先回の補足・・・・「在来工法」架構図の仕口「い」の合理的な「納め方」

2009-06-28 00:24:22 | 日本の建築技術

「註記追加 7.22][文言追加 7.27、改訂10.01]]

先回、「在来工法」の架構図を載せましたが、そのうちの図28の「い」の箇所の仕口について質問がありました。
この図は、大分前に、私が「危険な仕口」として写真を例示した箇所に相当します(下記参照)。その写真を、上に再掲しました(正確に言うと、写真は、図28の「は」に同じですが、上階の柱があるかないかが違うだけで、基本は「い」と同じです)。[文言追加 7.27、改訂10.01]

   註 「『在来工法』は、なぜ生まれたか-1」

こういう箇所は、つまり、下階の「柱」が「梁」を受け、その上に「桁」が載るような納めになる箇所は、往々にして妻面でも起きることがあります。
そのような場合、「図28」のような方法は、「真壁」つくりでは見苦しくて使えません。
第一、「桁」は「柱」の「枘」で取付くことになりますが、まともな「枘」をつくると「桁」の「枘孔」が簡単なことで飛んでしまいますから、「小根枘」にすることになります。当然、確実ではありません。

   註 なお、似たような場面で、   
      下階には「柱」がなく、「桁」が先行して「梁」が架かり、
      そこに上階の「柱」が立つ、という場合もあります。
      そのとき、図28の方法でゆけば、
      「桁」に小口を見せて「梁」が載り、「梁」に「柱」を立てる
      納まりになるのではないでしょうか。

私が大工さんに教わったこのような箇所の納め方は、右図のような方法で、小口を見せません。

この方法は、「桁」の小口に、「胴附」を設けた「蟻」を全断面に刻み、先ず下階の「柱」の所定位置に架けます。
この段階では、かなり危なっかしい状態です。なぜなら、「梁」に荷が掛かれば多少でも反りますから、小口は「柱」からはずれようとする(浮き上がろうとする)からです。
そこへ、[「胴附」を設けた「蟻」型]の逆型を所定寸法で側面に刻んだ「桁」を落し込み、「柱」の「長枘」へ納めます。
こうして「桁」が「梁」に納まり、下階の「柱」に取付くと、下階の「柱」と「梁」「桁」は一体になり、「梁」も安定します。小口が「桁」で押さえ込まれるからです。
当然、見えがかりもよくなります。
その気になって見てみると、昔の建物ではよく見かける納まりです。

これまでの私の経験では、架構は安定して、金物の補強はまったく不要です。

   註 「註記追加 7.22]
      なお、小口を表す納め方もあります。
      「梁」を、前面にまで持ち出す方法です。
      その場合は、いわゆる「折置」になり、仕口は簡単です。
      すなわち、「梁」を「柱」に「長枘差し」で載せ、
      「桁」は「梁」に「渡り腮」で架けます。
      「梁」の小口を堂々と表わすのです。
      平滑な大壁にするには適しません。
      また、
      倉・蔵などで「棟束」を立てる「桁」(「牛梁」「地棟」などと呼ぶ)を、
      「束」なしで架けたいようなときに、
      「桁」にかかる荷重で仕口がはずれにくいように、
      両妻の「梁」に「桁」を「渡り腮」で架けます。
      「渡り腮」の方が、「蟻掛け」よりも はずれにくいからです。
      「桁」の小口が、妻面に堂々と表れます。
      蔵でよく見かけます。

刻みは、「胴附」を設けた「蟻」型を精度よく刻めばよく、難しい仕事ではありません(機械加工が可能です)。

なお、この納まりは、「は」の箇所にも使えます。

「構造用教材」のような納まりが行なわれるようになった理由は、軸組には「耐力壁:筋かい」さえあれば他はどうでもいい、という「誤解」が広まり、加えて、すべて隠すつくり:大壁つくりが増えたからと考えられます。

   註 「ろ」は「三方差」を使えば、きれいに、確実に納まります。

「名称」については、「胴附」付「蟻掛け」+「蟻落し」と言えばよいのではないでしょうか。
私は、名称、呼称、俗称ではなく、設計図には「分解図」を描くことにしています。
呼称は、人により、地域により異なり、図なら確実に伝わるからです。
コメント (5)
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