日経文化面の新聞小説は「ミチクサ先生」
伊集院静さんの作である。
夏目漱石が主人公の小説であるが
正岡子規、高濱虚子、寺田寅彦なんかが
登場するので興味を持って毎朝読んでいる。
今朝の新聞でついにミチクサ先生が亡くなった。
大正五年十二月九日、午後六時四十五分
夏目金之助、享年四十九歳である。よって
連載していた『明暗』は、十二月十四日の
東京朝日新聞に掲載された第百八十八回をもって
終了となり、未完となっている。遺作である。
胃潰瘍の発作で嘔吐を繰り返して、大正五年
十一月及び十二月に大内出血をする。
脳貧血で意識は朦朧となっていたようだ。
またリュウマチだと思っていた身体の痛みは
教え子の診察で糖尿病と判ったという。
東大の職を棄てて朝日の専属小説家となった金之助。
相次ぐ人気小説の執筆で命を縮めたのかもしれないが
五十歳にもならない内の生涯はやはり何とも短い。
子規も肺を病み脊椎カリエスから三十四歳と
短命であったが、虚子は八十五歳と長命であった。
このミチクサ先生、挿絵のタッチが好きであった。
福山小夜さんと云う方の画である。
特に描かれる女性がとても美しいのだ。
「ミチクサ先生」は7月22日で完となる。
次回作は安倍龍太郎さんの「ふりさけ見れば」
遣唐使の物語であると云う。
安倍龍太郎さんはかつて日経で「等伯」を執筆。
日経好みの作家である。これも楽しみ。