近江八幡・・・・その町並と旧・西川家-4:開口部

2007-07-04 03:36:56 | 建物づくり一般

 西川家の道路側の開口部の建具詳細を紹介する。
 一つは、主出入口に設けられている「はね上げ戸」。もう一つは、「店」の「摺り上げ戸」。
 通常の「修理工事報告書」には、調査がなされていても、建具の詳細まで報告されることは滅多にない。
 しかし、「西川家」の場合、創建時とは違う形式・形体に改造されている場合には、現場に遺されている痕跡と、同時代の継承と考えられる事例を参考に、仕口に至るまで、創建時の姿に極力再現するという努力がなされている。

 西川家は主屋と土蔵とに分け調査がなされているが、主屋担当の滋賀県教育委員会文化財課主任技師池野保氏(今回紹介の詳細図等の作成者である)、土蔵を担当された同課係長大塚博氏ら(いずれも当時)の調査にあたっての熱意・執念には、まったく脱帽するしかない。
 このような貴重な資料が、報告書として公刊されたことは、おそらくこれが初めてではないだろうか。

  註 私は、「文化財建造物修理工事報告書」は、
    報告書レベルの公刊ではなく、より広く、
    一般の技術書の一つとして公刊されることを願っているが、
    残念ながら、現在のところ、一部に知られているだけである。
    今回、修理工事報告書から転載の図を
    多く掲載・紹介させていただいているのは、その「空隙」を
    多少なりとも補えれば、と考えるからである。

 さて、「はね上げ戸」は、修理時には格子戸の片開き戸になっていたが、痕跡から「はね上げ戸」であることが分り、復原された。痕跡等の説明は、上掲の「吊り方」解説図にある。

 「店」の「摺り上げ戸」は、開口を上下二段の板戸に分け、上段の戸は、摺り上げて内法上部につくられた収納部に引き寄せ、下段の戸は、摺り上げて内法貫の下端に設けた回転式の留め木によって落下を留める。
 戸の収納のため、2階「板の間」では、開口部の窓台部に「戸箱」が室内側に飛びだして設けられている。
 2階が畳敷きの箇所では、この「戸箱」を設けなくてもすむように、「上げ戸」を3枚に分割している(外部写真で手前:南側の柱間)。
 「上げ戸」の戸溝はドブで、戸の取付けは、一部に深く彫った溝の箇所で「やりかえし」で納め、後に埋木をしている。

 「摺り上げ戸」の建具の組み方詳細も紹介したいが、画面が大きくなりすぎるので、今回は省く。 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする