私は、1993年と1999年の合計2回、伊勢神宮に参拝したことがあります。その頃にももちろん、古代から中世まで、天皇に変わって伊勢神宮に仕えた未婚の内親王または女王、つまり斎王に興味を持っていました。
ところがお恥ずかしいことに、斎王が普段、生活していた所、つまり斎宮が発掘されていること、斎宮に関する博物館があることなど、その頃は全く知りませんでした。伊勢神宮に行く前にもっと色々調べていたらわかったと思うのですが、もったいないことをしました。
三重県多気郡明和町にて、斎宮跡の遺跡が見つかったこと、近鉄線松坂駅から4つ目の駅が「斎宮」駅であること、斎宮駅で電車を降りれば、斎宮歴史博物館や斎宮に関する色々な史跡に簡単に行くことが出来ることを知ったのは、2004年頃だったでしょうか。
そうなったらいても立ってもいられず、「斎宮に行ってみたい」と思いながら、その頃は諸事情で思うように旅行に行くことが出来ませんでした。しかも斎宮は、京都と違い、新幹線で直接行くことが出来るわけではないので、なかなか行くことが出来なかった…というのが正直な話です。
それでも今年(2009年)の10月になって、「この前の京都旅行からもう1年経つから、そろそろ旅行に行こうか」という話になったとき、「今回は斎宮に行きたい」と思ったのです。
ちょうどその頃、斎宮歴史博物館で、特別展「伊勢物語 ~狩の使と斎宮」が11月23日まで行われていることを知りました。
狩の使と斎宮というキーワードですぐに思い出されるのは、狩の使として伊勢にやってきた在原業平と、斎王恬子内親王の恋愛です。「伊勢物語」69段には、2人の出会いと別れがロマンチックに描かれています。私が最も関心がある斎王は、「斎宮女御」と呼ばれた徽子女王ですが、恬子内親王にも興味がありますし、「伊勢物語」も大好きです。特別展、ぜひ見てみたいと思いました。
そのようなわけで、11月14日・15日と1泊2日で行くことにし、まず近鉄伊勢市駅周辺のホテルをいくつか当たってみたのですが、どのホテルもあいていませんでした。あとで知ったのですが、その頃、伊勢神宮でイベントがあり、その日は泊まり客でいっぱいだったのだそうです。仕方がないですね。
と言うわけで、14日だけの日帰り強行軍…ということになってしまいました。それでも斎宮には6時間くらい滞在できるので、見たい所は十分見ることが出来そうです。切符も、行きの掛川~名古屋の新幹線以外は全部、指定席を取ることが出来てひと安心。指定席が取れなかった行きの新幹線は、こだまだから自由席が多いので、何とかなると前向きに考えることにしました。
何はともあれ、長い間の念願だった斎宮行きが決まってわくわく…。斎宮跡で色々妄想できるように、私が斎宮や徽子女王に興味を持つきっかけになった「華麗なる宮廷才女 ー人物日本の女性史1」に収められた「斎宮の系譜」と、「伊勢斎宮と斎王」を読み、斎宮に行くのがますます楽しみになりました。そして、ついに旅行の前日になりました。
ところが…、その日に出た旅行当日の天気予報にショック!全国的に雨で、特に近畿・東海・関東では午前中、風が強く、雷を伴って雨が激しく降る」というのです。午前中というと、ちょうど電車に乗っている時間です。東海道線は、普通電車も新幹線も雨や風に弱く、ダイヤが乱れたり止まってしまうことが多いのです。もしそうなったら…、斎宮に着くのが遅れる、もしかすると行けなくなるかもしれません。まさに最悪の天気予報でした。
だんなさんはというと、「なーに、雨なんて朝には上がってしまうよ。大丈夫だ」と楽観的でした。それでも私が心配ばかりしているので、「うるさい!」と言われてしまいました…。
そのようなわけで、楽しみな気持ちと不安な気持ちが入り交じった、複雑な気持ちのまま布団に入りました。そして、少しうとうとしては目が覚め、それから寝つけなくなり…というのを繰り返し、結局2~3時間くらいしか眠ることが出来ませんでした。
朝4時には目がぱっちり覚めてしまったので、布団から出てパソコンを立ち上げてインターネットを1時間ほどやっていました。
