雑感・・・・「躍起」

2009-07-22 12:05:41 | 「学」「科学」「研究」のありかた

鬱陶しい天気に逆戻り。話も鬱陶しい話で恐縮。

最近やたらと目に付くのが「長期優良木造住宅の普及」なる名の下で行なわれる各種の講習会・研修会の多さ。
何かやみくもに「普及」に「躍起」になっている、そんな感じがする。

「長期優良住宅」とは、例の「200年住宅」。木造住宅を「長寿命にするための活動」とのこと。
残念ながら、なぜ(戦後の)日本の木造住宅が短命になったか、その理由・原因の分析・解析がなされた、とは聞いたことがない。
それでいて、どうして長寿命化の方策が提言できるのか、不思議きわまりない。

どんな講習・研修がなされるのか、案内の内容を見て驚く。
何のことはない、これまでの木造建築にかかわる(法令の)諸規定の解説が主。何ら目新しいことはない。壁量計算の仕方、壁の均衡配置を確認する四分割法の計算の仕方、仕口の耐力計算法、・・・・等々。
要するに、「木造建築にかかわる現行法令の諸規定普及の講習会・研修会」なのだ。

なぜ、いまさら?
察するに、あちこちで起きている現行法令規定とその考え方への「反旗」に敏感に反応しているのだと思われる。
なぜ「躍起」になるか。
それは、自らの「権益」を護るためだ、ということ以外に理由が見付からない。

現在そういった考え方が存在し得ているのは、それが、法律の名の下で「権威」を持っているからに過ぎない。
法律でなかったら、それら諸規定の非科学的、非論理的な内容は、追求されたらひとたまりもない。

つまるところ、「長期優良木造住宅の普及」なる名の下で行なわれる講習会・研修会は、より法律を「普及」して、諸規定の非科学的な、非論理的な内容の「安泰」を図ろうという活動以外の何ものでもない。
このように「躍起」になるのは、逆に見れば、「危機感」の表れなのかもしれない。


上掲の写真は、気分を明るくしたいので、晴天のときのキアゲハ。花はモントブレチアという洋物。


[註]
なお、200年住宅の前の100年住宅について、茨城県建築士事務所協会でチームをつくり検討会を持ち、
『木造住宅読本:木の住まいをつくる前に・・・・・日本の建物づくりの技術に学ぶ・昔、住まいは丈夫で長持ちだった』
という小冊子をつくった。
内容は、当ブログで書いてきたことがほとんど。

その目的は、日本の木造建築について、巷間の「情報」に惑わされずに、「本当のところ」を知ろう、ということ。対象は、専門家、一般の人(こと木造に関するかぎり、専門家は一般の方々と同じである)。

蛇足ながら「目次」を以下に紹介。

目  次(頁省略。図版込み本文74頁、付録16頁)

はじめに
 1.住まいの基本の形・・・・住まいを何のためにつくるか
 2.木で住まいをつくる

Ⅰ 「木」と「木材」の性質を知っておこう・・・木で建物をつくるために
 1.樹木の成長の仕組み・・・・樹木は生きもの
 2.白太、赤身の違い
 3.木を乾燥するとは、どういうことか・・・・木材の生態
 4.木材の含水率とは
 5.木材の経年変化・・・・老化、風化
 6.木材の問題点・・・・腐朽と虫害、収縮・捩れ・干割れ、耐火性

Ⅱ 木で住まいをどのようにつくってきたか・・・人びとの知恵-1 
 1.竪穴住居・・・・原始的な木造軸組工法の住まい
 2.竪穴住居から掘立柱の軸組工法へ:上屋と下屋・母屋と庇
 3.掘立柱から礎石建ての軸組工法へ
 4.屋根のつくりかた:又首組・合掌造、和小屋・束立組、洋小屋・トラス

Ⅲ 丈夫な木造架構・建物をつくる技術の歴史・・・人びとの知恵-2
  礎石建ての特徴・・・・軸組の形を安定させなければならない
 1.架構の基本形
 2.斗拱(ときょう)と長押(なげし):中国式架構の弱点と対策
 3.二重屋根の発生と新しい架構法:桔木(はねぎ)による小屋組
 4.貫で軸組を縫う・・・・大仏様
 5.住宅的な建物と貫を使う架構法
 6.通し柱による建物の多層化
 7.実用的な多層建築:土台、通し柱、差物を活用した城郭建築
 8.書院造の普及
 9.住宅建築と差物・差鴨居-1
10.住宅建築と差物・差鴨居-2
11.まとめ・・・・一体の立体に組上げるための工夫の歴史

Ⅳ 建物にかかる力に、どのように対応してきたか・・・人びとの知恵-3  
  はじめに
 1.風と建物
 2.地震と建物
  1)地震で生じる力の正体:慣性
  2)礎石建て式建て方(礎石に載せるだけ)の建物と地震
  3)掘立て柱式建て方(基礎・地面に固定)の建物と地震
 3.地震や風への対し方:かつて人びとが考えてきた架構法の基本

Ⅴ 水、光、熱:「住宅設備」と木造のすまい・・・暮しやすさとは何か 
 1.火と水と暮し
 2・空気と暮し

Ⅵ 丈夫で長持ちする住居のために・・・・つくり方と建物の健康管理   

おわりに 建て主と設計者のマナー・・・・心和む町並をつくるために

付  録 現在も使える継手・仕口集・・・付録1~16


事務所協会会員には配布されましたが、余部があるかどうかは分りません。
なお、当方には、そのままプリントアウトすれば製本できる形で原稿が保存されています。
アドレスをご連絡くだされば、添付ファイルでお送りできますが、全部で120MBほどの容量になります。可能容量もご連絡を。それにより、何回かに分けて送ります(容量にもよりますが、3~4回が普通です)。

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