はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

晴れの日に

2009-04-04 15:35:55 | アカショウビンのつぶやき









 久しく待ち望んでいた長男の結婚式。お彼岸過ぎの第一級寒波襲来の朝、義妹と姪と共に上京した。翌日は風は冷たいけれど陽も差してまあまあのお日和。先日から風邪気味だったお嫁さんの体調が心配だったが、晴れ晴れとした表情で安心した。
 式場は築87年と言う、重厚な煉瓦造りの早稲田教会。パイプオルガンの奏楽が厳粛な中にも穏やかな気持ちを醸し出してくれる。
神様の前で「共に愛し敬い仕え合って生きる」ことを誓った2人、いつまでもこの思いを忘れずに愛のある家庭を築いて欲しい。きっと亡き夫も今、この誓いを一緒に聞いているのだろうと天を仰いで祈る。美しい花嫁を優しくエスコートする息子に「おめでとう」と2人で言いたかった。

 自由人らしい息子の披露宴は、友人と家族に囲まれ、形式にとらわれないつつましく楽しいものだった。猫が取り持つご縁だった2人の周りはすべて猫グッズ…。すべの準備を2人にまかせ、はらはらしながら見ているだけの私だったが、短い準備期間だったのに、よくやったねと2人に心から拍手を送った。これからも2人が補い合い助け合って明るい家庭を築いて行って欲しい。

携帯水没事件

2009-04-04 15:22:25 | アカショウビンのつぶやき
 旅に出ると、いつも珍道中を演じる私だけれど、今回は長男の結婚式という、大事な旅だからと用意周到に準備したのだが、出発直前に、大きなハプニング(>_<)。携帯を水に落としてしまった。
 拭いたり乾かしたり頭は真っ白。かろうじて息子と娘の携帯番号だけを控え、事の顛末を連絡し、羽田でDoCoMoショップに行こうと決心して出発した。
 羽田に着くと奇跡が起こり、携帯が生き返った! でもバッテリーが異常に熱くDoCoMoショップへ直行。「水没して生き返ることは殆どありません、奇跡ですね、ただし旅行中使えるかどうかは保障できません」と。仕方なく機種変更、データの移し替えなどで、半日つぶれてしまった。とばっちりを受けたのは同行の義妹と姪。先にホテルに行って貰ったが、予定が大幅に狂い本当に申し訳なかった。私の携帯は電話帳はもちろん、スケジューからメモまでぎゅうぎゅう詰め、これを落としたら動きがとれない。でも水に落とすなど考えもしなかった。

 まあ命があっただけで良しとしよう。本当に守られた1日でした。
 これからも息子たちに心配かけないよう気を付けましょう。
 

今年も会えた

2009-04-04 13:58:38 | はがき随筆
 3月26日。桜たちが見事に咲きほこっていた。
 9年前の乳がん再々発。一か八かの治療を受けるため入院する日の前日、夫が連れていってくれた磯山公園。満開の桜に息をのみ、穏やかな気持になれたことをハッキリ覚えている。
 奇跡が起き、がんは消え、老母をきょうだいたちと共に見取ることができた。でもその後、難病になり、また落ち込んだ。けれど障害者支援センターでの出会い、体験が私に新たな生き方を教えてくれた。体は不自由になったけれど、心は自由になれました。今年も会えたね、桜さん。うれしいです。
   鹿児島市 別府柳子(61) 2009/4/4 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真は仇虫さん




夢のかなた

2009-04-04 13:06:36 | はがき随筆
 夢をみて目がさめた。何かあったのではと気にかかるが1日たっても連絡もなく安心する。その人は中Iの時の同級生。冗舌でクラスを沸かせる楽しい存在だったので印象深い。高校の時、同じ列車で通学、その後1年、さるところで勉強し東京の大学へ。その後世界のあちこちで活躍され退職。私たちの所へも昔のように来てくださる。昔の色白に更にまぶしく反射する白いシャツの印象が夢の中のその人だった。2部授業でスタートした新制中学の日が懐かしく、それぞれにかえる時が老齢の日々のゆとりの中にもどるのだろう。みんな元気に生きたい。
   鹿児島市 東郷久子(74) 2009/4/3 毎日新聞鹿児島版掲載




人生哲学

2009-04-04 13:03:59 | はがき随筆
 「当たって砕けよ」が、夫が逝ってからの私の人生哲学。何でも一人で解決してゆかねばならないから、おのずとそうなる。一応、子供たちに相談はするが結局、決めるのは自分。
 庭の土が沈んできた。シラスを入れねばと夫が言っていた。大工の棟梁に相談すると砂利がよかろうと言われる。頼んだのは昨年夏。年賀状でも頼み、いつでもとは書いた。
 家のはすかいに新築が成った。出入りの業者さんに頼んでみると、すぐに安くで砂利を運んでくださった。棟梁への謝りはどうする。当たって砕けよ。
   霧島市 秋峯いくよ(68)




要介護レベル10

2009-04-04 12:52:29 | はがき随筆
 花壇に咲き誇るボケの花に気を取られ、階段で空足を踏む。 
腰が「ピッ」と鳴り、その場にへたり込む。
 この瞬間から、日常生活が一変した。「イタッ、イタタ」を連発して、トイレまでの15㍍の距離に20分を要する。くしゃみや笑いでも、顔がゆがむ。起き上がる激痛に耐えかねて、食事までも拒否する始末。
 満開のボケの花も、絞りのツバキの花さえも、健康を害するとうっとうしい。頭は激痛に満ち満ちて、世の中すべてが癇に障る。
 野山は春のピンク色。私は要介護レベル10ほどの灰色。
   出水市 道田道範(59) 2009/4/1 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真は源さん

シンバルを打つ

2009-04-04 12:49:14 | はがき随筆
 勤務先で学習発表会があり、たくさんの見物客であった。子どもたちは、練習以上に素晴らしく上手に演技をしてくれた。好評であり、子どものパワーに感服してしまう。
 職員の合奏もあった。生まれて初めてのシンバル演奏であった。音楽の先生に一から習った。演奏曲終了と同時に、シンバルを打つ。緊張してシンバルを鳴らした。
 子どもの評は「ハンチングがバッチリだったよ。格好がよかったよ……」と褒めてくれた。打つことに精いっぱいの私。心の温もりを頂いたと同時に、ほっとした一幕であった。
   出水市 岩田昭治(69) 2009/4/1 毎日新聞鹿児島版掲載