はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

足音の結晶

2014-02-13 22:24:54 | はがき随筆

 ブロッコリーがやっと大きくなった。昨年10月初旬、1本8円の小さな苗を200本余り植えた。
 例年、正月には食べていたが、今冬は厳しい寒さで気温が低く、生育が遅れていた。
 しかし、1月下旬からの暖かさで、グーンと大きくなりどんぶり大になった。大きくなるのを忘れていなかった。
 北風で倒れない土寄せと、元肥に追肥、除草に努めた。それに何よりも大切な「早く大きくなれ」と声(肥)かけの見回りが功を奏したのだろう。土と太陽と水の恵みに人の足音の結晶だった。感謝、感謝。
  出水市 畠中大喜 2014/2/13 毎日新聞鹿児島版掲載

10年日記

2014-02-13 22:16:15 | はがき随筆
 本屋の店員や鬼に笑われてもいい、とためらうことなく2冊目の10年日記を買った。
 この年で10年物に挑戦する訳とは――。はがき随筆であと100回は載り、県マスターズ陸上で金2,3個は取りたいという望み。身障者の妻に「先に逝くのは私」と宣言されたこと。先祖墓の処理など大事な務めがある。そのためには10年は生きたい……という思いと、自分の〝生命力〟を試してみたいという気持ちがあるからだ。
 長生きをするとつらく悲しいことが多いはず。それを定めと受けとめ、自分の生きざまや世相を日記に書き続けたい。
  出水市 清田文雄 2014/2/12 毎日新聞鹿児島版掲載

魚が陸へ上がる

2014-02-13 22:09:37 | はがき随筆
 30年前の2月上旬。内之浦の友人が「夕方、バケツを持って浜に行ってごらん。魚が陸に上がってくるから」。「えっ、そんな馬鹿な」。私は笑い飛ばしたものの、半信半疑、午後4時ごろ浜に出てみた。
 すると波が引く度に、7㌢くらいの多量の魚がピチピチ銀輪を踊らせている。夢中でバケツに放り込む。30分もしないうちに満杯になってしまった。
 後で話を聞くとこの時期、湾に大型魚が入り逃げ場を失ったカタクチイワシが浜に押し寄せて来るというのである。今はあの不思議な光景を耳にすることはないが、海は元気だろうか。
  日置市 高橋宏明 2014/2/11 毎日新聞鹿児島版掲載

イガ栗チクリ

2014-02-13 21:47:52 | はがき随筆
 一昔前、県立高校の生涯学習講座を受けた。約1年かけ日本画、陶芸、書道、合唱など月替わりで学んだ。俳句の授業で宿題が出たが、小学校の国語の時間以来、数十年ぶりの句作りに四苦八苦していたある日、裏の家の塀沿いにイガ栗が転がっていた。美しい緑色にひかれて思わず拾おうとした途端、指先に痛みが走った。「しまった」と思うと同時に1句できた。「手を出せば怒りあらわに栗のイガ」
 大喜びで提出したら合評会で先生から「俳句というより川柳ですね」。この一言で俳句のセンスの無さを自覚した私は、句作りを諦めた。
  鹿児島市 種子田真理 2014/2/10 毎日新聞鹿児島版掲載