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タイトルの割には穏健。そこそこの成果を目指す普通の人向け

2018-01-06 10:05:47 | 読書ノート
エリック・バーカー『残酷すぎる成功法則:9割まちがえる「その常識」を科学する』橘玲監修, 竹中てる実訳, 飛鳥新社, 2017.

  自己啓発書。米国人ライターのブログのまとめ本で、そのアドレスはbakadesuyo.com。著者が日本語を習っているときの自己紹介のセリフ「バーカーですよ」をもじったものらしい。原書はBarking up the wrong tree: The surprising science behind why everything you know about success is (mostly) wrong (HarperOne, 2017)である。

  採りあげられているトピックは、「学校の成績が良いと成功しやすいか」「良い人はカモられるだけなのか」「努力したほうがいいのか見切りが早いほうがいいか」「人脈は多いほうがいいのか」「自信をもつことにデメリットはないか」「仕事と家庭をどうバランスさせたらよいか」など。通常の自己啓発書とは違って──といっても個人的にはほとんど読んだ経験はないのだが──科学的検証を得た証拠を挙げて論を進めている点が特徴であるとのこと。しかし、けっこう脱線話にも頁が割かれていて、それがトピックと微妙にズレていたりする。しかし、それでも脱線話が面白いので許せたりもする。

  家庭や友人を省みずにがむしゃらに働いて成功せよというアドバイスではない。とはいえ、けっこう難しい生き方を要求しているのも確かだ。外交的なタイプよりは内向的なタイプのほうが成功しやすいらしい。他人に振り回されずに、孤独に努力を積み重ねることができるからだ。彼らは努力によって成功に必要なスキルを磨くことができる。しかしながら、冷たい独りよがりな人間であってもだめで、他人に親切を施して良好なネットワークを保て、ともアドバイスされる。例示される成功者は全然暖かい人格者ではなかったりするので説得力は微妙なのだが、著者としては人名事典級の成功者ではなく、もっとささやかなレベルの成功を勧めているつもりなのだろう。

  邦題にあるような残酷な知見は特に無かった。ポジティブ・シンキングの弊害なんかここ十年ぐらい言われてきたことであり、主張の本質的な部分は特に目新しくないだろう。エビデンスやエピソードを楽しめるかどうかだな。
コメント
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