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崩壊した夫婦が創り上げた至福の音楽

2013-01-07 11:38:35 | 音盤ノート
Cocteau Twins "Four-Calendar Cafe" Fontana, 1993.

  ドリーム・ポップの祖コクトーツインズの7作目。インディーズの4ADからメジャーのFontanaへ移籍しての初の作品だが、"Blue Bell Knoll"(参考)の路線を踏襲している。そのキャリアの中で評価の高い作品ではないが、そのスタイルは完成されており、大きく外す内容というわけでもない。

  多重録音された神々しい女性ボーカルと、エフェクトを多用した落ち着いたバックサウンドという組合せは4AD時代と大きく変わったわけではない。ちょっとした変化を述べれば、以前は金属的に響いたギターの音が、エコーを深くしてより柔らかくぼんやりとした響きに変わったことと、前作"Heaven or Las Vegas"(4AD, 1990)より地声少なめファルセット多めというボーカルの配分になっていることぐらいか。かすかに残っていた毒気も完全に消失し、とにかく柔和で暖かい清廉な世界が展開されている。自らが築いた手法をより洗練させて展開した円熟の作品と言えよう。

  夫婦者を含むこのトリオ、子どももできて安定し、この調子で何年も続けるのかと当時は思われていたが、この後アルバムを一枚残して1997年に突如解散してしまった。幸福感しか伝わってこないこのアルバムの製作の裏で、夫のギタリストは麻薬中毒、ボーカリストの妻は精神不安定になってセラピー通いという状況に陥っていたらしい。すでにアルバム完成後には夫婦関係は崩壊していたとのこと。わからないものである。
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