陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

あの日の浪漫デカダンス

2009年08月12日 | cocoro

“こうして手短かに語ると
さしたる大きな難儀も無く
割りに運がよく
暮らして来た人間のように
お思いになるかも知れませんが
人間の一生は地獄でございまして
寸善尺魔とは
まったく本当の事でございますね。
一寸の仕合せには一尺の魔物が
必ずくっついてまいります。
人間三百六十五日
何の心配も無い日が
一日、いや半日あったら
それは仕合せな人間です。”
(ヴィヨンの妻より)

この夏、久しぶりに太宰を読む。
生誕百年で書店に並ぶ彼の本。
浪漫デカダンスという概念に
憧憬し続けたあの十代後半の日々。
人間失格。
当時の装丁本の復刻版がある。
浪人時代に東京に滞在した時
吉祥寺のとある書店で見つけた。
当時、吉祥寺にある大学を受けた。
ただ、武蔵野に住んでみたい。
そう思って受験した大学。
幸い合格したが結局京都に決めた。
太宰的下降指向に憧れた武蔵野だった。
しかし、受けたその大学は
下降指向には似つかない。ある経済界に
人材を送り込む定評の大学だったのだ。
自己矛盾というか日和見というか。
所詮プチブル気取りだったのだ。

トカトントン…。
時々当時を思い出すと私の頭にも
そのような残響がこだまする。

生誕の彼の地では
娘婿が政治家を引退し、その子
つまり太宰の孫が立候補すると言う。
世襲の批判を受けながらも。
でも、私的には
その政界ニュースと太宰が
僕の中ではどうしても結びつかない。
寸善尺魔とは
いったいどういう意味なのだろうか。

そういうことなら
小説家も政治家も同じかも知れないなあ。
そういう私も同じ穴のむじなだ。

(写真)高速バスから大山を望む
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