はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

旅の思い出

2014-02-04 18:13:16 | はがき随筆


 夫の退職記念にヨーロッパに行き、
登山列車でスイスのユングフラウヨッホを目指した。
標高も高く、急ぎ足で歩こうものなら心臓がドキドキ。
「これが高山病?」と初体験。
展望台でホットチョコレートを飲みながら間近に見るアイガー、メンヒ、ユングフラウヨッホのベルナーオーバーランドの3山に圧倒された。アレッジ氷河も目の当たりにできた。
車窓から雪山をシュプールを描きながら滑走するスキーヤーを眺め帰途に就く。
幸運にも私たちは雲一つない青空に恵まれ、
素晴らしい景色に、まるで1枚の絵画の中に溶け込んだかのような錯覚さえ覚えた。
  鹿屋市 中鶴裕子 2014/2/4 毎日新聞鹿児島版掲載

「それぞれの20歳」

2014-02-04 18:11:31 | はがき随筆
2014年2月 4日 (火)

岩国市  会 員   山下 治子

 成人式の後「私の晴れ姿を見てください」と息子の恋人が突然やって来た。うれしいやら可愛いやら、振り袖姿に目を細める。彼女のお母さんが成人式の時にあつらえた物だとか。「姉たちもこれ着たんです」と屈託ないほほ笑み。
 素直な彼女に比べ、私の20歳はどうだ。一度きりの成人式ならスキー場で迎えたいと我を張り、母が縫った振り袖をよそに出かけてしまった。帰ると「友達が迎えに来たよ。みんなきれいになって」と責めるでなく着物をたたむ母。したたかな後悔がつきあがった。
 今更に思う。当たり前がよかった、と。
  (2014.02.04 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載