はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

久々のひな飾り

2009-04-07 12:29:27 | はがき随筆
 今年、久々にひな壇を飾った。12年前、種子島に移住する際、娘の元に置いてきたのだが、狭くて出せないからと送ってきたのだ。その年に飾って以来だから、それこそ10年ぶりのご対面である。健在だった母が、大喜びしていた様子を思い出す。「私の小さいころ、この辺で飾ったのは、土で作ったおひな様じゃったやろなア」
 娘が2歳のころに買ったのだが、その娘も、今ではこの春中学3年になった娘を持つ母親である。孫娘はこのひな飾りを見ていない。じいさん、ばあさんが一緒に収まった写真でも送ることにしよう。
   西之表市 武田静瞭(72) 2009/4/7 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真は武田静瞭さん提供




心の温暖化

2009-04-07 12:16:31 | はがき随筆
 年度替わりに際し、中国からの研修員や留学生を招いて歓送迎会が行われた。総勢15人のささやかな宴。性別、年齢もまちまちで最初のうちは言葉の違いでしどろもどろ。時がたつに連れアルコールが効いてきて勝手にしゃべり、勝手に通訳をかって出る。奥の方では水割りの焼酎を水だとだまされて飲む中国人、こちらではビールをなみなみ注がれて干杯(かんぺい)、干杯と一気飲みをせがまれる日本人。狭い会場は笑いと熱気に包まれた。
 地球温暖化がうんぬんされる今日このごろ。こんな温暖化なら大歓迎だ。いや、中国式に歓迎! 歓迎!といこうか。
   鹿児島市 高野幸祐(76) 2009/3/6 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はトムさん





招待旅行

2009-04-07 11:58:43 | はがき随筆
 妹と姪たちの心のこもった関西方面の招待旅行を受け、妻と2人で久しぶりに新幹線を利用して九州路を後に本州へ向かった。プランに基づいて、まずは二条城を皮切りに洛西の有名寺社数社に参拝し心を清めた。殊に龍安寺の石庭には目を見張るものがあった。観光船から見る鳴門の渦潮は圧巻。七十数年前在住していた神戸の家屋周辺を訪ねたが、ビルが林立していて昔をしのぶ縁もなかった。知人とて誰一人見当たらず、正に今浦島の気分を実感させられた。旅の終わりは世界遺産に名を運ねた姫路城を見て、満喫した気分で幕を閉じた次第である。
   霧島市 有尾茂美(80) 2009/4/5 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はKYRIさん




犯罪被害者支援

2009-04-07 11:25:12 | かごんま便り
 独り身遺族の申請拒否――。1月15目朝刊社会面の見出しをご記憶だろうか。

 母を殺害された鹿児島市の40代女性が、単身者用の空きがないなどの理由で県営住宅への入居を認められなかったという記事だ。犯罪被害者等基本法が公営住宅への優先入居を保障し、国交省が災害被災者用住宅の転用など柔軟な対応を自治体に通知しているにもかかわらず、である。記事には県の“お役所的な”な対応を「法の趣旨に反している」と批判する識者談話も添えられていた。

 I週間後「一転して入居提案」の見出しとともに、県が初のケースとして目的外使用を認め、女性に入居を提案したことを伝える記事が載った。女性はその後、無事に入居し、新たな生活の一歩を踏み出したという。

犯罪被害者に施策の光が当たり始めたのはつい最近だ。加えて4年前に施行された基本法の趣旨すら徹底されているとは言えない状況である。

 例えば、犯罪被害者の心のケアや法律相談に応じる機関は各都道府県ごとにあるが、あくまでボランティアの任意団体。県内の犯罪被害者の自助グループ「南の風」の二宮通代表によると、今回のケースではそうした機関から有効な支援は得られなかったという。質的にも量的にも「犯罪被害者支援」と銘打つのにほど遠い実情は、もっと認知される必要がある。

    ◇

 心温まる報告を一つ。記事で窮状を知った読者から複数の寄付の申し出が毎日新聞に寄せられた。福岡本部に寄託された匿名の寄付には、米国の童話作家の、次の言葉が添えられていた。

 「生きていれば、落ち込むこともあります。状況を好転できると思ったら、ぜひ努力すべきです。でも、変えられないなら、それを受け入れて歩み続けるしかありません。何があっても『生きていることを楽しもう』という気持ちを忘れないで」

鹿児島支局長 平山千里 2009/3/6 毎日新聞掲載