外は雨が降っていましたがそれほど強くないので、レインコートを着ていくか、普通のコートを着ていくか迷いました。そこで、ネットで三重県の天気をチェック。特に、史跡巡りをすることになっている午後の天気が気になります。正午から午後6時までの降水確率20%、ああ、良かった!では、普通のコートを着ていこう。ただ、雨が強くなって電車が止まらなければいいけど。
5時にだんなさんを起こして身支度にかかりました。そして、身支度からハプニングが…。私は化粧品を床に落としてしまうし、だんなさんのコンタクトレンズはなくなるし…。幸い、両方とも見つかったので良かったのですが、何か波瀾の予感です。
猫のエリカが私たちのお出かけを察知したらしく、機嫌の悪い声で鳴きながら私たちにすり寄ってきました。エリカちゃん、ごめんね。削り節をたくさんあげるから、今日はおとなしく留守番していてね。
6時25分頃、家を出発。歩いて10分くらいで最寄りの駅に着きました。朝食は新幹線の中で済ませることにしていたので、私たちは前日、近くのコンビニで鶏五目のおにぎり3個セットを買ってありました。1ヶ月ほど前に、家から歩いてすぐの所にオープンしたコンビニです。近所にスーパーはなくなってしまいましたが、コンビニが出来たおかげで少しは便利です。でも、2人でおにぎり3個では足りませんので、駅の売店でおにぎりをもう3個と、ゆで卵2個を買いました。
最寄りの駅から新幹線の掛川駅までは、普通電車で20分弱です。新幹線は7時32分なので、こちらを7時発の電車に乗っても充分間に合うのですが、余裕を持って一つ前の6時50分の電車に乗り込みました。これが運命の分かれ道だったとは!
歩いているときは、雨も風も強いという感じがしなかったのですが、大井川を渡ったあたりから、急に風雨が強くなったような感じがしました。何か嫌~な予感がしたのですが、掛川の一つ前の菊川駅の手前でそれが的中してしまったのです。
まだ駅から相当遠くのはずなのに、電車が急にスピードを落とし始めたのでした。しばらくすると今にも止まりそうなスピードに。私は、顔から血の気が引くのを感じました。1分くらいこんな感じだったと思いますが、ついに止まってしまったのでした。そして、「ただ今、赤信号のため、この電車は停車しております。」というアナウンスが入りました。
まさか、人身事故?もしそうだったら、1時間は動きません。予定の新幹線にはもちろん間に合いません。1時間後の新幹線に乗っていったら、名古屋に着く時間も遅くなります。当然、そのあとに乗ることになっている近鉄特急にも間に合いません。遅い時間の近鉄特急の指定席も取れるかどうかわかりません。ひょっとすると斎宮に行けなくなるかもしれないのです。私たちのために、斎宮の史跡巡りの案内をして下さるガイドボランティアさんを手配して下さっていたので、斎宮歴史博物館に電話をして、事情を話さなければなりません。たちまち、携帯電話で博物館に電話をする私を妄想していました。
外は、雨と風がかなり強いようです。ひょっとしてこの天気のため、電車が止まってしまったのでしょうか?何か絶望的な気持ちになりました。止まっている時間がやけに長く感じました。
止まっていた時間はほんの5分くらいだったと思いますが…、ずいぶん長く止まっていたような感じがしました。ガタンと音がして、電車が動き出したときは反射的に、「良かった~」と口から言葉が漏れていました。どうやら、強い風のため、ビニールが線路に入ってしまったのだそうです。電車は菊川駅に7分ほど遅れて到着。掛川に到着したのも7時17分頃で、新幹線の時間に充分間に合いました。良かった~。
それにしても…、後続の電車も止められていたのでしょうから、7時の電車に乗っていたら…と思うとぞーっとしました。何とかぎりぎりで新幹線には間に合ったとは思いますが、かなりきつかったかも…。ひょっとして…ということにもなったかもしれません。
そのようなわけで、波瀾含みの「斎王に逢う旅」はこうして始まったのでした。
