「耐震診断」と「耐震補強」・・・・この場合はどうなる?

2007-10-18 21:44:28 | 地震への対し方:対震

 ここ2回ほど「耐震診断」「耐震補強」について書いたが、ふと、もう40年近く前に設計したある建物を思い出した。いわば「常識はずれ」の構造計画の建物だからだ。この耐震診断をしたら、どういう「判定」がでるのだろうか?

 上掲の図と写真がその建物。
 田んぼを埋め立てた地盤のよくない敷地に建つ小学校。
 その平屋建ての低学年教室棟は、教室間の200mm厚のRC隔壁(@8000mm)上に、軽量鉄骨の母屋:2C-150・50・20(t3.2)を@800mmで架け渡し、木毛板20mmの野地板を張って鉄板瓦棒葺きとした構造。今ではまずやらないであろう廉い方法。
 教室の中庭側の回廊:吹き放しの渡廊下は鉄骨造。
 それゆえ、教室の南北面とも全面開口(出入口を除き腰付)になっている。
 つまり、長手方向には壁がまったくない。多分、耐震専門家からはクレームがつくのではないか。

 写真は上から、前庭から見た低学年教室棟、右側の屋根がプレイルーム。
 次は、低学年教室の北棟~南棟間の中庭。吹き放しの回廊がまわっている。
 下は、北棟の教室内部、右手に回廊ごしに中庭が見える。
 
 1960年代の計画だから、徹底してローコスト。そうでありながら、教室の開口部を出来るだけ広くとりたい。そういう点から考えられたのがこの構造。
 構造計画は、増田一真氏。増田氏とはもう半世紀近いお付き合い。

 床には土間コンクリートが打設される。土間コンは、単に床下地のコンクリートとして扱うのが普通だが、それをも構造に利用しようというのがこの計画の要点。 各隔壁は、地面に横たわるコンクリートスラブから跳ねだした片持ちスラブである、という考えである。
 ただ、通常の片持ちスラブと違うのは、荷重、つまり地震による力は左右双方からかかること。
 そうやってできたのがこの建物。

 二度ほど改修(海岸のため、鉄部が容易に錆びてしまうため、スチールサッシをアルミに変えたり、屋根を変える改修)が行われたようだが、「耐震補強」については情報がない(というより、最近ご無沙汰している)。
 設計図を次回に掲載。

 なお、この設計の共同設計者の岩田荘一氏は、この建物の竣工の8年後、40歳の若さで世を去った。図と写真は、彼の追悼設計図録からの転載である(原版は「近代建築」1972年2月号)。

  註 1月17日に載せたトラス小屋は、この小学校に隣接の
     幼稚園の建物(配置図参照)で使ったもの。
    また、3月3日の「化粧」の例の一つは、
     この小学校の高学年教室棟3階にある音楽室の内部。

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