昔は酒癖の良くない人が、あちこちにおりましたね。
10人に1人程度の割合で、いたのではないでしょうか。
旅行会や懇親会など、必ず諍いがありました。周囲の人の誰彼なしに絡むのです。
酒癖の悪い人のことは、みんなよく知っているので、飲む段になると誰も近寄りません。
言ってみれば、「触らぬ神に祟りなし」って按配です。
私がまだ新入社員のころです。
その職場にも、有名な「絡み屋」のZさんがおりました。
普段は親切な人でした。私など、よく面倒を見てもらったものです。仕事も懇切に教えてくれました。
そんなZさんなのに、酒が入れば大変です。ガラリと人柄が変わってしまいます。
その頃、よく社内旅行がありました。ささやかな1泊旅行です。
旅行費用はみんなの積み立てでした。だから希望があれば、Zさんだけを除け者にはできません。普段はいい人なのですから、除外する理由がないのです。
とは言え、酒が入れば、いつだって「絡み屋」の本領が発揮されます。それが幹事の悩みでした。
そんな折りには、新入社員がうまく利用されます。
配属されて初めての旅行会のときです。例によって、近郊の温泉場へ行くこととなりました。
一風呂浴びて宴会になります。宴会がお開きになれば、麻雀で徹夜というのが、そのころの定番でした。
さて、その宴会が問題なのです。
幹事の命により、私の席はZさんの隣りに決められました。新入社員の私に、拒否権などありません。
そのころの私は、下戸でした。ビールならグラス半分が限度でした。それ以上飲めば、小間物屋になってしまいます。汚い話で恐縮ですが、吐いてしまうほどの実力でした。
Zさんの隣りの席を指定された時から、私は覚悟をしました。
宴会が始まるや否や、私はZさんと差しつ差されつです。
「飲めないってのは嘘だったのか。いい飲みっぷりじゃねーか」
Zさんも例によって、豪快に飲みました。飲み始めてすぐに、ひどく快活になりました。
さあ大変です。そのあたりから、急に絡み出すのです。
周囲は早くも、ドンチャン騒ぎの入り口です。みんなは安心して飲んでいます。
Zさんの相手は私です。絡む相手はまず私になるはず。その内にお開きになるという計算だったのでしょう。
私は覚悟を決めました。
「オレの酒が飲めねーのか!」 飲まなければ、こんな風景となるに違いありません。
よし!飲んでしまえ! これが私の覚悟です。ささやかで、つまらない覚悟ですが、下戸の私にとっては命がけでした。
Zさんは上機嫌でした。新入社員が相手なのですから、気分も良かったのでしょう。
それからが問題でした。何しろ飲めない私が飲んだのですから、当然の帰着です。私は吐きそうになってしまいました。
私はヨロヨロ立ち上がりました。眼が廻ってしまいました。
「どうしたんだ、おい!」 Zさんに怒鳴られました。
「気持ちが悪いんだ!」 精一杯言って、私はトイレに駆け込みました。大変な状態でした。
Zさんは機嫌をそこね、私を追ってきました。
「おい!逃げるのか!おい!」 凄い剣幕だったと思いますが、私は息も絶え絶えでした。
その私を見て、Zさんは驚いたそうです。(あとで聞いた話です)
「飲めねークセに、飲むな!」 そう言いながら、Zさんは私の背中をさすってくれました。
このクダリは、二人を追ってきた幹事から、あとで聞いた話です。
私を抱えて部屋へ連れて行ってくれたのも、Zさんでした。水を飲ませてもくれました。
あとのことは覚えておりません。
これを機会に、Zさんの酒癖に関する評価は、少し変わったようです。私の手柄だったと褒められましたが、むしろ私は、Zさんには感謝の気持ちがイッパイでした。
いつのころからか、酒癖の悪い人を見かけなくなりました。上手な酒の飲み方になったようです。その分、情も浅くなったのかもしれません。
ずっと以前に、Zさんは亡くなりました。懐かしい人の一人です。
休んでいた別館の「到るところ青山」を、また復活させました。
いつまで続けられるか分かりません。
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味わい深いお話です。
人のぬくもりを、しみじみと、感じました。
別館にも、行かせてもらいました。すごいです!
その活力、私もあやかりたいです。
朝から、ありがとうございました。
別館への私のポチも、有効なのでしょうか?
絡まれ酒、私もありました。翌日顔を合わすので、なんとなくお互い気まずい思いを経験した事もあります。
だから、お酒の勢いで、仕事の話はしないようにしたいですね。特に近年はどの仕事も厳しい状況にあり、お酒が入るとどうしても相手の非をあげつらい、場が何ともいやな雰囲気になってしまいがちです。
そんな昨今のせいなのか、仕事帰りに同僚と一杯、ということも少なくなってしまいました。
別館にまでご訪問をいただき、さらにはポチまで賜り、ありがとうございました。
いただいたポチはとても有効です。
今後ともよろしくお願いします。
私のエネルギーも実はイッパイイッパイなのですが、自分を叱咤する意味合いもあってやっています。
睡眠不足になったりもしますので、果たしていいのかどうか、悩んでおります。
昔と比べ、今の若い人たちは賢くなっていて、酒の飲み方も上手になりました。
酒の席では、踏み込んだ話題は避けるようです。
絡む人の気持ち、分かる気もするのですが、「そこまで言わなくとも・・・」と思ったりします。
昔は酒乱と言われそうな人が多かったですね。
暴力沙汰まで行きそうな雰囲気がありました。
今は仕事に余裕がなくなりました。
せめて酒でも飲んで・・・と思うのですが、すぐに仕事の話になってしまいます。
私は自分を縛るルールを密かに作りました。
「酒の席は部下のためにあるので、私の鬱憤晴らしと席ではない。とにかく話を聞こう!」
そんな思いが強くありました。
しかしそれでいて、私自身も十分に開放されました。
「酒はいいなあ」と、今も思っております。
要は飲み方ですね。
お説教をするクセの上司がおります。
部下が可哀想です。
絶対に止めるべきですね。
ひよどりさん
いい試練?でしたね。
この経験は生かされているのでは・・・
かわいいお酒の席が好きです。
別館にも行ってきました。
頑張ってください。
私は少ししか飲めない人と一緒になっています。飲んでもいいけれど、だらしなくなるのはイヤですね。でも、アルコール類は嫌いじゃないのですよ。私もチビットだけしか飲めませんが、酒席は嫌いじゃないのです。
どうなることかとワクワクしながら!?読みました。
小間物屋、またいい表現を教わりました。
色々絡み酒の経験しましたが。
我が父親は典型的でした。
子供である兄二人と私を、向かいのテーブルに座らせて。
延々と講釈を述べておりました。
母や義姉はさっさと逃げてしまって…
酒乱は、かつてはよく聞きましたね。私は酒席は嫌いではないですが、若い時も自分を失くすほど呑んだことはありません。
会社の旅行会には、奥さんがついてくる人が居るそうです。大酒乱のためお酒の量を監視する(あるいは呑ませない)ためです。そんなひとが居るんだと、夫が言っていました。・・なかなか大変ですね。
別館にはこれから潜入してみますね~(笑)
飲み過ぎて友を失ったことは覚えていませんが
飲んで多くの友を得ることは以外とありました
飲めない人には苦しいお酒ですね
別館ポチしました
しかし、分かれると、途端にふらふらになったりします。
ある人にいわせると、そういう酒は飲まないほうがいいと・・・
色々ありましたね。
色々な人がいて・・・
今、考えると楽しいのですが・・・
そのときは大変なことも・・・
ほろ酔い気分が、最高です。