盆の墓参に出かける。
山間にあるこの暮園は案外涼しかった。
山を抜ける風が気温を下げるのだろう。
都会のよどんだ暑い空気に慣れてたから
おやっと、意外に感じてしまった。
毎年の手順で墓を掃除する。
水をくべ、雑草を払い
墓石をごしごしこする。
そして持って来た花を供えた。
薄黄色の百合がひときわ美しい。
全てが整ってから、最後に
父が好きだったお酒、そして
母が好きだった珈琲を供える。
蝋燭を左右の蜀台に灯し線香を立て
墓石に向き合って手を合わせた。
気持ちがあらたまる瞬間。
心の中で、あの世で元気かと声を掛け
最近の我が家の暮らしを報告し
まだ成就していない事をお願いし
末永く見守って欲しいとまた願う。
なんとも一方的でわがままな懇請だ。
「やれやれ、鬼籍の親にまだ無心?」
小さい頃は答えてくれた親も
今はもう、何も言ってはくれぬ。
そういう時に、やはり
親がいない寂しさを実感するものだ。
もうすぐ夕暮れ。静かな山。
都会では見かけないミンミン蝉が一匹
あたりに響くように鳴いていた。
墓参り 親に頼むや 蝉時雨 拙私有