書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

中田祝夫/竹岡正夫 『あゆひ抄新注』

2018年03月20日 | 人文科学
 富士谷成章以前の国学者は、そして成章以後の学者も、表記=仮名遣いのそれについてはべつとして、言語そのもの=語法は歴史に変遷するということへの認識にとぼしく(宣長も例外ではない)、たとえば和歌であれば、前後600年の隔きのある二十一代集を同列に扱って用例を引いたりしていると、著者は指摘する。ただし富士谷のみそうでないという(「解説 (四)『あゆひ抄』の記述組織とその語学説 (5)歴史的観察と共時的観察」同書70-76頁)。ではそれはなぜかという問題になるわけだが――。


(風間書房 1960年4月)