに、EUが、民主主義、自由、法の支配といった価値の共有を謳い、基本権の侵害などに対して制裁規定を設けていることも、EUとロシアとの摩擦要因になりそうです。ロシアは、チェチェン問題など、国内に不安定要因を抱えていますし、北方領土問題でも明らかなように、国際法を順守する姿勢が十分とも言えません。

 これらの諸点の他にも懸念材料はあるのですが、ロシアの早期EU加盟論は、経済決定論に基づいていると言えましょう。そうして、この楽観的な予測は、現在のロシアを見る限り、東アジア共同体と同質の問題点(共産主義国を含めた共同体?)を抱えているように思われるのです。

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