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ところがお恥ずかしいことに、斎王が普段、生活していた所、つまり斎宮が発掘されていること、斎宮に関する博物館があることなど、その頃は全く知りませんでした。伊勢神宮に行く前にもっと色々調べていたらわかったと思うのですが、もったいないことをしました。
三重県多気郡明和町にて、斎宮跡の遺跡が見つかったこと、近鉄線松坂駅から4つ目の駅が「斎宮」駅であること、斎宮駅で電車を降りれば、斎宮歴史博物館や斎宮に関する色々な史跡に簡単に行くことが出来ることを知ったのは、2004年頃だったでしょうか。
そうなったらいても立ってもいられず、「斎宮に行ってみたい」と思いながら、その頃は諸事情で思うように旅行に行くことが出来ませんでした。しかも斎宮は、京都と違い、新幹線で直接行くことが出来るわけではないので、なかなか行くことが出来なかった…というのが正直な話です。
それでも今年(2009年)の10月になって、「この前の京都旅行からもう1年経つから、そろそろ旅行に行こうか」という話になったとき、「今回は斎宮に行きたい」と思ったのです。
ちょうどその頃、斎宮歴史博物館で、特別展「伊勢物語 ~狩の使と斎宮」が11月23日まで行われていることを知りました。
狩の使と斎宮というキーワードですぐに思い出されるのは、狩の使として伊勢にやってきた在原業平と、斎王恬子内親王の恋愛です。「伊勢物語」69段には、2人の出会いと別れがロマンチックに描かれています。私が最も関心がある斎王は、「斎宮女御」と呼ばれた徽子女王ですが、恬子内親王にも興味がありますし、「伊勢物語」も大好きです。特別展、ぜひ見てみたいと思いました。
そのようなわけで、11月14日・15日と1泊2日で行くことにし、まず近鉄伊勢市駅周辺のホテルをいくつか当たってみたのですが、どのホテルもあいていませんでした。あとで知ったのですが、その頃、伊勢神宮でイベントがあり、その日は泊まり客でいっぱいだったのだそうです。仕方がないですね。
と言うわけで、14日だけの日帰り強行軍…ということになってしまいました。それでも斎宮には6時間くらい滞在できるので、見たい所は十分見ることが出来そうです。切符も、行きの掛川~名古屋の新幹線以外は全部、指定席を取ることが出来てひと安心。指定席が取れなかった行きの新幹線は、こだまだから自由席が多いので、何とかなると前向きに考えることにしました。
何はともあれ、長い間の念願だった斎宮行きが決まってわくわく…。斎宮跡で色々妄想できるように、私が斎宮や徽子女王に興味を持つきっかけになった「華麗なる宮廷才女 ー人物日本の女性史1」に収められた「斎宮の系譜」と、「伊勢斎宮と斎王」を読み、斎宮に行くのがますます楽しみになりました。そして、ついに旅行の前日になりました。
ところが…、その日に出た旅行当日の天気予報にショック!全国的に雨で、特に近畿・東海・関東では午前中、風が強く、雷を伴って雨が激しく降る」というのです。午前中というと、ちょうど電車に乗っている時間です。東海道線は、普通電車も新幹線も雨や風に弱く、ダイヤが乱れたり止まってしまうことが多いのです。もしそうなったら…、斎宮に着くのが遅れる、もしかすると行けなくなるかもしれません。まさに最悪の天気予報でした。
だんなさんはというと、「なーに、雨なんて朝には上がってしまうよ。大丈夫だ」と楽観的でした。それでも私が心配ばかりしているので、「うるさい!」と言われてしまいました…。
そのようなわけで、楽しみな気持ちと不安な気持ちが入り交じった、複雑な気持ちのまま布団に入りました。そして、少しうとうとしては目が覚め、それから寝つけなくなり…というのを繰り返し、結局2~3時間くらいしか眠ることが出来ませんでした。
朝4時には目がぱっちり覚めてしまったので、布団から出てパソコンを立ち上げてインターネットを1時間ほどやっていました。
