『起終点駅(ターミナル)』桜木紫乃 小学館 2012年(初出STORY BOX vol.15~27)
無縁をテーマとした短編集
<かたちないもの> 化粧品会社で出世した真理子39歳。昔別れた男竹原の納骨式の知らせが北海道から。思い出す過去、別れた後の竹原の思いもよらぬ人生。
<海鳥の行方> 新聞記者になって間もない里和。男性記者からはセクハラ、デスクからは暴言を浴びるつらい日々。不発弾の取材でたまたま知り合いになった釣り人の過去は…
<起終点駅(ターミナル)> 判事を辞めて弁護士になった完治。国選弁護しか受けない。なぜ妻子を捨てたのか。覚せい剤事件の弁護をした女から頼まれて…
<スクラップ・ロード> 父は失踪した。母一人子一人で育ててもらい、北海道大を卒業して銀行に就職した。しかし仕事はうまくいかない。街で見かけたのは失踪したはずの父の姿。ゴミを拾うその姿に…
<たたかいにやぶれて咲けよ> 新聞記者里和アゲイン。「湿原を見下ろす特別養護老人ホームで一人死を見つめる歌人」という記事を書こうとして取材したがうまくいかなかった。しかし死んだらいい追悼記事を書いてくれと頼まれていて取材を始めた。歌人が経営していた喫茶店KAJIN、小説家として眼が出なかった男に話を聞くと…
<潮風の家> 弟は強盗殺人でつかまり、獄中自殺した。姉千鶴子はすぐに故郷を離れ、そして30年が経った。水商売で働いた後に老人に弁当を宅配する仕事をしている。昔を思い出すと、母が亡くなった後10年も面倒をみてくれたのはひらがなしか書けないたみ子だった。久しぶりに会ったたみ子からきいた意外な話は…
うーむ。大きなどんでん返しをするような技巧に走らない代りに、人間の描写のきめ細かさが光る。(その逆が湊かなえだと思う。人間描写に難がある。しかし湊の作品は文句言いながらも結局全部読んでしまっているので、逆が悪いとも言い難い。キライだけど好きみたいな関係か=どんな関係やねん)
基本的には私は短編はあまり読まない。自分の好きな世界観やストーリー展開を楽しめるのは長編ぐらいの長さがないと難しい(と思っているからだ)その基本が変わるわけではないけれど、しかしたまには短編もいいなと思うこともある。響いたのはこんな言葉だった。
私の中の桜木紫乃ブームはまだ火が消えない。
では、また。
無縁をテーマとした短編集
<かたちないもの> 化粧品会社で出世した真理子39歳。昔別れた男竹原の納骨式の知らせが北海道から。思い出す過去、別れた後の竹原の思いもよらぬ人生。
<海鳥の行方> 新聞記者になって間もない里和。男性記者からはセクハラ、デスクからは暴言を浴びるつらい日々。不発弾の取材でたまたま知り合いになった釣り人の過去は…
<起終点駅(ターミナル)> 判事を辞めて弁護士になった完治。国選弁護しか受けない。なぜ妻子を捨てたのか。覚せい剤事件の弁護をした女から頼まれて…
<スクラップ・ロード> 父は失踪した。母一人子一人で育ててもらい、北海道大を卒業して銀行に就職した。しかし仕事はうまくいかない。街で見かけたのは失踪したはずの父の姿。ゴミを拾うその姿に…
<たたかいにやぶれて咲けよ> 新聞記者里和アゲイン。「湿原を見下ろす特別養護老人ホームで一人死を見つめる歌人」という記事を書こうとして取材したがうまくいかなかった。しかし死んだらいい追悼記事を書いてくれと頼まれていて取材を始めた。歌人が経営していた喫茶店KAJIN、小説家として眼が出なかった男に話を聞くと…
<潮風の家> 弟は強盗殺人でつかまり、獄中自殺した。姉千鶴子はすぐに故郷を離れ、そして30年が経った。水商売で働いた後に老人に弁当を宅配する仕事をしている。昔を思い出すと、母が亡くなった後10年も面倒をみてくれたのはひらがなしか書けないたみ子だった。久しぶりに会ったたみ子からきいた意外な話は…
うーむ。大きなどんでん返しをするような技巧に走らない代りに、人間の描写のきめ細かさが光る。(その逆が湊かなえだと思う。人間描写に難がある。しかし湊の作品は文句言いながらも結局全部読んでしまっているので、逆が悪いとも言い難い。キライだけど好きみたいな関係か=どんな関係やねん)
基本的には私は短編はあまり読まない。自分の好きな世界観やストーリー展開を楽しめるのは長編ぐらいの長さがないと難しい(と思っているからだ)その基本が変わるわけではないけれど、しかしたまには短編もいいなと思うこともある。響いたのはこんな言葉だった。
自分はまだ何も得ておらず、失ってもないのではないか。(174頁より引用「スクラップ・ロード」)
男はひとりでいると、いろいろと内側に向かって自分を掘り進めてしまうようだった。あるときから先、反省を始めてしまうのだ。その点女はたくましかった。(245頁「潮風の家」)
男はひとりでいると、いろいろと内側に向かって自分を掘り進めてしまうようだった。あるときから先、反省を始めてしまうのだ。その点女はたくましかった。(245頁「潮風の家」)
私の中の桜木紫乃ブームはまだ火が消えない。
では、また。
桜木さんは女性を厳しくリアルに書いていて、大人の読む作品だと思う
びっくりさせるのと唸らせるとの違いですか。なるほどなるほど。
桜木作品が大人の鑑賞にたえうると仮定したとしても、桜木ファン=大人、湊ファン=子供(精神的に)とも言えないのだろうとも思うのですけれども。
(一般的に、作品世界が持つ性格や方向と読者自身の性格や方向の相違点について考えてみると面白いかも知れません)
湊作品と桜木作品をつい私は較べてしまいますが、その比較の対象は間違っているのかも知れません。
そして、なぜ較べてしまうのかも分かりません。
新しい試みに挑戦するのは編集者との知恵なのかな
桜木紫乃の「凍原」読みました。最後まで気の抜けない筋で、重苦しいのだけどパズルのピースがパチっと最後の1ピースはまる達成感を味わえるんだよね
刑事物だけど人一人の人生も複数書くでしょ。だれにも感情移入出来ないから完全アウェイで読むというね
湊かなえさんの新機軸については、編集者のアイデアなのかも知れませんし、本人が新しいことをどんどんやりたいからなのかも知れませんね。
私としては面白ければ何でもよいのですが。
「凍原」はしばらく前に読みました。
いつかレビューをアップ致します。