美味しいものはこっそりと

　僕は前から書いているように食べ歩きが好きです。趣味と言っても良いでしょう。美味しいものを食べるのは人生の大きな喜びのひとつです。でも、このブログにはもちろん、ツイッターにも食べ物の話はごくたまにしか書くことはありません。フェイスブックやインスタグラムには時々写真を載せたりしますが、それもほぼ決まったシチュエーションのごく限定的な話題です。同じ「趣味」の範疇であるテニスや音楽演奏の話の方をずっと頻繁に書いています。

　理由はいくつかあります。まず「味」の話は伝えるのが難しい上に、かなり好みによって左右されるので、共感の押し付けがましさがイヤだからです。また自分の好きな店をあまり紹介したくないのです。だからフェイスブックなどで見せるのは、ほとんどが誰でも知っている有名なチェーン店ばかりです。そして、食べ物の話ばかりしている人に魅力を感じないので、自分でもそう見られたくないからというのも大きな理由です。

　食欲というのは性欲と並ぶ根源的な欲求です。そう考えると、自分の好きな食べ物（＝異性）を写真付きでやたらと晒すのはどうかと思いますし、話題が食欲（＝性欲）のことばかりというのは、あまりにも品がない上に頭が悪そうです。ストレートな下ネタが下品なのと同じです。自分の欲求はもう少し奥床しく隠しておいた方が「品性」を感じます。

　もちろん、それはあくまでも僕の個人的な感覚であり、そうは思わないから多くの人々がSNSに食べ物の写真ばかり並び立てているのでしょう。また日常に大して話題もないし、何より食事は人類共通のネタですし、政治や宗教の話題のようにトラブルにもなりません。だから無難に料理の写真を載せているのだろうと思います。

　でも正直、誰が何を食べていようと、実はどうでも良いと思いませんか？よほど良いコメントか有用な情報が添えてあるなら興味もありますが、料理の写真だけ見せられても芸がないと感じます。もちろん、最初に書いたように美味しいものを食べるのは大好きなので、ひそやかに同好の士と美味しいものを食べに行くのはやぶさかではありません。こっそり行きましょう、こっそり。