駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇花組『はいからさんが通る』

2017年11月04日 | 観劇記/タイトルは行
 日本青年館ホール、2017年10月26日14時。

 時は大正七年、春四月。陸軍少尉・伊集院忍(柚香光)は幼い頃から結婚を定められた許嫁のもとを初めて訪ねる道中、赤いリボンを春風になびかせ、女だてらに自転車に乗るハイカラ娘と出会う。花村紅緒(華優希)、まるでつむじ風のように忍の前に現れた彼女こそ、忍の運命の相手であった…
 原作/大和和紀、脚本・演出/小柳奈穂子、作曲・編曲/手島恭子、作曲・編曲・録音/藤間仁(Elements Garden)。1975年から77年にかけて「週刊少女フレンド」に連載された傑作少女漫画をミュージカル化。全2幕。

 私は小学生時代を確かひと月のお小遣い500円で過ごしていて(テストで100点を取ると100円、とかの臨時収入があった(笑))、それで毎月「りぼん」を買っていて、残ったお金を貯めて数か月に一度厳選したコミックスを買う…という暮らしをしていたと記憶しています。雑誌は集英社派だったのにコミックスは講談社派で、初めて買い揃えたのが『はいからさんが通る』だったと思うのです。『キャンディ・キャンディ』と並行していたかもしれないけれど。そのあと『ベルばら』そして『ポー』、と出会っていったんだよなあ…すごいな小学生時代の私。
 私は『はいからさん』のアニメもテレビドラマも観ていなくて、なので原点はあくまで漫画です。今読むとギャグがちょっとうるさく感じられるかもしれないし、当時でもややそっちに走った作風の作家だと思われていたと記憶しています(まあある種のテレなんでしょうけれども)、とにかく「花の大正大浪漫」のうたい文句どおりの波乱万丈なストーリーと多彩なキャラクター、素晴らしい人間ドラマが繰り広げられる傑作漫画で、今なおまったく古びていないし、このジャンル、題材でこれを超えるものがなかなか現れていない作品だ、と思っています。
 そんな思い込みが強すぎた…ということはないつもりで、また聞こえてくる好評にハードルを上げすぎた…ということもないつもりでしたが、私は、観て、「うーん、単なる2.5次元ミュージカルになっちゃってるかな…」という感想を持ちました。
 大胆な省略や脚色はせず漫画本編をほぼ網羅して舞台化する、という企画だったようで、どうしても駆け足のダイジェストっぽくなり、宝塚歌劇らしい夢々しい演出やしっとりした芝居、華やかな大ダンスナンバーなんかを入れる尺がなかった…というのが原因かと思いますが、キャラクターの扮装をした役者が出てきて漫画の名場面をそのまま再現してみせて場面転換…という単調な繰り返しに私には見えて、あまり感心しなかったのでした。この枠の中では、なーこたんも生徒も、がんばっていたのだろうとは思うのですが…
 ただ、これはおそらくなーこたんの趣味かと思いますが、音楽が特に良くなかった気はしたなー。主題歌はまあいいでしょう、でもBGいらないよってところでいかにもアニメBGっぽい音楽がうるさく流れていたり、場面転換にかかるブリッジ音楽がアニメふうに聞こえて、私はいちいち引っかかりました。
 あと、やはりもっと大胆に忍を主人公にした構成にしないと、宝塚歌劇らしくならないと思うんですよねえ。基本的に少女漫画の主人公はヒロインなので、男役スターが主人公になる宝塚歌劇らしくするにはけっこうなシフトチェンジが必要なのです。それが今回はほぼなされていない気がしました。そこが敗因かな…
 まあそこまで宝塚歌劇らしさなんてものを求めていない人は普通に楽しいラブコメミュージカルとして楽しんだことでしょう。こうるさくてすみません。
 おそらく次の宙組本公演の『天河』の方が、同じ少女漫画原作でも、またより尺の短い一幕ものでも、宝塚歌劇らしくなるのではないでしょうか。内容が、古代歴史ロマンと言いつつファンタジーっぽい部分が多いし、舞台らしい仕掛けや魔法を使わないとうまく表現できないであろうエピソードが多いと思われるからです。ただこちらも原作漫画はヒロインががっつり主人公の構造だから、その脚色は上手くやってほしいなと思っています。それができれば、多様な装置や人海戦術も使えることもあって、あまり心配ない気がします。
 でも日本の大正時代の物語は、リアリティがわりとちゃんとある世界だからさ…かつ大がかりな装置も使えないため舞台の魔法もかかっていない感じで、なんかこう、扮装ポート感があったんですよね…舞台作品になりきれていないように私には思えたのでした。高屋敷先生がクリソツ!とか、冗談社の三人が生き移しすぎる!とか、私もテンション上がったんですよ? でも彼らはサブキャラだからそれでいいけれど、メインキャストはもうちょっと、なー…
 絶賛ペースの方にはすみません。基本的にいつも何かしら文句つけてる人間に思われていたら残念ですが、そんなつもりはないのですがどうなんでしょうしょぼん…

 というワケで、以下キャストの感想を。
 れいちゃんは私の中では最近かなり評価を上げていて、もともと美貌の人だし(私が好きなタイプではないのですが)ものすごく踊れるし芝居心もあるし最近は歌も良くなってきたし、『邪馬台国』なんかでは個人的には一番いい役をやっているように見えたものでしたが、今回は、活舌がアレレで台詞が聞き取りづらく感じる部分が多々あり、歌は音程行方不明で心情が伝わるどころかアレレという印象を持ってしまい、あまり感心しなかったのでした。
 忍というキャラクター自体はすごくニンというか、中の人の素に近い部分があるのではないかなと期待していたのですが…うーむむむ。でもごく個人的な印象、感想です。すみません。
 のぞみちゃんも、もともと顔はどちらかというと男役顔で舞空瞳ちゃんの方が娘役力があるタイプなんじゃないかなと危惧していたのですが、もちろん初ヒロインとしては大健闘していたと思うのですけれど、私にはあまり可愛く見えなかったんですよね。お化粧の問題かもしれませんが…
 ああいう髪形や大きなリボンは、『春の雪』のゆうみちゃんとかもそうだったけれど、どうしても頭身バランスを悪く見せて、なかなか娘役泣かせなのかもしれません。
 もちろん垢抜けすぎてしまっても紅緒さんっぽくなくなってしまうだろうから、難しいところですけれどね…ともあれ上手く育てていっていただきたい娘役さんです。
 ちなっちゃんは、冬星さん(鳳月杏)パートに作品として省略が多く、やや説明的な台詞を担当させられたりして、かえってそこに芝居の上手さを見せつけてくれた感じで、声もいいし、素敵でした。ただあのスーツを着るにはもう少し絞ってくれてもよかったかも…?
 しろきみちゃんの環(城妃美伶)はさすがのあでやかさでした。この紅緒と環の友情、女友達っぷりはよかったなー。
 その相手役となるはずだったものの尺の関係でほぼその余力がなかった鬼島さん(水美舞斗)のマイティーもさすがにいい仕事をしていました。この忍と鬼島さんの友情っぷりもよかった。
 そして私はまひろくんの顔が好きなんだけどあすかくんもきれいだよね、とは思っていた聖乃あすかの蘭丸、これもいい仕事していましたね。やっぱり上手い下級生なんだなあ、新時代を担っていくのかなあ、と感心しました。
 以下、生徒のキャラクター再現率は本当に高かったと思います。それは素晴らしかったです、お疲れさまでした。おもしろい経験になったことでしょう。

 今年も残り二か月、おかげさまで全演目観劇は一応達成できそうです。でもやはりこの公演が一番チケット確保にドキドキした公演となりました。
 れいちゃん、初東上主演おめでとうございました。新体制の花組二番手スターさんですね、『ポーの一族』も楽しみにしています。アランはとてもハマり役というか当たり役になるのではないかしら…
 今後も楽しみしかありません!






 
コメント (4)
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