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はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ローカ現象

2008-03-04 00:52:08 | はがき随筆
 日常の動作は緩慢になるが、逆に気は短くなり、つまらぬことに腹が立つ。ほほ笑ましいはずの戯れる若いカップルにさえ、無性にほえたくなる。
 理髪店で先客あるも、刈る面積減少の自分が哀れにも早く済む。歯医者に「固い物は控えろ」と言われ、ナマコすら横目でにらむだけ。尿意を催すともう我慢できぬ。ズボンのチャックを下ろすののもどかしいこと。
 妙に寒さが身に応える。廊下を素足でなんて、聞いただけで全身が縮み上がる。靴下はもちろん、スリッパなしでも歩けなくなった。ああ、これこそがローカ現象か。
   肝付町 吉井三男(66) 2008/3/3
   毎日新聞鹿児島・はがき随筆特集版-2

発表の機会

2008-03-04 00:41:39 | はがき随筆
 飯がつげない、包丁が使えないなど右半身まひの妻を16年間みた。認知症などを発症し私自身も年を重ね、心身共に限界を感じて4年前、施設に頼んだ。病妻を他人に頼むことに言い知れぬ妻への情があった。
 先般、介護経験と子育てをテーマにシンポがあり、介護経験者として発表の機会があった。出席者から競うように発言が相次ぎ、充実した催しとなった。それぞれの経験や思いを公の場で発表する機会は我々にはほとんどない。市民がそれぞれの立場でこのような機会が得られれば、思わぬ貴重な発見があるのではないだろうか。
   鹿屋市 森園愛吉(86)2008/3/3 
   毎日新聞鹿児島・はがき随筆特集版-1


一片の風物詩

2008-03-02 07:59:09 | はがき随筆
 往時、小寒から大寒のころだったか、祖母が軒先にむしろを広げ、大根の皮をむき、細く長く、太く細く、小さく刻むなどに精出した。白く固くなるまで干しあげ、出来上がりは見事だった。煮しめなど調理の好食材として年中重宝がられた。そのころ子供は、いろりで芋やクリを焼き、シイの実のはじけるのを楽しく待った。現在もつり干し大根は広く愛用されている。団地内でも、軒下に大根のつり干しが2、3ヵ所目につき、楽しくうれしい。わが家も、妻が健康だった10年前までは、ほとんどの食材は手作りが得意で、愉快な食事だった。
   薩摩川内市 下市良幸(78) 2008/3/2 毎日新聞鹿児島版掲載

一片の風物詩

2008-03-02 07:58:56 | はがき随筆
 往時、小寒から大寒のころだったか、祖母が軒先にむしろを広げ、大根の皮をむき、細く長く、太く細く、小さく刻むなどに精出した。白く固くなるまで干しあげ、出来上がりは見事だった。煮しめなど調理の好食材として年中重宝がられた。そのころ子供は、いろりで芋やクリを焼き、シイの実のはじけるのを楽しく待った。現在もつり干し大根は広く愛用されている。団地内でも、軒下に大根のつり干しが2、3ヵ所目につき、楽しくうれしい。わが家も、妻が健康だった10年前までは、ほとんどの食材は手作りが得意で、愉快な食事だった。
   薩摩川内市 下市良幸(78) 2008/3/2 毎日新聞鹿児島版掲載

希望

2008-03-02 07:50:39 | はがき随筆
 おいっ子が今年は受験で、新聞に掲載されたセンター試験の問題をいつもより入念に見た。
 「今の高校生は、こんな難しい問題を解くんだね。偉いね」と母。「うわあ、小さな字だね」と私。
 時代と共に入学試験のあり方は変わってきているが、子供たちの学びたい気持ちに変わりはない。「開拓精神」「向学愛知」という言葉が頭に浮かぶ。
 平和な未来に向かって、生きよう生きよう、伸びよう伸びようとする命の輝き、希望。頑張れ頑張れ、地道に、一歩ずつ。今学んでいることが役に立つ日が、きっと来る。
   出水市 山岡淳子(49) 2008/3/1 毎日新聞鹿児島版掲載