外は雨が降っていましたがそれほど強くないので、レインコートを着ていくか、普通のコートを着ていくか迷いました。そこで、ネットで三重県の天気をチェック。特に、史跡巡りをすることになっている午後の天気が気になります。正午から午後6時までの降水確率20%、ああ、良かった!では、普通のコートを着ていこう。ただ、雨が強くなって電車が止まらなければいいけど。
5時にだんなさんを起こして身支度にかかりました。そして、身支度からハプニングが…。私は化粧品を床に落としてしまうし、だんなさんのコンタクトレンズはなくなるし…。幸い、両方とも見つかったので良かったのですが、何か波瀾の予感です。
猫のエリカが私たちのお出かけを察知したらしく、機嫌の悪い声で鳴きながら私たちにすり寄ってきました。エリカちゃん、ごめんね。削り節をたくさんあげるから、今日はおとなしく留守番していてね。
6時25分頃、家を出発。歩いて10分くらいで最寄りの駅に着きました。朝食は新幹線の中で済ませることにしていたので、私たちは前日、近くのコンビニで鶏五目のおにぎり3個セットを買ってありました。1ヶ月ほど前に、家から歩いてすぐの所にオープンしたコンビニです。近所にスーパーはなくなってしまいましたが、コンビニが出来たおかげで少しは便利です。でも、2人でおにぎり3個では足りませんので、駅の売店でおにぎりをもう3個と、ゆで卵2個を買いました。
最寄りの駅から新幹線の掛川駅までは、普通電車で20分弱です。新幹線は7時32分なので、こちらを7時発の電車に乗っても充分間に合うのですが、余裕を持って一つ前の6時50分の電車に乗り込みました。これが運命の分かれ道だったとは!
歩いているときは、雨も風も強いという感じがしなかったのですが、大井川を渡ったあたりから、急に風雨が強くなったような感じがしました。何か嫌~な予感がしたのですが、掛川の一つ前の菊川駅の手前でそれが的中してしまったのです。
まだ駅から相当遠くのはずなのに、電車が急にスピードを落とし始めたのでした。しばらくすると今にも止まりそうなスピードに。私は、顔から血の気が引くのを感じました。1分くらいこんな感じだったと思いますが、ついに止まってしまったのでした。そして、「ただ今、赤信号のため、この電車は停車しております。」というアナウンスが入りました。
まさか、人身事故?もしそうだったら、1時間は動きません。予定の新幹線にはもちろん間に合いません。1時間後の新幹線に乗っていったら、名古屋に着く時間も遅くなります。当然、そのあとに乗ることになっている近鉄特急にも間に合いません。遅い時間の近鉄特急の指定席も取れるかどうかわかりません。ひょっとすると斎宮に行けなくなるかもしれないのです。私たちのために、斎宮の史跡巡りの案内をして下さるガイドボランティアさんを手配して下さっていたので、斎宮歴史博物館に電話をして、事情を話さなければなりません。たちまち、携帯電話で博物館に電話をする私を妄想していました。
外は、雨と風がかなり強いようです。ひょっとしてこの天気のため、電車が止まってしまったのでしょうか?何か絶望的な気持ちになりました。止まっている時間がやけに長く感じました。
止まっていた時間はほんの5分くらいだったと思いますが…、ずいぶん長く止まっていたような感じがしました。ガタンと音がして、電車が動き出したときは反射的に、「良かった~」と口から言葉が漏れていました。どうやら、強い風のため、ビニールが線路に入ってしまったのだそうです。電車は菊川駅に7分ほど遅れて到着。掛川に到着したのも7時17分頃で、新幹線の時間に充分間に合いました。良かった~。
それにしても…、後続の電車も止められていたのでしょうから、7時の電車に乗っていたら…と思うとぞーっとしました。何とかぎりぎりで新幹線には間に合ったとは思いますが、かなりきつかったかも…。ひょっとして…ということにもなったかもしれません。
そのようなわけで、波瀾含みの「斎王に逢う旅」はこうして始まったのでした。
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