はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ゼロの地点

2009-04-28 11:46:47 | はがき随筆
 定年退職を機にすべての肩書きを捨て、ゼロの地点に立ちたいと思った。そこから世の中をじっくりと見たいと思った。
 そこで、まず見えてきたのは何と急ぎすぎて欲張って生きて来た、こっけいな自分の姿であった。目からウロコ、とはこのことだ。自分の欲を捨て去った時、初めて素直になり、自由な感覚で真実が見えてくるような気がした。
 だが、ひとつだけどうにもならぬものがあった。40年以上も上からものを言い続けてきた妻に対しては、なかなか癖が抜けず、ゼロの地点に立って、ものが言えないでいるのだ。
  出水市 中島征士(64) 2009/4/28 毎日新聞鹿児島版掲載


春たけなわ

2009-04-28 11:35:20 | はがき随筆
 「鹿児島県の北海道」と言われるこの里も、やっと春だけなわである。
 近くのセンダンの木が芽吹いている。もう降霜は無い。
 朝の目覚めがスムーズ。春のメロディー、今朝はラジオからビバルディの春、ベートーベンのスプリングソナタを聞いた。庭を巡る。チューリップ、芝桜、モクレン、コデマリ、ツツジなど、いろいろな花々。特に妻が20年来丹精のボタン。今年
は2週間程早く咲いた。今真っ盛りでひときわきれいである。
 耳を澄ませばヒバリのさえずりが聞こえる。今日も良い天気、与えられた仕事を頑張ろう。
  伊佐市 宮園続(78) 2009/4/27 毎日新聞鹿児島版掲載