（あたし、ネ）辞め塾⑧

あたしね、ここんとこドンドン太ってきちゃってるでしょ、
トシもトシだしさ、出かけンのが億劫なのよ、

それがこの間、知ってる人から頼まれちゃって
講演会を聞きに行くことになったの

知った人とあんなとこで挨拶するのも煩わしいし
かといって会えば無視するわけにもいかないからさ
迷ったんだけど、行っちゃいました

「おや、珍しい。塾を辞められるそうですね、
　まー、もったいない」
なんて心にもないこと言われて、

辞めるワケなんて長々話しても仕方ないじゃん、

それでも少し話して
「ところで、辞めるのに御勉強ですか」だって
イヤミかい
で、取りあわなかったら立ち去ったわよ

○
講演？

んん、勉強になったわヨ。

東京で成功した塾の先生の
「我はいかにして、かく成功せしか」っての。

塾のセンセを前によくそんな話を威張って
できるわ、って思ってたけれど
ま、ド田舎で講演するから平気なのかな

こっちも自慢話として聞くんじゃなくて、他塾の場合、
と思えば、まあ参考にはなるでしょ。

それがさ、案外みんな考えてることって似てるウ

人間、自分の頭で考えてるなんて思ってるけれど
置かれた状況が考えさせてくれンのよね。

一種の物象化理論ね
・・・まっ、アタシとしたことが難しげな物言いをして。
シツレイ　いたしました。

役人が行う学校教育をボロカスに言ってたわね、
（教育は塾にしかできない）くらいの意気込みヨ
塾の連中を目の前にしてるからさ
盛り上げようってコンタンもあったんじゃないの。

○
（母親が男の子を育てる難しさ）を説いてたわネ、
アタシも賛成。

お母さんは精神的に孤立しちゃうことがあって
お子様の教育の妨げになることがあるのよね、
っていうか、結構、多いのヨそれが。

あたしなんか、ついきつく言っちゃうけれど、母親を
きちんと受け止めてあげられたら塾も成功したかもね。

○
帰り道、後ろにも講演を聞いたヤツが歩いてたの、
二人らしい、

「カミサンに聞いてもらうべきだったな」

いやそれは、あなたが奥さんに言いなさいよ、テメー
自分のカミサンを説得できないんじゃ講演聞いた価値なし！

大変でしょうが、まず自分をグレードアップしなきゃ。

もしかすると軽い冗談話だったのかなあ

でもね、冗談でも、ああ言っちゃった人間が
カミサンにきちんとお話しできると思う？

あたし、それってできないと思う。
だからジョウダンでも口に出しちゃいけないことヨ。

塾のセンセイさん方、しっかりしないと。

あたしもしっかりとだって？

もう辞めるから、いいの。
へへ～だ。