construction,engineer そして・・・・

2011-09-28 11:53:40 | 建物づくり一般




[リンク先追加 17.42][リンク先追加 29日 14.11][文言追加 30日 6.50][リンク先追加 30日 9.50]

しばらく間があきました。
いよいよ大詰めで、ここになってもまだ、ああでもない、こうでもない・・・の毎日です。


もう大分前からかかっていたある社会福祉施設(心身障碍者の居住施設)の増築仕事。
最初は30年前のこと。そして今、当時の「基準」による狭隘な面積を緩和すべく、隣地を取得して増築し、個室化を進めることになった。
しかし、現在の敷地に接するその隣地は、現在地から2mほど下がり、そこからさらに下るかなりの斜面。元は、山肌なりにつくられていた段々畑様の果樹園。
ただ、地盤は安定している。

増築建物を地盤にそって建てれば問題ないわけですが、そうなると、既存の建屋とは、床面が大分下ってしまう。
これは、こういう性格の建物の場合、運営上、決定的な問題点。
数多くのスタッフをそろえない限り、目配りがきかなくなるからです(現在、居住者1にスタッフ1の割合、それでさえ大変!)。

そこで、増築の建屋も、現在の床面にほぼそろえて建てることに。
ということは、床面を上げる手立てを講じなければならない・・・。

こういう場合、最近では、盛土をするのが普通。そうすれば、たしかに地面がそろう(今、東北の津波被災地での高台移転計画でも、当たり前のように「切土+盛土」が語られている!)。
しかし、切土はともかく、盛土したところには建てない
これは、斜面に建てる場合の往時からの鉄則、と私は理解しています。
   註 「平場でなければ建てられないか?」参照 [追加 30日 9.50]

そこで、最初に考えたのは、鉄骨で、建物の載る人工的地盤を清水寺方式でつくれないか、という案。要するに、柱と横材で立体格子の構台をつくる(下記で簡単に紹介しました)。
現地は資材の搬入も容易でない場所。
できるだけ工場加工を少なくして、部材を現地で組立てるのが、仕事が進めやすい、それには清水寺方式:懸崖造:が向いている、と考えたわけです。

   懸崖造・・・・斜面に建てる    [追加 17.42]

しかし・・・・・。
鉄骨では、柱に貫が取付く箇所に相当する位置ごとに柱を継ぐということになり、その継手・仕口を見ると、どう考えても大仰な仕事になる。
要するに、多段ラーメン架構、ということになるかららしいです。
それでは、当初の考え方:できるだけ工場加工を少なくして、部材を現地で組立てる:にもとる。
   木造で可能な方法が鉄骨でできない理由が、よく分からない。
   というより、懸崖造の強い理由が、現在の「理論」では解明できていない、ということかも・・。

そこで、現在進めているのは、横材を方杖で支える、という案。
この場合も、極力現地組立てが可能なように部材を分解。

どうも、現在の鉄骨架構は、合理化の名の下に、工場加工を増やし(したがって大型の部材になる)、それを立ち上げる、というのが主流のよう。これが大きなクレーンが使われる理由。
私は、かなり前から、これはムダ、合理化の名にもとる、と考えています。「理」に「合わない」からです。
大きなトレーラーが、工場で加工された大きな部材を一つ、あとは空気を載せて走っているのをよく見かけます。私にはムダに見える。
   茨城や埼玉、千葉などには、鉄骨加工工場が多い。
   かつて、東京下町(江東区など)にあった工場が、70年代以降、近県に移った。
   何をつくっているか。都会の建物の鉄骨架構。
   そこから、夜ごと、大きなトレーラーが都会に向う・・・。
    余談
    私が受けた「都市計画」の教授の、都市計画を志した理由。
    教授が学生時代、駅で電車を待っていると、貨物列車がすれ違った。南行きと北行き。
    どちらも荷物は石炭だった!
    この「不合理を解決するのは都市計画」だ、と思ったからだそうです。
    でも、その「都市計画」の今は?


幸いなことに(?)この敷地は、大きなクレーンも大型トレーラーも入れない。
だから、小さな部材(小型~中型車で運べる)を、現地で組立てることができる(小さなクレーンで可能)。
ことによれば、往年のように、人手ででもできる。そうすれば、仕事も丁寧に念入りになるかもしれない・・・。私はそう思っています。ハイ・テクよりもロー・テクのすすめ。


ようやく、何とか目途がたってきました。
そこで、ふと気休めに、先に紹介した‘BRIDGES’を見ていたら、興味深い写真と絵が載ってましたので紹介します。それが冒頭の図と写真です。
図は、BRIDGES の著者 David J Brown 氏の直筆のようです。

いずれも、19世紀にイギリスの鉄道敷設にかかわったブルネル(後掲註参照)がつくった鉄道橋のいくつかです。
使われている材料は timber つまり木材
素晴らしいです。驚嘆します。

なぜ凄いか。
つくられたのは、19世紀初頭です。「構造力学」誕生以前のことである、ということ。
もちろん、トラスの「理論」もなかった頃。
今の世の中、「工学理論」に拠らなければ設計ができない、と考える人が増えています。
それは、何度も書いてきているように、「学の誕生」の背景を忘れた「妄信・盲信」に、私には思えます。
はじめに学ありき、ではない」、ということです。
ワットが鋳鉄製の柱と梁で7階建の建物をつくったのも、「構造力学」誕生以前です。  [文言追加 30日 6.50]

   ブルネル Isambard Kingdom Brunel(1806~1859)
        鉄道会社の engineer として、鉄道敷設にかかわる各種構築物、鉄道車両
        さらには蒸気船の製作にもかかわっている。
        engineer と表記するのは、明らかに(現在日本の)「技術者」とは異なるからです。
        なお、この点については、アンリ・ラブルースト・・・・architect と engineer で触れています。

        ブルネルよりも後に活躍したマイヤールも、こういう engineer の一人と考えてよいと思います。
        マイヤールの仕事については、下記で紹介しています。
        「コンクリートは流体であるである」 [追加 29日 14.11]

        BRIDGES に載っている Brunel の写真と解説を転載します。
        


BRIDGES には、他にも興味をひく写真や図がありますので、いずれまた紹介させていただきます。

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