頭の中は魑魅魍魎

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『清須会議』三谷幸喜

2012-08-06 | books
「清須会議」」三谷幸喜 幻冬舎 2012年

信長の死の後、残された者たち。何を考えどう行動するのか。本能寺の変直後の会議を中心に描き、その後の柴田勝家と秀吉の賤ヶ岳の戦いを予感させる。

うーん。悪くないんだけれども、私にはあまり面白さを見出すことが出来なかった。

1. 歴史的アクロバットのような壮大なフィクションがあって、読む者をのけ反らせるわけではなく、

2. あまり馴染のない人物にスポットライトを当てて、「そんなことがあったのか!」とうならせる方向に向かうわけでもない。

3. 小説のはずなのに、舞台の台本のような感触がする。モノローグが多いのと、現代的な語り方をするのがかえって小説的な読み方をしにくくさせているように思う。

三谷幸喜らしいのは、この台本を基にして役者が台詞を読み演技するときっとすごく面白い舞台、映画になるんだろうということ。これを読みながら、具体的に自分がフィットすると感じる役者に脳内で演じさせることができる人は、十分に楽しめるんだろうと想像する。(私には無理)

関ヶ原の戦いで本物の家康は死んでしまったので、家康の影武者が本物に代わって「家康」を演じ続けていくという超弩級のアクロバットを、歴史的に「もしかすると本当にそうだったのかもしれない」と思わせる証拠を織り交ぜた傑作、隆慶一郎の「影武者徳川家康」のことを思い出した。

もし未読で、しかも歴史小説はあまり読んだことのないのなら、ファースト歴史小説としてぜひオススメする。「竜馬がゆく」や「坂の上の雲」もシビレルほど面白かったが、それ以上面白かったと言っても過言でないのは、これと「真田太平記」

すまぬ。暑いのに熱く語ってしまった。

三谷幸喜の舞台、ドラマ、映画は大好物であることを付け加えさえて頂く。

では、また。


清須会議影武者徳川家康〈下〉 (新潮文庫)真田太平記(一)天魔の夏 (新潮文庫)
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