引き伸ばしレンズ

 写真用のレンズと云われれば、ほとんどの方が写真を撮るためのカメラに着いている(あるいはカメラに着ける)レンズを思い浮かべることでしょう。それは正しい。でも、実は他にも写真用のレンズがあるのです。それはプリント用レンズです。銀塩写真、つまりネガフィルムからプリント(引伸ばし)を作る際に使用する引伸ばし機に着けて使うレンズです。

 写真がフィルム(アナログ)からデジタルに移行して久しい今となっては、暗室の中で、引伸ばし機で露光し、薬品液を使って現像する「プリント」を知らない方も多いことと思います。写真のデジタルデータを使って写真をプリントするインクジェットプリンターにはレンズは着いておりませんが、暗室でプリント作業をする時には引伸ばし機と引伸ばし機用のレンズが不可欠なのです(ネガと同じサイズのコンタクト(密着焼き)なら引伸ばし機は不要)。

 世の写真愛好家が銀塩からデジタルに移行してもう15年程になるでしょうか。この15年の間に引伸ばし機はどんどん廃棄され、ついには使う人もいなくなってしまったということなのでしょう。当然引伸ばし機用のレンズも不要になりました。

「フジノン 引伸ばしレンズ EX50mmF2.8II」販売終了のご案内」
http://ffis.fujifilm.co.jp/information/articlein_0059.html
 最後まで残っていた50mmF2.8も終わりです。印画紙を使って写真をプリントしたくてもできない時代がついにやってきたのです。フィルムを使うカメラは小さくて保管場所をとりませんのでまだかなりの数が残っていますが、引伸ばし機はでかいし、そもそも暗室が必要ですから早々に消えてしまいましたね。

 でもね、LPからCDに替わり30年がたった今頃になってLPの生産・販売数が伸びてきたり、レコードプレーヤーの新製品が登場したりもしておりますので、あと20年もすると銀塩写真もリバイバルってこともありますか? いや、ないでしょうね。音楽はLPがあってプレーヤーがあれば再生できますが、銀塩写真のためにはカメラとフィルムと暗室と引伸ばし機と現像液が必要です。フィルムの現像タンクも、印画紙用のバットも必要ですね。余りにもたくさんのものが必要ですから、リバイバルはないでしょう。ただ、フィルムで撮って、現像して、スキャンしてインクジェットで出力と云う楽しみ方は有りかな?


 と云うわけで今日の一枚は、我が家に住み着いて40年になる引き伸ばし用レンズ、EL-Nikkor 50mm F2.8。引き伸ばし用レンズとしては最もスタンダードなモデルの一つです。10年前に製造販売は終わっていますが、優れた光学性能故にプラネタリウムの投影用に使われたり、現在も工業用レンズとして同じ光学系で生産が続けられていたりもするようです。
http://www.nikon.co.jp/channel/recollections/15/

注:大手のメーカーによる製造・販売は終了しましたが、全くなくなってしまったと云う訳ではありません。
 
毎週撮影・掲載している「恩田の森Now」に、ただいまは9月2日に撮影した写真を5点掲載いたしております。夏の終わりの森の様子をどうぞご覧いください。
blog「恩田の森Now」 http://blog.goo.ne.jp/ondanomori

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