久しぶりに元マスターと会う。
マスターは店を閉めてから
とあるTV工場で派遣で働いていたのだが
このたび社員登用試験に見事合格。
永らく会ってもいなかったので
お盆休みだしお祝いも兼ねて一緒に飲む。
「よかったねえ。おめでとう!」
祝いを述べ、飲みに繰り出す。
マスターは店を閉めてから
某自動車メーカーに派遣が決まっていた。
昔で言う期間工である。
ところが最終健康診断ではねられた。
長年の店での洗い物の手荒れが
採用可否に引っかかってしまったのだ。
これは予期せぬ事だった。
出発前に皆から祝福してもらった身だ。
傷心に加え恥ずかしい気持ちで
名古屋から戻ったマスター。
さぞ悔しくて辛かったことだろう。
ところが人生と言うものは面白い。
つくづく人間万事塞翁が馬だなあと思う。
あの時、めでたく
その自動車メーカーに行っていれば
その後にやってきた未曾有の経済危機で
おそらく、遠からずマスターも
派遣切りに遭遇していたことだろう。
あの時、健康診断ではねられたから
今、こうして、TV工場での
正社員の道が拓けたのだ…。
三ノ宮は東門筋東側にある焼き鳥とり裕へ。
焼き鳥コースで久しぶりに酒を酌み交わす。
ここの焼き鳥はなかなか美味い。
久しぶりの鳥刺しも新鮮で堪能した。
マスターはまだ店を再興する夢を持つ。
いや夢ではなく目標である。
そういうことなら、はしご酒は
もちろん勉強と視察と挨拶を兼ねて
ショットバー。ということで
二軒目は北長狭のBar Codeへ行く。
壁紙は全てバーコードのNY的barだ。
ここのバーテンの某君は、阪急六甲の
老舗Bar Top Six繋がりである。
マスターはお馴染のグランダッド。
私はEZURAをロックで。ここで
某君からTop Six繋がりのもう一人が
阪急六甲でbarをやってると聞く。
ならば三軒目は阪急六甲へと…。
もちろん阪急電車で。ひと昔なら
ここはタクシーを使ったものだが。
タクシー業界も辛いがすまぬ。
でやって来たのはBAR gravity。
三軒目だ。ここは阪急六甲らしい
なかなか雰囲気のあるbarだった。
ここなら落ち着いて飲めるだろう。
何より午後四時から開いている。
これはいい。実にいい。
わたしは、黄昏前から飲む酒ほど
退廃的でうまい酒はないと思ってる男だ。
ここでマスターは旧交を点火させ
その勢いで、最後ははやり
マスターにとっては忘れられない
アンカー的な店Fへ。私の方は
ここでいったん別れてbar crisへと流れる。
crisではいつもタンカレーのジンリッキーだ。
しかし、Fにcrisの両マダム…
今はもうある意味阪急六甲界の重鎮である。
このお二人が、今でも現役で店に立ち
働いている姿は美しいし素晴らしい!
どれだけ勇気をもらうことだろう。
きっとマスターもFのマダムに
「あんた、頑張ってるの?」
なんて言われながら、さらに
大きな勇気をもらったことだろう。
最後は私もFへ合流した。
もう日が変わる頃だ。
そろそろ手仕舞いしないと
明日の体力が危うくなる。
カンパリをソーダで割ってもらい
そしてマダムFに一杯おごる。
こうして、真夏の夜の夢と共に
邂逅を重ねることができるのは
酒があるからこそ…。
久々のはしご酒であった。