頭の中は魑魅魍魎

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どんでん返されたいなら『悲しみのイレーヌ』ピエール・ルメートル

2015-11-09 | books
ミステリー好きすべてが腰を抜かしたフレンチ・ミステリー「その女、アレックス」 カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズのそっちは第4作だった。そしてこっちは第1作。前評判は高いけれど、どうだろう。

女が惨殺された。目は焼かれ、口からは気管がはみ出て、頬には釘が打ち込まれていた。壁には「わたしは戻った」と血で書かれていた。非常に凝った殺人事件。遺体があった部屋を借りた男を探す捜査は困難だった。すると別の殺人事件との関連が見つかった。そっちも凝った殺人事件の現場だったカミーユに執拗に迫るマスメディア…

うううむ。ネタバレを避けて、これ以上は書けない。(一番下にネタを書いておきます。皆さんのために、というより自分の備忘録に)

二部構成になっていて、第2部(全部で460頁のうち、407頁から始まるので短い)になって、それまで読んできたことがずどーんとひっくり返される。まさかこういうネタだったと気付いた人はいないだろう。

作家とは引用文から引用符を取り除き、加工する者のことである。 ロラン・バルト

という言葉が冒頭にある。実はこれが結構重要なヒントになるのだけれど、読んでいるうちに忘れる。

タイトルはあまり良くない。カミーユの奥さんの名前がイレーヌで妊娠中。今にも生まれそう。「悲しみのイレーヌ」というタイトルからああなるのだろうなと予想してしまう。原題はTravail SoigneでTravailはトラヴァーユ(昔そういう転職用の雑誌があったっけ)で仕事という意味だそう。Soigneは巧妙というような意味のようだから(仏和辞典あったはずなのに見つからない。捨ててしまったか?)、「巧妙な仕事」とか「うまい仕事」あるいは「抜け目のない仕事」「巧みなるわざ」というような邦題の方が良かったのではないだろうか。それではつまらないというのなら「凝り過ぎた現場」というタイトルはどうだろう。(そういう何かを示唆してるっぽいタイトルをつけても、オチは全く想像できないはずである)

再度、「その女、アレックス」を読みたくなった。解説の杉江松恋さんが書いている通りだ。

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

今日の一曲

作者はピエール。と言えば、ピエール瀧。と言えば電気グルーヴの"Shangri-La"



では、また。

※ネタバレ

1.殺人犯は、ミステリーの名作と同様の殺人現場を何回も再生していた。
2.カミーユの奥さんイレーヌは殺害される。
3.犯人は自分が書いた、無名のミステリーの殺人現場も再現しようとした(そうすれば、自分の本は売れるだろう)
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